特定技能は自社支援できる?要件と2027年4月の常勤化、登録支援機関からの切り替え
目次
特定技能1号で外国人材を受け入れる企業には、生活や仕事の支援を実施する義務があります。「自社だけで支援体制を作れるのか」と迷う採用担当者に向けて、結論を先に言うと——支援責任者・支援担当者を選任し、中立性や理解できる言語での対応など、出入国在留管理庁が定める支援体制の基準を満たせば、特定技能の支援は自社で行えます。ただし前提が1つ変わります。2027年4月1日施行の省令改正で、支援責任者・支援担当者の常勤化と人数の基準が、受け入れ企業側の要件に加わります。このページで、自社支援に必要な要件、2027年4月からの変更点、委託費の年額と自社の体制コストを並べる判断の手順、そして委託から自社支援へ切り替える手順までを整理します。
この記事の要点
- 自社支援は要件を満たせば可能 — 過去2年間に中長期在留者の受入れ・管理を適正に行った実績のある企業がその役員・職員から選任するか、過去2年間の生活相談業務の経験がある役員・職員を選任します(個別に認められるルートもあります)。中立性・欠格事由の基準も満たす必要があります。
- 委託費の年額は人数に比例して増える — 出入国在留管理庁の集計(令和4年9月末時点)の平均月額で1人あたり年約34.1万円・10人なら年約340.6万円(編集部算出)。自社の体制コストと並べる判断の手順を本文で示します。
- 2027年4月1日から選任の基準が変わる — 施行日以降の新規申請では、支援責任者・支援担当者を事業所ごとに1名以上ずつ常勤の役員・職員から選任し、事業所ごとの支援担当者の数が「支援を担当する外国人の数÷50」を超えている必要があります(令和7年法務省令第45号。施行の際すでに在留している人の契約は従前の基準)。
- 体制が難しい場合は、委託で基準を満たしたとみなされる — 支援計画の全部を登録支援機関に委託すれば、企業は支援体制の基準を満たすものとみなされます。
- 委託から自社支援への切り替えは、届出2本を14日以内に — 支援体制の基準を満たせることを確認したうえで、支援委託契約に係る届出と支援計画変更に係る届出を、それぞれ事由が生じた日から14日以内に提出します(受入れ企業自身の義務)。
支援体制の要件は入管法令で定められ、改正されることがあります。本記事は概要です。自社支援を検討する場合は、最新の運用要領で体制の基準を必ず確認してください。
自社支援とは(委託に頼らない選択)
特定技能1号の支援(義務的支援10項目)は、受け入れ企業が自社で実施することも、登録支援機関に委託することもできます。自社支援とは、このうち登録支援機関に委託せず、企業自身が支援計画に沿って支援を実施する形です(支援計画の義務があるのは1号だけで、特定技能2号にはありません)。[1]
支援は全部を自社で行うことも、一部だけを自社で行い残りを委託する「一部委託」にすることもできます。結論としては、出入国在留管理庁が定める支援体制の基準(後述)を満たせば、自社支援は制度上可能です。自社支援を行うのに、登録支援機関としての登録は必要ありません(登録は、委託を受けて支援業務を行う機関のための制度です)。なお、受け入れ企業が所定の要件を満たして登録支援機関になること自体はできますが、法務省のQ&Aは密接な関係を有する受け入れ機関に所属する外国人の支援はできないとしています=自社やグループ会社の外国人を「登録支援機関として」支援する形はとれません(登録の制度は登録支援機関とは)。[2]基準を満たすのが難しい場合の現実的な選択肢が、登録支援機関への委託です。
自社支援に必要な体制(支援体制の基準)
自社で支援する場合、受け入れ企業は出入国在留管理庁が定める「支援体制に関する基準」を満たす必要があります。基準の柱は次の4つです(このほかの基準もこの節の末尾にまとめます)。
1. 実績・経験の要件(3つのルートのいずれかに該当)
支援責任者・支援担当者を選任するには、企業(または選任される人)が次のいずれかに該当する必要があります。
- 受け入れ実績ルート — 過去2年間に中長期在留者の受入れまたは管理を適正に行った実績がある企業で、その役員・職員から支援責任者・支援担当者を選任する。実績は企業側の要件で、数えられるのは就労できる在留資格(技術・人文知識・国際業務や技能実習など)で在留する中長期在留者の受入れ・管理です=留学生のアルバイトや、永住者・定住者など身分にもとづく在留資格の雇用実績は対象になりません。登録支援機関に委託して特定技能の人を雇用してきた期間も、雇用した実績として認められます=まず委託で始めて2年後に自社支援へ移る道が制度上あります。
