農業で特定技能の外国人を採用するには|要件・試験・派遣・協議会
目次
農業は人手不足と高齢化が深刻で、特定技能による外国人材の受け入れが進む代表的な分野です。ただし、「採用したい人材が見つかっても、農業特有の試験や協議会・派遣のルールでつまずく」ことが起きやすい分野でもあります。結論を先に言うと、農業で押さえるべき固有ルールは①必要な試験(1号農業技能測定試験+参照枠A2.2相当以上)②対象業務区分(耕種農業全般・畜産農業全般)③農業特定技能協議会への加入④雇用形態ごとの上乗せ要件(直接雇用にも雇用経験が要る・派遣元は限定列挙)の4つです。さらに農業には、多くの分野では認められていない「労働者派遣」での受け入れができるという大きな特徴と、長期就労につながる特定技能2号があります。このページで、これらを順に整理します。[1]
この記事の要点
- 派遣で受け入れられる数少ない分野 — 農業は特定技能で労働者派遣形態が認められる分野です(多くの分野は直接雇用に限られます)。季節で作業量が変わる農業に合わせた仕組みで、直接雇用でも受け入れられます。
- 農業固有の試験と協議会がある — 1号農業技能測定試験・参照枠A2.2相当以上が基本(農業職種の技能実習2号修了者は試験免除)。企業は農林水産省が組織する農業特定技能協議会への加入が必要です。
- 雇用形態ごとに上乗せ要件がある(直接雇用にも) — 直接雇用なら受け入れ企業に「過去5年以内に同一の労働者を6か月以上継続して雇用した経験(又は労務管理の経験)」が必要。派遣なら派遣元になれる事業者が①〜④に限定され、派遣先にも要件があります。ここで止まる経営体が多いので先に確認してください。
- 特定技能2号まで道がある — 農業は2号の対象分野。2号は在留期間を更新の上限なく延長でき、家族の帯同も可能になるため、長期就労を見込めます。
本記事は一般的な情報提供です。農業分野の要件・対象業務の範囲・派遣の要件は変動するため、最新の内容は出入国在留管理庁および農林水産省の分野別の運用方針・運用要領で必ず確認してください。
農業分野の特定技能はここが特徴
まず、農業分野ならではのポイントを押さえます。
- 労働者派遣形態が認められる — 農業は、特定技能で派遣による受け入れができる数少ない分野です。季節性のある農業に合わせ、繁忙期に対応しやすくするための仕組みです。直接雇用でも受け入れられます。
- 特定技能1号・2号の両方がある — 長期就労を前提に2号まで設計されている分野です。1号と2号の違いは特定技能1号と2号の違いで解説しています。
- 協議会への加入が必要 — 受け入れ企業(特定技能所属機関)は、農林水産省が組織する「農業特定技能協議会」の構成員になる必要があります。
農業で必要な試験
農業で特定技能外国人を受け入れるには、本人が次のいずれかの要件を満たしている必要があります。
- 技能試験 — 「1号農業技能測定試験」。耕種農業全般・畜産農業全般のうち、従事する業務に対応した試験を受験します。
- 日本語能力水準 — 「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上(国際交流基金日本語基礎テスト〔JFT-Basic〕・日本語能力試験〔JLPT〕で確認)。水準と各試験の対応(公式の換算表はありません)は特定技能の日本語試験で解説しています。
農業分野の技能実習2号を良好に修了した人は、技能試験・日本語試験が免除されます。技能実習からの移行は、農業でも実務に慣れた人材を受け入れやすいルートです(特定技能・技能実習・育成就労の違い)。
分野をまたぐ試験の全体像(日本語試験の要件・免除ルート・分野別の試験名一覧)は特定技能の試験で解説しています。
対象となる業務区分
農業分野で従事できる業務は、次の2つの区分に整理されています。
- 耕種農業全般 — 栽培管理、農産物の集出荷・選別など。
- 畜産農業全般 — 飼養管理、畜産物の集出荷・選別など。
⚠️ どちらの区分でも「栽培管理」または「飼養管理」が従事する業務に含まれていることが必要です(運用要領別冊)。集出荷・選別だけ、あるいは下記の関連業務だけを担ってもらう形は認められません。
関連業務には、その農業に従事する日本人が通常従事する作業に付随して従事できます。ただし別冊は関連業務を次の4類型に限って例示しており、専ら関連業務に従事することは認められません(在留資格に該当しない働かせ方になり、不法就労の問題になり得ます)。
- 自社(派遣の場合は派遣先)が生産した農畜産物を原料・材料の一部として使う製造・加工
- 自社(同)の農畜産物の生産に伴う副産物(稲わら・家畜排泄物等)を原料・材料の一部として使う製造・加工
- 農畜産物(自社が生産したものが含まれる場合に限る)の運搬・陳列・販売
- 農畜産物を原料・材料として製造・加工された物に関する作業
つまり「他社から仕入れた農産物の加工・販売だけ」は関連業務に当たりません。自社の作業が対象業務に当たるかは、分野別の運用方針・運用要領別冊で確認してください。
農業特有の受け入れ手続き
農業分野では、他分野と共通する受け入れ要件に加えて、次の点を押さえる必要があります。
1. 農業特定技能協議会への加入
