特定技能の受け入れ要件・条件|企業が満たす17+7項目と自社チェック
目次
特定技能で外国人を採用するとき、最初の関門になるのが「自社が受入れ機関の要件を満たせるか」です。特定技能は、外国人本人の要件(技能・日本語)だけでなく、受け入れる企業(法令上の呼び方は「特定技能所属機関」)の側にも基準と義務を課す制度だからです。
要件は3つのブロックに分かれます——受け入れの4基準(案内資料の要約)、受け入れ後の3義務、そして分野ごとの上乗せ要件です。ただし、実際に審査で見られるのは4基準という粗い単位ではなく、特定技能基準省令の各条です。このうち企業そのものに関わる省令第2条は、運用要領が第1項を17の項目、第2項を7の項目に分けて解説しています(本記事ではこの17+7を合わせて「24項目」と呼びます。運用要領にこの呼び方があるわけではありません)。このページでは、その24項目を「判定の遡及期間」「入管に出す書類」「引っかかったときにどうなるか」まで開いて、自社で満たせるかを判定できる形に整理します。
この記事の要点
- 「4基準」の実体は省令の別々の条にある — ①雇用契約=省令第1条/②機関自体=第2条第1項(17項目)/③支援体制と支援計画の実施=第2条第2項(7項目)/④支援計画そのもの=第3条・第4条。この記事の主役は②の17項目です。
- 遡って適合性を見られる期間は3つ — 非自発的離職者・行方不明者は契約締結日前1年以内と締結日以後、刑罰・実習認定の取消し・不正行為・暴力団関係・支援を怠ったことは5年、支援体制の実績は過去2年です(これとは別に、書類の対象期間〔24か月分・2年度分〕や帳簿の保存期間〔1年以上〕があります)。
- 未納・債務超過は「即アウト」ではない(ただし例外あり) — 未納は地方出入国在留管理局の助言・指導に基づいて納付すれば遵守していると評価され、債務超過は第三者による改善見通しの評価書面で継続履行体制を示せます。例外=特別徴収した個人住民税の未納入だけは、遵守と評価されません。
- 全部委託のみなしが及ぶのは7項目だけ — 登録支援機関への全部委託で満たせるのは省令第2条第2項の7項目で、第1項の17項目と支援計画の作成義務は企業に残ります。
本記事は一般的な情報提供です。受け入れ要件の詳細や最新の基準は、出入国在留管理庁の「特定技能外国人の受入れに関する運用要領」や分野別の運用要領で必ず確認してください。制度は改正されることがあります。
受け入れ要件の地図——「4基準」は省令のどこに対応するか
企業向けの案内資料では、受け入れ企業の要件は4つの基準と3つの義務にまとめられます。この4基準は覚えやすい要約ですが、それぞれ根拠が別の条にあり、満たし方も委託で変わるかどうかも違います。まず対応関係を押さえます。
| 入口の4基準 | 根拠 | 運用要領での扱い | この記事での位置 |
|---|---|---|---|
| ① 雇用契約が適切であること | 特定技能基準省令第1条 | 第5章第1節 | 次の「基準1」で扱う |
| ② 受入れ機関自体が適切であること | 同省令第2条第1項(第1号〜第13号。16番は第12号の2) | 第5章第2節第1に17項目として展開 | この記事の主役 |
| ③ 支援体制があり、支援計画が適正に実施されること | 同省令第2条第2項(第1号〜第7号) | 第5章第2節第2に7項目として展開 | 「基準3」で扱う |
| ④ 支援計画そのものが適切であること | 同省令第3条(記載事項)・第4条(基準) | 第6章(別の章) | 義務的支援10項目が所有 |
②と③を合わせた24項目が、企業そのものについて審査される単位です。④(支援計画の中身が基準を満たすか)は独立した章で扱われる別のテーマで、24項目には含まれません。
この記事は「1号」を前提にしています
24項目のうち③にあたる7項目は、1号特定技能外国人を受け入れる場合の基準です。特定技能2号には支援計画の作成・実施の義務がないため、2号だけを受け入れる場合はこの7項目は適用されません。②の17項目のうち11番(支援に要する費用の負担)も1号に限られ(省令第2条第1項第8号が「下欄第1号に掲げる活動を行おうとする外国人と…契約を締結しようとする機関にあっては」と限定しています)、残る16項目が1号・2号に共通です。1号と2号で企業側の負担がどう変わるかは特定技能1号・2号の違いで解説しています。
外国人本人の側にも別の要件があります
この記事が扱うのは企業側の要件です。採用する外国人本人の側には、18歳以上であること・健康状態が良好であることに加えて、技能試験と日本語試験の合格(技能実習2号を良好に修了した人は免除されるルートがあります)という要件があり、1号での在留は通算5年が上限です(5年を超えて在留することに相当の理由があると認められる場合は6年。また、産前産後休業・育児休業や一定の傷病休業の期間は、疎明資料を添えて申請すればこの通算から除けます)。企業側の要件を満たしていても、本人側が満たしていなければ受け入れは認められません。 試験の科目・合格基準は特定技能の技能試験と特定技能の日本語試験、在留期間の数え方は在留期間で解説しています。
基準1:雇用契約が適切であること(省令第1条)
外国人と結ぶ特定技能雇用契約の基準は、省令第1条が雇用関係に関する事項(6項目)と適正な在留に資するために必要な事項(3項目)に分けて定めています。
| 区分 | 項目 |
|---|---|
| 雇用関係に関する事項(第1項) | ① 従事させる業務が分野の技能水準を要するものであること ② 所定労働時間がフルタイム ③ 報酬が日本人と同等以上(差別的取扱いの禁止を含む) ④ 一時帰国の有給休暇 ⑤ 派遣先に関する基準(派遣形態の場合) ⑥ 分野に特有の基準 |
| 適正な在留に資する事項(第2項) | ① 帰国担保措置 ② 健康・生活の状況を把握するための措置 ③ 分野に特有の基準 |