- 相談業務経験ルート — 役員・職員のうち、過去2年間に中長期在留者の生活相談業務に従事した経験がある人を、支援責任者・支援担当者として選任する。生活相談業務とは、生活に必要な契約の支援・生活オリエンテーション・定期的な面談として行う内容などを指し、求人情報を紹介する行為だけでは該当しません(個人的な人間関係にもとづく相談も実績になりません)。該当者が社内にいない場合、経験者を役員・職員として迎えて満たすこともできます。
- 個別認定ルート — 上記2つと同程度に支援業務を適正に実施できると個別に認められた場合。実務では、日本人労働者等を適正に雇用してきた実績(労働基準監督署から是正勧告を受けていないことなど)を含め、提出資料にもとづき個別に判断されます。
初めて外国人材を受け入れる企業(中長期在留者の受入れ実績がなく、相談業務の経験者もいない企業)は、このいずれのルートも満たしにくいのが実情です。これが「初めての受け入れは委託が現実的」と言われる主な理由になっています。なお、設立まもない会社で在籍する外国人が代表者本人だけの場合(いわゆる一人親方・個人事業主)、その代表者自身の在留は「第三者の受入れ実績」とは認められません。[3]
どのルートを選ぶかで、在留資格の申請時に入管へ出す立証書類も変わります(いずれも特定技能所属機関概要書〔参考様式第1-11-1号〕とあわせて、受け入れ実績ルート=受け入れた中長期在留者リスト〔第1-11-2号〕、相談業務経験ルート=支援責任者・支援担当者の履歴書と生活相談業務を行った中長期在留者リスト〔第1-11-3号〕、個別認定ルート=説明書+立証資料)。全部委託なら支援体制の基準は満たすものとみなされて立証を省ける一方、自社支援ではこれらの立証書類を自社で揃えることになります。書類の一覧は特定技能の申請に必要な書類一覧で整理しています。
2. 支援責任者・支援担当者の選任——常勤性・兼任・中立性
支援を統括する支援責任者を選任し、実際に支援を行う支援担当者を、外国人材が働く事業所ごとに1名以上選任します。選任の母集団は自社(特定技能所属機関)の役員・職員で、現行制度では選任にあたって資格や講習の修了は求められません(講習の義務付けは2027年4月から=後述)。
- 現行制度では常勤は必須ではありません(2027年4月から変わります) — 現行の基準省令には常勤の定めがなく、運用要領が支援担当者について常勤が望ましいとするにとどまります。非常勤の体制でも、実績・経験の要件と中立性・欠格事由の基準を満たせば選任できます。ただし2027年4月1日以降の新規申請からは、支援責任者・支援担当者とも常勤の役員・職員からの選任が要件になります(詳細は後述の改正の節)。
- 支援責任者は支援担当者を兼任できます — ただし兼任する場合も、支援責任者・支援担当者の双方の基準(実績・経験の要件、中立性、欠格事由)に適合している必要があります。
- 中立性が求められます — 対象の外国人材を監督する立場にない者(当該外国人に指揮命令権を持たない者)であることが必要です。単に部署が異なるだけでは足りず、代表取締役や、当該外国人が所属する部署を統括する役職(組織図で縦のラインにある者)は、形式上は別部署でも認められません。さらに法務省のQ&Aは、受け入れ企業の役員の配偶者・2親等内の親族や、役員と社会生活上密接な関係を有する者も適格性がないとしています=同族経営の会社で特に効いてくる基準です。[2]判定は肩書きや部署名でなく、実際にその外国人へ指揮命令する立場かどうかで見られます。
3. 欠格事由に該当しないこと
支援責任者・支援担当者は、受け入れ企業自体に課される基準と同種の欠格事由(拘禁刑以上の刑に処せられた者、出入国・労働関係法令に関する不正行為をした者、暴力団関係者、技能実習の実習認定を取り消された者 等)に、個人としても該当しないことが求められます。受け入れ企業自体の欠格事由の全体像は特定技能の受け入れ要件で解説しています。
4. 外国人が理解できる言語での支援体制
事前ガイダンス・生活オリエンテーション・相談苦情対応などを、外国人が十分に理解できる言語(母国語に限られませんが、内容を余すことなく理解できる言語)で行える体制が必要です。ただし、通訳を自社の職員として常時雇用することまでは必須ではなく、必要なときに委託等で確保できる体制(外部の通訳・翻訳サービスとの契約など)であれば足りるとされています。[3]
