漁業で特定技能の外国人を採用するには|要件・試験・派遣・協議会
目次
漁業・養殖業は、特定技能で労働者派遣による受け入れができる2分野のうちの1つです(もう1つは農業)。漁期の繁閑に合わせて人を借りられる一方、「どこの派遣会社からでも借りられるのか」「派遣なら受け入れる側は制度に関わらなくていいのか」でつまずきやすい仕組みでもあります。⚠️ しかも漁船に乗り組ませる場合は、その漁船が船員法の「船員」の船に当たるときだけ、根拠法が労働者派遣法から船員職業安定法へ、労働基準法から船員法へ入れ替わります。⚠️ 逆に言えば漁船に乗り組めば必ず船員法側になるわけではありません——定置網・区画漁業(養殖)・共同漁業に専従する30トン未満の漁船や20トン未満の漁船の一部は船員法の船員から除かれ、陸上作業と同じ労働者派遣法・労働基準法のままです(総トン数10トン未満で専ら「その他の漁業」に従事する漁船は条件なしで除外側です=どの漁船が「船員法の船員」なのか)。
人手不足の規模は制度側も前提に置いています。分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定)は、令和10年度に必要な就業者数17万人に対し、令和4年度に12万6,000人だった就業者が令和10年度には10万7,300人へ減る見込みとしています。[1]同方針が挙げる有効求人倍率は、沖合・遠洋漁業6.54倍(令和6年「船員職業安定年報」)、沿岸漁業1.38倍・養殖業2.07倍(令和6年度「職業安定業務統計」)です。ただし年齢構成の側は一様ではありません。水産庁「令和5年度水産白書」は「漁業就業者全体に占める65歳以上の割合は増加傾向となっている一方、39歳以下の割合も近年増加傾向となっています」としています。[2]
この記事の要点
- まず「陸上作業か、船員法の船員に当たる漁船への乗組みか」で道が分かれる — 派遣事業の許可も、適用される労働関係法令も別系統になります。分かれ目は総トン数(5/10/20/30トン)×漁業の種類×操業海域・操業日数で、10トン未満で専ら「その他の漁業」に従事する漁船は条件なしで除外側(=陸上作業と同じ枠組み)ですが、10〜20トンは地方運輸局長の認定を経ないと確定しません。どちらでも直接雇用は選べます(形態ごとの違いは直接雇用と派遣の使い分けの表)。
- 派遣で受け入れられるのは農業と漁業だけ、しかも借りられる相手は限られる — 特定技能で労働者派遣が認められているのはこの2分野です。派遣元になれるのは漁業・養殖業を行う者や漁業協同組合等が関与する事業者で、派遣事業の許可も別途必要です。派遣先の対象地域にも要件があります。
- 派遣先も協議会の枠内に入る — 「派遣だから受け入れ側は制度に関わらない」ということにはならず、誓約書と概要書の提出を経て漁業特定技能協議会の枠に入ります。
本記事は一般的な情報提供です。漁業分野の要件・対象業務の範囲・派遣の要件は変動するため、最新の内容は出入国在留管理庁および農林水産省(水産庁)の分野別の運用方針・運用要領で必ず確認してください。
分野別運用方針は令和8年1月23日の閣議決定で現行版(別紙14)に切り替わり、旧版(別紙12・令和6年3月)は同日廃止されました。⚠️ 出入国在留管理庁の漁業分野ページからのリンクは、2026年7月30日時点で旧版PDFを指しています(現行版は上記の索引ページから辿ってください)。また運用要領・運用要領別冊は現行の運用方針にまだ追随していません(別冊は令和6年2月15日一部改正が最新)=試験名・日本語能力の確認方法・2号の実務経験年数は方針側と運用要領側で定めが分かれるため、本記事はどちらの版の定めかを明示して併記しています。
漁業の派遣での受け入れ:借りられる相手と、自社が負うもの
借りられる相手は漁業協同組合等が関与する派遣元に絞られ、受け入れる側も漁業特定技能協議会の枠内に入ります。加えて、漁船に乗り組ませる場合は、その漁船が船員法の船員の船に当たるときだけ枠組みが船員派遣(船員職業安定法)へ切り替わります。以下、この3点を順に見ます。[3][4]
なぜ漁業では派遣が認められているのか
分野別運用方針は理由を、対象魚種や漁法によって繁忙期・閑散期が異なることと、事業者の多くが零細で半島・離島地域等にあることを挙げ、「地域内における業務の繁閑を踏まえた労働力の融通、雇用・支援の一元化といった漁業現場のニーズに対応するため」と書いています。趣旨は「繁忙期だけ人を使う」ことではなく、地域内で人を回し、雇用と支援の窓口を1つにまとめることにあります。
⚠️ 地域内での融通を「1人を複数の漁業者で分け合う」ことだと読むのは誤りです。水産庁は「特定技能外国人はフルタイムで業務に従事することが求められますので、複数の企業が同一の特定技能外国人を受け入れることはできません」と明記しています。融通は派遣元を介した派遣先の切り替えであって、同時就業ではありません。
農業も派遣が認められる分野ですが、漁業側に有利に働く違いが1点あります。農業分野の運用方針(別紙13)は、直接雇用に「労働者を6月以上雇用した経験又はこれに準ずる経験」を求め、派遣で受ける場合も派遣先責任者を「労働者を6月以上雇用した経験がある者又は派遣先責任者講習等を受講した者」とすることを求めています。漁業分野の運用方針には、派遣先・直接雇用のいずれについてもこの雇用経験の要件がありません(農業で特定技能の外国人を採用するには)。
派遣元になれる事業者は限られる
根拠は特定技能基準省令(平成31年法務省令第5号)第2条第1項第9号イです。要件は省令の文言そのもので、運用要領別冊は漁業分野で「想定されます」として例を挙げています。[5]要件(左列)と例示(右列)は別物です。
| 派遣元になれる事業者の要件(特定技能基準省令第2条第1項第9号イ・いずれかに該当) | 運用要領別冊が漁業分野について「想定されます」として挙げる例 |
|---|---|
| (1) 当該特定産業分野に係る業務またはこれに関連する業務を行っている者であること | 漁業・養殖業を直接行う漁業経営体・養殖経営体のほか、「漁業に関連する業務を行っている者」に当たり得るものとして漁業協同組合・漁業協同組合連合会等 |
| (2) 地方公共団体または(1)の者が資本金の過半数を出資していること | 地方公共団体・漁業生産組合・(1)の者が資本金の過半数を出資する方法 |
| (3) 地方公共団体の職員または(1)の者・その役員・職員が役員であることその他地方公共団体または(1)の者が業務執行に実質的に関与していると認められる者であること | 地方公共団体・漁業生産組合・(1)の者が役員・職員を出向させ、業務方法書等で漁業分野の業務運営に指導・助言を行うこととされていること等 |
⚠️ (3)は「その他…業務執行に実質的に関与していると認められる者」という広い一般条項です。右列は別冊が挙げる一例にすぎず、これに当てはまらなければ該当しないという意味ではありません(別の形で実質的に関与している漁協等も要件を満たし得ます)。漁業固有なのは、分野別運用方針が派遣元を「地方公共団体又は漁業協同組合、漁業生産組合若しくは漁業協同組合連合会その他漁業に関連する業務を行っている者が関与するものに限る」と重ねて限定している点です。どの号でも「関係行政機関の長と協議の上で適当であると認められる者」であることが求められ、別冊は漁業分野についてこれを「法務大臣が農林水産大臣と協議の上で適当であると認められる者」と当てはめています。
⚠️ 同じ省令第9号イには国家戦略特別区域法の特定機関という類型もありますが、「分野が農業である場合にあっては」と限定されており、漁業には適用されません(特区の農業支援外国人受入事業の枠組みを漁業に持ち込むことはできません)。
加えて、派遣事業の許可が別途必要です。別冊は「自己の雇用する外国人を、当該雇用関係の下に、かつ、他の法人・個人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させるには、派遣事業の許可が必要となります」と明記しています。協議会の加入申請でも、派遣形態なら派遣許可書の提出が求められます。
