特定技能「建設」とは|要件・試験・JAC・受入計画と採用の進め方
目次
特定技能「建設」は、土木・建築・ライフライン設備の3区分の作業を対象に、1号・2号の両方が用意された分野です。ただし建設は特定技能の中でも企業側の手続きが特に多い分野で、「試験に合格した人を採れば終わり」ではありません。結論を先に言うと、本人の試験・日本語の要件に加えて、建設業の許可・建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録・建設技能人材機構(JAC)への所属・建設特定技能受入計画の国土交通大臣の認定という建設ならではの前提を企業側が整える必要があります。そのうえで、受入計画の認定申請と在留資格の申請は並行して進められます。
この記事の要点
- 本人の要件は試験+日本語 — 技能実習2号を良好に修了した人は、日本語試験は職種を問わず免除、技能試験は対応する職種・作業のときだけ免除されます。
- 企業側の前提は4つあり、受入計画を申請する時点で完了していること — 加入・登録に数か月かかるものが含まれます(建設特有の受け入れ手続き)。
- 枠は76,000人、在留者は51,055人(2026年3月末・速報値) — 枠は5年間の受入れ上限、在留者数はある時点の人数で、性質の異なる数字です。
- 特定技能2号まで道がある — 1号→班長→2号を制度として描ける分野です。2号は日本語もB1相当以上が求められます。
本記事は一般的な情報提供です。建設分野の要件・対象業務の範囲・受入計画の認定基準は変動するため、最新の内容は出入国在留管理庁および国土交通省の分野別の運用方針・運用要領で必ず確認してください。
建設分野の特定技能はここが特徴
建設分野の特徴は、1号・2号の両方が用意されている一方で、企業側に建設だけの前提と手続きが課されている点にあります。ほかの分野と比べて違うところを先に押さえます。
- 特定技能1号・2号の両方がある — 長期就労を前提に2号まで設計されている分野です。1号と2号の違いは特定技能1号と2号の違いで解説しています。
- 雇用形態は直接雇用に限る — 分野別運用方針で「直接雇用に限る」と定められており、派遣で受け入れることはできません(農業・漁業のような派遣の枠は建設にはありません)。
- 企業側の前提が4つある — 受入計画を申請する時点でそろっている必要があり、加入手続きに時間がかかるものも含まれます。中身と実務上の注意は建設特有の受け入れ手続きで扱います。
- 下請で受け入れる場合は元請の確認が入る — 元請企業が現場管理の責任を負うため、特定技能所属機関が下請企業である場合、元請企業が、その特定技能外国人の在留資格と従事の状況(従事させる業務の内容・期間)を確認することとされています。
- 受け入れの枠は大きいが、2026年に引き下げられた — 建設分野の1号特定技能外国人の受入れ見込数は、令和6年度から令和10年度末までの5年間で76,000人です(令和8年1月23日の閣議決定で、当初の80,000人から引き下げられました)。枠は受け入れの上限として運用され、上限に達すると新規の受け入れが一時停止されることがあります(特定技能の受け入れ停止)。
- 実際に働いている人数は51,055人 — 建設分野の特定技能1号の在留者数は51,055人(2026年3月末・速報値)で、1年間で9,957人増えました。ここで注意したいのは、受入れ見込数76,000人と在留者数51,055人は割り算できる関係ではないことです。前者は「令和6年度からの5年間で受け入れる人数の上限」、後者は「ある時点で日本にいる人数」で、期間の取り方が違います(出入国在留管理庁は同じ資料で「受入れ見込数の充足率67.2%」という指標もあわせて公表しています)。分野別の内訳と推移は特定技能の統計データで整理しています。
76,000人は「分野全体の縮小」ではありません。 同じ閣議決定で建設は育成就労産業分野にも位置づけられ、育成就労の受入れ見込数123,500人が新設されました。合わせた分野全体の受入れ見込数は199,500人で、令和6年3月設定時の特定技能80,000人より増えています。枠が特定技能と育成就労に振り分けられた形です。なお、出入国在留管理庁の分野別ページの一覧には更新前の80,000人が掲載されたままです(2026年7月29日確認)。
建設で必要な試験
建設で特定技能1号の外国人を受け入れるには、本人が技能・日本語の2つの水準を満たしている必要があります。
- 技能水準 — 「建設分野特定技能1号評価試験」または業務区分に対応する「技能検定3級」の合格。
- 日本語能力水準 — 分野別運用方針では「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上と定められています。これを確認する具体的な試験は運用要領 別表6-1で示されており、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験(JLPT)N4以上です。水準と各試験の対応は特定技能の日本語試験で解説しています。
技能実習2号を修了していれば全部免除、ではない
技能実習2号を良好に修了した人の免除は、日本語と技能で条件が違います。
- 日本語試験 — 修了した技能実習2号の職種・作業の種類にかかわらず免除されます(運用要領 別表6-1 注2)。
