特定技能と技能実習の違い|何人雇えるか・監理費の有無
目次
「特定技能」と「技能実習」は何が違うのか——外国人材の受け入れを検討する企業からよく聞かれる質問です。結論を先に言うと、目的がまったく異なります。技能実習は開発途上国への技能移転を目的とした国際貢献の制度、特定技能は人手不足分野の人材確保を目的とした就労のための在留資格です。この違いから、転職の可否、在留期間、受け入れ企業の費用構造まで、実務上の扱いが大きく変わってきます。
この記事の要点
- 目的が違う — 技能実習は「技能移転による国際貢献」、特定技能は「人手不足分野の人材確保」が目的です。
- 辞められるかが違う — 技能実習は転籍が原則できません。特定技能は、同一の業務区分内か、技能水準の共通性が確認された業務区分間であれば転職できます。囲い込みはできない前提で処遇を設計することになります。
- 費用を払う相手が入れ替わる — 監理団体への監理費が無くなる代わりに、支援を委託するなら登録支援機関への支援委託費が発生し、本人に払う賃金の下限も上がります。
- 人数の天井が外れる — 技能実習は常勤職員数に応じた枠がありますが、特定技能は原則として企業ごとの人数枠がありません(例外=介護・建設・漁業)。
- 技能実習で新規に採る入口は2027年3月末で閉じる — 育成就労の施行日(2027年4月1日)より前に技能実習計画の認定申請をしていることが条件で、以後の新規受け入れは後継の育成就労が中心になります(育成就労とは)。
制度の移行期にあたるため、内容は変動します。育成就労制度は主務省令・分野別運用方針まで定まっていますが、分野ごとの細目は施行(2027年4月1日)に向けて順次公表されている段階です。最新情報は出入国在留管理庁の公式情報で確認してください。
特定技能と技能実習の違い早見表
特定技能と技能実習を、企業が受け入れを検討するときに見る観点で並べると次のとおりです。技能実習は2027年4月に育成就労へ切り替わるため、切り替わった後どうなるかを3列目に添えています(育成就労そのものの仕組みは育成就労とは)。
| 項目 | 技能実習 | 特定技能1号 | 育成就労(2027年4月〜) |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 技能移転による国際貢献 | 人手不足分野の人材確保 | 人材の育成と確保 |
| 採用の入口 | 監理団体+認定送出機関を通す(自社で直接は採れない) | 自社で直接採用できる(国内在住者の転職も採れる) | 監理支援機関(許可制)を通す(単独型もある) |
| 入国時の試験 | 原則なし(介護職種は日本語N4合格相当が要件) | 技能試験+日本語試験(技能実習2号の良好修了で免除) | 入国時点の要件はなく、就労開始前までにA1相当以上の日本語試験に合格するか、認定日本語教育機関の「就労」課程でA1相当の講習を100時間以上受講する(分野により上乗せあり) |
| 対象の単位 | 職種・作業の単位(技能実習2号移行対象職種) | 分野・業務区分の単位(受入れ可能17分野) | 分野・業務区分の単位(特定技能に対応) |
| 転職・転籍 | 原則できない | 同一の業務区分内、または試験等で技能水準の共通性が確認された業務区分間で可能 | 本人の意向による転籍が可能。要件=分野ごとに定める転籍制限期間(当分の間1〜2年)を超えて働いていること・一定水準の技能と日本語能力・転籍先が優良な育成就労実施者であること等 |
| 在留期間の目安 | 1号1年・2号2年・3号2年(合計最長5年) | 通算原則5年以内 | 原則3年(特定技能1号の水準まで育成) |
| 受け入れ人数枠 | 常勤職員数に応じた枠あり(常勤30人以下なら基本人数枠3人) | 原則なし(例外=介護・建設・漁業) | 常勤職員数に応じた枠あり(1年目〜3年目の合計に対する上限) |
| 費用を払う窓口 | 監理団体(監理費・入国前後の講習費等) | 登録支援機関(支援を委託する場合の支援委託費) | 監理支援機関 |
| 本人に払う賃金 | 日本人と同等額以上 | 日本人と同等額以上。加えて「少なくとも技能実習2号の給与水準を上回ることが想定される」 | 日本人と同等額以上(転籍制限期間が1年を超える分野は昇給その他の待遇の向上が必要) |
| 送出機関 | 二国間取決めに基づく認定送出機関を通す | 制度上は不要。ただし取決め締結国(2026年7月時点17か国)では送出国側の手続きが要る場合あり | 原則として二国間取決め(協力覚書)を作成した国からのみ。本人が送出機関に払う費用は月給(所定内月額)の2か月分が上限 |
