特定技能の雇用契約・雇用条件書|基準と記載事項を企業向けに解説
目次
特定技能で外国人を採用するとき、在留資格の審査でも実務でも要になるのが雇用契約です。「特定技能雇用契約書」と「雇用条件書」という2種類の書面が出てくるため、「何が違うのか」「何を満たし、何を書けばいいのか」で迷いやすいところです。結論を先に言うと、特定技能の雇用契約には5つの基準(報酬は日本人と同等以上・フルタイム・差別的取扱いの禁止・一時帰国の配慮・口座振込)があり、労働条件は**雇用条件書(参考様式)**に具体的に書いて本人に交付します。このページで、基準と記載事項を実務目線で整理します。
この記事の要点
- 雇用契約の基準は5つ — ①報酬が日本人と同等以上 ②フルタイム ③差別的取扱いの禁止 ④一時帰国の有給配慮 ⑤報酬の口座振込。特定技能基準省令で定められています。
- 「契約書」と「条件書」は役割が違う — 特定技能雇用契約書(参考様式第1-5号)は契約そのもの、雇用条件書(参考様式第1-6号)は労働条件を明示する書面。申請では両方を用います。
- 雇用条件書には労働条件を具体的に書く — 契約期間・就業場所・業務・労働時間・賃金・退職などを、本人が理解できる言語を添えて交付します。
本記事は一般的な情報提供です。雇用契約の基準や様式は改正されることがあるため、最新の内容と参考様式は出入国在留管理庁の特定技能の申請ページで必ず確認してください。雇用契約書・雇用条件書の作成や在留資格の申請取次は、社会保険労務士・行政書士などの専門家の領域にあたる部分があります。本記事は記載事項の情報提供であり、書面の作成代行を行うものではありません。
「特定技能雇用契約書」と「雇用条件書」の違い
特定技能の手続きでは、似た名前の2つの書面が出てきます。まず役割を分けて押さえます。
| 書面 | 参考様式 | 役割 |
|---|---|---|
| 特定技能雇用契約書 | 参考様式第1-5号 | 外国人と結ぶ雇用契約そのものを定める書面 |
| 雇用条件書 | 参考様式第1-6号 | 賃金・労働時間などの労働条件を具体的に明示する書面(別紙「賃金の支払」を含む) |
特定技能雇用契約書が「契約を結びました」という本体だとすれば、雇用条件書は「その契約の中身(労働条件)を細かく書き出したもの」です。在留資格の申請では、原則として両方を用います。いずれも出入国在留管理庁が参考様式を公開しているため、これを使うのが確実です。
特定技能雇用契約で満たすべき5つの基準
特定技能雇用契約は、特定技能基準省令で定められた基準を満たす内容にする必要があります。代表的なのが次の5つです。
- 報酬が日本人と同等以上 — 同じ業務に従事する日本人の報酬額と同等以上であること。外国人であることを理由に低く設定できません(技能・経験に応じた合理的な差は可)。
- 所定労働時間がフルタイム — 受け入れ企業に雇用される通常の労働者と同等の所定労働時間であること。
- 差別的取扱いの禁止 — 外国人であることを理由に、報酬の決定・教育訓練の実施・福利厚生施設の利用などで差別的な取扱いをしないこと。
- 一時帰国の配慮 — 本人が一時帰国を希望した場合に、必要な有給休暇を取得させること。
- 報酬の口座振込 — 報酬は、本人が指定する金融機関の本人名義の預貯金口座への振込み等で支払うこと(支払い・控除の透明性を確保するため)。
これらは、企業(受入れ機関)に求められる受け入れ要件のうち「雇用契約が適切であること」にあたる部分です。受け入れ要件の全体像(機関自体の基準・支援体制・支援計画)は特定技能で企業に求められる受け入れ要件で、採用手続きのどこで雇用契約を結ぶかは特定技能の採用の流れで解説しています。本記事は、その雇用契約・雇用条件書そのものの中身に絞ります。
雇用条件書に書く主な記載事項
雇用条件書(参考様式第1-6号)には、労働条件を具体的に記載します。主な項目は次のとおりです。
- 契約期間 — 雇用契約の期間(期間の定めの有無、更新の有無・基準)。
- 就業場所 — 実際に働く事業所・施設。
- 従事すべき業務の内容 — 特定技能の対象となる業務区分に沿った業務。
- 労働時間・休憩・休日 — 始業・終業の時刻、休憩時間、所定労働日・休日、時間外労働の有無。
- 賃金 — 基本給、諸手当、割増賃金、控除(税・社会保険料・家賃など)、支払方法・支払日。別紙「賃金の支払」で手取り額まで明示します。
- 退職に関する事項 — 自己都合退職の手続き、解雇の事由など。
ポイントは、これらを本人が十分に理解できる言語を併記して交付することです。母国語での明示は、入社後の認識のズレ(残業・控除・住居費など)によるトラブルや早期離職を防ぐうえでも重要です。トラブルの典型と防ぎ方は特定技能採用でよくある失敗と注意点で整理しています。
雇用条件書の様式・記載項目は更新されることがあります。実際に作成するときは、出入国在留管理庁の最新の参考様式(雇用条件書・別紙「賃金の支払」)を確認してください。賃金からの控除(家賃など)は、実費を超える徴収が問題になりやすい項目です。