このうち実務で効くのは次の4つです。
- 報酬が日本人と同等以上 — 同じ仕事をする日本人と同等以上の報酬額であること。外国人であることを理由に低く設定することはできません(技能・経験に応じた合理的な差は可)。報酬の決定だけでなく、教育訓練の実施・福利厚生施設の利用などの待遇でも差別的取扱いは禁止されます。
- 所定労働時間がフルタイム — 受け入れ企業の通常の労働者と同等であること。運用要領上のフルタイムは、原則として労働日数が週5日以上かつ年間217日以上、かつ週の労働時間が30時間以上を指します(パート・アルバイトは該当しません)。
- 一時帰国の配慮 — 本人が一時帰国を希望した場合に、必要な有給休暇を取得させること。
- 帰国担保措置 — 帰国旅費は本人負担が原則ですが、本人が負担できないときは企業が旅費を負担し、あわせて出国が円滑になされるよう必要な措置を講じることとされています(航空券の予約・購入、帰国までの生活支援など)。⚠️ この旅費を報酬から控除して積み立て・管理することは認められません。
雇用条件書(参考様式第1-6号)に書く記載事項は特定技能の雇用契約・雇用条件書で詳しく解説しています。なお派遣の形態が認められるのは農業・漁業のみ(2026年4月1日時点)で、それ以外の分野は直接雇用に限られます。これは省令第1条ではなく分野別の運用方針で定まる制約です。
同じ仕事をする日本人が社内にいないときの「同等以上」の示し方
報酬の「同等以上」は、比較できる日本人社員がいる企業なら難しくありません。問題は、同程度の技能を持つ日本人が社内にいない場合です。運用要領はこの場合の説明の仕方を、賃金規程の有無で分けて示しています。
| 社内の状況 | 何を根拠に説明するか |
|---|---|
| 同程度の技能等を有する日本人労働者がいる | その人と職務内容・職務に対する責任の程度が同等であることを説明したうえで、報酬額が同等以上であることを説明する |
| いない/賃金規程がある | 賃金規程に照らし、自社の報酬体系のなかでどう位置づけられるかという観点から説明する |
| いない/賃金規程がない | 職務内容と責任の程度が最も近い職務を担う日本人労働者と比べて、どのように異なるかという観点から説明する |
説明は特定技能外国人の報酬に関する説明書(参考様式第1-4号)に記載して提出します。
金額の設定でとくに注意が要るのが、技能実習からの移行者です。運用要領は、技能実習2号修了者はおおむね3年程度、技能実習3号修了者はおおむね5年程度の経験者として取り扱う必要があるとしています。つまり、技能実習2号修了時の報酬額を上回れば足りるのではなく、実際に3年程度・5年程度の経験を積んだ日本人技能者に支払っている報酬額とも比較して設定する必要があります。なお「報酬」には、通勤手当・扶養手当・住宅手当など実費弁償の性格を持つもの(課税対象となるものを除く)は含まれません。
基準2:受入れ機関(企業)自体が適切であること——省令第2条第1項の17項目
ここがこの記事の中心です。企業そのものについて、運用要領は17の項目を挙げています。まず一覧で全体を見てから、実務で引っかかりやすいものを個別に見ていきます。
17項目の一覧——何を求められ、いつまで遡り、何で証明するか
| # | 求められること | 遡って見られる期間 |
|---|---|---|
| 1 | 労働・社会保険・租税に関する法令を遵守していること(あっせん事業者から求人紹介を受ける場合は、その事業者が職業安定法上の許可・届出を得ていることを含む) | 社会保険料・国民年金は申請月の前々月までの24か月分、住民税・国民健康保険は直近2年度分 |
| 2 | 同種の業務に従事していた労働者に非自発的離職を発生させていないこと | 契約締結日の前1年以内と締結日以後 |
| 3 | 自社の責めに帰すべき事由による外国人の行方不明者を発生させていないこと | 契約締結日の前1年以内と締結日以後 |
| 4 | 関係法律による刑罰を受けていないこと(労働基準法・職業安定法・最低賃金法・入管法など、条文が列挙されています) | 刑の執行を終わった日等から5年 |
| 5 | 技能実習の実習認定の取消しを受けていないこと(取消し当時の役員だった人も対象) | 取消しの日から5年 |
| 6 | 出入国または労働関係法令に関する不正行為を行っていないこと(暴行・脅迫・監禁、旅券や在留カードの取り上げ、報酬の不払い、私生活の自由の不当な制限、届出をしない・虚偽の届出 など) | 契約締結日の前5年以内と締結日以後 |
| 7 | 暴力団員等でないこと、暴力団員等に事業活動を支配されていないこと | 暴力団員でなくなった日から5年 |
| 8 | 行為能力・役員等の適格性(精神の機能の障害により契約の適正な履行に必要な認知・判断・意思疎通ができない者、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、これらに該当する役員がいる法人 に当たらないこと) | — |
| 9 | 特定技能外国人の活動状況に係る文書(名簿・帳簿ほか)を作成し、事業所に備え置くこと | 特定技能雇用契約の終了日から1年以上 |
| 10 | 保証金の徴収・財産の管理・違約金契約などがあることを認識して契約していないこと/自社も違約金契約を結んでいないこと | — |
| 11 | 1号特定技能外国人の支援に要する費用を本人に負担させないこと(直接・間接を問わず) | — |
| 12 | 派遣形態で受け入れる場合、派遣元が分野の業務を行っている者であるなどの条件を満たすこと | — |
| 13 | 労災保険に係る保険関係成立の届出などの措置を講じていること(暫定任意適用事業の場合は労災保険に類する民間保険への加入) | — |
| 14 | 特定技能雇用契約を継続して履行する体制(財政的基盤)が整備されていること | — |