| 家族帯同 | できない | 1号はできない/2号はできる | 原則として認めない |
| 特定技能への移行 | 2号良好修了で日本語試験免除・技能試験も条件付き免除 | ― | 移行を前提とした設計 |
3列目のうち、入国時の試験・転籍・賃金・送出機関の内容は出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aと関係省令の概略図によります。[1][2]
実務で効いてくる2点を補足します。
- 家族帯同 — 在留資格「家族滞在」は、対象となる在留資格が列挙で定められています。その列挙に技能実習・特定技能1号は含まれておらず、特定技能2号は含まれます。[3]家族を呼べるのは実質的に特定技能2号へ進んだ後で、これは長期定着を考えるうえで大きな分岐点です(可否と呼べる時期は特定技能1号・2号の違い(2号の家族帯同の節))。
- 採用の入口 — 技能実習は監理団体と認定送出機関を通す前提で、企業が自分で候補者を見つけて直接採ることはできません。特定技能は自社で直接採用でき、すでに日本にいる人材の転職も受けられます。これが受け入れまでの期間の差にも直結します(特定技能の採用の流れ)。
いずれの制度でも、報酬を得て業として行う在留資格の申請書類の作成は行政書士などの専門家の領域です。監理団体・登録支援機関・監理支援機関に「書類の作成まで任せられる」わけではなく、必要に応じて行政書士などの専門家と連携して進めます(申請書等の提出=申請取次は、変更・更新なら地方出入国在留管理局長の承認を受けた所属機関の職員等も、本人の依頼を受けて行えます)。
技能実習とは
技能実習は、日本で培われた技能を開発途上国などへ移転する国際貢献を目的とした制度です。[4]
- 目的が「人材育成・技能移転」であり、労働力の確保を主目的とはしていません。
- 転籍は原則できません(同じ受け入れ先で実習を続けるのが基本)。
- 監理団体が受け入れをサポートし、実習実施者(受け入れ企業)を定期的に監査します。監理団体の監理に係る経費(監理費)を技能実習生本人に負担させることは禁止されています。
すでに来日している技能実習生は、施行日(2027年4月1日)以後も引き続き認定計画に基づいて実習を続けられます。施行日時点で1号技能実習を行っている人は2号へ移行でき、3号への移行は施行日時点で2号の技能実習を1年以上行っている人に限られます。[5]新規に受け入れられる期限は後述します。
特定技能とは
特定技能は、人手不足が深刻な分野で人材を確保することを目的とした就労のための在留資格です。
- 一定の技能・日本語要件を満たした人材が、即戦力として働けます。
- 本人の意思で転職できます。出入国在留管理庁のQ&Aは、転職が認められる範囲を「同一の業務区分内又は試験等によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間」としています。[6]分野をまたぐ転職ができないわけではなく、技能水準の共通性が確認できれば認められます(いずれの場合も在留資格変更許可申請が必要です)。
- 受け入れ企業には1号で支援義務があり、その支援を登録支援機関に委託できます(自社で支援体制を整えれば委託は不要です)。
制度の全体像は特定技能とは?、企業側の要件は特定技能で企業に求められる受け入れ要件、1号と2号の違いは特定技能1号・2号の違いで解説しています。
技能実習と特定技能の費用構造の違い
技能実習と特定技能は、企業が費用を払う相手・タイミングの構造が異なります。
- 技能実習 — 受け入れ企業は監理団体に監理費(定期監査・入国前後の講習等にかかる費用)を継続的に支払う構造です。監理費を技能実習生本人に負担させることは、制度上禁止されています。
- 特定技能 — 受け入れ企業は、支援を委託する場合に登録支援機関へ支援委託費を支払います。自社で支援体制を整えれば委託費は発生しません。人材紹介会社を通じて採用する場合は、別途紹介手数料がかかります。
- 育成就労 — 技能実習に近い構造で、監理支援機関(旧・監理団体)への監理に係る費用が発生します。