このほかに基準省令は、支援状況に係る文書を作成して契約終了から1年以上事業所に備え置くこと、過去5年以内に支援を怠ったことがないこと、支援責任者・支援担当者が定期的な面談を実施できる体制も求めています(面談の頻度・記録の実務は義務的支援10項目で解説しています)。また、分野に特有の事情に応じた分野別の上乗せ基準が定められている分野があります(例=介護で訪問系サービスに従事させる場合の遵守事項)=自社の分野の基準は対象分野の一覧から各分野の記事で確認してください。
上記は出入国在留管理庁の運用要領(令和8年4月1日版)で確認した基準の概要です。実績・経験要件の細部や、分野ごとの上乗せ基準は改正されることがあります。自社支援を選ぶ前に、出入国在留管理庁の最新の運用要領で必ず確認し、個別のケースの当てはめに迷う場合は管轄の地方出入国在留管理官署に確認してください。
なお、報酬を得て業として行う申請書類の作成は行政書士などの専門家の領域で、登録支援機関の支援(義務的支援)には含まれません。申請書等の提出(申請取次)は行政書士の専管ではなく、在留資格変更・在留期間更新では地方出入国在留管理局長の承認を受けた自社・登録支援機関の職員や、届出済みの弁護士・行政書士も、本人の依頼を受けて行えます。書類の作成が必要な場合は、行政書士などの専門家と連携します。
2027年4月から自社支援の体制要件はこう変わる
2025年9月30日に公布された法務省令(令和7年法務省令第45号)が、受け入れ企業側の支援体制の基準(特定技能基準省令)を2027年4月1日から改正します。[4]登録支援機関側の登録基準の厳格化(数への影響・料金の公表・委託先を選ぶ物差しへの使い方)と同じ省令ですが、本節はこのうち自社支援を選ぶ企業に直接かかる変更だけを整理します。受け入れ企業側の変更点は次のとおりです。[5]
| 項目 | 現行(2027年3月31日まで) | 2027年4月1日から |
|---|---|---|
| 選任の母集団 | 役員又は職員(常勤の定めなし) | 常勤の役員又は職員 |
| 支援責任者の配置 | 選任する(事業所ごとの定めなし) | 事業所ごとに1名以上(支援担当者との兼任は引き続き可) |
| 支援担当者の配置 | 事業所ごとに1名以上 | 事業所ごとに1名以上、かつ支援を担当する外国人の数÷50を超える数 |
| 支援責任者の講習 | 定めなし | 過去3年以内の養成講習の修了(当分の間は未修了でも差し支えないとされる経過措置つき) |
| 支援業務に従事できる人 | 従事する者の範囲に定めなし | 支援責任者・支援担当者に限定(出入国在留管理庁の案内による改正点) |
| 支援を外部委託できる相手 | 「他の者」への委託も可(ただし支援体制の基準を満たすとみなされるのは登録支援機関への全部委託のみ) | 全部・一部とも登録支援機関に限定 |
| 支援計画の記載事項 | 義務的支援10項目ほか | 特定技能2号への移行を希望する人への支援(技能・日本語能力の修得支援)が加わる |
表の各行は、公布済みの省令の新旧対照表と出入国在留管理庁の案内から、受け入れ企業(特定技能所属機関)に係る部分を抜き出したものです(「支援業務に従事できる人」の行は同庁の案内・Q&Aによります)。実務への効き方を順に見ます。
- 常勤化は「人選のやり直し」になり得ます — 現行の非常勤体制(例=週数日勤務の嘱託職員に支援担当者を委嘱する形)は、施行日以降の新規申請では基準を満たしません。実績・経験の要件(前述の3ルート)を満たし、かつ常勤で、かつ対象の外国人材を指揮命令しない中立な人——この3条件を同時に満たす人を常勤の役員・職員から出せるかが、自社支援の実質的なハードルになります。なお「常勤」の具体的な判定基準(労働時間・雇用形態)は、公布済みの省令・概要資料・案内ページ・Q&Aのいずれにも示されていません=細目は今後の運用要領等で確認が必要です。
- 支援業務に従事できる人も限定されます — 出入国在留管理庁の案内は、支援業務に従事することができる者を支援責任者・支援担当者に限定することを改正点に挙げています。通訳などを履行補助として使う現行の運用がどう整理されるかは、施行までの同庁の案内で確認してください。[5]
- 支援担当者の数は「50人につき1名超」 — 条文は「支援を担当する外国人の数を50で除して得た数を超えていること」です。事業所ごとに数え、担当する外国人材が49人までなら1名で足り、50人になった時点で2名が必要になります(出入国在留管理庁の概要資料の例=120人を支援する場合は3人)。[6]