派遣元をどう探すか
探す起点は全国の派遣会社ではなく、地域の漁業協同組合と、自社が所属する漁業特定技能協議会の2号構成員になります。運用要領別冊は「労働者派遣事業における派遣先の対象地域については、派遣元責任者が日帰りで派遣労働者からの苦情の処理を行い得る地域とされていることが必要であるところ、…苦情処理を含めた外国人労働者の雇用管理を適切に行うことができる範囲となっていることが必要です」と定めています。地理的な制約が要件に組み込まれているため、「遠方の派遣会社に人を用意してもらう」という発想は実務上成立しません。
ステップ1:地域内で母体になり得る組織を洗い出す
別冊が(1)の例に挙げるのは、漁業経営体・養殖経営体のほか、漁業協同組合・漁業協同組合連合会等です。自社が所属する漁協、隣接地域の漁協、県の漁業協同組合連合会が、特定技能外国人の派遣元となっているか(またはその予定があるか)を確認します。
ステップ2:自社の2号構成員を特定して地域内の派遣元を確認する
漁業特定技能協議会の2号構成員は、1号構成員(受け入れ機関)を指導・助言する立場の業種別中央団体等で、令和7年11月28日現在21団体です。自社の漁業種類に対応する団体は自社の漁業種類に対応する2号構成員をどう特定するかの一覧で確認し、その団体に地域内で派遣元となっている事業者を尋ねます。
ステップ3:派遣元の許可と支援体制を確認する
候補が見つかったら、派遣事業の許可を持っているか、1号構成員資格証明書を得ているか、支援計画を自社で実施するのか漁業分野に固有の基準を満たす登録支援機関へ委託するのかを確認します。許可は制度上の最低条件であって、自社の漁業種類や漁期に対応できるかは別に確かめる必要があります。
許可の有無は自分で確認できます。労働者派遣事業は厚生労働省職業安定局の「人材サービス総合サイト」の労働者派遣事業所検索で、都道府県(必須)・事業主名称・許可届出受理番号などから許可事業所を引けます。[6]一方、⚠️ 船員派遣事業者を全国から検索できる公的サイトは本記事の確認範囲では見つかっていません=照会先は管轄の地方運輸局になります。
なお分野別運用要領は「特定技能所属機関が所在する地域の漁業活動やコミュニティ活動の核となる漁業協同組合又は漁業協同組合連合会が、登録支援機関となるよう努める」と定めており、地域の漁協が派遣元・登録支援機関の双方を担う形が制度側の想定に近い姿です。[7]
どの漁船に乗り組むかで、適用される法律が変わる
分野別運用方針が雇用形態を「労働者派遣形態(船員派遣形態を含む。以下同じ。)」とし、派遣元を「労働者派遣事業者(船員派遣事業者を含む)」と書き分けているのは、枠組みが二本立てだからです。分かれ目は船員法第1条第1項の「船員」に当たるかどうかの1点で、当たる場合にだけ次の3つが切り替わります。
- 派遣の根拠法 — 労働者派遣法第3条は「この法律は、船員職業安定法…第六条第一項に規定する船員については、適用しない」と定め、その船員職業安定法第6条第1項は「船員」を「船員法による船員及び同法による船員でない者で日本船舶以外の船舶に乗り組むもの」と定義しています。⇒ 船員法の船員なら労働者派遣法の枠から外れ、船員職業安定法の「船員派遣」の枠に入ります。[8][9]
- 労働時間・割増賃金 — 船員法第1条第1項の船員には、労働基準法第116条第1項により労基法自体が適用されません(同項が適用除外から除いているのは第1条〜第11条・同条第2項・第117条〜第119条・第121条だけで、第37条の割増賃金は除かれていません)。代わりに船員法第66条の割増手当が、労働時間の制限を超えた作業と補償休日の作業について支払いを義務づけています。⇒ 船員に当たらない場合は労基法側のままです(漁期に合わせて受け入れるときの実務)。[10][11]
- 社会保険 — 船員保険法第2条第1項は被保険者を「船員法第1条に規定する船員として船舶所有者に使用される者」としています。⇒ 船員に当たる場合は船員保険の適用が前提になります。[12]
どの漁船が「船員法の船員」なのか
漁船に乗り組めば必ず船員法の船員になるわけではありません。船員法第1条第2項は、総トン数5トン未満の船舶と湖・川・港のみを航行する船舶に加え、「政令の定める総トン数三十トン未満の漁船」を船員から除いており、昭和38年政令第54号がその範囲を①推進機関を備える30トン未満の漁船で専ら「漁具を定置して営む漁業」または漁業法第60条第4項の区画漁業・同条第5項の共同漁業に従事するもの、②推進機関を備える20トン未満の漁船(①を除く)のうち国土交通省令が定めるもの、③推進機関を備えない30トン未満の漁船、と定めています。[13]
②の委任先が令和2年国土交通省令第95号で、同令第2条が除外される漁船を総トン数×漁業の種類×操業海域・操業日数で切り分けています。[14]総トン数10トン未満で専ら「その他の漁業」(同令第1条が列挙する沖合底びき網・大中型まき網・かつお・まぐろ等16種以外の漁業)に従事する漁船は、海域や日数の条件なしで除外されます(同条第3号)。一方10トン以上20トン未満は条件付きで、専ら同令別表の13海域で営む場合(同条第1号)か、「その他の漁業」で海岸から5海里以遠(別表の海域を除く)の操業が年間30日未満であると地方運輸局長が認定した場合(同条第2号)に限られます。10トン未満でも捕鯨業・小型機船底びき網漁業・中型まき網漁業等なら同じ条件付きです(同条第4号)。
⇒ 10トン未満が条件なしで除外側に置かれているため、小型船が中心の経営体は除外側に当たりやすい構造です。⚠️ ただし10トン以上20トン未満は地方運輸局長の認定を経ないと確定しません=自社の漁船がどちらに当たるかの判定は、地方運輸局などの所管窓口や専門家に確認してください(本記事はトン数・漁業種類・海域の当てはめを代行しません)。
船員派遣は「常時雇用する船員」を出す仕組み
⚠️ 船員法の船員に当たる漁船に乗り組ませる場合の話です。船員職業安定法第6条第13項は「船員派遣」を「船舶所有者が、自己の常時雇用する船員を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために船員として労務に従事させること」と定義しています。⇒ この場合、「漁期だけの雇用を派遣元に作ってもらう」形にはなりません(派遣元が常時雇用している船員の配置先が切り替わる形です)。繁閑に合わせて借りるという説明が素直に当てはまるのは、陸上作業と、船員法の船員から除かれる漁船の労働者派遣の側です。
許可も別系統です。船員派遣事業は国土交通大臣の許可(船員職業安定法第55条第1項)で、申請は事業主の主たる事務所を管轄する地方運輸局を経由して提出し、国土交通省の案内は「許可申請は、十分な時間的余裕を持って行う必要があります」としています。許可基準には資産・設備・派遣元責任者の要件が並び、たとえば基準資産額(資産総額から負債総額を控除した額)は1千万円×事業所数以上です。零細な漁業経営体が単独で満たすのは容易ではなく、漁協や漁連が母体になる形が現実的な理由がここにあります(実数の全体は下記の同案内で確認できます)。[15]
派遣先(受け入れる漁業者)が負うもの
派遣で受け入れる漁業者は、漁業特定技能協議会の1号構成員か、そうでなければ1号副構成員として加入したものとみなされる立場に入ります。「派遣だから受け入れ側に制度上の関わりがない」ということにはなりません。根拠は協議会決定第5号「派遣形態による特定技能外国人の受け入れについて」(令和4年12月21日)で、流れと内容は次のとおりです。[16]
- 書類の提出 — 派遣先は、労働者派遣契約の締結にあたり、派遣先事業者誓約書(決定第5号の別紙様式第1号)と派遣先の概要書(同第2号)を派遣元へ提出します。派遣元はその写しと派遣計画書(同第3号)・自らの1号構成員資格証明書の写しを、2号構成員を通じて共同事務局へ提出します。