見落とされやすいのが、機関に払う費用だけでなく、本人に払う賃金の水準も変わることです。特定技能1号の報酬は「日本人が同等の業務に従事する場合の報酬額と同等以上」であることに加えて、出入国在留管理庁は「1号特定技能外国人は、技能実習2号を修了した外国人と同程度の技能水準であることから、少なくとも技能実習2号の給与水準を上回ることが想定されます」としています。[6]技能実習生と同じ給与で特定技能に切り替える、という設計は想定されていません。
海外から呼び寄せる場合の窓口も違います。技能実習は二国間取決めに基づく認定送出機関を通す必要がありますが、特定技能では制度上、送出機関は必須ではありません。ただし二国間取決めを結んでいる国(2026年7月時点で17か国)では、送出国側が定める手続きを経ていないと出国許可が下りないことがあるため、採用したい人材の国籍で確認が必要です。
具体的な費用の目安と、採用後に継続してかかる費用は特定技能の費用(採用費用の相場と維持費)で解説しています。
何人まで受け入れられるか(ここが最も大きく違う)
企業にとって実務上いちばん効いてくる違いが、受け入れ人数の上限です。
技能実習には、常勤職員数に応じた「基本人数枠」があります。
| 常勤の職員の総数 | 技能実習生の数(基本人数枠) |
|---|---|
| 30人以下 | 3人 |
| 31人以上40人以下 | 4人 |
| 41人以上50人以下 | 5人 |
| 51人以上100人以下 | 6人 |
| 101人以上200人以下 | 10人 |
| 201人以上300人以下 | 15人 |
| 301人以上 | 常勤職員総数の20分の1 |
技能実習の基本人数枠(常勤職員数別)
令和8年4月版 運用要領
- 常勤30人以下3人
- 31〜40人4人
- 41〜50人5人
- 51〜100人6人
- 101〜200人10人
- 201〜300人15人
出典:出入国在留管理庁・厚生労働省「技能実習制度 運用要領」
常勤職員301人以上の企業は、上限が常勤職員総数の20分の1になり人数によって変わるため、上の図には表示していません。技能実習にはこうした人数枠がありますが、特定技能には原則として企業ごとの人数枠がありません(例外=介護・建設・漁業)。
団体監理型の場合、第1号(1年目)は基本人数枠まで、第2号(2〜3年目)は基本人数枠の2倍まで受け入れられます(優良な監理団体・実習実施者と認められると、それぞれ2倍・4倍に拡大)。
常勤職員25人の会社なら、こうなります。
| 常勤職員25人の会社が受け入れられる技能実習生 | 通常 | 優良と認められた場合 |
|---|---|---|
| 第1号(1年目) | 3人 | 6人 |
| 第2号(2〜3年目) | 6人 | 12人 |
| 同時に在籍できる合計 | 9人 | 18人 |
基本人数枠が3人(常勤30人以下)なので、1年目に3人、2〜3年目の在籍が6人まで、という数え方です。この2つは別枠なので、毎年3人ずつ採り続けた場合、同時に在籍するのは最大9人(1年目3人+2〜3年目6人)になります。あわせて「第1号は常勤職員の総数、第2号はその2倍、第3号はその3倍を超えない」という絶対上限もかかります。[7]
分母になる「常勤の職員」の数え方には決まりがあります。 技能実習制度の運用要領によれば、常勤の職員とは継続的に雇用されている職員(正社員のほか、正社員と同様の就業時間で継続的に勤務している日給月給者を含む)で、目安は「所定労働日数が週5日以上かつ年間217日以上で、週所定労働時間30時間以上」または「雇用保険の被保険者で週所定労働時間30時間以上」です。[7]ここから外れる人・入る人が実務では効きます。
- 技能実習生は分母に入りません(技能等を修得する立場であり、指導体制の目安である人数枠の算出根拠にしないため)。外国にある事業所に所属する常勤の職員も入りません。
- 派遣労働者は分母に入りません(受け入れ企業との間に雇用契約が無いため)。
- 役員は原則として職員として扱えませんが、法人から労働の対価として報酬を受け、法人に使用される立場(例=取締役部長)で上の目安を満たす場合は、常勤の職員に含めて差し支えないとされています。
- 総数は事業所ごとではなく企業全体(法人全体)で算出します。親会社・子会社など複数の法人で構成される場合は、常勤の職員も受け入れている技能実習生も、その法人すべてを合算して数えます。[7]
一方、特定技能には原則として受け入れ人数の上限がありません。 例外は介護・建設・漁業の3分野です(漁業は令和8年1月23日閣議決定の上乗せ基準の整理表で受入人数上限の設定対象=詳細は漁業分野の運用方針・告示で確認)。