| 15 | 報酬を本人の指定する預貯金口座への振込み等、実際に支払われた額を確認できる方法で支払うこと | — |
| 16 | 地方公共団体から共生施策への協力を要請されたときは必要な協力をすること | — |
| 17 | 分野に特有の基準(告示で定められている場合)に適合すること | 分野による |
この列が示すのは遡って適合性を判定される期間です。該当するのは1年(2番・3番)と5年(4〜7番)で、基準3側にこれと別に2年(支援体制の実績要件)と5年(支援を怠ったこと)があります。残りの項目は「今その状態か」を問うものです。⚠️ 1番の「24か月分・2年度分」は提出する書類の対象期間、9番の「1年以上」は帳簿の保存期間で、いずれも遡及判定の期間ではありません。
証明に使う主な書類(初回申請時・項目別)
- 1番(法令遵守) — 労働保険料等納付証明書(未納なし証明)、社会保険料納入状況照会回答票または保険料領収証書の写し、納税証明書(その3)、法人住民税の納税証明書、雇用の経緯に係る説明書(参考様式第1-16号)
- 2番・3番(非自発的離職者・行方不明者) — 特定技能所属機関概要書(参考様式第1-11-1号)
- 4番・5番(刑罰・実習認定の取消し) — 登記事項証明書、役員の住民票の写し。4番は、住民票の写しの提出を省略する役員がいる場合、これに役員に関する誓約書(参考様式第1-23号)が加わります
- 6〜8番(不正行為・暴力団関係・行為能力等) — 運用要領は個別の確認書類を定めていません
- 9番(名簿・帳簿) — 提出書類ではなく備置き義務です(実地調査等で提示を求められます)
- 10番(保証金・違約金) — 雇用の経緯に係る説明書(参考様式第1-16号)
- 11番(支援費用の負担) — 雇用の経緯に係る説明書、1号特定技能外国人支援計画書(参考様式第1-17号)
- 12番(派遣形態) — 特定技能所属機関概要書、派遣計画書(参考様式第1-12号)、派遣先の概要書(農業=参考様式第1-14号/漁業=参考様式第1-15号)、労働者派遣契約書の写し、分野ごとに定める書類
- 13番(労災保険) — 雇用条件書の写し、労働保険関係の書類、(暫定任意適用事業の場合)労災保険に類する民間保険の加入証明
- 14番(継続履行体制) — 特定技能所属機関概要書。直近期末・直近2期末に債務超過がある場合は、第三者による改善見通しの評価書面などが加わります
- 15番(口座振込み) — 雇用条件書の写し(参考様式第1-6号)。口座振込み以外の方法で支払った場合は、定期届出の際に報酬支払証明書(参考様式第5-7号)
- 16番(共生施策への協力) — 協力確認書(提出先は入管ではなく市区町村)
- 17番(分野特有の基準) — 分野ごとに定める書類(分野別の運用要領を参照)
ここに挙げた書類は、初めて受け入れるときに必要になる代表的なものです。2回目以降は多くが提出を省略できます(詳しくは記事末尾の「2回目以降は書類の提出を省略できる」)。また、地方出入国在留管理局は実地調査等を行うことがあり、必要に応じて追加の資料を求められることがあります。申請時にそろえる書類の全体像(本人分・企業分・分野分・様式番号つき)は特定技能の申請に必要な書類一覧で整理しています。書類の側から「何を立証するための書類か」を引ける要件との対応表も同記事にあります。
非自発的離職は「全社の解雇」ではなく「同種の業務」に限られる
2番の非自発的離職者は、誤解されやすい項目です。対象になるのは、特定技能外国人に従事させる業務と同様の業務に従事していた労働者であり、しかもフルタイムで雇用されている日本人・中長期在留者・特別永住者の従業員に限られます(パートタイムやアルバイトは含みません)。全社のどこかで退職者が出たら該当する、というものではありません。
一方で、該当する離職者を1名でも発生させていれば基準に適合しないという厳しさもあります。「非自発的に離職させた」に当たるのは次の場合です。
- 人員整理を行うための希望退職の募集または退職勧奨を行った場合(天候不順や自然災害の発生、感染症の影響により、経営上の努力を尽くしても雇用の維持が困難な場合は除きます)
- 労働条件に係る重大な問題(賃金低下、賃金遅配、過度な時間外労働、採用条件との相違など)があったと労働者が判断したもの
- 就業環境に係る重大な問題(故意の排斥、嫌がらせなど)があった場合
- 特定技能外国人の責めに帰すべき理由によらない有期労働契約の終了
逆に、定年などによる退職、自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇、自発的な離職、そして一定の条件を満たす有期労働契約の不更新は、除外されます。該当するかどうかの判断は、まず地方出入国在留管理局に相談することとされています。
行方不明者は「自社の責めに帰すべき事由」があるときだけ
3番の行方不明者も、発生しただけで直ちに基準に適合しなくなるわけではありません。基準が問うのは「特定技能所属機関の責めに帰すべき事由により」発生させていないことです。運用要領は「責めに帰すべき事由」を、雇用条件どおりに賃金を適正に支払っていない場合や、1号特定技能外国人支援計画を適正に実施していない場合など、法令違反や基準に適合しない行為が行われていた期間内に行方不明となった場合と説明しています。そうした事情があった場合は、人数に関係なく1人でも発生させていれば基準に適合しません。
対象になる「外国人」には、実習実施者として受け入れた技能実習生も含まれます。また、行方不明者を発生させた企業が基準不適合を免れるために別会社を作った場合、実質的に同一の機関と判断され、その別会社も行方不明者を発生させた機関として取り扱われることがあります。
6番の「不正行為」は列挙で閉じていない