- 支援責任者の役割が省令の定義に入ります — 支援計画の作成、支援担当者ほか支援業務に関与する職員の管理、実施状況の確認、出入国在留管理庁長官への届出・報告手続、関係機関との連絡調整、その他支援に必要な一切の事項——を統括管理する者として、省令上定義されます。現行も運用要領が同旨の統括管理を求めているため実務の期待水準が大きく変わるわけではありませんが、養成講習の義務付け(上の表)とあわせ、名前だけの選任でなくこの職務を実際に担える人を置くことが省令上の前提になります。
- 委託の設計が変わります — 現行の省令は、登録支援機関でない者への委託も排除していません(ただし、支援体制の基準を満たすとみなされるのは登録支援機関に全部を委託した場合だけで、それ以外の形では自社が基準を満たす必要があります)。施行日以降は、外部委託の相手方そのものが全部・一部とも登録支援機関に限られます。また、定期面談(と、それに伴う関係行政機関への通報)を委託できるのは支援計画の全部を委託する場合だけであることも、省令に明文で入ります(現行でも運用要領は定期面談を支援責任者・支援担当者が実施する必要があるとしています。[3]一部委託で何を外に出せるかの整理は義務的支援10項目の記事にまとめています)。
- 支援計画に2号移行支援が加わります — 特定技能2号への移行を希望する人に対する技能・日本語能力の修得支援が、支援計画の記載事項になります。施行日前の申請に係る既存の支援計画は、在留期間の満了の日(施行日後に在留期間更新の許可を受けたときはその日)まで、この記載があるものとみなされます。
適用の起点は「施行日以降に新しく受け入れる人の申請」です。 施行日前にした在留資格認定証明書の交付申請・変更申請・更新申請と、施行の際すでに特定技能で在留している人の雇用契約に係る支援体制の基準(その後の在留期間更新を含む)には、従前の基準が適用されます。施行日前に交付された在留資格認定証明書による上陸の申請にも、3か月の経過措置が置かれています(いずれも省令の附則)。本記事で「新規申請」というのは、施行日以降に新しく人を受け入れるための申請のことです。いま自社支援で受け入れている企業がただちに体制を組み直す必要はありませんが、新しく人を採る時点から新基準で審査されるため、2027年4月以降も採用を続ける計画なら、常勤の選任と人数の基準を先に点検しておく必要があります。
本節の内容は公布済みの省令と出入国在留管理庁の案内にもとづきます。支援責任者の養成講習は「法務大臣が告示で定めるもの」とされており、実施機関・受講方法は2026年8月19日時点で同庁の案内ページ(「1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の改正について」)には示されていません。自社支援の体制を設計する際は、同庁の最新の案内を必ず確認してください。
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自社支援で実施する義務的支援
自社支援を選ぶ場合、実施するのは次の義務的支援10項目です(各項目の実施基準・時間・頻度の詳細は義務的支援10項目で解説しています)。体制がとくに問われるのは、勤務日に3日以上・休日に1日以上(週4日以上)の対応体制が要る⑦相談・苦情への対応と、3か月に1回以上で、全部委託の場合を除き第三者に委託できない⑩定期的な面談です。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| ① 事前ガイダンス | 在留諸申請の前に、労働条件・活動内容・入国手続きなどを本人が理解できる言語で説明する(運用要領は雇用契約の締結時以前の実施が望ましいとする) |
| ② 出入国する際の送迎 | 入国時に空港から事業所・住居まで、帰国時に空港の保安検査場まで送迎する |
| ③ 住居の確保・生活に必要な契約の支援 | 住居探しの補助や連帯保証、口座・携帯電話・ライフラインの契約などを支援する |
| ④ 生活オリエンテーション | 日本での生活ルール、公共機関の利用方法、相談窓口などを理解できる言語で案内する |
| ⑤ 公的手続等への同行 | 住民登録や社会保障・税などの手続きに同行し、必要に応じて書類作成の補助などを行う(在留諸申請の書類作成・申請取次は義務的支援には含まれない) |
| ⑥ 日本語学習の機会の提供 | 日本語教室の情報提供や入学手続きの補助を行う |
| ⑦ 相談・苦情への対応 | 職場や生活上の相談・苦情に理解できる言語で対応する(勤務日に3日以上・休日に1日以上の対応体制) |
| ⑧ 日本人との交流促進 | 地域の行事の案内など、日本人と交流する機会づくりを支援する |