- 技能試験 — 運用要領 別表6-1で業務区分ごとに定められた職種・作業を修了した場合に限って免除されます。
技能実習と異なる職種の特定技能へ移行する場合は、従事しようとする業務区分の技能試験(特定技能1号評価試験または技能検定3級)に合格すれば移行でき、国土交通省はこの場合について「日本語能力試験の合格は要件ではありません」としています。技能実習からの移行は建設でも主要なルートですが、「実習を修了していれば無条件で無試験」ではありません(特定技能・技能実習・育成就労の違い)。
技能試験が免除される技能実習2号の職種は、業務区分ごとに次のように定められています(主な例。土木・建築・ライフライン設備という3区分の中身は次の節で扱います)。
| 特定技能の業務区分 | 技能試験が免除される技能実習2号の主な職種 |
|---|---|
| 土木 | さく井、型枠施工、鉄筋施工、とび、コンクリート圧送施工、ウェルポイント施工、建設機械施工、鉄工、塗装、溶接 |
| 建築 | 建築板金、建具製作、建築大工、型枠施工、鉄筋施工、とび、石材施工、タイル張り、かわらぶき、左官、内装仕上げ施工、表装、サッシ施工、防水施工、コンクリート圧送施工、築炉、鉄工、塗装、溶接 |
| ライフライン・設備 | 建築板金、冷凍空気調和機器施工、配管、熱絶縁施工、溶接 |
対応は職種名だけでなく作業単位で定められています(例:建設機械施工なら押土・整地作業、積込み作業、掘削作業、締固め作業)。職種名が一致していても、修了した作業が別表に載っていなければ免除にはなりません。採用候補者の技能実習修了証で、職種と作業の両方を確認してください。なお溶接は3区分すべてで、建設機械施工は土木のみ、左官・建築大工・内装仕上げ施工は建築のみ、配管・冷凍空気調和機器施工はライフライン・設備のみが対象です。
対象となる業務区分
建設分野で従事できる業務は、2022年8月の再編後、「作業の性質」による3つの区分に整理されています(現場の種類ではなく、どんな作業を行うかで区分が決まります)。
- 土木 — 土木施設(道路・河川堤防・港湾施設など、建築物以外の工作物)の新設・改築・維持・修繕に関する作業。型枠施工、コンクリート圧送、建設機械施工、土工、鉄筋施工、とび など。
- 建築 — 建築物(屋根と柱または壁を有するもの)の新築・増築・改築・修繕に関する作業。型枠施工、左官、屋根ふき、鉄筋施工、内装仕上げ、とび、建築大工、建築板金 など。
- ライフライン・設備 — 電気・ガス・水道・電気通信などライフライン・設備の整備・設置・変更・修理に関する作業。配管、建築板金、保温保冷 など(電気通信は制度再編で本区分に統合されています)。
区分が決まると、その区分の範囲でできることも決まります。実務でよく問題になる3点を押さえておきます。
- 関連業務への付随的な従事は差し支えない — 作業準備・運搬・片付けのように、試験等によって専門性を確認されない業務でも、その業務に従事する日本人が通常あわせて行うものであれば、付随的に従事させることができます(分野別運用方針 第二2(1))。
- 区分内なら未経験の作業にも従事できる — 当該業務区分に含まれる作業であれば、技能実習等で経験している職種以外の作業に従事させることも可能です。ただし十分な訓練や安全衛生教育を含む各種研修等の実施が前提とされています(Q&A 1-5)。
- 複数区分の同時取得はできる。後からの区分変更は条件つき — 区分をまたがる場合は、両方の区分を取得することも可能です(例:「土木及び建築」=「新区分における在留資格申請の考え方」)。後から別の区分へ移るときは、業務区分をまたがる職種の場合に限り、本人が所有する資格等の有効期限の範囲内で無試験で移行できます。それ以外の場合は、移行する業務区分に応じた試験に合格する必要があります(Q&A 6-2)。いずれの場合も、区分の変更には原則として国土交通省の計画認定の変更が必要で、そのうえで入管へ届出や在留資格変更申請を行います(「新区分における在留資格申請の考え方」)。
業務区分と建設業許可は、別のレイヤー
区分を確認するときは、2つの層を分けて考えると混乱しません。
- どの区分の在留資格を取るか — 作業の性質による3区分(土木・建築・ライフライン設備)。試験や技能実習の対応関係で決まります。
- その区分でどの工事に従事させられるか — 建設業法上の29業種との対応。国土交通省の「特定技能業務区分-建設業許可対応表」で、区分ごとに従事できる建設業の種類が示されています。
そのうえで、国土交通省は特定技能外国人に従事させる業務と、自社が取得している建設業許可の業種の一致は求めていないとしています。在留資格上の業務区分に含まれる工事であれば、会社が建設業法上で許可を受けている工事の種類を問わず従事させることが可能です(建設特定技能受入計画 新規申請の手引き・書類No.2)。対応表が拘束するのは「区分ごとに従事できる工事の範囲」であって、「自社の許可業種と外国人の業務の一致」ではありません。
対応表の見え方は、作業レベルの整理とそのまま一致するとは限りません。たとえば配管は作業としてはライフライン・設備区分に専属ですが、許可業種の「管工事業」は建築とライフライン・設備の両方に対応しています。同じ表の中で、造園工事業は土木、解体工事業は建築に対応します。
解体工事はどの区分?