- みなし加入 — 派遣先が1号構成員でない場合、協議会は書類の受領後に労働者派遣等の基準に準じていることを確認し、加入したものとみなします(派遣先が自分で加入申請をするわけではありません)。
- 誓約書の【責務】 — 協議会が行う情報の提供・意見の聴取・現地調査その他の活動への必要な協力/国内人材の確保に資する取組/生産性の向上に資する取組。
- 誓約書の【条件】 — 労働・社会保険・租税に関する法令の遵守/契約日前1年以内または締結日以後に同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと(定年・自己の責め・有期満了・自発的離職を除く)/同じ期間内に「当該特定技能雇用契約の相手方である特定技能所属機関の責めに帰すべき事由により」外国人の行方不明者を発生させていないこと/欠格事由に該当しないこと。
- 欠格事由の範囲 — 一定の刑に処せられて5年を経過しない者、罰金の刑に処せられて5年を経過しない者(対象の罰則は誓約書原文で16号にわたり列挙されており、主なものは労働基準法・船員法・職業安定法・船員職業安定法・入管法・最低賃金法・労働者派遣法の各罰則)、暴力団員等、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者などです。⚠️ 刑の呼び方は文書の版で違います——協議会決定第5号(令和4年12月21日)の誓約書原文は「禁錮以上の刑」、現行の特定技能基準省令第2条第1項第4号イは刑法改正後の「拘禁刑以上の刑」で、同じ欠格事由を指します。
- 指導・助言に従わない場合 — 派遣元は派遣先へ、誓約事項の遵守・協議会および分科会の決定事項や申し合わせ事項の遵守・制度の認識について指導・助言を行います。派遣先がこれに従わない場合、1号副構成員の資格を失います。
この4つの【条件】は誓約書のローカルな取り決めではありません。特定技能基準省令第2条第1項第9号ロは、派遣元は「第1号から第4号までのいずれにも該当する者」に対してのみ労働者派遣等をすることとしていなければならないと定めており、誓約書の条件はこの第1号〜第4号を写したものです。満たさなければ、そもそも派遣を受けられません。
判断を変えるのは概要書の記載事項です。派遣先の概要書には、法人番号・常勤職員数・資本金の額・前年度売上高・前年度経常損益・前年度当期純損益、加えて1年以内の同種業務労働者の離職状況と前1年間の行方不明者数を記載します。派遣で受けるということは、派遣元(多くは地域の漁協等)に自社の財務数値を開示することを含みます。
生活支援の側は逆で、義務者は派遣先ではありません。1号特定技能外国人支援計画を策定・実施する義務は、特定技能所属機関である派遣元が負います。なお登録支援機関自身は、漁業特定技能協議会に加入する必要はありません(水産庁の公式Q&A)。
漁期に合わせて受け入れるときの実務
漁期に合わせて受け入れる場合、協議会の側の手続きは繰り返しになりません。加入は初回だけで足り、受け入れ人数と労働時間の管理には漁業固有の目安と適用除外があります。[17]
- 加入申請は受け入れるごとには不要 — 水産庁の公式Q&Aは「特定技能外国人を受け入れるごとに加入申請を行う必要はありません」としています。2人目以降も、2号として受け入れる場合も同じです(加入時に報告した情報に変更が生じたときは所属する2号構成員へ連絡)。
- 閑散期に人がいなくなっても退会しなくてよい — 受け入れをやめた時点で退会(様式第4号の退会届出書の提出と証明書の返却)が必要ですが、同Q&Aは「今後も受け入れを予定している場合は、退会の必要はありません」としています。漁期ごとに断続的に受け入れる運用は、協議会側の手続きの面では想定内です。
- 漁船1隻あたりの配乗人数の目安 — 漁業分科会決定の原文は「漁船一隻あたり、技能実習生と1号特定技能外国人の合計人数が、それ以外の乗組員の人数の範囲内を目安とすること(日本人乗組員の人数≧技能実習生+1号特定技能外国人の人数)」です(丸括弧の不等式まで原文)。受け入れ機関は自らが運航する漁船の配乗状況を所属する業界団体へ定期的に報告することも申し合わされています。
- 引き抜きの自粛 — 協議会は「他地域及び他の漁業種類で雇用されている外国人材の積極的な引き抜き雇用を自粛すること」を申し合わせています。
- ⚠️ 決定事項に従わないと、受け入れそのものができなくなる — 上の2つは「守らなくてもよい目安」ではありません。水産庁の資料は協議会決定事項を「各構成員が遵守しなければならない取り決め」とし、運用要領別冊は「協議会において協議が調った事項に関する措置を講じない…など、協議会の構成員として不適格であると認められ、構成員資格を停止又は取り消された場合、告示の基準を満たさず、特定技能外国人の受入れができなくなることがあります」と明記しています。
- 労働時間の適用除外はあるが、深夜割増は残る — 運用要領別冊は、漁業・養殖業について「日本人が従事する場合と同様に、労働時間、休憩及び休日に関する労働基準法等の規定は適用除外となります」(労基法第41条第1号・別表第一第七号のルート)としつつ、「適用除外となるのは、労働時間、休憩及び休日に関する規定だけであり、深夜勤務における深夜割増賃金やその他の規定については適用除外にならない」と明記しています。⚠️ これは労基法が適用される場合の話です(根拠法の分岐)。
「漁期だけ半年働かせ、帰国期間を挟めば通算5年を超えて使える」という説明を見かけることがありますが、上陸基準省令の原則とは整合しません。 同省令は「特定技能(1号)の在留資格をもって本邦に在留したことがある者」について、その在留期間が「通算して五年(相当の理由がある場合は六年)に達していないこと」を上陸の基準としています=いったん帰国して改めて取得する場合も、過去に特定技能1号で在留した期間が通算に加わります(省令が通算から除くのは、妊娠・出産・育児その他のやむを得ない事情で業務に従事できなかった期間)。数え方の詳細は特定技能の在留期間と更新、個別のケースは地方出入国在留管理局に確認してください。[18]
直接雇用と派遣の使い分け
直接雇用と派遣は、受け入れの主体・支援の義務者・協議会での立場・必要な書類がすべて入れ替わります。自社がどちらの立場に立つのかを先に決めると、以降の手続きが一本道になります。
| 比較する観点 | 直接雇用 | 労働者派遣(船員派遣形態を含む) |
|---|---|---|
| 向いている受け入れ方 | 通年で自社の業務に従事してもらう | 陸上作業・船員法の船員から除かれる漁船=漁期の繁閑に合わせる/船員法の船員に当たる漁船への乗組み=派遣元が常時雇用する船員の配置先の切り替え |
| 特定技能所属機関(受け入れの主体) | 自社 | 派遣元(漁業協同組合等が関与する事業者に限る) |
| 1号特定技能外国人支援計画を実施する義務者 | 自社(登録支援機関へ委託可) | 派遣元(登録支援機関へ委託可・漁業分野に固有の基準を満たす機関に限る) |
| 漁業特定技能協議会での立場 | 1号構成員 | 派遣元が1号構成員/派遣先は1号副構成員 |
| 事業の許可 | 不要 | 船員法の船員に当たる漁船に乗り組ませる場合=船員派遣事業の許可(国土交通大臣)/それ以外(陸上作業・船員法の船員から除かれる漁船)=労働者派遣事業の許可(厚生労働大臣) |
| 適用される労働関係の法令(雇用形態ではなく船員法の船員に当たるかで決まる・詳細は根拠法の分岐) | 船員法の船員に当たる場合=船員法(労基法は第116条第1項で適用除外)/当たらない場合=労働基準法 | 直接雇用と同じ分岐 |
| 財務数値の開示 | 不要 | 派遣先の概要書で資本金・前年度売上高・前年度経常損益・前年度当期純損益を派遣元へ開示 |
| 派遣の形態でのみ必要になる書類 | — | 在留諸申請=派遣計画書(参考様式第1-12号)・派遣先の概要書〔漁業分野〕(参考様式第1-15号)/協議会の加入申請=派遣計画書・就業条件明示書・派遣先の概要書〔漁業分野〕・派遣許可書の4点 |