| ⑨ 転職支援(非自発的離職時) | 会社都合などでの離職時に、次の受け入れ先を探す支援や手続きを補助する |
| ⑩ 定期的な面談・行政機関への通報 | 本人・監督者それぞれと3か月に1回以上面談し、労働基準法違反などを把握した場合は行政機関へ通報する |
支援のほかに、届出と記録も自社の担当になる
自社支援を選ぶと、支援の実施だけでなく、その記録と出入国在留管理庁への届出も自社の手元に来ます。[7]
- 定期届出 — 支援実施状況を含む届出で、年1回です(対象期間は毎年4月〜翌3月・提出は翌5月末まで)。全部委託している間も、登録支援機関による支援実施状況を取りまとめて、あわせて提出するのは受け入れ企業です。
- 随時の届出 — 支援責任者・支援担当者を変更したときや、自社支援へ切り替えたとき・委託先を変えたときに、その都度提出します(支援責任者・支援担当者の氏名・役職名は支援計画の記載事項です=人が代わったら放置できません)。支援体制が基準を満たせなくなったときの基準不適合の届出もこの系統です。
- 記録の備置き — 支援状況に係る文書を作成し、雇用契約終了から1年以上事業所に備え置きます(記録の実務は義務的支援10項目にまとめています)。
届出が適正に履行されていない場合、特定技能外国人を受け入れることができなくなります=自社支援を選ぶことは、この届出の実務も自社で回すことを含みます。届出ごとの期日・提出方法の一覧は特定技能の採用費用・相場の届出の節で解説しています。
自社支援と登録支援機関への委託の比較
自社支援と委託の大きな違いは、「支援を適切に行える体制を自社で用意するか」です。
| 観点 | 自社支援 | 登録支援機関へ委託 |
|---|---|---|
| 体制の要件 | 支援責任者・支援担当者の選任、理解できる言語での対応など、基準を自社で満たす | 全部委託なら、企業は支援体制の基準を満たすものとみなされる |
| 必要な人員 | 実績・経験の要件を満たす支援責任者・支援担当者を自社で確保(支援担当者は事業所ごとに1名以上) | 自社の人員負担は小さい(機関側の担当者が対応) |
| 多言語対応 | 自社で用意する(通訳を常時雇用する必要はなく、必要時に確保できる体制でよい) | 機関の対応言語を使える |
| コスト構造 | 委託費は不要な一方、支援担当者の人件費・多言語対応・体制整備の工数がかかる | 月額の委託費が中心(出入国在留管理庁の集計〔令和4年9月末時点・暫定値〕では1人あたり平均28,386円・最も人数が多い帯は20,000円超〜25,000円以下・全体の約9割が月30,000円以下) |
| 運用面 | 本人との接点と支援のノウハウが社内に残り、変更・相談に自社で直接対応する | 専門機関の経験・多言語体制を使える(本人との連絡は委託先を挟む形になる) |
| リスク | 基準(実績要件・中立性・言語対応)を満たし続けられないと、支援体制の要件を欠く恐れがある | 委託先が実効性ある支援を行えないと認められると、全部委託によるみなしが成立しないことがある。委託先選びが重要(選び方) |
| 向いている企業 | 支援の人手・実績・ノウハウ・多言語体制がある | 初めての受け入れ・体制が未整備 |
この表の「体制の要件」は現行の基準です。2027年4月1日以降の新規申請では、前述の改正(常勤化・人数の基準・委託先の限定)を重ねて確認してください。
自社支援の「体制整備の工数」は一律の金額には換算できませんが、公的に頻度・時間が定められている支援だけを見ても、事前ガイダンスは標準3時間程度、生活オリエンテーションは少なくとも8時間以上、相談対応は1週間当たり勤務日に3日以上・休日に1日以上の対応体制、定期的な面談は3か月に1回以上——これらを自社の支援責任者・支援担当者が継続して確保できるかが、体制コストの実質です。各支援の実施水準の詳細は義務的支援10項目、委託費の内訳や変動要因は登録支援機関の費用相場、採用全体の費用は特定技能の採用費用・相場で解説しています。
何名から自社支援が得になるか——判断の手順
一律の「◯名から得」という分岐点はありません。ただし構造ははっきりしています。委託費は「人数×月額」で線形に増えるのに対し、自社支援のコストには人数によらない固定部分(相談対応の体制・担当者の選任・多言語の確保)があり、人数が増えるほど1人あたりに薄まっていきます。だから分岐は、担当者の人件費や言語体制など企業ごとの数字でしか決まりません。ここでは、その分岐を自社の数字で確かめる手順を示します。