解体工事に伴う作業は、建設業許可(建設業法上の29業種)との対応関係の整理上、「建築」区分に位置づけられています(土木・ライフライン設備区分の対応工事業には含まれません)。なお、技能実習制度には「解体」単独の職種区分がないため、技能実習2号修了による技能試験の免除ルートはなく、建設分野特定技能1号評価試験(建築区分)への合格が必要です。
建設で採用を決めてから就労開始までの進め方
建設の段取りは、企業側の4つの前提を先に完了させてから、受入計画と在留資格の申請に進むのが基本形です。時間がかかるのは前半(加入・登録)と、認定の審査期間です。
建設業の許可と、監督処分の有無を確認する
建設業法第3条の許可と、過去5年間の監督処分の有無を確認します。JAC(またはJAC正会員の建設業者団体)に加入する
会員証の発行までに時間がかかるため、特定技能の利用を決めた時点で最初に着手する項目です。CCUSの事業者登録を済ませる
受け入れる外国人本人の技能者登録も必要です(海外在住の場合は入国後)。人材を確保し、雇用契約を結ぶ
同じ職種での正社員募集(ハローワークの求人票・申請日から直近1年以内)が認定条件に含まれます。雇用契約の前に、本人が十分に理解できる言語で重要事項を説明することも求められます。国内から採るか海外から呼び寄せるかで準備期間も費用も変わります(国内採用と海外採用の違い)。建設特定技能受入計画の認定を申請する
外国人就労管理システムからのオンライン申請です。技能実習から継続して移行する人は技能実習計画の修了期日の6か月前から、それ以外は雇用開始日の概ね6か月前から申請できます。この認定申請と在留資格の申請は並行して進められますが、認定が出ない限り入管の許可等は出ません(認定証が入管への申請の添付書類になるためです)。在留資格を申請する
在留資格認定証明書の交付申請・変更許可申請は、就労開始を希望する日の2〜3か月前が目安とされています。申請書類の作成や申請取次は行政書士などの専門家の領域です。入国・就労開始と受入報告
認定を受けた特定技能外国人が入国(就労開始)したら、原則として1か月以内に、外国人就労管理システムのメニューから「受入報告書」を提出します。在留カード番号・在留期間満了年月日・CCUS技能者ID・上陸年月日・特定技能従事開始年月日が必要です。海外から新規入国した人は、建設キャリアアップシステムに速やかに登録のうえ、原則として入国後1か月以内に技能者IDを明らかにする書類を受入報告書とあわせて提出します。受入れ後の講習と、計画履行の確認を受ける
国土交通大臣が指定する講習または研修を受講させることが求められます。また、国土交通省または国土交通省が委託する機関から、認定を受けた計画を適正に履行していることの確認を受けます。この委託先が適正就労監理機関である一般財団法人 国際建設技能振興機構(FITS)で、受入後講習や母国語相談ホットラインもFITSが担っています。
ステップ1〜3の中身は建設特有の受け入れ手続きで詳しく扱います。所要期間の見当は、公表されている2つの数字から逆算できます。受入計画の認定は申請から1か月半〜2か月程度(補正期間を除く。地方によってはさらに数か月)、入管への申請は就労開始希望日の2〜3か月前が目安です。国土交通省が「雇用開始日の概ね6か月前から申請できる」としているのは、この2つを同時に走らせても半年程度の助走を見込む前提と読めます。補正が入ればさらに延びるため、就労開始日から逆算して余裕を持たせてください。
外国人就労管理システムで申請を「引き戻し・再編集」すると、当初の申請日ではなく再申請の日の順で審査が開始されます。書類の不備で引き戻すと、その分だけ順番が後ろに下がります。
建設特有の受け入れ手続き
建設だけに課される前提は、建設業の許可・CCUSへの登録・JACへの所属・建設特定技能受入計画の認定の4つです。ここからその中身を順に見ます。いずれも受入計画を申請する時点で完了している必要があります。
これらの条件は「受け入れる企業ごと」にかかります。 特定技能では本人が同じ分野の別の企業へ移ること(所属機関の変更)が制度上あり得ますが、建設の場合、受け入れ先になる企業の側も、建設業の許可・JACへの所属・自社名義の受入計画の認定を満たしている必要があります。国土交通省の申請の手引きも、他社から移籍してくる人を受け入れるケースを想定した記載を置いています。本人が要件を満たしていても、受け入れ側が整っていなければ着任できない——これは中途で人を迎えるときにも、自社が育てた人材が他社に移るときにも効いてくる構造です。