6番の不正行為は、省令が11の行為を挙げていますが、条文は「次に掲げる行為その他の出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為」という書き方で、列挙は例示であって限定ではありません。運用要領はさらに踏み込んで15の類型を挙げており、そこには偽変造文書等の行使・提供、届出の不履行または虚偽の届出、報告徴収に対する妨害、改善命令違反、不法就労者の雇用、労働関係法令違反、支援計画に基づく支援における不正行為などが含まれます。「省令に書かれた11個に当たらなければ大丈夫」とは読めない項目です。
社会保険料や税金の未納があると即アウトか
1番の法令遵守は、実務でもっとも不安を持たれる項目です。ここには回復の経路が明記されています。
労働保険料・社会保険料・税のいずれも、未納があった場合でも、地方出入国在留管理局の助言・指導に基づいて納付(納付手続)を行った場合には、それぞれ労働関係法令・社会保険関係法令・租税関係法令を遵守しているものと評価されます(換価の猶予・納付の猶予などの緩和措置や、猶予制度〔分割納付〕の許可を受けている場合を含みます。税は税務署等に相談のうえ必要な手続きを行うこととされています)。猶予を受けている場合は、猶予期間内であることが分かる通知書の写し等を提出します。
つまり、未納の存在それ自体より、指摘を受けた後に納付手続へ進めるかどうかが見られる構造になっています。
ただし回復の経路が用意されていない未納が1つあります。特定技能外国人から特別徴収した個人住民税を企業が納入していないことに起因して個人住民税の未納があると判明した場合、運用要領は「租税関係法令を遵守しているものとは評価しません」と明記しています。本人の給与から預かった税金を納めていない、という性質の違いによるものです。
赤字・債務超過の会社でも受け入れられるか
14番の「継続して履行する体制」は、財政的基盤を問う項目です。ここに「黒字であること」「資本金がいくら以上であること」「設立から何年経っていること」といった条項はありません。運用要領は、事業年度末における欠損金の有無・債務超過の有無等から総合的に判断されるとしたうえで、債務超過がある場合の追加書類を定めています。
| 直近期末の状況 | 追加で必要になる書類 |
|---|---|
| 債務超過なし(純資産・元入金がプラス) | 特定技能所属機関概要書のみ |
| 直近1期が債務超過 | 中小企業診断士・公認会計士など、企業評価を行う能力があると認められる公的資格を有する第三者が、改善の見通しについて評価を行った書面 |
| 直近2期とも債務超過 | 第三者による改善見通しの評価書面に加えて、労働保険料・社会保険料・租税の納付に関する領収書の写しや証明書 |
債務超過は「提出書類が増える事由」であって、受け入れを一律に禁じる事由としては定められていません。 ただし提出した書面をもとに総合的に判断されるため、結果を保証するものではありません。
人材紹介会社を使うなら、その事業者の許可も要件のうち
1番の法令遵守には、見落とされやすい条件が含まれています。特定技能外国人との雇用契約についてその成立のあっせんを行う者がいる場合、職業安定法第30条・第33条・第33条の3に基づく無料職業紹介の届出もしくは許可、または有料職業紹介事業の許可を得ている者から求人のあっせんを受けていることが求められます(船員に該当する場合は船員職業安定法上の許可)。
つまり、紹介会社が許可を持っていないと、企業側の要件が満たせません。確認方法も定められていて、あっせん事業者がいる場合は厚生労働省の人材サービス総合サイトの画面を印刷したものを提出します。なお、雇用の経緯に係る説明書(参考様式第1-16号)は、あっせんする者の有無にかかわらず提出します。
名簿と帳簿を事業所に1年以上——支援の記録とは別物
9番の「活動状況に係る文書」は、支援の記録とは別の書類です。混同されやすいので、2つの違いを整理します。
| 書類の種類 | 誰の基準か | 何を記録するか | 保存期間 |
|---|---|---|---|
| 特定技能外国人の管理簿(名簿・帳簿) | 受け入れ企業(省令第2条第1項第5号) | 氏名・国籍・在留資格・在留カード番号などの名簿と、就労場所・業務内容・雇用状況・労働保険と社会保険の適用状況・安全衛生の確保状況・受入れに要した費用の額と内訳・支援に要した費用の額と内訳・休暇の取得状況(一時帰国休暇を含む)・行政機関からの指導や処分の内容の帳簿 | 特定技能雇用契約の終了日から1年以上 |
| 1号特定技能外国人支援の状況に係る文書 | 支援の実施(同条第2項第3号) | 支援体制・委託契約・支援対象者・支援の実施の4つの管理簿 | 特定技能雇用契約の終了日から1年以上 |
「活動の内容に係る文書」には、上の管理簿のほか雇用契約の内容・雇用条件・賃金台帳等・出勤簿等も含まれます。登録支援機関に全部委託していても、この左側は企業自身の義務として残ります。 右側の支援記録の様式と中身は義務的支援10項目で詳しく解説しています。
保証金・違約金・支援費用——お金にまつわる3つの禁止
10番・11番は、送出し側の慣行に企業が巻き込まれることを防ぐための項目です。
- 保証金の徴収等 — 外国人本人やその配偶者・親族などが、他の者から保証金を徴収されていたり財産を管理されていたりする場合に、そのことを認識したうえで雇用契約を締結していないことが求められます。
- 違約金契約 — 契約の不履行について違約金を定める契約や、不当に金銭の移転を予定する契約を、自社が締結していないことが求められます。渡航費や当面の生活費を貸し付けること自体は差し支えありませんが、一定期間の勤務を条件に返済を免除する契約や、途中退職で残額を一括返済させる契約は、これに当たります。
- 支援費用の負担 — 義務的支援に要する費用(登録支援機関への委託費用を含みます)を、直接・間接を問わず本人に負担させないことが求められます。住宅の賃貸料などの実費を必要な限度で本人に負担してもらうことは妨げられません。どの費目を本人に負担してもらえるかの線引きは義務的支援10項目で整理しています。