⚠️ 派遣を選ぶ場合、派遣元の料金と賃金の差(いわゆるマージン率)を発注側が確認できるかどうかも、労働者派遣と船員派遣で違います(労働者派遣法第23条第5項の情報提供義務と船員職業安定法の対比=費用の目安)。
派遣先の概要書は分野ごとに様式が分かれており、漁業分野は参考様式第1-15号(農業分野は第1-14号)です。⚠️ 在留諸申請に添付する参考様式第1-15号と、協議会決定第5号の別紙様式第2号は名前が同じ「派遣先の概要書」ですが、提出先の違う別の書面です。
派遣・直接雇用のどちらでも、漁業分野では次の2群の書類が必要になります。①漁業分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書(分野参考様式第12-1号)、②漁業または養殖業を営んでいることの確認書類(大臣許可漁業の許可証や定置漁業の免許の指令書の写し/漁協に所属して営む場合は組合が発行した書類の写し/漁船を用いる場合は漁船原簿謄本または漁船登録票の写しのいずれか)。[19]⚠️ これらの様式の作成や申請取次は、行政書士などの専門家の領域です。本記事は「どの様式が必要になるか」の情報提供にとどめています。採用全体の流れは特定技能の採用の流れ、企業側の受け入れ要件は特定技能で企業に求められる受け入れ要件をご覧ください。
漁業特有の受け入れ手続き:漁業特定技能協議会への加入
漁業特定技能協議会への加入は、水産庁へ直接申し込むのではなく、自社が所属する2号構成員(業種別の中央団体等)を経由して行います。在留諸申請より前に1号構成員資格証明書を得ておく必要があります。[20]
自社の漁業種類に対応する2号構成員をどう特定するか
「所属する2号構成員へ提出する」という手順は、自社の漁業種類に対応する団体が分からないと動き出せません。入口は水産庁の公式Q&Aの別添「営む漁業や養殖業に応じた漁業特定技能協議会2号構成員」(令和7年4月10日時点)です。[21]⚠️ 別添は「1,海面漁業」「2,内水面漁業」の2大区分ごとに、漁業種類のリストと団体名・電話番号のリストを並列に掲げる形式で、どの漁業種類がどの団体に対応するかの行対応は定めていません。⇒ 下の表は別添の掲載内容をそのまま写したものです(本記事は団体名からの推測で対応づけをしていません)。対応が読み取れない場合は共同事務局=一般社団法人大日本水産会、または水産庁漁政部企画課へ照会してください。
| 区分(別添・令和7年4月10日時点) | 別添が掲げる漁業・養殖業の種類 | 別添が掲げる2号構成員(業種別中央団体等) |
|---|---|---|
| 1,海面漁業/漁船漁業(所管する業種別中央団体がある漁業) | いか釣・かつお一本釣・まぐろはえ縄・沖合底びき網・小型底びき網・定置網・大中型まき網・大目流し網・さんま棒受網・金目鯛はえ縄 | 全国いか釣り漁業協会/全国近海かつお・まぐろ漁業協会/全国底曳網漁業連合会/日本定置漁業協会/全国まき網漁業協会/全国かじき等流し網漁業協議会/全国さんま棒受網漁業協同組合/全国金目鯛底はえ縄漁業者協会 |
| 1,海面漁業/漁船漁業(所管する業種別中央団体がない漁業) | 船びき網・ごち網・刺網・ひき縄釣・かご 等 | 全国漁業協同組合連合会(最寄りの漁連または漁協)/海士町(海士町漁協の漁業者に限る)/愛南漁協(愛南漁協の漁業者に限る) |
| 1,海面漁業/養殖業 | ほたてがい養殖・かき類養殖・魚類養殖・のり類養殖・真珠養殖 | 全国海水養魚協会(所属の府県海水団体)/全国海苔貝類漁業協同組合連合会/全国真珠養殖漁業協同組合連合会 |
| 2,内水面漁業 | 内水面漁業・うなぎ養殖・錦鯉養殖 | 全国内水面漁業協同組合連合会/全日本持続的養鰻機構/全日本錦鯉振興会 |
⚠️ この別添と最新の構成員名簿の時点は約7か月ずれています(別添=令和7年4月10日時点/構成員名簿=令和7年11月28日現在の21団体)。[22]名簿には長崎県・全国鮎養殖漁業組合連合会・全国養鯉振興協議会が2号構成員として載っていますが、別添にはこの3団体の記載がありません。別添が最新の名簿を反映していない可能性があります——上の表に自分の漁業種類が見当たらない場合も「該当なし」と判断せず、共同事務局または最寄りの漁連・漁協へ照会してください。
⚠️ 対応する2号構成員は1つに限りません。同Q&Aは、複数の漁業種類で受け入れる場合は該当する2号構成員を様式第1-2号の「関係2号構成員」欄に記載するとし、漁船漁業を主・養殖業を従として営んでいる場合でも、養殖業で受け入れるなら養殖業に関する2号構成員も併せて記載する必要があるとしています。兼営している漁業者は、記載方法をそれぞれの団体に相談してください。
ステップ1:所属する2号構成員へ加入申請書を提出する
加入申請書(別紙様式第1-1号・第1-2号)と添付書類を、自社の漁業種類に対応する2号構成員へ提出します。添付書類には特定技能雇用契約書・雇用条件書などが含まれ、派遣形態の場合はこれに派遣計画書・就業条件明示書・派遣先の概要書(漁業分野)・派遣許可書が加わります。抽象的な名前の添付書類2つには実体があり、「協議会において協議が調った事項に関する措置を講じていることが確認できる書類」は就業規則(養殖業のみ)、「その他基準への適合の確認に必要な書類」は漁船の配乗状況表(漁業のみ・水産庁が様式を公開)を指します。
ステップ2:2号構成員が共同事務局へ取り次ぐ
2号構成員が申請の適当性を確認し、毎月15日又は末日の期限までに共同事務局(一般社団法人大日本水産会)へ提出します。締切が月2回である分、書類が揃うタイミングによって次の締切まで待つことになります。
ステップ3:1号構成員資格証明書の交付を受ける
共同事務局が要件を確認し、2号構成員を経由して1号構成員資格証明書(1号構成員資格証明書交付手続規則の別紙様式第2号)が交付されます。[23]原本は共同事務局から2号構成員へ送付され、2号構成員を通じて申請者へ郵送されます。この証明書を在留諸申請に添付します。
- 期限は在留諸申請の前 — 運用要領別冊は「令和6年6月15日以降、地方出入国在留管理局に対する在留諸申請の際には、初めて特定技能外国人を受け入れる場合であっても、協議会の構成員であることを確認できる書類の提出が必要です」としています(⚠️ 同別冊が「申請の際に提出がない場合には当該申請は不許可となることに留意してください」と書いているのは、令和6年6月15日より前の枠組み=2回目以降の受け入れに係る在留諸申請と在留期間更新許可申請についての注記です)。いずれにしても、構成員資格の取得は在留諸申請より前に済ませる前提で動きます。
- 最悪でどれくらいかかるか — 所要期間の公表値はありませんが、締切と不備の扱いから見積もれます。締切は毎月15日と末日なので、1日逃すと次の締切まで最大約2週間。そのうえで水産庁の公式Q&Aは「不備がなければ、さほど期間を要することはありませんが、不備がある場合には、1カ月程度かそれ以上の期間を要します」としています。締切の取り逃しと不備が重なれば1か月半程度は覚悟する計算で、採用選考と並行して早めに動く根拠はここにあります。
- 費用 — 同Q&Aは「2号構成員によっては、費用を徴収している場合があります」として、詳細は申請先の2号構成員に問い合わせるよう案内しています。金額の一律の公表値はありません。
- 派遣で受け入れる場合 — 加入申請を出すのは派遣元で、派遣先は誓約書と概要書を派遣元へ渡す側になります(詳細は派遣先(受け入れる漁業者)が負うもの)。
なお、加入申請書や在留諸申請の書類の作成は行政書士などの専門家の領域です。
協議会は分野ごとに置かれ、漁業以外の分野でも受け入れる場合は分野ごとに加入します。全分野の協議会名・所管省庁・加入の期限は分野別協議会の一覧にまとめています。
漁業で必要な試験
漁業で特定技能外国人を受け入れるには、本人が技能試験と日本語能力の要件を満たしている必要があります。
- 技能試験 — 漁業と養殖業は別の試験で、従事する業務に対応したほうを受験します。試験の水準も別で、漁業は「漁船漁業職種の技能実習評価試験(専門級)」、養殖業は「養殖業職種の技能実習評価試験(専門級)」と同程度と定められています。実施機関は農林水産省が公募により選定した民間事業者です。