1. 建設業の許可
受け入れ企業は、建設業法第3条の許可を受けている必要があります。加えて、建設特定技能受入計画の申請日前5年以内、およびその申請の日以後に、建設業法に基づく監督処分(同法第29条第1項第5号による処分を除く)を受けていないことが条件です。指示処分・営業停止処分・取消処分のいずれも対象で、国土交通省は申請前に「ネガティブ情報検索サイト」等での確認を案内しています。許可の更新中で新しい許可証が届いていない場合は旧許可証と更新許可申請書の写しで申請できますが、更新が不許可になると認定後であっても認定は取り消されます。
2. 建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録
受け入れ企業(事業者登録)と、受け入れる特定技能外国人(技能者登録)の双方を登録します。事業者登録は完了している必要があり、登録申請中では受入計画の申請ができません。登録には一定の時間がかかるため、制度の利用を決めた時点で申請しておく項目です。
技能者登録には簡略型と詳細型があります。どちらでも登録はできますが、能力評価のレベル判定は詳細型でしか受けられません。2号への移行や、CCUSのレベルアップを昇給・資格手当の条件にすることを考えているなら、最初から詳細型で登録しておくことが国土交通省の手引きでも勧められています(簡略型で登録しておき、レベル判定を受ける前に詳細型へ変更することも可能です)。申請時点で海外に居住している外国人の場合は、在留カードが交付されてから技能者IDを取得する順序になります。
3. JAC(建設技能人材機構)への所属
一般社団法人 建設技能人材機構(JAC)に賛助会員として直接加入するか、JACの正会員である建設業者団体に所属する必要があります(正会員=建設業者団体・賛助会員=直接加入する企業や団体、という区分です)。JACの正会員は63団体です(令和8年7月2日現在)。
どちらか一方に加入していればよく、業種は問われません。 国土交通省も「特定技能外国人に従事させる業務と、加入する団体のカテゴリーの一致は求めていない」としており、例として「海洋土木」で受け入れる企業が断熱や推進技術の団体に加入していても認定申請上は問題ない、と説明しています。
ただし、受入計画の申請時にはJACまたは正会員団体の会員証の添付が必須で、加入申込書や受理票では申請できません。団体ごとに国土交通省へ届け出られた様式の会員証以外では認定されず、団体によっては申込みから会員証の発行まで数か月〜半年かかる場合があるとされています。入会要件があって入会できないこともあるため、手元の会員証で認定が受けられるかを含め、加入先の団体に早めに確認してください。
4. 建設特定技能受入計画の認定
「建設特定技能受入計画」を作成し、国土交通大臣の認定を受けます。1号特定技能外国人に対する報酬予定額、安全・技能の修得計画などを記載するもので、報酬まわりの認定条件が建設の特徴です。
分野別運用方針は、「同等の技能を有する日本人が従事する場合と同等以上の報酬を安定的に支払い、技能習熟に応じて昇給を行う契約を締結していること」を条件としています。
その具体化として、建設分野の1号特定技能外国人の基本賃金は月給制であることが求められます。国土交通省は申請の手引きで「建設分野の1号特定技能外国人は月給制としています」と明記し、雇用条件書の確認項目にも「基本賃金は、月給制になっていますか?」を置いています。季節や工事の受注状況で仕事の繁閑があり報酬が変動しやすい、という建設業の実態を踏まえた条件です。
このため、比較対象にする日本人が時給制・日給制の場合は、月給に換算してから比べます。手引きが示す換算式は次のとおりです(小数点以下は切り捨て)。
- 時給制の場合 — 時給 × 年間所定労働時間数 ÷ 12 = 月給
- 日給制の場合 — 日給 × 年間所定労働日数 ÷ 12 = 月給
日給制の技能者が多い現場では、日給に年間の稼働日数を掛けて12で割った額が比較の基準になります。休日が多い(=年間所定労働日数が少ない)カレンダーだと換算後の月給は下がるため、求人票や就業カレンダーの内容とあわせて確認しておくと差し戻しを避けられます。
報酬額の認定基準は通知でさらに具体化されており、次のような線引きが置かれています。