自社が欠格事由に該当しないかの確認や、在留資格の申請手続き・申請書類の作成は、行政書士などの専門家の領域です。判断に迷う場合は、行政書士などの専門家と連携して進めてください(登録支援機関の業務は支援計画の策定と各種支援の実施であり、申請取次や書類作成はその範囲外です)。
基準3:支援体制と支援計画の実施(省令第2条第2項の7項目)
1号特定技能外国人には、生活・就労の支援が義務づけられます。その支援計画が適正に実施されることを確保するための基準が、次の7項目です。
| # | 求められること | 補足 |
|---|---|---|
| 1 | 支援体制があること(過去2年間の中長期在留者の受入れ・管理の実績、または生活相談業務の経験者、もしくは同程度と認められる者)+支援責任者と、事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること | 支援責任者は支援担当者を兼ねることができます |
| 2 | 外国人が十分に理解できる言語で支援できる体制があること | 通訳人を職員として雇い入れる必要はなく、必要なときに委託などで確保できれば足ります |
| 3 | 支援の実施状況に係る文書を作成し、事業所に契約終了日から1年以上備え置くこと | 17項目の9番(活動状況の名簿・帳簿)とは別の書類です |
| 4 | 支援責任者・支援担当者が中立な立場であり、かつその個人が第1項第4号イからル(役員を持つ法人に関するヲ、事業活動の支配に関するワを除いた範囲)に該当しないこと | 外国人に指揮命令権を持つ人は不可。組織図の縦のライン(代表取締役、その外国人が所属する部署を監督する部長など)は適格性がありません |
| 5 | 5年以内に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと | 契約締結日前5年以内と締結日以後 |
| 6 | 3か月に1回以上の定期面談を実施できる体制があること | 本人だけでなく、監督する立場にある人とも面談します |
| 7 | 分野に特有の基準(告示で定められている場合)に適合すること | 分野別の運用要領を参照 |
全部委託で「みなされる」のはこの7項目だけ
支援計画の全部を登録支援機関に委託した場合、入管法第2条の5第5項により、この7項目に適合するものとみなされます。社内に多言語対応や支援担当者の体制がなくても、全部委託を選べば受け入れを進められる、というのはこの規定によるものです。
ただし、みなしが及ぶ範囲は限定されています。
- みなされるのは省令第2条第2項の7項目だけ — 前の章で見た第1項の17項目は、委託しても企業に残ります。未納も、非自発的離職者も、名簿・帳簿の備え置きも、委託で解決するものではありません。
- 支援計画を作成すること自体は企業の義務 — 全部委託しても、支援計画を作成するのは受け入れ企業です(作成にあたって委託先の援助を受けることは差し支えありません)。
- 全部委託は1社にしか出せません — 支援計画の全部の実施を複数の登録支援機関に分けて委託することはできません(自社が7項目の基準を満たしている場合に限り、自社の責任のもとで複数の第三者に委託できます)。
- 委託を受けた登録支援機関による再委託は認められません(支援業務の履行を補助する範囲で通訳人を活用することは差し支えありません)。
- 一部委託の場合、「定期的な面談の実施・行政機関への通報」だけは第三者へ委託できません(委託の範囲ごとの線引きは義務的支援10項目で整理しています)。
自社支援を選ぶ場合の実績要件の3ルート、支援責任者・支援担当者の選任と兼任、中立性の具体的な線引きは自社支援か委託かで詳しく解説しています。委託先の選び方は登録支援機関の選び方、契約前の確認は契約前チェックリストをご覧ください。
分野ごとの上乗せ要件——「申請の前」に終わらせておく手続き
17項目の最後(17番)にある「分野に特有の基準」は、分野ごとの告示で定められます。ここで最も重要なのは、いくつかの手続きが在留資格の申請より前に完了していないと、申請そのものが出せないという点です。採用スケジュールを組むときの制約になります。
| 申請の前に終えるもの | 内容 |
|---|---|
| 分野別協議会への加入 | 全17分野の運用要領(別冊)を確認したところ、建設を除く16分野が「当該特定技能外国人に係る在留諸申請の前に」加入することを求めています(15分野は分野別協議会へ、工業製品製造業は経済産業大臣の登録を受けた登録法人へ——協議会には登録法人が加入する建て付けです)。令和6年6月15日以降は、初めて受け入れる場合であっても「構成員であることの証明書」の提出が必要です(外食業などでは登録支援機関にも同じ証明書の提出が求められます)。⚠️「受入れ後4か月以内に加入すればよい」と書かれた資料が残っていますが、これは令和6年6月15日より前の旧ルール(一部の分野にあった、入国後4か月以内に加入する旨の誓約書を提出する方式)です。自社の分野がどの協議会か(全17分野の協議会名・所管省庁・加入の期限)は分野別協議会の一覧にまとめています |
| 市区町村への協力確認書 | 17項目の16番(共生施策への協力)に対応する手続きです(様式・記載内容と2025年4月からの経緯は義務的支援10項目で解説しています)。初めて受け入れる場合は、雇用契約の締結後・在留資格認定証明書交付申請または在留資格変更許可申請を行う前に、既に受け入れている場合は在留資格変更許可申請または在留期間更新許可申請を行う前に、市区町村へ提出します。事業所の所在地と住居地の両方の市区町村が対象(同一なら1通)で、一度提出すれば記載事項に変更がない限り再提出は不要です |