まず委託側の金額です。出入国在留管理庁の集計による月額平均28,386円(令和4年9月末時点・暫定値=2026年8月19日時点で確認できた範囲では最新の公表値)をそのまま12か月分にすると、委託費の年額は次のようになります(同じ集計の平均月額を12倍・人数倍した編集部算出。実際の月額は委託する支援の範囲などで幅があります——幅の読み方は登録支援機関の費用相場)。[8]
| 受け入れ人数 | 委託費の年額(月額平均28,386円で計算) |
|---|---|
| 1人 | 340,632円(約34.1万円) |
| 3人 | 1,021,896円(約102.2万円) |
| 5人 | 1,703,160円(約170.3万円) |
| 10人 | 3,406,320円(約340.6万円) |
次に、この年額を自社側のコストと並べます。
委託費の年額を自社の数字で出す
受け入れ予定人数×月額×12か月。見積もりを取っているなら、その月額を使います(月額に含まれない初期費用・実費の有無も見積もりの見方で確認)。自社で担う場合の時間を見積もる
人数に比例する部分=1人あたり初年度で少なくとも11時間程度の実施(時間が公的に示されている事前ガイダンス3時間程度+生活オリエンテーション8時間以上の合算=送迎・住居確保・公的手続の同行・日本語学習支援などの時間は別に見込む)と、3か月に1回以上の定期面談。人数によらない部分=週4日以上の相談対応体制(夜間など就業時間外の対応を含む)。時間の内訳は義務的支援の工数の目安が一覧にしています。時間に自社の人件費を当て、固定コストを足す
手順2で見積もった時間の合計(「別に見込む」と断った送迎・同行などの時間も含む)×支援担当者の時給換算に、体制づくりの固定コスト(担当者の教育、通訳・翻訳の確保、支援状況の記録・届出の事務)を足し、手順1の委託費年額と並べます。通訳の常時雇用は必須ではなく、必要時に委託等で確保できる体制で足ります。2027年4月以降の申請予定があるなら、新基準で体制を点検する
常勤の役員・職員から支援責任者・支援担当者を出せるか、担当外国人数÷50を超える支援担当者を置けるか(前述の改正の節)。満たせない場合、そのときの選択肢は委託です。
この比較で自社支援側が小さくなりやすいのは、支援を担える常勤の人材と多言語対応が既にあり、まとまった人数を受け入れる場合です。1〜2名の受け入れなら、並べる相手の委託費の年額は「340,632円×人数」(上の表)です——体制づくりの固定コスト(担当者の確保・教育、多言語対応、記録・届出の事務)を、この金額と自社の数字で見比べてください。判断の軸は単年でなく累積です=委託費は在籍する限り毎年発生し続け、体制づくりのコストは初期に集中します(外国人採用を何年続ける計画かで答えが変わります=編集部の整理)。なお、在留諸申請の書類作成を行政書士などの専門家に依頼する場合の報酬は、自社支援でも委託でも同じように発生します=この比較の外に置けます。どちらの場合も、金額だけでなく支援の質が定着に直結すること(定着支援)をあわせて考えてください。
委託から自社支援への切り替え
すでに登録支援機関へ委託していて、自社支援に切り替えたい企業向けの手順です(これから初めて委託先を選ぶ場合や、別の登録支援機関へ乗り換えたい場合は登録支援機関の変更(乗り換え)を参照してください。本節は委託から自社支援への切り替えに絞って解説します)。[9][10]
支援体制の基準を満たせるか確認する
前述の支援体制の基準(実績・経験ルートのいずれかへの該当、支援責任者・支援担当者の選任、中立性、理解できる言語での支援体制)を、自社が満たせるかを先に確認します。2027年4月1日以降も新規採用を続ける計画なら、施行後の基準(前述の改正の節=常勤化・人数基準)でも点検します。満たせない場合は、無理に切り替えず委託を継続するか、登録支援機関の変更(乗り換え)を検討します。「支援委託契約に係る届出」を提出する
委託契約を終了する届出です(届出書は参考様式第3-3-2号)。契約を終了した年月日・終了の事由を記載し、事由が生じた日から14日以内に提出します。提出は電子届出システムのほか、受け入れ企業の本店の住所を管轄する地方出入国在留管理官署への持参・郵送でも行えます。支援計画を作り直し、「支援計画変更に係る届出」を提出する
支援を自社実施に変更することは1号特定技能外国人支援計画の変更にあたるため、こちらの届出も別途必要です(届出書は参考様式第3-2号・同じく14日以内)。変更後の支援計画は日本語と本人が十分に理解できる言語で作成して本人に写しを交付し、内容を十分に理解したことについて署名を得ます(支援責任者・支援担当者の氏名・役職名も支援計画の記載事項です)。外国人本人へ説明し、支援を途切れなく引き継ぐ