- 日本語能力水準 — 現行の分野別運用方針は1号について「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上と定め、運用要領別冊は「国際交流基金日本語基礎テスト〔JFT-Basic〕又は日本語能力試験〔JLPT〕N4以上」を挙げています。⚠️ ただし別冊が引く運用方針3(1)イには「そのほか、『日本語教育の参照枠』のA2相当以上の水準と認められるもの」という開放条項があり、名指しの2試験だけに閉じた定めではありません。他の証明方法を検討する場合は最新の運用要領で確認してください(試験の全体像は特定技能の日本語試験)。
技能実習2号修了による免除はどこまで及ぶか
技能試験の免除は、修了した職種に対応する業務区分にしか及びません。運用要領別冊が免除の対象としているのは、漁船漁業職種9作業(かつお一本釣り漁業、延縄漁業、いか釣り漁業、まき網漁業、ひき網漁業、刺し網漁業、定置網漁業、かに・えびかご漁業、棒受網漁業)と、養殖業職種のほたてがい・まがき養殖作業です。漁船漁業職種のいずれかの作業を修了した人は漁業全般に従事できますが、養殖業の技能試験は免除されません(逆も同じ)。採否を左右する分かれ目なので、候補者の修了作業と自社の業務区分を必ず突き合わせてください。
一方、日本語試験は職種・作業の種類を問わず免除されます。別冊は「本要領別表に記載された職種・作業以外の技能実習2号を良好に修了した者については、国際交流基金日本語基礎テスト及び日本語能力試験(N4以上)のいずれの試験も免除されます」としています=漁業以外の職種の修了者でも、日本語だけは免除で技能試験は受験が必要という組み合わせです。⚠️ なおこの免除の範囲は、採用後に本人が転職できる範囲とは別の話です(国内転職組と海外新規入国)。
⚠️ 試験名は資料の版によって表記が分かれます。 現行の分野別運用方針の別表は「1号/2号漁業特定技能評価試験」、試験実施要領および分野別運用要領は「1号/2号漁業技能測定試験」と表記しており、同じ試験を指します。実施団体の大日本水産会は「漁業技能測定試験」と呼びますが、同会は申込窓口ではありません——国内のCBTはプロメトリック、インドネシアのペーパー試験は専用サイトへ案内する形です。
技能試験の内容
試験は漁業・養殖業の区分ごとに別の試験として実施され、それぞれ2科目で構成されます。1号は「筆記試験」、2号は「学科試験」と、科目の呼称も実施要領で分かれています。合格基準が区分で異なる点に注意してください。[24][25][26][27]
| 試験(区分) | 科目の構成(いずれも原則) | 測定するもの | 合格の基準(合計得点) |
|---|---|---|---|
| 1号漁業技能測定試験(漁業) | 筆記試験(真偽式)+実技試験(多肢選択式) | 漁業全般及び安全衛生に係る知識・業務上必要となる日本語能力/漁具・漁労設備の取扱いや漁獲物の選別に係る技能(図やイラスト等から判断) | 6割5分(65%) |
| 1号漁業技能測定試験(養殖業) | 同上 | 養殖業全般及び安全衛生に係る知識・業務上必要となる日本語能力/養殖水産動植物の育成管理や養殖生産物の取扱いに係る技能 | 7割4分(74%) |
| 2号漁業技能測定試験(漁業) | 学科試験(真偽式及び多肢選択式)+実技試験(多肢選択式) | 漁業全般及び安全衛生に係る知識/漁具・漁労設備の取扱いや漁獲物の選別に係る技能 | 6割5分(65%) |
| 2号漁業技能測定試験(養殖業) | 同上 | 養殖業全般及び安全衛生に係る知識/養殖水産動植物の育成管理や養殖生産物の取扱いに係る技能 | 5割4分(54%) |
出典は各試験の試験実施要領(水産庁漁政部企画課)です。⚠️ 合格基準の原文の語尾は「六割五分(七割四分)以上を超える者を合格とする」(1号漁業・1号養殖業・2号漁業)と「五割四分を超える者を合格とする」(2号養殖業のみ「以上」がない)で分かれており、境界値ちょうどの得点が合格になるかは原文の言い回しからは一義に読み取れません。⚠️ 問題数・試験時間・実施回数・実施時期・実施場所は実施要領に定めがなく、後者は「水産庁と技能試験実施機関が協議の上決定する」とされています。実施方式はCBT方式またはペーパーテスト方式、受験資格は試験日において満17歳以上(国内受験は在留資格を有する者に限られます)で、2号にはさらに実務経験2年以上が加わります。
学習用テキストは大日本水産会が無料で公開しており、日本語版だけではありません——漁業1号はインドネシア語版と英語版、養殖業1号はインドネシア語・中国語・英語・ベトナム語版があり、1号・2号のサンプル問題・申込方法・実施日程・月ごとの試験結果も同ページで公開されています。[28]在留者の8割超がインドネシア出身という構成を踏まえると、採用前の学習支援に使える具体的な打ち手はここです。⚠️ 受験料に公定値はありません。試験実施要領は受験料を実施機関が「水産庁と協議の上…募集要項において定める」としているため、実施回ごとに変わります。
日本語試験・技能試験の全体像と、技能実習2号修了による免除ルートは特定技能の試験、技能実習・育成就労との関係は特定技能・技能実習・育成就労の違いにまとめています。
対象となる業務区分
漁業分野で従事できる業務は、運用方針で漁業・養殖業の2区分に整理されています。区分は受験した試験に対応します。
| 業務区分 | 現行の分野別運用方針(別表1)が定める従事業務 |
|---|---|
| 漁業 | 監督者の指示を理解し、又は自らの判断により、漁具の作成・補修、漁具・漁労機器の操作、漁獲物の処理、安全衛生等の作業に従事する業務 |
| 養殖業 | 監督者の指示を理解し、又は自らの判断により、養殖水産物の取扱い、漁具の作成・補修・管理、漁具の整理・整頓、安全衛生等の作業に従事する業務 |
⚠️ 運用要領別冊は旧版の方針に沿ったより細かい列挙(水産動植物の探索・採捕、漁獲物の処理・保蔵、養殖水産動植物の育成管理、収獲(穫)・処理 等)を残しているため、細目は最新の運用要領で確認してください。
⚠️ 上限の側にも制約があります。別冊は「1号特定技能外国人は、漁業又は養殖業を主体的に営むものでなく、船長や漁労長等の監督者の指示を理解し、又は監督者の包括的な指示の下で自ら判断しながら、漁労作業や養殖作業の業務に従事するもの」と明記しています=1号を船長・漁労長のような統率職に据える前提で採用計画は立てられません。自社の作業が対象業務に当たるかの相談窓口は、別冊が水産庁漁政部企画課(電話03-6744-2340)を明記しています。
関連業務としてどこまで頼めるか
いずれの区分でも、その漁業・養殖業に従事する日本人が通常従事している関連業務に付随して従事できます。運用要領別冊は「漁業の特性に鑑み、かつ、漁業の時期等年間を通じた漁業生産が期待できない漁村地域の事情を考慮し…柔軟に対応する」として、次のようなものを関連業務に当たり得るとして挙げています。
- 漁業・養殖業に共通して挙げられているもの — 漁具・漁労機械の点検・換装/船体の補修・清掃/魚倉、漁具保管庫、番屋の清掃/漁船への餌・氷・燃油・食材・日用品その他の操業・生活資材の仕込・積込み/自家生産物の運搬・陳列・販売/自家生産物等を原料の一部として使用する製造・加工とその運搬・陳列・販売/魚市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け/体験型漁業の際に乗客が行う水産動植物の採捕の補助/社内外における研修 等
- 漁業の側にだけ挙げられているもの — 出漁に係る炊事・賄い/採捕した水産動植物の生簀における畜養その他付随的な養殖
- 養殖業の側にだけ挙げられているもの — 養殖用の機械・設備・器工具等の清掃・消毒・管理・保守/鳥獣に対する駆除・追払・防護ネットやテグス張り等の養殖場における食害防止/養殖水産動植物の餌となる水産動植物や養殖用稚魚の採捕その他付随的な漁業