| 建設分野の受入計画の認定(⚠️申請前ではなく許可・交付まで) | 建設分野は構造が違います。協議会の構成員となるのは国土交通大臣の登録を受けた登録法人であり、企業側に求められるのは建設特定技能受入計画の国土交通大臣による認定と、登録法人の構成員である建設業者団体への加入(いずれの団体にも加入していない場合は、企業自身が登録法人の構成員となること)です。⚠️ 受入計画は「申請後・認定前」でも在留諸申請を出せますが、在留諸申請の許可・交付を受けるには認定証の写しの提出が必要です |
| 健康診断の受検 | 本人側の要件ですが、企業のスケジュールを縛ります。新規入国の場合は申請日から遡って3か月以内、在留中からの変更の場合は1年以内に受けた健康診断であることが求められます |
| オンライン申請・電子届出の利用者登録 | 必須ではありませんが、適格性書類の提出を省略する制度を使うには事前登録が要り、完了までに一定期間かかります |
申請そのものの手数料は、在留資格認定証明書交付申請が無料、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請がオンライン5,500円・窓口6,000円です(オンラインのほうが安く設定されています)。書類の作成や申請取次を行政書士などの専門家に依頼する場合は、別途その報酬がかかります。
このほか、分野によって次のような上乗せがあります。
- 受け入れ人数枠 — 制度全体としては、原則として企業ごとの受入れ人数枠は設けられていません。ただし一部の分野には枠があります(介護は事業所の日本人等の常勤介護職員(技能実習生・EPA介護福祉士候補者・留学生を含みません)の総数が上限、建設は1号特定技能外国人の総数が常勤職員の総数を超えないこと=分母から1号特定技能外国人と技能実習生を除きます)。具体的な数え方は介護の人数枠(事業所単位の上限)・建設分野の特定技能採用をご覧ください。
- 雇用形態の制限 — 労働者派遣の形態が認められているのは農業・漁業のみです(2026年4月1日時点)。この場合、派遣元にも基準が課されます(17項目の12番)。
- 追加の負担金・遵守事項 — 分野によって定められています。自社の分野の内容は特定技能で受け入れできる分野一覧から確認できます。
受け入れ後に企業が負う「3つの義務」
要件を満たして受け入れた後も、企業は次の義務を継続して負います。
雇用契約の確実な履行
報酬の支払い、労働条件の遵守など、結んだ雇用契約を確実に履行します。支援の適切な実施
支援計画に沿って義務的支援を実施します。登録支援機関に委託している場合も、受け入れ企業として実施状況に責任を持ちます。出入国在留管理庁への各種届出
受け入れ状況の定期届出(年1回)のほか、雇用契約や支援内容に変更があったときの随時届出(事由が生じた日から14日以内)を行います。
定期届出は「年1回」——毎年5月31日まで
受け入れ・活動・支援実施状況に係る届出(定期届出)は、毎年5月31日までに、前年4月1日からその年の3月31日までの期間について行います(入管法施行規則第19条の18第3項)。届け出る内容には、受け入れている特定技能外国人数、実労働日数、所定内・超過の実労働時間数、現金給与額、賞与、控除額(食費・居住費・税や社会保険料など)、昇給率、支援の実施状況が含まれます。
⚠️ 全部委託していても、支援の実施状況の届出は企業から外れません。 運用要領は「支援計画の実施を登録支援機関に全部委託している場合は、特定技能所属機関が委託先の登録支援機関から支援の実施状況を取りまとめて提出する必要があります」とし、その部分は登録支援機関と情報共有のうえ連名で提出するよう求めています。委託先から実施状況を受け取る段取りを、届出期限から逆算して決めておく必要があります。
一時帰国などで対象期間中にまったく就業していない場合も、すでに退職している場合でも、対象期間中に1日でも所属していれば届出の対象です。届出をしなかった場合・虚偽の届出をした場合は罰則や過料の対象になります。
定期届出を「四半期に一度」と説明している資料が残っていますが、これは年1回へ変更される前のルールです。出入国在留管理庁は「四半期に1度の定期届出の提出は、2025年4月15日までに提出するもので最後」「次回の定期届出の提出は2026年4月以降となり、以後、1年に1回の定期届出が必要」と案内しています。事務負担としてのコスト面は特定技能の維持費・ランニングコストで解説しています。なお入管への届出とは別に、ハローワークへの外国人雇用状況の届出も必要です(2系統あります)。提出先の全体像は特定技能の採用の流れで整理しています。
要件を満たさなくなったら14日以内に届け出る
もっとも見落とされやすいのがこれです。省令第2条第1項各号・第2項各号のいずれかに適合しないこととなる事由が生じたことを知った場合、企業はその認知の日から14日以内に届け出なければなりません(基準不適合に係る届出・参考様式第3-5号、基準不適合に係る説明書は参考様式第5-18号)。届出には、①適合しないこととなる事由とその発生時期・原因 ②特定技能外国人の現状 ③その事由を解消するための措置 を記載します。
運用要領が例示する「基準不適合」は、税金や社会保険料等の滞納が発生したとき、同種の業務に従事していた労働者に非自発的離職を発生させたとき、刑罰を受けたとき・実習認定の取消しを受けたとき・不正行為を行ったとき、外国人に対する暴行・脅迫・監禁や手当や報酬の不払いが発生したとき、などです。
⚠️ 届出が1本で済まない場合があります。 非自発的離職者や行方不明者を発生させたときは、基準不適合の届出に加えて受入れ困難に係る届出(参考様式第3-4号)も必要です。⚠️ 2つは起算日が違います——基準不適合の届出は適合しないと知った日から14日以内、受入れ困難に係る届出は事由が生じた日から14日以内です。基準不適合により受け入れの継続が困難になった場合も、受入れ困難の届出の対象になります。