「報酬は日本人と同等以上」をどう示すか
5つの基準のなかで、申請・実務の双方でつまずきやすいのが**報酬の「同等以上」**です。これは「日本人と全く同額」という意味ではなく、同じ業務に従事する日本人と比べて合理的に説明できる水準であることが求められます。
- 賃金規程がある場合 — 自社の賃金規程・賃金テーブルに当てはめて、特定技能外国人の報酬がそれに沿っていることを示します。
- 比較対象の日本人がいない場合 — 同種の業務に従事する近隣・同業の賃金水準などを参考に、合理性を説明できるようにしておきます。
技能・経験・役割に応じた差は認められますが、「外国人だから低い」と受け取られる設定は基準に反します。賃金規程との整合を申請前に点検しておくと、審査もスムーズです。報酬を含む採用全体の費用感は特定技能の採用費用・相場で解説しています。
社会保険・労働保険の適用
雇用契約とあわせて確認しておきたいのが、社会保険・労働保険です。受け入れ企業は、社会保険・労働保険に関する法令を遵守していることが受け入れの基準とされており、加入義務のある企業が未加入の場合は特定技能外国人を受け入れられません。
健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険は、日本人と同じ基準で外国人にも適用されます。雇用条件書の賃金欄でも、これらの保険料の控除が正しく反映されている必要があります。社会保険の未加入や控除の不備は、受け入れ要件(機関自体が適切であること)にも関わるため、契約前に整えておきます。
様式・手続き上の注意
最後に、書面の準備で気をつける点です。
- 参考様式を使う — 雇用契約書・雇用条件書は、出入国在留管理庁の参考様式を用いるのが確実です。独自様式だと記載漏れが起きやすくなります。
- 本人への交付と理解 — 本人が理解できる言語で内容を説明し、交付します。事前ガイダンスでの説明とも整合させます。
- 作成・申請取次は専門家の領域 — 雇用条件書の作成は社会保険労務士など労働関係の専門家の領域でもあり、在留資格の申請書類の作成・申請取次は行政書士(や弁護士)の領域です。いずれも登録支援機関の業務(支援計画の策定・各種支援の実施)には含まれません。必要に応じて、これらの専門家と連携して進めます。
まとめ
特定技能の雇用契約は、①報酬が日本人と同等以上 ②フルタイム ③差別的取扱いの禁止 ④一時帰国の有給配慮 ⑤報酬の口座振込という5つの基準を満たす内容にする必要があります。書面は、雇用契約そのものを定める**特定技能雇用契約書(参考様式第1-5号)と、労働条件を具体的に明示する雇用条件書(参考様式第1-6号)**の2つを用い、契約期間・就業場所・業務・労働時間・賃金・退職などを本人が理解できる言語で交付します。社会保険・労働保険の適用とあわせて、参考様式に沿って整えておくことが、スムーズな受け入れと入社後のトラブル防止につながります。
受け入れ要件の全体像は特定技能で企業に求められる受け入れ要件、採用手続きの流れは特定技能の採用の流れ、制度の全体像は特定技能採用の完全ガイドをご覧ください。
「自社の賃金水準で報酬の同等以上を満たせるか」「雇用条件書の整え方を相談したい」といった段階でも、条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します(提携先のサービスをご紹介しています)。
よくあるご質問
- 特定技能の雇用契約で企業が満たすべき基準は何ですか?
- 主な基準は、①報酬額が同じ業務に従事する日本人と同等以上であること②所定労働時間が通常の労働者(フルタイム)と同等であること③外国人であることを理由に報酬・教育訓練・福利厚生などで差別的取扱いをしないこと④本人が一時帰国を希望した場合に必要な有給休暇を取得させること⑤報酬を本人名義の預貯金口座への振込等で支払うこと、です(特定技能基準省令)。
- 雇用契約書と雇用条件書は何が違いますか?
- 特定技能雇用契約書(参考様式第1-5号)は雇用契約そのものを定める書面で、雇用条件書(参考様式第1-6号)は労働条件を具体的に明示する書面です。在留資格の申請では両方を用います。雇用条件書には契約期間・就業場所・従事すべき業務・労働時間や休憩・休日・賃金・退職に関する事項などを記載します。
- 雇用条件書には何を記載しますか?
- 契約期間、就業場所、従事すべき業務の内容、始業・終業の時刻や休憩・休日、賃金(基本給・諸手当・控除・支払方法)、退職に関する事項などです。本人が理解できる言語を併記して交付することが求められます。出入国在留管理庁の参考様式(雇用条件書)を用いるのが確実です。
- 特定技能外国人も社会保険に加入しますか?
- はい。受け入れ企業は社会保険・労働保険に関する法令を遵守していることが求められ、加入義務のある企業が未加入の場合は特定技能外国人を受け入れられません。健康保険・厚生年金・労災保険・雇用保険は、日本人と同じ基準で外国人にも適用されます。