- 比較対象の日本人 — 「同じ区分の業務に従事していればよい」ではなく、従事させる職種・作業に応じた日本人でなければ比較対象として認められません(Q&A 4-1)。通知では、業務内容・経験年数・所持資格その他の客観的条件が相対的に最も類似する日本人建設技能者と比べ、正当かつ合理的な理由なく低いときは認定しない、とされています。
- 時給換算の下限 — 所定内賃金を1か月当たりの所定労働時間で除した額が、地域別最低賃金(またはその全国加重平均)に1.1を乗じた額を下回るときは認定しないとされています。これは比較対象にした日本人技能者の側にも、特定技能外国人本人の側にもかかります。比較対象の日本人の賃金が低すぎる場合は「国内人材確保の取組を行っているとは認められない」、本人の賃金が低すぎる場合は「技能経験が報酬額に反映されているとは認められない」という整理です。
- 求人票の月給額との整合 — 認定条件のひとつである国内人材確保の取組を示すため、ハローワークの求人票(書類No.7)を添付しますが、そこに書いた月給額も審査の対象になります。国土交通省は、経験不問で月給25万円〜という求人票を出しながら、1号評価試験に合格した特定技能外国人の基本賃金を月23万円とするような場合は同等以上と認められない、と例示しています(同省の説明では、この場合25万円に3年分の昇給を加算した額が必要とされています)。
- 昇給の実質 — 定期昇給またはこれに類する昇給を予定していない場合は認定されません。さらに、1年当たりに見込まれる1か月当たり所定内賃金の上昇額が1,000円未満のときは、実質的な定期昇給と認められないとされています。資格・技能検定の取得やCCUSの能力評価レベルのステップアップを条件とする上昇も、昇給の内容に含めて評価されます。
同等性は自己申告では足りず、書類で示します。新規申請の手引きでは、「同等の技能を有する日本人と同等額以上の報酬であることの説明書」に加えて、比較対象にした日本人の賃金台帳(直近1年分・賞与を含む)と、その日本人の実務経験年数を証明する書類(経歴書等)が、添付書類の12〜14番として求められています。賃金台帳は労働基準法で備え付けが義務づけられた書類で、給与明細などでの代用は認められていません。社内に比較できる日本人技能者がいるか、その賃金水準はどうかを、採用を決める前に確認しておくと差し戻しを避けられます。
なお、在留資格の申請取次や申請書類の作成は行政書士などの専門家の領域です。必要に応じて行政書士などの専門家と連携して進めます。全分野に共通する採用の段取りは特定技能の採用の流れで解説しています。
受け入れ人数の上限と、常勤職員の数え方
建設では、受け入れる1号特定技能外国人の数が、その企業の常勤の職員の総数を超えないことが認定の条件です。この「常勤の職員」には、技能実習生・育成就労外国人・1号特定技能外国人は含めません(分野別運用方針 第二2(3)イ⑦)。ただし、主務省令の基準を満たす優良な育成就労実施者である特定技能所属機関はこの限りでない、という例外が置かれています。
実務では、常勤職員数は厚生年金保険の標準報酬決定通知書などの書類で確認され、数え方は次のとおりです(新規申請の手引き 書類No.3・2025年4月4日版)。
| 区分 | 常勤職員としてカウントする人 |
|---|---|
| 法人の役員 | 常勤の役員で、報酬額が一定額以上の者 |
| 日本人従業員(法人) | 社会保険(建設国保を含む)に加入し、パート勤務等の短時間労働者でない者 |
| 外国人従業員(法人) | 上記に加え、在留資格が「特定技能」「技能実習」「特定活動(特定技能移行予定等)」でない者 |
| 個人事業の事業主 | 常にカウントする |
| 個人事業の専従者 | 決算書の専従者給与の内訳に、一定額以上の給料の記載がある者 |
見落としやすいのは、「特定活動(特定技能移行予定等)」で在籍している人も分母から外れる点です。ここでいう特定活動とは、「特定技能1号」への在留資格変更の準備に時間がかかる場合に、就労を予定している受入れ機関で働きながら準備を進められる在留資格「特定活動(6月・就労可)」のことです(令和6年1月9日以降の申請では、付与される在留期間が「4月」から「6月」に延びました)。受入計画の認定待ちで在留期限が来てしまうときの現実的な受け皿ですが、この期間も特定技能1号の通算在留期間(上限5年)に算入されます。そして人数枠の計算では、この在留資格の人を常勤職員として数えることはできません。