要件は入口の一度きりの審査ではなく、受け入れている間ずっと満たし続ける継続的な条件だということが、この届出義務からわかります。非自発的離職者・行方不明者の基準が「契約締結日前1年以内と締結日以後」という書き方になっているのも同じ理由です。
満たさないまま続けるとどうなるか——指導から公示まで
要件を満たしていないと認められた場合、いきなり受け入れが止まるわけではなく、段階を踏みます。
指導及び助言(入管法第19条の19)
出入国在留管理庁長官が、雇用契約の基準適合性・その適正な履行・支援計画の基準適合性・その適正な実施などを確保するために必要な指導と助言を行います。運用要領は「速やかにこれに応じなければなりません」としています。報告徴収・立入検査(同第19条の20)
報告や帳簿書類の提出・提示の命令、出頭の要求、質問、事業所への立入検査が行われます。これを拒んだり虚偽の回答をしたりした場合は、30万円以下の罰金の対象です(同第71条の4第2号)。改善命令(同第19条の21)
指導・助言を受けても必要な措置が講じられない場合、期限を定めて改善に必要な措置をとるよう命じられます。運用要領は、この命令が「違反行為そのものの是正はもとより、違反行為を起こすような受入れを行っていることそのものの改善を目的として発せられる」と説明しています。公示
改善命令をしたときは、その旨が公示されます(同第19条の21第2項)。運用要領は「不適正な受入れを行っていたことが周知の事実となります」と明記しています。命令に従わない・違反した場合は、6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です(同第71条の3)。
支援を怠った場合にどう発覚するかは義務的支援10項目でも解説しています。
自社で満たせるかを確認する——満たせないとき、いつから受け入れられるか
24項目の多くは、納付手続・契約や運用の是正・書類の用意で動かせます。入口で止まるのは、「1年」「5年」の時間の経過を待つしかない項目と、助言・指導による回復の経路が用意されていない例外(特定技能外国人から特別徴収した個人住民税の未納入)です。次のチェックを、社内で確認できる順にたどってください——確認は部署をまたぎます(納付状況と純資産は経理・財務、退職者と賃金規程は人事・労務、役員の欠格事由は総務・法務、支援担当者と帳簿の置き場所は現場、協議会と紹介会社の許可は経営・調達)。「いいえ」が1つでもある項目が、自社の論点になります。
「いいえ」がついた項目の解消の仕方は、2つに分かれます。
- 動けば解消できる — 保険料・税の未納(上の「即アウトか」で見た納付の経路)、労災保険の成立届、報酬の口座振込み、名簿・帳簿の作成と備え置き、支援費用の負担・違約金契約の是正、あっせん事業者の見直し。債務超過(第三者による改善見通しの評価書面)と支援体制がない場合(登録支援機関への全部委託で第2項の7項目に適合するとみなされます)も、書類・契約で進められます。
- 時間の経過を待つしかない — 非自発的離職者・行方不明者の1年と、刑罰・実習認定の取消し・出入国と労働関係法令の不正行為・暴力団関係・支援を怠ったことの5年です。
待つグループは、起算点に注意してください。非自発的離職者・行方不明者の1年と、不正行為・支援を怠ったことの5年は特定技能雇用契約の締結の日を基準に遡って見るため、該当する事由から期間が経過した後に雇用契約を締結すれば、その時点では基準を満たし得ます(ただし締結日以後も発生させないことが引き続き求められます)。刑罰・実習認定の取消し・暴力団関係の5年は、刑の執行を終わった日等・取消しの日・暴力団員でなくなった日というそれぞれの起算日から数えます。
つまずきやすいのは「見落としていた未納」
要件そのものを知らなかったというより、自社では把握していなかった不適合でつまずく形が運用要領の記載から読み取れます。代表的なものは次の3つです。
- 特別徴収した個人住民税の未納入 — 上で見たとおり、これだけは助言・指導による回復の対象外です。給与計算を外部に任せている場合ほど、企業側が気づきにくい類型です。
- グループ会社の未納 — グループ通算制度に加入している場合、他の通算法人に未納があって納税証明書(その3)が提出できないときは、租税関係法令を遵守しているものと評価されません。自社の納付が完全でも止まります。
- 別会社での受け直し — 上の「行方不明者」で触れたとおり、別会社を作っても実質的に同一の機関と判断されることがあります。
2回目以降は書類の提出を省略できる
初回はここまで見てきた確認書類を一式そろえる必要がありますが、一定の条件を満たすと、在留諸申請の際にこれらの「適格性書類」の提出を省略できます(省略した分は、年1回の定期届出の添付書類として提出します。ただし定期届出の側でも、下記2つ目のルートの基準〔①〜③〕を満たす機関は、適格性書類に代えて一定の事業規模及び基準適合性に関する誓約書〔参考様式第5-16号〕・書類省略に当たっての誓約書〔参考様式第1-29号〕等の提出で済む取り扱いです)。
省略できるのは、次のいずれかに当たる場合です。
- 同一年度内にすでに特定技能外国人を受け入れていること、または
- ①過去3年間に指導勧告書の交付・改善命令処分を受けておらず ②在留諸申請をオンライン申請、各種届出を電子届出で行い ③一定の実績があり適正な受入れを行うことが見込まれる機関であること
③の「一定の実績」には、上場企業、保険業を営む相互会社、イノベーション創出企業、一定の条件を満たす企業等、前年分の給与所得の源泉徴収税額が1,000万円以上ある団体・個人、申請時点で特定技能所属機関として3年間の継続した受入れ実績を有し、過去3年間に債務超過となっていない法人、のいずれかが挙げられています。
オンライン申請・電子届出には事前の利用者登録が必要で、登録の完了までに一定期間かかります。継続的に受け入れる予定があるなら、1回目の時点で登録を進めておくと2回目以降の負担が下がります。