水産加工だけを担ってもらうことはできない
特定技能「漁業」で受け入れた外国人に、水産加工場での加工だけを担ってもらうことはできません。運用要領別冊は、自社で採捕・養殖した水産物(自家原料)の加工などには付随的に従事できるとしつつ、専ら関連業務のみに従事することは認められないと明記しています。
では加工そのものを主たる業務にしたい場合はどうするか。飲食料品製造業分野の側に、水産加工業の業務区分が置かれています。同分野の現行の分野別運用方針(別紙15・令和8年1月23日閣議決定)の別表1・別表2は、「水産加工業特定技能1号(2号)評価試験」に対応する業務区分として「水産加工業(水産加工品の製造・加工及び安全衛生の確保)」を定めています。[29]⚠️ 同方針は業務区分について経過措置(閣議決定日から令和9年3月31日までは従前の例による)を置いているため、申請前に最新版で確認してください。水産加工を中心に人材を受け入れたい場合の分野は飲食料品製造業で特定技能の外国人を採用するにはで解説しています。
費用の目安
漁業でも、費用の考え方は「初期費用+月額の支援委託費」が基本です。
- 初期費用 — 人材紹介手数料(人材紹介手数料の相場)、在留資格の申請費用、渡航費など。
- 月額 — 登録支援機関への支援委託費(1人あたり月2〜3万円程度が目安)。
派遣で受け入れる場合は、費用の見え方が変わります。直接雇用では紹介手数料や申請費用が最初にまとまって出ますが、派遣では派遣元へ支払う派遣料金として稼働期間に応じて出ていきます。⚠️ 派遣料金にも技能試験の受験料にも、政府が定めた公定値はありません。そのため本記事では派遣料金の金額を示していません。
ただし「公定値がない」の先に、労働者派遣と船員派遣で確認できる情報量が違うという判断材料があります。
| 派遣元の料金と賃金の差(いわゆるマージン率)を発注側が確認できるか(as-of=2026年7月30日時点の法令) | 根拠 |
|---|---|
| 労働者派遣(陸上作業・船員法の船員から除かれる漁船)=確認できる | 労働者派遣法第23条第5項が、事業所ごとの派遣労働者数・派遣先の数・料金の平均額から賃金の平均額を控除した額を料金の平均額で除して算定した割合等を、あらかじめ関係者へ情報提供することを派遣元事業主に義務づけている |
| 船員派遣(船員法の船員に当たる漁船への乗組み)=同じ確認はできない | 船員職業安定法に対応する情報提供義務の規定がない(同法第55条第4項・第64条第2項が料金の額を事業計画書・事業報告書に記載させるが、いずれも国土交通大臣への提出) |
つまり船員派遣では、派遣元となる漁協等に、支援委託費や紹介手数料との重複がない内訳で見積もりを出してもらうことが実質的に唯一の確認手段になります。
報酬額を日本人と同等以上にする要件は、直接雇用でも派遣でも変わりません(特定技能の雇用契約・雇用条件書)。総額の内訳と採用ルート別のモデルは特定技能の採用費用・相場、支援委託費の相場は登録支援機関の選び方で整理しています。
登録支援機関の活用
自社で生活支援の体制を整えるのが難しい場合は、登録支援機関へ委託できます(自社支援と委託の比較は自社支援か登録支援機関への委託か)。ただし漁業分野では委託先が絞られます。
本記事が繰り返し参照している「漁業分野に固有の基準」の中身は、分野別運用要領が「協議会及びその構成員に対し必要な協力を行うこと等」と定めているもので、登録支援機関の側は漁業分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書(分野参考様式第12-2号)を提出して満たします。逆に言えば、この誓約書を出していない登録支援機関には漁業分野の支援計画を委託できません=契約前に提出の有無を確認してください。
共同事務局の大日本水産会は「トラブル防止に向けた漁業分野における外国人材受入れマニュアル」(2025年3月)とその別冊「漁業分野の受入れ事例集」(2026年2月)を公開しており、委託先を選ぶ前に自社が何を求めるべきかを整理する材料になります。契約前の確認は契約前チェックリスト、採用後の定着は特定技能外国人の定着支援をご覧ください。
長期就労:特定技能2号
漁業は特定技能2号の対象分野です。従事する業務は、現行の分野別運用方針(別表2)が漁業・養殖業のいずれについても「自らの判断により業務を遂行し、又は作業員を指導しながら作業に従事し、漁業(養殖業)の作業工程を管理する業務」と定めています。2号に移行すると在留期間を更新の上限なく延長でき、家族の帯同も可能になります。
要件は資料の版によって定めが分かれます。
- 技能 — 2号漁業特定技能評価試験(試験実施要領・運用要領の表記では2号漁業技能測定試験)の合格。
- 日本語能力 — 現行の分野別運用方針は「日本語教育の参照枠」のB1相当以上と定めています。確認の方法として、運用要領別冊は日本語能力試験N3以上を挙げています(別冊が挙げているのはこの試験のみで、代替の試験は示されていません)。⚠️ 2号の日本語要件は分野ごとに定めが異なるため、他分野でも受け入れるなら各分野の運用方針で確認してください。
- 実務経験 — 「操業を指揮監督する者を補佐する者又は作業員を指導しながら作業に従事し、作業工程を管理する者」としての実務経験です(漁船漁業では漁船法上の登録を受けた漁船で、養殖業では漁業法等に基づく養殖業の現場で)。⚠️ 「補佐」が出てくるのはこの実務経験要件のほうで、上記の業務区分の定義には含まれません。年数は現行の運用方針には記載がなく、運用要領別冊が2年以上としています。水産庁は「※実務経験には、特定技能1号での経験は含まれますが、技能等の習得が目的とされる技能実習での経験は含まれません」と注記しています。
2号は「用意されている道」だが、まだ細い
到達可能性は実勢で見ておく必要があります。漁業分野の特定技能2号在留者は21人(2025年12月末時点・速報値)で、同時点の漁業1号4,590人に対してごく一部です。2号試験の水準そのものも高く、試験実施要領は「日本国内において7年以上の漁船漁業(養殖業)の経験を有する者であれば、3割程度が合格する水準」と定めています。
受け入れ企業には、この道を開けるための義務が1つあります。分野別運用方針(第二2(3)ア⑥)は「特定技能所属機関は、特定技能外国人からの求めに応じ、実務経験を証明する書面を交付すること」を条件として課しており、運用要領別冊の告示第6号は電磁的記録による提供も認めています。そして2号試験の受験資格は実務経験2年以上で、その証明は漁業特定技能協議会の証明をもって行うと試験実施要領が定めています。証明を出さないことが、そのまま本人の2号への道を閉じます。
2号へ進めるときの実務(企業が動く部分)
手続きの実体は「漁業分野における2号漁業技能測定試験の受験手続等に関する規則」(令和5年12月21日・漁業特定技能幹事会)とその別紙様式第1号にあります。[30]企業側の要点は4つです。
- 証明書は正副2部・副は本人へ — 同規則第1条は、1号構成員(受け入れ機関)が本人の求めに応じて実務経験証明書を正副2部作成し(電磁的記録でも可)、副を本人に交付、正を所属する2号構成員へ提出して共同事務局(大日本水産会)への進達を依頼する、と定めています(パスポート・在留カード・船員手帳等の本人確認書類を添付)。⚠️ 提出先は2号構成員=協議会の加入手続きと同じ窓口で、大日本水産会は「協議会に直接提出されても受付出来ません」と明記し、「可能な限り早く交付の依頼を行ってください」と案内しています。
- 複数事業所で積んだ経験は、いまの勤め先がまとめて確認する — 別紙様式第1号の注記は「複数事業所での実務経験がある場合には、申請時点で所属する事業者において、合計就業期間が2年を満たしていることを確認の上、本申請書に署名すること」としています。前職分の裏取りを含めて、いまの受け入れ機関が署名の責任を負います。
- ⚠️ 虚偽記載のペナルティは本人に及ぶ — 同注記は「証明事項に事実と相違がある場合には、申請人の受験資格や合格が取り消される場合がある」としています。