パート・短時間労働者も同様に分母に入らないため、名簿上の従業員数より少なくなることがあります。受け入れ可能な人数を見積もるときは、社会保険の加入者リストを基準に数えてください。
特定技能2号への昇進とキャリアパス
建設は特定技能2号の対象分野で、移行の実績も出ています。建設分野の特定技能2号は1,799人(2025年12月末・速報値)で、飲食料品製造業に次ぐ分野別2位(2号全体7,955人の22.6%)です。半年前の2025年6月末(561人)から3倍以上に増えました。採用の入口だけでなくその先の道筋まで見据えたい企業にとって、建設は1号→班長→2号というキャリアパスを制度としても実績としても描ける分野です。段階は次のとおりです。
特定技能1号として採用
建設分野特定技能1号評価試験(または技能検定3級)と日本語要件(参照枠A2.2相当以上)を満たして就労を始めます。1号の在留は通算5年以内です。現場で実務経験を積む
担当する業務区分の作業で経験を重ねます。CCUSの技能者登録を詳細型にしておくと、後の能力評価(レベル判定)を受けられます。簡略型のままではレベル判定を受けられません。班長として指導・工程管理を経験
2号の要件は、建設現場において複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し、工程を管理する「班長」としての実務経験です。班長への登用は企業の人事判断=指導的な役割を任せる機会を企業側がつくれるかが鍵になります。2号の試験に合格し、日本語もB1相当以上を満たす
建設分野特定技能2号評価試験、または職種に応じた技能検定1級(区分により単一等級)に合格します。あわせて日本語も「日本語教育の参照枠」のB1相当以上が求められます。1号を5年務めても自動的に2号へ移行できるわけではありません。特定技能2号へ移行
在留期間を更新の上限なく延長でき、家族(配偶者・子)の帯同も可能になります。
班長としての実務経験に必要な年数は一律ではなく、職種によって0.5年(108日)・1年(215日)・2年(430日)・3年(645日)の4段階が設定されています(例:建築大工は0.5年、内装仕上げ・鉄筋は3年)。CCUSの能力評価基準がある職種はレベル3相当の就業日数(職長+班長)で確認し、基準が無い職種は3年(645日)以上とされています。同じ2号でも、職種によって求められる班長経験は最短0.5年から最長3年まで開きがあるため、区分だけでなく職種まで見て計画を立てる価値があります。確認書類にはCCUSの能力評価(レベル判定結果通知書)や就業履歴が使われるため、1号のうちからCCUSに就業履歴を正しく蓄積しておくことが、そのまま2号申請の準備になります。CCUSに就業日数が蓄積されていない場合は経歴証明書で確認することになり、このとき本人から求めがあれば実務経験を証明する書面を交付することが、分野別運用方針で特定技能所属機関に課された条件のひとつです(第二2(3)イ⑫)。
なお、建設特定技能受入計画の認定は1号に対するものです。2号への移行にあたって国土交通省へ提出する書類はなく、必要書類は入管へ提出します(Q&A 8-3)。建設固有の手続きが重いのは1号の段階で、2号は入管側の手続きが中心になります。
1号と2号の主な違い(建設分野)を整理すると次のとおりです。
| 特定技能1号 | 特定技能2号 | |
|---|---|---|
| 技能の確認 | 建設分野特定技能1号評価試験 または 技能検定3級 | 建設分野特定技能2号評価試験 または 技能検定1級(区分により単一等級) |
| 日本語 | 「日本語教育の参照枠」A2.2相当以上 | 「日本語教育の参照枠」B1相当以上 |
| 実務経験 | 経験要件なし(試験合格が中心) | 班長としての実務経験(職種により0.5〜3年の幅) |
| 在留期間 | 通算5年以内 | 更新の上限なし |
| 家族の帯同 | 不可 | 配偶者・子は可能 |
制度全般の1号と2号の違いは特定技能1号と2号の違いで整理しています。
育成就労が始まると、建設の採用計画はどう変わるか
建設は、令和8年1月23日の閣議決定で育成就労産業分野にも位置づけられました。育成就労の受け入れは令和9年(2027年)4月の制度開始からで、建設分野の受入れ見込数は令和9年度からの2年間で123,500人です。いま1号特定技能の受け入れを検討している企業にとって、確認しておくとよい点は次の3つです。