相談窓口や面談担当が変わることを本人が理解できる言語で説明し、定期面談や相談対応が途切れないよう引き継ぎます。支援の実施義務は在留中続くため、委託契約の終了日と自社支援の開始日が連続するように日程を組みます。
逆に、自社支援から委託へ戻す(または一部を委託に出す)場合も、動きは同じ型です=支援委託契約の締結に係る届出と支援計画変更に係る届出を、それぞれ14日以内に提出します。自社支援は一方通行の決断ではありません。
これらの届出の届出者は受入れ企業(特定技能所属機関)自身です。在留諸申請はこれらの届出とは別の手続きで、報酬を得て業として行う申請書類の作成は行政書士などの専門家の領域です(申請書等の提出=申請取次は、変更・更新なら承認を受けた自社・登録支援機関の職員も、本人の依頼を受けて行えます)。届出の様式・期限は改正されることがあるため、提出前に出入国在留管理庁の最新の届出案内で確認してください。
どちらを選ぶ?判断の目安
図の各基準の詳細は前述の「自社支援に必要な体制」をご覧ください。2027年4月1日以降に新規申請を予定している場合は、1つめと2つめの問いを施行後の基準——常勤の役員・職員の中から、実績・経験の要件を満たし、かつ中立な支援責任者・支援担当者を出せるか——で答えてください(前述の改正の節)。
次のいずれかに当てはまる場合は、登録支援機関への委託が現実的です。
- 初めて特定技能を受け入れる(中長期在留者の受入れ実績も、生活相談業務の経験者もない=前述の実績要件をどのルートでも満たせない)
- 採用する人材が十分に理解できる言語での対応を、自社で用意できない
- 支援にあてる人手が足りない、または中立に支援できる担当者を置きにくい
委託が現実的と出た場合の次の一歩は、登録支援機関の選び方と費用相場の読み方です。
一方、外国人材の受け入れ実績や相談業務の経験がある人員と、多言語の体制がすでにある企業は、自社支援で委託費を抑える選択もあります。また、支援の一部だけを委託する「一部委託」もできますが、その場合は委託しない部分について自社で体制の基準を満たす必要があります(2027年4月1日からは一部委託の相手方も登録支援機関に限られます)。まずは全部委託で始め、実績を積んでから自社支援への切り替えを検討する進め方もとられます(全部委託でも支援計画の作成は受け入れ企業が行います=機関ができるのは補助まで。切り替えの具体的な手順は前述のとおりです)。委託と自社支援の実際の締結状況は、登録支援機関の統計の公的集計で確認できます。
採用後の定着まで見据えるなら、支援の質は特定技能外国人の定着支援にも直結します。受け入れ企業全体の要件は特定技能の受け入れ要件で確認できます。
まとめ
特定技能1号の支援は、自社支援と登録支援機関への委託から選べます。自社支援は、支援責任者・支援担当者の選任(中立性・欠格事由の基準を満たす必要がある)や、理解できる言語での支援体制など、満たすべき基準を整えられれば可能です。2027年4月1日以降の新規申請からは、常勤の役員・職員からの選任と、担当外国人数÷50を超える支援担当者の配置が要件に加わります。体制を整えるのが難しい場合は、支援計画の全部を委託すれば、企業は支援体制の基準を満たすものとみなされるため、初めての受け入れでは委託が現実的です。委託費は人数に比例して増え、自社支援の体制コストは人数が増えるほど1人あたりに薄まる——という構造を踏まえ、受け入れ人数と体制で判断してください。すでに委託していて自社支援へ切り替える場合は、支援体制の基準を満たせることを確認したうえで、届出2本を14日以内に提出します。
よくあるご質問
- 特定技能の支援は自社で行えますか?
- 行えます。支援責任者・支援担当者を選任し、外国人が十分に理解できる言語で支援できる体制を整えるなど、出入国在留管理庁が定める支援体制の基準を満たせば、自社支援は可能です。体制を整えるのが難しい場合は、登録支援機関に支援計画の全部を委託する選択肢もあります。
- 自社支援の「支援体制の基準」を満たすには、具体的に何が必要ですか?
- 支援責任者・支援担当者を選任するにあたり、①企業に過去2年間、中長期在留者の受入れまたは管理を適正に行った実績がある、②役員・職員に過去2年間の生活相談業務の経験者がいる、③これらと同程度に支援を適正に実施できると個別に認められる、のいずれかに該当する必要があります。あわせて中立性の基準・欠格事由に該当しないこと・理解できる言語での支援体制も満たします。
- 支援責任者と支援担当者は常勤でなければなりませんか?