⚠️ 2つ目のルート(①〜③)には落とし穴があります。 このルートの条件には「在留諸申請をオンライン申請、各種届出を電子届出で行うこと」(②)が含まれるため、各種届出を地方出入国在留管理局へ持参・郵送で出すと、このルートでの「提出書類の省略を認める機関」には当たらなくなります。②のルートで省略を受け続けたいなら、届出は電子届出に統一しておくのが安全です(なお、同一年度内にすでに受け入れているという1つ目のルートに電子届出の条件はありません=紙で届出をしていても、同一年度内の追加申請では省略できます)。省略できるのは適格性書類のほか、特定技能外国人の報酬に関する説明書(参考様式第1-4号)・雇用の経緯に係る説明書(参考様式第1-16号)も含まれます。なお、省略した場合でも地方出入国在留管理局から求められたときは提出が必要で、派遣雇用で、派遣認定期間の満了日が在留期間の満了日(認定証明書交付申請では申請日時点)から7月以内の場合は省略が認められません。
採用全体の進め方は特定技能の採用の流れ、申請で用意する書類の全体像は特定技能の申請に必要な書類一覧をご覧ください。
まとめ
特定技能で外国人を受け入れる企業の要件は、案内資料の「4基準+3義務」の下に省令の各条という実体があり、企業そのものについて審査されるのは省令第2条の24項目です。入口で止まるのは「1年」「5年」の待ちが必要な項目と一部の例外(特別徴収した個人住民税の未納入など)で、残りの多くは手続きと書類で動かせます(いずれも提出書面をもとに総合的に判断されるもので、結果を保証するものではありません)。
受け入れ後に向けては、委託しても企業に残る義務、申請の前に終わらせる手続き(協議会加入・協力確認書)、満たせなくなったことを知った日から14日以内の届出——この3つが、体制とスケジュールの締めどころになります。
制度の全体像は特定技能採用の完全ガイド、自社支援か委託かの判断は自社支援か委託か、費用の目安は特定技能の採用費用・相場をご覧ください。
上のチェックで「いいえ」がついた項目をどう埋めるか相談したい場合は、条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します。支援体制の組み方、委託する範囲と費用の見積もり、分野別協議会の手続きの進め方などの相談先としてお使いください(要件に該当するかどうかの法令上の判断は、地方出入国在留管理局または行政書士などの専門家にご確認ください。提携先のサービスをご紹介しています)。
よくあるご質問
- 特定技能で外国人を受け入れる企業に求められる要件は何ですか?
- 案内資料では「①雇用契約が適切 ②機関自体が適切 ③支援体制がある ④支援計画が適切」の4基準にまとめられますが、実際に審査されるのは省令の各条です。①=特定技能基準省令第1条、②=同省令第2条第1項(運用要領は17の項目に展開)、③=同条第2項(7項目)、④=同省令第3条・第4条です。このほか、受け入れ後の3つの義務(雇用契約の履行・支援の実施・各種届出)と、協議会への加入など分野ごとの上乗せ要件があります。
- 社会保険料や税金の未納があると特定技能は受け入れられませんか?
- 未納があること自体は基準に適合しない状態ですが、運用要領は、地方出入国在留管理局の助言・指導に基づいて納付した場合には労働関係法令・社会保険関係法令・租税関係法令を遵守しているものと評価される、としています(換価の猶予・納付の猶予などを受けている場合は、猶予期間内であることが分かる通知書の写しで確認されます)。ただし例外があり、特定技能外国人から特別徴収した個人住民税を企業が納入していないことに起因する未納は、遵守しているものとは評価されません。個別の可否は地方出入国在留管理局にご確認ください。
- 赤字や債務超過の会社でも特定技能を受け入れられますか?
- 基準に「黒字であること」「一定の資本金があること」といった条項はありません。求められるのは特定技能雇用契約を継続して履行する体制(財政的基盤)で、直近期末に債務超過がある場合は、中小企業診断士・公認会計士など企業評価を行う能力があると認められる公的資格を持つ第三者が改善の見通しを評価した書面を提出することとされています。直近2期末とも債務超過の場合は、これに加えて労働保険料・社会保険料・租税の納付に関する資料の提出が求められます。
- 支援体制がない企業でも特定技能で採用できますか?
- 1号特定技能外国人には生活・就労の支援が義務づけられますが、支援計画の全部を登録支援機関に委託した場合、入管法第2条の5第5項により、支援計画の適正な実施に関する基準(省令第2条第2項の7項目)に適合するものとみなされます。ただし、みなしが及ぶのはこの7項目だけで、雇用契約の適正な履行に関する17項目(同条第1項)は委託しても企業に残ります。支援計画を作成すること自体も企業の義務として残ります。
- 受け入れ要件を満たさなくなったときはどうすればよいですか?
- 特定技能基準省令第2条第1項各号・第2項各号のいずれかに適合しないこととなる事由が生じたことを知った場合、受け入れ企業はその認知の日から14日以内に、出入国在留管理庁へ届け出る必要があります(基準不適合に係る届出)。届出には、事由とその発生時期・原因、特定技能外国人の現状、その事由を解消するための措置を記載します。
- 要件を満たさないまま受け入れを続けるとどうなりますか?
- 出入国在留管理庁長官による指導・助言から始まり、報告徴収(拒否や虚偽の回答は30万円以下の罰金)、改善命令へと進みます。改善命令が出されると、その旨が公示されます。命令に従わない場合・違反した場合は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象です。運用要領は公示について「不適正な受入れを行っていたことが周知の事実となります」と説明しています。