- 建設の転籍制限期間は2年 — 本人の意向による転籍について、分野別運用方針は建設の転籍制限期間を2年と定めています。工事の施工期間が1年を超えることがある、労働安全衛生教育に時間をかける必要があるといった事情が理由として挙げられています。1年を超える転籍制限期間を設定する受け入れ企業は、分野別協議会が毎年設定・公表する昇給率以上の昇給を、1年目から2年目にかけて行うこととされています。
- 人数枠の考え方は特定技能と同じ構造 — 育成就労で受け入れる外国人の数も、常勤の職員(技能実習生・育成就労外国人・1号特定技能外国人を除く)の総数を超えないこととされ、優良な育成就労実施者はこの限りでない、という同じ形の例外が置かれています。
- 加入先はJACではなく「育成就労の協議会」 — 育成就労実施者に求められるのは、国土交通省が組織する育成就労の協議会への加入です。ただしJACの正会員である建設業者団体などに所属していれば、協議会に加入しているものとみなされます(方針 第三4(3)ア⑤)。特定技能と同じ枠組みがそのまま適用されるわけではない点に注意してください。
- 業務区分・雇用形態は特定技能と共通 — 育成就労の業務区分は特定技能制度と同一とされ、雇用形態も直接雇用に限られます。CCUSへの登録や建設業許可、監督処分の条件も同様に課されます。
制度の詳細や施行までのスケジュールは育成就労とは、転籍のルールは育成就労の転籍制度で扱っています。育成就労は制度開始前で、詳細は今後の省令等で具体化される部分が残っているため、確定した要件は公式の発表で確認してください。
費用はどこに上乗せされるか
建設の費用は、全分野共通の「初期費用+月額の支援委託費」に、建設固有の費目が上乗せされる構造です。上乗せ分は主に次の3つで、いずれも金額が改定されます。
- JAC関連 — 1号特定技能外国人1人あたりの受入負担金(月額)と、賛助会員として直接加入する場合の年会費。正会員団体の傘下に入る場合はJACへの年会費はかからず、団体ごとの会費が別途かかります。
- CCUS関連 — 事業者登録料(資本金区分により変動)、技能者登録料(簡略型・詳細型で異なる)、管理者ID利用料、現場利用料。
- 受入計画の準備 — 書類の準備と審査待ちの期間そのものがコストになります。
実額と初年度の総額モデルは建設の特定技能 採用費用・相場で、公表されている最新の金額をもとに整理しています。人材紹介の手数料体系は人材紹介手数料の相場、全分野共通の総額の考え方と本人に負担させてはいけない費用の線引きは特定技能の採用費用・相場をご覧ください。
登録支援機関の活用
自社で生活支援の体制を整えるのが難しい場合は、登録支援機関へ委託できます。建設分野は手続きが多いため、CCUS登録やJACへの所属の段取りを含めて建設に慣れた機関だと相談しやすくなります(建設特定技能受入計画などの申請書類の作成は行政書士などの専門家が担います)。ただし、受入計画の変更申請は登録支援機関が代理人になれず、CCUSも事業者・技能者の名義の登録です。また、受入れ後の講習の受講や、認定計画の履行確認への対応も企業側に残ります。委託の境界と契約前に確認することは特定技能 建設の登録支援機関の選び方、業種を問わない選び方は登録支援機関の選び方、契約前の確認は契約前チェックリストを参考にしてください。採用後の定着の工夫は特定技能外国人の定着支援で解説しています。
まとめ
建設の採用でスケジュールを決めるのは、前提(許可・CCUS・JAC)の完了と受入計画の認定にかかる期間の2つです。加入・登録は「手続き中」の状態では受入計画を申請できないため、特定技能の利用を決めた時点で着手します。受け入れられる人数は常勤職員の総数で決まり、数え方に癖がある点も早めに確認しておくと計画がぶれません。
手続きは多いものの、特定技能2号まで道が用意された分野で、長期就労を前提に計画できます。制度の全体像は特定技能採用の完全ガイド、企業側の受け入れ要件は特定技能で企業に求められる受け入れ要件、対象分野の一覧は特定技能の対象分野一覧、よくある失敗は特定技能採用でよくある失敗と注意点をご覧ください。
「自社の建設業で特定技能外国人を何人受け入れられるか」「CCUS登録や受入計画の認定をどう進めるか」を相談したい場合は、条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します(提携先のサービスをご紹介しています)。
よくあるご質問
- 建設で特定技能の外国人を採用するには何が必要ですか?