受け入れ企業は、農林水産省が組織する「農業特定技能協議会」の構成員になる必要があります。加入の手続きや時期は、農林水産省の案内に沿って進めます。加入の期限(在留諸申請の前)や加入企業数、他分野の協議会は分野別協議会の一覧で確認できます。
2. 雇用形態ごとの上乗せ要件(直接雇用にも「雇用経験」が要る)
農業は派遣形態が認められていますが、上乗せの要件は「派遣のときだけ」ではありません。ここは見落としやすいので、自社がどちらに当たるかを先に確認してください。
⚠️ 要件の実体は「方針」ではなく「運用要領別冊・告示」側にあります。 令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針(別紙13)は派遣元について「農業現場の実情を把握しており…必要な能力を有していること」と能力の言葉で書いていますが、実際の審査基準は運用要領別冊(農業分野・令和7年6月6日一部改正)が定める下記の①〜④です。[2]方針の文言だけを読んで「組織の種類は問わない」と判断しないでください。
- 直接雇用で受け入れる場合 — 受け入れ企業(特定技能所属機関)に、過去5年以内に同一の労働者(技能実習生を含む)を少なくとも6か月以上継続して雇用した経験(法人の場合、業務を執行する役員が個人事業主として雇用した経験も含む)又はこれに準ずる経験があること。
- 「これに準ずる経験」=過去5年以内に6か月以上継続して労務管理に関する業務に従事した経験です。別冊は例として、子が農業経営を行う親の下で労務管理を行っていた場合や、労務管理の経験がある農業法人の従業員が新たに独立する場合を挙げています=自社で人を雇った実績がまだ無くても、この経路で満たせる場合があります。
- 派遣で受け入れる場合 — 派遣元になれる事業者は限定されています。次のいずれかに当たる必要があります:①農業又は農業に関連する業務を行っている者(農畜産物の集荷・加工・販売・営農/技術指導を行う生産者団体等)/②地方公共団体又は①が資本金の過半数を出資している者/③地方公共団体の職員又は①等が役員であるなど、地方公共団体又は①が業務執行に実質的に関与していると認められる者/④国家戦略特別区域法第16条の5第1項に規定する特定機関。なお派遣元として適当と認められる期間は3年間で、経過後は改めて該当性が確認されます。
- 派遣先(実際に働いてもらう農業者)にも要件があります=過去5年以内に同一の労働者(技能実習生を含む)を少なくとも6か月以上継続して雇用した経験があるか、又は派遣先責任者講習等を受講した者を派遣先責任者として選任していること。二者択一なので、雇用経験が無くても講習受講者を派遣先責任者に選任する経路があります。[3]
直接雇用か派遣かで手続きや費用の考え方も変わるため、自社にどちらが合うかを早めに整理しておくと進めやすくなります。採用全体の流れは特定技能の採用の流れ、企業側の受け入れ要件は特定技能で企業に求められる受け入れ要件で解説しています。
令和8年1月23日閣議決定の現行方針で、農業分野の受入れ見込数は特定技能1号が令和6年度から5年間で73,300人(令和10年度末までの5年間の受け入れの上限として運用)、育成就労が令和9年度から2年間で26,300人(同じく上限として運用)と定められています。あわせて分野全体(令和6〜10年度の5年間)の受入れ見込数は99,600人です(こちらは見込数として示されたもので、「上限として運用する」と規定されているのは1号と育成就労の2つです)。人数枠は運用方針の改定で見直されるため、採用計画に使うときは出入国在留管理庁・農林水産省の最新の公表値で確認してください。
費用の目安
農業でも、費用の考え方は「初期費用+月額の支援委託費」が基本です。
- 初期費用 — 人材紹介手数料(人材紹介手数料の相場)、在留資格の申請費用、渡航費など。
- 月額 — 登録支援機関への支援委託費(1人あたり月15,000〜30,000円程度が目安)。
派遣で受け入れる場合は、派遣元へ支払う費用の考え方も加わります。なお、在留資格の申請書類の作成や申請取次は行政書士などの専門家の領域です。必要に応じて行政書士などの専門家と連携して進めます。総額の内訳と採用ルート別のモデルは特定技能の採用費用・相場で整理しています。
登録支援機関の活用
自社で生活支援の体制を整えるのが難しい場合は、登録支援機関へ委託できます。農業は地方での受け入れや繁忙期の対応など現場の事情があるため、農業分野での支援実績を確認して選ぶことが一つの判断材料になります。選び方は登録支援機関の選び方、契約前の確認は契約前チェックリストを参考にしてください。採用後の定着の工夫は特定技能外国人の定着支援で解説しています。
長期就労:特定技能2号
農業は特定技能2号の対象分野です。2号では、耕種農業全般・畜産農業全般の業務に加え、これらに関する管理業務を担います。2号に移行すると在留期間を更新の上限なく延長でき、家族の帯同も可能になります。長く活躍してもらう前提で、2号までの道筋を計画に入れると定着につながります。1号・2号の違いは特定技能1号と2号の違いをご覧ください。
農業で働く特定技能外国人の実像