- 2号の入口は「実務経験2年+協議会の証明」/N3は受験の前提ではない — 上記のとおり受験資格が実務経験2年以上とその協議会証明である以上、2号の道は、実務経験を証明できる受け入れ機関が国内にいることが前提になります。⚠️ 2号実施要領は実施回数・実施時期・実施場所を「水産庁と技能試験実施機関が協議の上決定する」としており、実施場所を国内に限定してはいません(2026年7月30日時点で大日本水産会が案内している日程は国内47都道府県のCBTですが、これは可変の運用です)。なお同会は「2号測定試験受験にN3以上の合格は求めません」としており、N3は在留申請までに満たせばよい要件です。[28]
1号・2号の違いは特定技能1号と2号の違いをご覧ください。
漁業で働く特定技能外国人の実像
漁業の特定技能1号在留者は4,842人(2026年3月末・速報値)で、受入れ見込数14,800人に対する充足率は32.7%です[31](全分野の充足率の比較は特定技能の受け入れ停止と分野別の充足率で整理しています)。
国籍別の内訳が公表されている直近の詳細統計(2025年12月末時点・1号4,590人)では、2023年6月末(2,148人)から2倍以上に増え、インドネシアが84.5%(3,879人)で最多、ベトナムが12.5%(572人)です。[32]受け入れ側にとっては、支援体制をインドネシア語で組めるかが実務の分かれ目になります。
データで見る:漁業で働く特定技能外国人
2025年12月末時点
全国で就労中
4,590人
直近2.5年の伸び
+114%
2025年12月末時点で全国4,590人(2023年6月末の2,148人から+114%)。国籍はインドネシアが84.5%で最多、都道府県は北海道が882人で最多です。
どの国から来ているか
- インドネシア3,879人(84.5%)
- ベトナム572人(12.5%)
- 中国120人(2.6%)
- フィリピン17人(0.4%)
- ミャンマー1人(0%)
- その他1人(0%)
直近はインドネシアが急増(2年半で+129%)
どこで働いているか
- 北海道882人
- 広島県644人
- 長崎県337人
- 佐賀県293人
- 宮城県243人
年齢層
- 18-29歳62.6%
- 30-39歳32%
- 40+歳5.4%
男女比
- 男性94.1%
- 女性5.9%
出典:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数」(令和7年12月末)をトモハタが集計。数値はすでに就労している人の分布で、地域の人材供給・採用競合をつかむ目安です。募集のしやすさを保証するものではありません。
分野別運用方針は、漁業分野の受入れ見込数を、育成就労を含む分野全体で1万7,400人(令和6年度から令和10年度までの5年間)、そのうち特定技能1号を1万4,800人と定めています。⚠️ 「令和10年度末までの5年間の受入れの上限として運用する」という定めが付いているのは1号の見込数のほうで、分野全体の見込数には付いていません。この見込数に対する充足率は上記のとおり32.7%(2026年3月末・速報値)で、分野横断の比較は特定技能の受け入れ停止と分野別の充足率に掲載しています。
なお同方針(第三)は育成就労についても、漁業では労働者派遣形態が認められること(派遣元は地方公共団体・漁業協同組合等が関与するものに限る)と、令和9年度から2年間で2,600人の受入れ見込数を定めています(分野ごとの詳細は育成就労の対象分野)。
漁業の受け入れが多い県に、県内の登録支援機関も多いわけではない
在留者数と機関数は比例しません。次の表は、在留者数の上位10県について両方の実数を並べたものです。
| 都道府県 | 漁業1号の在留者数(2025年12月末時点) | 県内に事務所を置く登録支援機関の数(2026年7月28日時点) | うちインドネシア語に対応すると届け出た機関数(2026年7月28日時点) |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 882人 | 328機関 | 163機関 |
| 広島県 | 644人 | 359機関 | 167機関 |
| 長崎県 | 337人 | 77機関 | 35機関 |
| 佐賀県 | 293人 | 35機関 | 17機関 |
| 宮城県 | 243人 | 117機関 | 61機関 |
| 千葉県 | 171人 | 557機関 | 231機関 |
| 兵庫県 | 164人 | 435機関 | 157機関 |
| 高知県 | 153人 | 52機関 | 30機関 |
| 宮崎県 | 146人 | 58機関 | 30機関 |
| 福岡県 | 139人 | 613機関 | 240機関 |
表の読み方と限界。在留者数は出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数」(2025年12月末時点・速報値)の都道府県別内訳で、上位10県の合計3,172人は全国の69.1%です。機関数は同庁の登録支援機関登録簿(2026年7月28日時点)をトモハタが支援事務所の所在地ベース(本店+支店・営業所)で集計したもので、複数県に事務所を置く機関は各県で計上されるため47都道府県の合計は12,186となり、同時点の全国の機関数(11,494機関)とは母数が異なります。⚠️ 登録簿に分野の欄はありません=「漁業に対応する機関の数」ではなく「その県に事務所を置く登録支援機関の総数と、うちインドネシア語に対応すると届け出た数」です。対応言語は届出時点の申告であって、支援体制の保証ではありません。⚠️ 2つの資料の時点は約7か月ずれており、母数も異なるため、両者を割り算した比率(1機関あたりの人数など)は算出していません。
在留者数の順位と機関数の順位は一致しません。佐賀・長崎・高知・宮崎は在留者数に対して県内の機関数が少なく、千葉・福岡は在留者数が中位でも機関数は佐賀県の10倍以上あります。一方で上位2県の北海道・広島県はどちらも機関数も上位で、「集中している県ほど薄い」という単純な関係ではありません。
したがって佐賀・高知・長崎・宮崎のような県で受け入れるなら、県内で複数社を比較できる前提を置かず、隣接県の機関や、地域の漁協が担う登録支援機関も候補に入れて探し始めるのが現実的です。派遣で受ける場合は、派遣元との地理的な近さが要件に組み込まれているため、この薄さがそのまま選択肢の狭さになります。近くに派遣元が見つからなかった場合の出口は3つ——①直接雇用に切り替える(協議会には自社が1号構成員として加入し、支援は自社実施か委託)、②所属する漁協・県の漁業協同組合連合会へ派遣元になる意向があるか打診する(制度側も漁協が担う形を想定)、③隣接県の漁連・自社の2号構成員に、日帰り圏に入る派遣元の心当たりを照会する。
自社の県×採用したい人材の母国語で候補が何社あるかは、登録支援機関の選び方の都道府県×母国語の候補プール表で全都道府県分を確認できます。
まとめ
形態ごとの違いは直接雇用と派遣の使い分けの表で一覧できます。実務で見落としやすいのは3点——派遣先の概要書で前年度の売上高・損益まで派遣元に開示すること、生活支援の義務者が自社ではなく派遣元になること、そしてどの漁船に乗り組むかで根拠法が変わることです。2号を長期就労の受け皿として見込むなら、実務経験を証明する書面を交付する体制づくりから始めるのが現実的です。
制度の全体像は特定技能採用の完全ガイド、対象分野の一覧は特定技能の対象分野一覧、よくある失敗は特定技能採用でよくある失敗と注意点をご覧ください。
「自社の漁業・養殖業で特定技能外国人を直接雇用と派遣のどちらで受け入れるか」「支援体制を自社で組むか登録支援機関へ委託するか」を相談したい場合は、条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します(提携先のサービスをご紹介しています)。
よくあるご質問
- 漁業で特定技能の外国人を採用するには何が必要ですか?