- 採用する外国人が、建設分野特定技能1号評価試験(または技能検定3級)に合格し、「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上の日本語力を持つことが基本です。企業側は、建設業の許可に加えて、建設キャリアアップシステム(CCUS)への事業者登録、建設技能人材機構(JAC)または加盟する建設業者団体への所属、建設特定技能受入計画の国土交通大臣の認定が必要です。CCUSの事業者登録とJACの会員証は、受入計画を申請する時点で完了している必要があります。
- 建設特定技能受入計画の認定は、在留資格の申請より先に受ける必要がありますか?
- 国土交通省への受入計画の認定申請と、出入国在留管理庁への在留資格の認定証明書交付申請・変更許可申請は、並行して申請できます。ただし国土交通省の受入計画認定証が入管への申請の添付書類になっているため、認定が出ない限り入管の許可等は出ません。認定申請から認定までは1か月半〜2か月程度(補正期間を除く)が国土交通省の見込みで、地方によってはさらに数か月かかることがあります。
- 技能実習2号を修了していれば、建設の特定技能の試験は全部免除されますか?
- 日本語試験は、修了した技能実習2号の職種・作業の種類にかかわらず免除されます。技能試験の免除は、運用要領 別表6-1で業務区分ごとに定められた職種・作業を修了した場合に限られます。技能実習と異なる職種の特定技能へ移行する場合は、従事しようとする業務区分の技能試験(特定技能1号評価試験または技能検定3級)に合格すれば移行でき、この場合も日本語試験の合格は要件になりません。
- 建設で特定技能外国人の受け入れ人数に上限はありますか?
- あります。受け入れる1号特定技能外国人の数が、その企業の常勤の職員(技能実習生・育成就労外国人・1号特定技能外国人を除く)の総数を超えないことが認定の条件です。ただし主務省令の基準を満たす優良な育成就労実施者はこの限りでないとされています。実務では常勤職員数を社会保険の加入状況で確認し、短時間労働者や「特定活動(特定技能移行予定等)」の在留資格の人は数に含めません。
- 建設業の許可業種と、特定技能外国人にさせる仕事は一致している必要がありますか?
- 国土交通省は、特定技能外国人に従事させる業務と取得している許可業種の一致は求めていないとしています。在留資格上の業務区分に含まれる工事であれば、会社が建設業法上で許可を受けている工事の種類を問わず従事させることが可能です。加入するJAC正会員団体のカテゴリーと従事させる業務の一致も、同様に求められていません。
- 建設の特定技能で従事できる業務は何ですか?
- 建設分野の業務は土木・建築・ライフライン設備の3区分に整理されています。土木は型枠施工・鉄筋施工・とび・土工など、建築は左官・内装仕上げ・建築大工・建築板金など、ライフライン設備は電気通信・配管・保温保冷などが含まれます。同じ区分に含まれる作業であれば、技能実習等で経験していない作業に従事させることもできます(十分な訓練・安全衛生教育の実施が前提)。
- 解体工事は建設のどの業務区分に含まれますか?
- 解体工事に伴う作業は「建築」区分に位置づけられています。技能実習制度には「解体」単独の職種区分がないため、技能実習2号修了による技能試験の免除は使えず、建設分野特定技能1号評価試験(建築区分)への合格が必要です。
- 溶接は建設のどの業務区分ですか?
- 溶接は特定の区分に限定されず、土木・建築・ライフライン設備の3区分すべてで、試験免除の対象となる技能実習2号の職種として位置づけられています。どの現場の業務として採用するかで、対応する区分の試験に合格した人材を採用します。
- 建設で採用した特定技能1号の外国人は、どうすれば2号に移行(昇進)できますか?
- 建設分野特定技能2号評価試験(または職種に応じた技能検定1級)の合格、「日本語教育の参照枠」のB1相当以上の日本語力、そして複数の建設技能者を指導しながら作業に従事し工程を管理する「班長」としての実務経験が必要です。必要な実務経験の年数は職種により0.5〜3年の幅があり、建設キャリアアップシステム(CCUS)の能力評価や就業履歴が確認書類として使われます。企業側には、班長を任せる配置に加えて、本人の求めに応じた実務経験証明書の交付が求められます。