農業の特定技能1号在留者は39,950人(2026年3月末・速報値)で、受入れ見込数73,300人に対する充足率は54.5%です(全分野の充足率の比較は特定技能の受け入れ停止と分野別の充足率で整理しています)。[4]
国籍別の内訳が公表されている直近の詳細統計(2025年12月末時点・1号37,952人)では、2023年6月末(20,882人)から+82%に増えています。国籍別ではインドネシアが37.1%で最多、都道府県別では茨城県が最も多くなっています。自社の採用計画を立てる際の目安として、国籍・地域・年齢構成の内訳を確認できます。
データで見る:農業で働く特定技能外国人
2025年12月末時点
全国で就労中
37,952人
直近2.5年の伸び
+82%
2025年12月末時点で全国37,952人(2023年6月末の20,882人から+82%)。国籍はインドネシアが37.1%で最多、都道府県は茨城県が5,604人で最多です。
どの国から来ているか
- インドネシア14,089人(37.1%)
- ベトナム9,789人(25.8%)
- カンボジア3,696人(9.7%)
- フィリピン3,496人(9.2%)
- 中国2,744人(7.2%)
- その他4,138人(10.9%)
直近はインドネシアが急増(2年半で+164%)
どこで働いているか
- 茨城県5,604人
- 北海道3,880人
- 熊本県2,854人
- 千葉県2,236人
- 長野県2,094人
年齢層
- 18-29歳50.7%
- 30-39歳39.8%
- 40+歳9.6%
男女比
- 男性59.1%
- 女性40.9%
出典:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数」(令和7年12月末)をトモハタが集計。数値はすでに就労している人の分布で、地域の人材供給・採用競合をつかむ目安です。募集のしやすさを保証するものではありません。
分野をまたいだ全体像(全分野の人数・国籍・都道府県の統計)は特定技能の統計データにまとめています。
まとめ
農業で特定技能の外国人を採用するには、①必要な試験(1号農業技能測定試験・参照枠A2.2相当以上)②対象業務区分(耕種農業全般・畜産農業全般)の確認③農業特定技能協議会への加入④雇用形態ごとの上乗せ要件を押さえることが第一歩です。とくに④は、直接雇用でも「過去5年以内に同一の労働者を6か月以上継続して雇用した経験(又は労務管理の経験)」が求められ、派遣では派遣元になれる事業者が限定されるため、最初に確認しておくと手戻りがありません。農業は労働者派遣が認められる数少ない分野で、繁忙期に合わせた受け入れがしやすく、特定技能2号まで道が用意されているため長期就労も見込めます。
制度の全体像は特定技能採用の完全ガイド、企業側の受け入れ要件は特定技能で企業に求められる受け入れ要件、対象分野の一覧は特定技能の対象分野一覧、よくある失敗は特定技能採用でよくある失敗と注意点をご覧ください。
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よくあるご質問
- 農業で特定技能の外国人を採用するには何が必要ですか?
- 採用する外国人が、1号農業技能測定試験に合格し、「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上の日本語力(国際交流基金日本語基礎テスト〔JFT-Basic〕・日本語能力試験〔JLPT〕で確認)を持つことが基本です。農業の技能実習2号を良好に修了した人は試験が免除されます。企業側は、受け入れ要件を満たし、農林水産省が組織する農業特定技能協議会の構成員になる必要があります。
- 農業では派遣で特定技能外国人を受け入れられますか?
- 農業は、特定技能で労働者派遣形態が認められている分野です(多くの分野は直接雇用に限られます)。季節によって作業量が大きく変わる農業の事情に対応したもので、派遣の場合は派遣元(派遣事業者)にも要件が定められています。直接雇用での受け入れも可能です。
- 農業分野に特定技能2号はありますか?
- あります。農業は特定技能2号の対象分野で、2号では耕種農業全般・畜産農業全般の業務に加え、これらに関する管理業務を担います。2号は在留期間を更新の上限なく延長でき、家族の帯同も可能になります。
出典・参考(一次情報)
- 特定技能(農業分野)(出入国在留管理庁)
- 農業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針(別紙13・令和8年1月23日閣議決定)第二2(2)・2(3)=雇用形態と上乗せ要件/確認日2026年7月30日(出入国在留管理庁)
- 運用要領別冊「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-農業分野の基準について」(令和7年6月6日一部改正)=派遣元の①〜④・3年間の再確認・直接雇用の雇用経験と「これに準ずる経験」・派遣先の要件/確認日2026年7月30日(農林水産省・法務省)
- 特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年3月末時点・速報値)=農業39,950人・充足率54.5%(出入国在留管理庁)