上限の中身は、それぞれの分野別運用方針で定められています(出入国在留管理庁のQ&A Q34にも同趣旨の整理があります)。[6]
- 介護 — 事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数が上限(事務職員・看護業務に従事する看護師等は算定に含まれません)。詳しくは特定技能 介護の人数枠をご覧ください。
- 建設 — 受け入れる特定技能1号の数が、その企業の常勤の職員の総数を超えないこと。この「常勤の職員」からは、技能実習生・育成就労外国人・1号特定技能外国人を除いて数えます(令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針 第二2(3)イ⑦。主務省令の基準を満たす優良な育成就労実施者である特定技能所属機関はこの限りでない、という例外があります)。[8]⚠️ 出入国在留管理庁のQ&A Q34の同じ箇所は「外国人技能実習生、1号特定技能外国人を除く」の形で、育成就労外国人には触れていません。実務では「特定活動(特定技能移行予定等)」で在籍している人も分母から外れるなど数え方に癖があるので、当てはめは閣議決定の運用方針の文言と特定技能「建設」とはで確認してください。
つまり「小規模な事業所でまとまった人数を採りたい」場合、技能実習では枠が先に頭打ちになりますが、特定技能では(介護・建設・漁業以外は)企業ごとの人数枠がありません。ただし分野全体の受入れ見込数(上限)は別に設定されており、上限に達した分野は新規の受け入れが一時停止されることがあります(特定技能の受け入れ停止)。逆に言えば、特定技能は人数を採れるぶん、支援体制や住居の確保を自社で設計する必要があります。
なお育成就労にも常勤職員数に応じた人数枠があり、1年目から3年目までの育成就労外国人の合計に対する上限として定められています(技能実習の1号〜3号という区分が廃止されたためです)。[2]枠が広がったわけではない点に注意してください——たとえば常勤9〜30人の企業の基本人数枠は9人で、これは技能実習で第1号3人+第2号6人を同時に在籍させたときの人数と同じです。常勤職員数の区分ごとの実数、優良な受け入れ機関の2倍・地方の3倍の枠は育成就労とはにまとめています。
自社の技能実習の職種は、特定技能のどの分野へ移行できるか
技能実習を「特定技能へ切り替えられるか」は、制度の説明よりも自社の職種・作業が特定技能のどの分野(業務区分)に対応しているかで決まります。出入国在留管理庁は、技能実習2号移行対象職種と特定技能1号の分野(業務区分)の対応関係を一覧で公表しています(2026年6月1日時点)。対応は7つのグループ(農業・林業/漁業/建設/食品製造/繊維・衣服/機械・金属/その他)に分かれ、技能実習側は職種名・作業名の単位、特定技能側は分野と業務区分の単位で示されます。
代表的な対応は次のとおりです。
| 技能実習の職種(作業の例) | 移行先の特定技能の分野(業務区分) |
|---|---|
| 介護(介護) | 介護 |
| 建築大工(大工工事) | 建設(建築) |
| とび(とび) | 建設(土木)/建設(建築)/造船・舶用工業(造船) |
| 耕種農業(施設園芸・畑作・野菜・果樹) | 農業(耕種農業全般) |
| 畜産農業(養豚・養鶏・酪農) | 農業(畜産農業全般) |
| 林業(育林・素材生産) | 林業 |
| 漁船漁業(かつお一本釣り漁業 等) | 漁業(漁業) |
| 養殖業(ほたてがい・まがき養殖) | 漁業(養殖業) |
| 非加熱性水産加工食品製造業(塩蔵品製造 等) | 飲食料品製造業(水産加工)※経過措置により両区分への移行が可能 |
| 医療・福祉施設給食製造 | 外食業 ⚠️2026年4月13日から在留資格変更が原則不許可(受け入れ停止中) |
| 機械加工(普通旋盤・フライス盤 等) | 工業製品製造業(機械金属加工) |
| 電子機器組立て | 工業製品製造業(電気電子機器組立て)/造船・舶用工業(舶用電気電子機器) |
| ビルクリーニング(ビルクリーニング) | ビルクリーニング |
| 自動車整備(自動車整備) | 自動車整備(自動車整備・車体整備) |
| 木材加工(機械製材) | 木材産業 |
上表は公表資料からの抜粋です。「とび」や「電子機器組立て」のように複数の分野に対応する職種があり、どの分野へ移すかで受け入れ後の業務範囲が変わります。 自社の職種・作業が一覧のどこに当たるかは、必ず出入国在留管理庁の対応表の原本で確認してください。[9]なお、育成就労(2027年開始)側の分野・業務区分との対応は育成就労の対象分野の早見表で整理しています。