- 採用する外国人が、漁業または養殖業の技能試験に合格し、日本語能力の要件を満たすことが基本です。日本語能力は現行の分野別運用方針が「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上と定め、運用要領別冊は国際交流基金日本語基礎テスト〔JFT-Basic〕または日本語能力試験〔JLPT〕N4以上で確認するとしています。技能試験の免除は、漁船漁業職種9作業または養殖業職種(ほたてがい・まがき養殖作業)の技能実習2号を良好に修了した人について、修了した職種に対応する業務区分に限られます(日本語試験は職種・作業を問わず免除)。企業側は漁業特定技能協議会の構成員になる必要があります。
- 漁業では派遣で特定技能外国人を受け入れられますか?
- 受け入れられます。特定技能で労働者派遣形態(船員派遣形態を含む)が認められているのは農業と漁業の2分野のみです。派遣元になれるのは漁業・養殖業を行う者や漁業協同組合等が関与する事業者に限られ、派遣事業の許可も別途必要です。⚠️ 漁船に乗り組ませる場合、船員法第1条第1項の船員に当たるときは労働者派遣法第3条により同法の適用がなく、船員職業安定法の「船員派遣」(国土交通大臣の許可・派遣元が常時雇用する船員が対象)になります。ただし定置網・区画漁業(養殖)・共同漁業に専従する30トン未満の漁船や20トン未満の漁船の一部は船員法の船員から除かれ、その場合は陸上作業と同じ労働者派遣法のままです(どちらに当たるかは地方運輸局等に確認してください)。直接雇用での受け入れも可能です。
- 漁業の派遣元(借りられる相手)はどう探せばいいですか?
- 派遣先の対象地域は「派遣元責任者が日帰りで派遣労働者からの苦情の処理を行い得る地域」であることが必要とされているため、実質的に自社の所在地がその範囲に入る派遣元が対象になります。母体になり得るのは漁業・養殖業を直接行う事業者や漁業協同組合・漁業協同組合連合会等です。心当たりがない場合は、水産庁が公開する協議会Q&Aの別添(2号構成員の一覧と連絡先)から自社の2号構成員を特定し、地域内の派遣元を尋ねる方法があります。近くに派遣元がなければ、直接雇用に切り替える・所属する漁協へ派遣元化を打診する・隣接県の漁連に照会する、が出口です。
- 派遣で受け入れる場合、生活支援は誰が行いますか?
- 派遣元です。派遣形態では派遣元が特定技能所属機関になるため、1号特定技能外国人支援計画の策定と実施の義務は派遣元が負います。派遣元が登録支援機関へ支援計画の全部または一部の実施を委託する場合は、漁業分野に固有の基準を満たす登録支援機関に限られます。なお派遣先にも、漁業特定技能協議会とその構成員への協力や、派遣元からの指導・助言に従うことが求められます。
- 漁業分野に特定技能2号はありますか?
- あります。漁業は特定技能2号の対象分野で、漁業・養殖業のいずれでも、作業員を指導しながら作業工程を管理する立場の業務を担います。日本語能力は現行の分野別運用方針が「日本語教育の参照枠」のB1相当以上と定め、確認の方法は運用要領別冊(令和6年2月15日一部改正)が日本語能力試験N3以上としています。実務経験の年数は現行の運用方針には記載がなく、同別冊が2年以上としています(版によって定めが分かれるため、申請前に最新の運用要領で確認してください)。
- 特定技能「漁業」で水産加工の仕事をしてもらえますか?
- 水産加工だけを担ってもらうことはできません。漁業・養殖業では、自社で採捕・養殖した水産物(自家原料)の加工などに付随的に従事することは認められますが、専ら関連業務のみに従事することはできません(運用要領別冊)。加工そのものを主たる業務にしたい場合は、飲食料品製造業分野の側に「水産加工業」の業務区分が置かれています(同分野の現行の分野別運用方針=別紙15の別表1・別表2)。ただし同方針は業務区分に経過措置を置いているため、申請前に最新版で確認してください。
出典・参考(一次情報)
- 漁業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針(別紙14・令和8年1月23日閣議決定)(出入国在留管理庁)
- 令和5年度水産白書「(3)漁業の就業者をめぐる動向」(水産庁)
- 特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針(現行版の索引)(出入国在留管理庁)
- 特定技能(漁業分野)(出入国在留管理庁)
- 運用要領別冊「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-漁業分野の基準について-」(令和6年2月15日一部改正)(法務省・農林水産省)
- 人材サービス総合サイト(労働者派遣事業所検索)(厚生労働省職業安定局)
- 「漁業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領(分野別運用要領・令和5年6月9日一部改正)(法務省・警察庁・外務省・厚生労働省・農林水産省)
- 労働者派遣法(第3条=船員に対する適用除外・第23条第5項)(e-Gov法令検索)
- 船員職業安定法(第6条=定義・第55条=船員派遣事業の許可・第64条=事業報告等)(e-Gov法令検索)
- 船員法(第1条=船員・第66条=割増手当)(e-Gov法令検索)
- 労働基準法(第41条第1号・第116条第1項・別表第一第七号)(e-Gov法令検索)
- 船員保険法(第2条=被保険者)(e-Gov法令検索)
- 船員法第一条第二項第三号の漁船の範囲を定める政令(昭和38年政令第54号)(e-Gov法令検索)
- 船員法第一条第二項第三号の漁船の範囲を定める政令第二号の漁船の範囲を定める省令(令和2年国土交通省令第95号・第2条=除外される漁船・別表=13海域)(e-Gov法令検索)
- 船員派遣事業の許可申請等について(国土交通省)
- 漁業特定技能協議会決定第5号「派遣形態による特定技能外国人の受け入れについて」(令和4年12月21日)(水産庁)
- 特定技能外国人の受入れ制度について(漁業分野)(水産庁)
- 出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(上陸基準省令・特定技能1号の通算在留期間)(e-Gov法令検索)
- 特定技能に関する参考様式(出入国在留管理庁)
- 漁業特定技能協議会(決定事項・各種様式・規則の掲載元)(水産庁)
- 漁業特定技能協議会1号構成員資格証明書交付手続に関するQ&A(別添「営む漁業や養殖業に応じた漁業特定技能協議会2号構成員」を含む・令和7年4月10日時点)(水産庁)
- 漁業特定技能協議会 構成員名簿(令和7年11月28日現在)(水産庁)
- 漁業特定技能協議会1号構成員資格証明書交付手続規則(令和元年5月17日・最終修正令和6年3月15日)(漁業特定技能幹事会(水産庁掲載))
- 「1号漁業技能測定試験(漁業)」試験実施要領(農林水産省水産庁漁政部企画課)
- 「1号漁業技能測定試験(養殖業)」試験実施要領(農林水産省水産庁漁政部企画課)
- 「2号漁業技能測定試験(漁業)」試験実施要領(農林水産省水産庁漁政部企画課)
- 「2号漁業技能測定試験(養殖業)」試験実施要領(農林水産省水産庁漁政部企画課)
- 漁業技能測定試験について(試験結果・多言語の学習用テキスト・サンプル問題・申込先の案内)/在留資格「特定技能」漁業技能測定試験について(2号の実施形式・実務経験証明書の確認手続きの案内)(大日本水産会)
- 飲食料品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針(別紙15・令和8年1月23日閣議決定)(出入国在留管理庁)
- 漁業分野における2号漁業技能測定試験の受験手続等に関する規則(令和5年12月21日・別紙様式第1号を含む)(漁業特定技能幹事会(水産庁掲載))
- 特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年3月末時点・速報値)=漁業4,842人・充足率32.7%(出入国在留管理庁)
- 特定技能在留外国人数(令和7年12月末現在・速報値)(出入国在留管理庁)