- 2027年4月1日以降の新規申請からは、常勤の役員・職員の中から選任することが要件になります(令和7年法務省令第45号)。それまでの現行制度では常勤は法令上の要件ではなく、出入国在留管理庁の運用要領が支援担当者について常勤が望ましいとするにとどまります。施行日前の申請や、施行の際すでに在留している人の契約には従前の基準が適用されます。
- 2027年4月から自社支援の要件はどう変わりますか?
- 2025年9月30日公布の法務省令(令和7年法務省令第45号)により、2027年4月1日以降に新しく受け入れる人の申請から、①支援責任者・支援担当者を事業所ごとに1名以上ずつ常勤の役員・職員から選任する ②支援業務に従事できる者が支援責任者・支援担当者に限定される ③支援責任者に養成講習の受講が義務付けられる(当分の間は未修了でも差し支えないとされています) ④事業所ごとの支援担当者の数が「支援を担当する外国人の数÷50」を超えている必要がある ⑤支援を外部委託できる相手が登録支援機関に限定される ⑥支援計画の記載事項に特定技能2号への移行を希望する人への支援が加わる——が主な変更です。
- 支援責任者と支援担当者は兼任できますか?
- 兼任できます。ただしその場合であっても、支援責任者・支援担当者の双方の基準(実績・経験の要件、中立性、欠格事由に該当しないこと)に適合している必要があります。
- 登録支援機関に全部委託すると、自社の支援体制の基準は満たさなくてよいのですか?
- 支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託した場合は、受け入れ企業は支援体制に関する基準を満たすものとみなされます。初めて特定技能を受け入れる企業が委託を選ぶ理由の一つです。一部だけ委託する場合は、委託しない部分について自社で体制を満たす必要があります。なお、支援計画の作成そのものは全部委託でも受け入れ企業が行います(登録支援機関ができるのは作成の補助までです)。
- 登録支援機関への委託をやめて自社支援に切り替えるにはどうすればよいですか?
- まず自社が支援体制の基準(実績・経験ルート、支援責任者・支援担当者の選任、理解できる言語での支援体制)を満たせるかを確認します。そのうえで、委託契約の終了にともなう「支援委託契約に係る届出」と、支援計画の変更にともなう「支援計画変更に係る届出」を、それぞれ事由が生じた日から14日以内に提出します(届出者は受入れ企業自身・提出は電子届出システムか本店住所を管轄する地方出入国在留管理官署へ)。変更後の支援計画は本人が十分に理解できる言語でも作成し、写しを本人に交付します。
- 自社支援と委託では、どちらが費用を抑えられますか?
- 出入国在留管理庁の集計(令和4年9月末時点・暫定値)では、委託費は1人あたり月額平均28,386円・最も人数が多い帯は20,000円超〜25,000円以下・約9割が月30,000円以下です(「月2〜3万円程度が目安」といわれるのはこの分布です)。年額に直すと1人あたり約34.1万円になります。自社支援は委託費がかからない一方、支援担当者の人件費・多言語対応・体制整備の工数がかかります。受け入れ人数や体制によって総額は変わるため、概算で比較するのが現実的です。
- 自社支援は何名から得になりますか?
- 一律の分岐人数は示せませんが、構造は明確です。委託費は人数に比例して増え(平均値で1人あたり年約34.1万円・10人なら年約340.6万円=編集部算出)、自社支援のコストには相談対応体制や担当者の選任など人数によらない固定部分があり、受け入れ人数が増えるほど1人あたりに薄まります。分岐は担当者の人件費や言語体制など企業ごとの数字で変わるため、本文の手順で委託費の年額と自社の体制コストを並べて確認してください。
出典・参考(一次情報)
- 1号特定技能外国人支援・登録支援機関について(出入国在留管理庁)
- 特定技能制度に関するQ&A(Q69 受入れ機関が登録支援機関になる場合の制限/Q96 支援責任者・支援担当者の中立性/Q97 支援体制に係る要件の改正)(出入国在留管理庁)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領(令和8年4月1日版・適合1号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係るもの)(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律の施行に伴う法務省令の整備及び経過措置に関する省令(令和7年法務省令第45号・2025年9月30日公布/2027年4月1日施行。第四条=特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令の一部改正)(出入国在留管理庁)
- 1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の改正について(令和9年4月1日施行)(出入国在留管理庁)
- 1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の主な改正点(令和9年4月1日から施行・概要資料)(出入国在留管理庁)
- 特定技能所属機関による届出(定期届出・随時届出=対象期間・提出期間・提出方法)(出入国在留管理庁)
- 特定技能制度の現状について(登録支援機関への支援委託料の支払額・有識者会議 参考資料)(出入国在留管理庁)
- 支援委託契約に係る届出(出入国在留管理庁)
- 支援計画変更に係る届出(出入国在留管理庁)