対応する職種・作業と分かったあとの切替の流れは、次のとおりです。
① 職種・作業と特定技能の分野(業務区分)の対応を確認
所要期間の定めなし
② 試験免除の確認(技能実習2号を良好に修了していれば日本語・技能試験とも免除)
所要期間の定めなし
③ 特定技能雇用契約の締結・支援計画の策定
目安 各1〜2週間
④ 在留資格変更許可申請(入管の審査)
標準処理期間 1〜2か月
⑤ 許可・特定技能1号として就労開始
許可後に就労開始
免除の範囲は「関連性があるか」で2段階に分かれます。 出入国在留管理庁のQ&Aによれば、技能実習2号の職種・作業と、これから従事する業務に関連性が認められる場合は技能・日本語能力の証明がいずれも免除されます。関連性が認められない場合でも、日本語能力の証明は技能実習2号の良好修了の事実などから証明されたものとして扱われ、技能試験の合格だけが必要になります。ここでいう「良好に修了」とは、技能実習を計画に従って2年10か月以上修了していることです。⚠️ ひとつ期限に注意があります——技能実習法(2017年11月施行)より前の旧制度の「技能実習」等を修了している人は、2027年(令和9年)4月1日以降は技能・日本語の両試験に合格することが求められます(免除の扱いが終わります)。[6]試験の免除ルート全体は特定技能の試験、申請書類は特定技能の申請に必要な書類一覧で解説しています。2027年4月以降に始まる育成就労からの移行は要件が別に定められています(育成就労から特定技能への移行)。
切り替えのタイミングには制度上の制約があります。 同じQ&Aは、技能実習計画を終了していない実習中の外国人について、技能実習という在留資格の性格上、特定技能への在留資格の変更は認められないとしています。一方で、技能実習2号の実習中であっても在留資格変更許可申請そのものは可能で、技能実習2号を修了した後は特定技能への変更許可を受けるまでの間は働くことができないとされています。[6]つまり空白期間を作らないかどうかは、書類の準備を実習中に済ませて早めに申請できるかで決まります。
介護の技能実習生を特定技能に切り替えるとき
介護は、技能実習と特定技能で扱いが最も大きく変わる分野のひとつです。切り替えを検討する施設が先に押さえておく点は4つあります。
- 介護職種の技能実習2号からの切り替えなら、試験は免除されます。介護分野には介護技能評価試験・介護日本語評価試験がありますが、技能実習2号の職種・作業と従事する業務に関連性が認められる場合は技能・日本語能力の証明が免除されるためです。介護職種の技能実習には、制度本体の要件に加えて日本語能力の固有要件があり、厚生労働省の資料によれば第1号(1年目)は日本語能力試験N4合格相当、第2号(2年目)はN3合格相当が要件です。[10]他職種より日本語の到達点が読みやすい状態で切り替えられます。介護の免除の範囲は特定技能の試験で詳しく解説しています。
- 数える単位が「法人全体」から「事業所ごと」に変わります。技能実習の基本人数枠は本社・支社・事業所を含めた企業全体(法人全体)で算出します。[7]これに対し介護の特定技能は、事業所ごとに日本人等の常勤介護職員の総数が上限です。[6]複数の施設を持つ法人では、法人合計では余裕があるのに配属したい事業所では枠が足りない、という形になり得ます(特定技能 介護の人数枠)。
- 介護には特定技能2号がありません。他分野なら2号へ進んで在留期間の上限が外れますが、介護は1号の通算5年が上限で、その先も働き続けてもらうには介護福祉士の資格を取って在留資格「介護」へ切り替えるルートになります(外国人介護福祉士)。5年後の姿を決めてから採るかどうかが、他分野より重く効きます。
- できる業務の範囲が変わります。訪問系サービスへの従事は要件と遵守事項が別に定められており、施設内の業務と同じようには任せられません(訪問介護に特定技能で従事できるか)。受け入れ施設の条件・4つの在留資格ルートの比較は特定技能「介護」とはにまとめています。
特定技能に切り替えると、社内の手間はどう入れ替わるか
「特定技能のデメリットは何か」と聞かれたとき、実務でいちばん大きいのは費用の総額よりも、企業に残る作業の入れ替わりです。技能実習では監理団体が担っていた部分が、特定技能では受け入れ企業の義務になります。
| 技能実習 | 特定技能1号 | |
|---|---|---|
| 外部からの監査 | 監理団体が実習実施者を定期的に監査する | 監理団体にあたる監査が無い代わりに、企業が自分で届け出る(受け入れ・活動・支援実施状況の定期届出は年1回、契約や支援内容の変更は随時届出) |
| 生活のサポート | 監理団体の支援が前提 | 企業の義務(自社で実施するか、登録支援機関へ委託する) |
| 候補者を探す | 監理団体・認定送出機関のルートに乗る | 自社で探す(人材紹介会社を使うなら紹介手数料が別途かかる) |
| 辞められるか | 原則、転籍できない | 転職できる(業務区分の範囲で) |
| 任せられる業務 | 技能実習計画に定めた業務。計画を大幅に上回る時間外労働は入管法上の不正行為認定の対象 | 試験等で認められた技能を要する業務のほか、その業務に従事する日本人が通常従事する関連業務に付随的に従事させられる(例=製造ラインの担当者が包装・出荷準備や作業場の清掃も担う) |
「任せられる業務」の欄は、出入国在留管理庁のQ&Aが「特定技能の試験等により有すると認められた技能を必要とする業務のほか、当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務に付随的に従事させることができる」としているものです。[6]技能実習では計画に定めた作業の範囲が厳密なので、現場の実態に合わせやすくなるのは切り替えの利点の側です。
企業から見ると、「監理費を払って任せる」構造から「自分で設計して届け出る」構造へ移るのが特定技能です。支援を登録支援機関へ委託すれば実務の多くは戻せますが、支援計画の作成そのものは受け入れ企業の義務として残ります。何をやることになるかは特定技能の義務的支援10項目、自社支援と委託のどちらにするかは特定技能は自社支援できる?、届出の期限と罰則を含む企業側の要件は特定技能の受け入れ要件・条件で解説しています。
⚠️ 切り替える前に確認しておく前提が1つあります。 受け入れ企業の基準には、同種の業務に従事していた労働者に非自発的離職(企業都合の離職)を発生させていないことが含まれます。判定の対象になる労働者の範囲と、いつからいつまでを見られるかは基準で決まっているので、人員整理のあとに外国人材へ切り替える順序を考えているなら、上の受け入れ要件の記事で先に確認してください。
もうひとつ、技能実習に無かった変数が転職です。囲い込めない前提で、賃金・キャリアの見通し・相談体制を先に設計しておくかどうかで定着が変わります(特定技能の離職率は16.1%)。
特定技能で採用した人は、その後どうなっているか
制度を比較するとき見落とされがちなのが、特定技能で受け入れた人が実際にどれくらい残っているかです。出入国在留管理庁は、特定技能1号をはじめて許可された人がその後どの在留資格になったかを公表しています(2026年1月23日現在)。
| 特定技能1号をはじめて許可された年(総数) | 特定技能2号へ移行 | 特定技能1号のまま在留中 | その他の在留資格 | 不法残留 | 出国等 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2019年に許可(1,625人) | 185人(11.4%) | 6人(0.4%) | 253人(15.6%) | 4人(0.2%) | 1,177人(72.4%) |
| 2020年に許可(14,366人) | 2,056人(14.3%) | 463人(3.2%) | 2,431人(16.9%) | 88人(0.6%) | 9,328人(64.9%) |
「出国等」は単純出国や再入国許可期限の満了などを指します(出国後に別の在留資格で再入国した人は、この集計では「在留中」に数えられません)。「特定技能1号のまま在留中」には、休業等で通算在留期間に含まれない期間があった人や、在留資格変更許可申請中の特例期間で1号に計上される人(2020年許可分)が含まれます。「不法残留」はいずれの年もごく少数(1%未満)で、出入国在留管理庁の公表資料の在留状況区分をそのまま転記したものです。[11]
読み取れるのは次の2点です。
- 最も多いのは出国等で、2019年許可の人では7割を超えます。特定技能1号は通算5年の上限があるため、受け入れた人材が自動的に長く残るわけではありません。
- 2号への移行は11.4%→14.3%と増えています。長く働いてもらう道筋は2号ですが、介護など2号の対象外の分野もあります。1号と2号の違いは特定技能1号と2号の違いをご覧ください。
技能実習・育成就労と比べるとき、「何年いられるか」だけでなく「その後も自社に残ってもらう道があるか」まで含めて設計しておくと、採用計画が立てやすくなります。定着のための具体的な打ち手は特定技能外国人の定着支援で整理しています。
技能実習は2027年4月に育成就労へ切り替わる
技能実習で新規に受け入れられる期間には期限があります。施行期日は2025年10月1日公布の令和7年政令第340号で「令和九年四月一日」と定められており、2027年4月1日に技能実習は育成就労へ切り替わります。[12]
企業の判断に効くのは、次の2点です。
- 新規の入口は施行日の前に閉じます — 施行日前に技能実習計画の認定申請をしていれば施行日以後も技能実習生として入国できる場合がありますが、それは施行日から3か月以内に開始する内容の計画に限られます。[5]いま技能実習で採るなら、認定申請の締め切りから逆算する必要があります。
- 技能実習から育成就労へは移れません — 経過措置で技能実習を続ける場合は技能実習制度のルールが適用され、育成就労へ移行することはできないとされています。[5]在籍中の実習生をどうするかは、技能実習の枠組みのまま満了させ、その後に特定技能へ切り替えるかを考える形になります。
このページは特定技能と技能実習の違いを軸にした比較の位置づけです。育成就労そのものの仕組み(監理支援機関・本人意向の転籍・対象分野・人数枠・要件)は育成就労とは、育成就労から特定技能への移行の要件は育成就労から特定技能への移行、対象分野は育成就労の対象分野で解説しています。制度ごとに関わる窓口(監理団体・監理支援機関・登録支援機関)がどう違うかは、監理団体・監理支援機関・登録支援機関の違いで3者を並べて比較しています。
審査にかかる期間の目安
在留資格の審査そのものの標準処理期間を比べると、特定技能は、国内在住者からの在留資格変更許可申請で1〜2か月です。[13]技能実習は、入国前に外国人技能実習機構(OTIT)による技能実習計画の認定が必要で、新規入国1号の審査期間の目安は1〜2か月、申請の受付は技能実習開始予定日の6か月前からです。[14]技能実習はこの認定に加えて在留資格認定証明書の交付、査証(ビザ)申請と手続きの段階が多く、入り口の手続きは特定技能の国内切替より多段になります。特定技能で海外から呼び寄せる場合の標準処理期間(在留資格認定証明書交付申請)は1〜3か月です。[15]
ただし、標準処理期間はあくまで目安で、実際の審査はこれより長引くことがあります。また、採用活動全体(募集・選考・査証発給・渡航準備・送出国側手続き)を含めた所要期間は個別差が大きく、審査期間の数字だけで比較しないでください。 特定技能の採用活動全体を含めた目安(国内採用2〜4か月・海外採用4〜8か月)は特定技能の採用の流れで解説しています。
どちらで採用すべきか:企業視点の判断軸
- いま即戦力がほしい — 試験に合格した人材、または技能実習2号を良好に修了した人材をすぐ採用できる特定技能が中心になります。人数の天井も原則ありません。採用の流れは特定技能の採用の流れをご覧ください。
- いま技能実習生がいる — 修了に合わせて特定技能へ切り替えるのが基本線です。職種・作業と業務の関連性があれば試験は免除され、上で見たとおり切り替え後は転職できる立場になるため、処遇と相談体制を先に整えてから切り替えると定着が読みやすくなります。
- これから数年かけて育てたい — 技能実習で新規に採る入口は2027年4月1日の施行日前で閉じ、以後は育成就労(原則3年で特定技能1号の水準まで育成)が中心になります。監理支援機関の許可や自社の要件は施行前から確認しておく項目です(育成就労とは)。
(国内在住者の転職を狙うか、海外から新規に呼び寄せるかという「採用ルート」の選び方は、また別の判断軸です。)
まとめ
特定技能と技能実習は、技能実習=国際貢献/特定技能=人手不足分野の人材確保という目的の違いから、転職の可否・費用を払う相手・人数の天井まで実務の扱いが変わります。技能実習からの切り替えは、自社の職種・作業が特定技能のどの業務区分に対応するかで決まり、対応があれば試験は免除されます。切り替えると監理費は無くなりますが、支援と届出は自社の義務として残り、本人は転職できる立場になります。
対象分野は特定技能の対象分野一覧、起きやすいトラブルと対処は外国人労働者のトラブルと対処をご覧ください。
よくあるご質問
- 特定技能と技能実習の違いは何ですか?
- 目的が異なります。技能実習は技能移転による国際貢献を目的とする制度で、転籍は原則できません。特定技能は人手不足分野の人材確保を目的とする就労のための在留資格で、出入国在留管理庁のQ&Aによれば、同一の業務区分内、または試験等により技能水準の共通性が確認されている業務区分間であれば転職が認められます(分野をまたぐ場合も含め、在留資格変更許可を受ける必要があります)。受け入れの窓口も、技能実習は監理団体、特定技能は登録支援機関(支援を委託する場合)が関わります。
- 技能実習の新規受け入れはもうできないのですか?
- できますが、期限があります。出入国在留管理庁の資料によれば、育成就労の施行日(2027年4月1日)前に技能実習計画の認定の申請をしている場合は施行日以後に技能実習生として入国できる場合があり、その対象は施行日から3か月以内に開始する内容の計画に限られます。この経過措置で技能実習を行う場合は技能実習制度のルールが適用され、技能実習から育成就労へ移行することはできません。すでに来日している技能実習生は、引き続き認定計画に基づいて実習を続けられます。期限・条件は変動しうるため、最新情報は出入国在留管理庁の公式情報で確認してください。
- 技能実習中の外国人を、途中で特定技能に切り替えられますか?
- できません。出入国在留管理庁のQ&Aは、技能実習計画を終了していない実習中の外国人について、技能実習という在留資格の性格上、特定技能への在留資格の変更は認められないとしています。切り替えは技能実習を修了してからで、在留資格変更許可申請の準備(雇用契約・支援計画・書類収集)は実習中から進められます。
- 技能実習からは特定技能に移行できますか?
- できます。技能実習を計画どおり2年10か月以上修了(=良好に修了)した人は、従事しようとする業務が技能実習2号の職種・作業と関連性を認められる場合、技能・日本語能力の証明がいずれも免除されて特定技能1号へ移行できます。関連性が認められない場合でも、日本語能力の証明は良好修了の事実などから証明されたものとして扱われ、技能試験の合格だけが必要になります。自社の職種がどの分野・業務区分に対応するかは本文の対応表で確認してください。
出典・参考(一次情報)
- 育成就労制度Q&A(Q59・家族の帯同)/育成就労制度Q&A(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度の関係省令等について(受入れ人数枠・地方への配慮施策/取得日2026年8月8日)(出入国在留管理庁・厚生労働省)
- 在留資格「家族滞在」(対象となる在留資格の列挙)(出入国在留管理庁)
- 在留資格「技能実習」(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度の概要(令和8年7月改訂・施行までのスケジュール・技能実習に関する経過措置)(出入国在留管理庁・厚生労働省)
- 特定技能制度に関するQ&A(HTML掲載版・Q13 転職が認められる範囲/Q34 受入れ人数の上限/Q46 同等報酬要件と技能実習2号の給与水準/Q47 技能実習中の変更)(出入国在留管理庁)
- 技能実習制度 運用要領(令和8年4月版・基本人数枠)(出入国在留管理庁・厚生労働省)
- 建設分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針(令和8年1月23日閣議決定・別紙5=第二2(3)イ⑦ 受入れ人数の上限と常勤の職員の範囲)(出入国在留管理庁)
- 技能実習2号移行対象職種と特定技能1号における分野(業務区分)との関係について(令和8年6月1日時点)(出入国在留管理庁)
- 技能実習「介護」における固有要件について(日本語能力要件=第1号はN4合格相当・第2号はN3合格相当)(厚生労働省)
- 外国人労働者に関する制度概要(令和8年7月1日更新)(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(令和7年政令第340号)(出入国在留管理庁)
- 在留資格変更許可申請の手続(出入国在留管理庁)
- 技能実習計画の認定申請(外国人技能実習機構(OTIT))
- 在留資格認定証明書交付申請の手続(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度の概要(出入国在留管理庁)