育成就労とは|2027年開始・技能実習との違い・特定技能への移行をわかりやすく解説
目次
「技能実習が変わると聞いたが、何を・いつから準備すればいいのか分からない」——そんな企業のための記事です。結論を先に言うと、育成就労は技能実習に代わる新制度(2027年4月1日施行)で、原則3年で特定技能1号の水準まで人材を育て、特定技能へ移行することを想定した制度です。これから外国人材の受け入れを考えるなら、技能実習・特定技能とあわせて全体像を押さえておきたい制度です。このページで、目的・技能実習や特定技能との違い・対象分野・受け入れを支える「監理支援機関」・特定技能1号への移行までを整理します。
この記事の要点
- 技能実習に代わる新制度(2027年4月1日施行) — 「人材の確保と育成」を目的に、技能実習を発展的に解消して創設されます。施行日は2025年10月1日公布の政令(令和7年政令第340号)で確定しており、施行に向けて政省令・運用方針が順次定まる段階です。
- 原則3年で特定技能1号へつなぐ設計 — 原則3年の就労で特定技能1号の水準まで育て、技能・日本語の要件を満たせば特定技能1号へ移行できます(断定はできず、要件次第)。
- 受け入れを支える窓口は許可制のまま変わる — 現在の監理団体が自動的に切り替わるのではなく、新たに許可を受ける必要があります。なお申請取次・書類作成は行政書士などの専門家の領域で、受け入れを支える機関の業務とは区別されます。
本記事は一般的な情報提供です。育成就労は2027年4月の施行に向けて関連する政省令・運用方針が順次定められている段階で、内容は変動します。最新の制度内容・時期は、出入国在留管理庁および外国人技能実習機構の公表で必ず確認してください。
育成就労とは(技能実習に代わる新制度)
育成就労は、人材の確保と育成を目的とする在留制度です。技能実習制度を見直し、これを発展的に解消して創設されます。技能実習制度については、「制度目的(国際貢献のための技能移転)と実態(人材確保としての活用)のかい離」に加え、原則として転籍ができないことや監理団体による監理・支援が十分でない場合があることが、人権侵害や法違反の背景・原因になっていると、政府の有識者会議(2023年11月の最終報告書)で指摘されました。[1]これを受け、目的を「人材の確保と育成」に改め、人権保護やキャリアアップの仕組み(一定の要件のもとでの本人意向による転籍など)を整える方向で見直されたのが育成就労です。育成就労制度を盛り込んだ改正法は2024年6月に公布され、2027年(令和9年)4月1日に施行されます。[2]
ポイントは、原則3年の就労を通じて、特定技能1号の水準の人材を育てることを想定している点です。つまり育成就労は、後述する特定技能制度と一体で「育てて長く働いてもらう」流れを作る制度として設計されています。
育成就労はいつから?——施行日とスケジュール
育成就労制度の施行日は2027年(令和9年)4月1日です。これは見込みではなく、2025年(令和7年)10月1日に公布された令和7年政令第340号が、改正法の施行期日を「令和九年四月一日とする。」と定めたことによります。[3][4]ここまでの流れと、技能実習側の経過措置をあわせて時系列で整理すると次のとおりです。
2024年6月21日
育成就労制度を盛り込んだ改正法が公布
2026年4月15日
監理支援機関の許可申請の受け付け開始
2026年9月1日
育成就労計画の認定に係る施行日前申請の受け付け開始
〜2027年3月31日
技能実習の新規受け入れに関する計画認定申請の期限(経過措置)
2027年4月1日
育成就労制度 施行
〜2027年6月30日(原則)
経過措置による技能実習の実習開始期限
技能実習は施行日で即座に終わるわけではありません。2027年3月31日までに技能実習計画の認定申請を行い、原則として2027年6月30日までに実習を開始する場合は、経過措置として新規受け入れが可能です。すでに受け入れている技能実習生は、引き続き認定計画に基づいて実習を続けられます。[2][5]
施行までに企業ができる準備
要件・手続きの細目は今後の公表を待つ部分がありますが、施行までの期間に企業が進められる準備は次のとおりです。
- 現行制度(技能実習)での採用継続の選択肢を整理する — 経過措置の期限(2027年3月31日までの計画認定申請)内であれば、引き続き技能実習での新規受け入れも選択肢になります。
- 自社の分野が育成就労の対象かを確認する — 対象分野は特定技能とおおむね一致しますが、除外分野もあります。詳しくは育成就労の対象分野をご覧ください。
- 現在の監理団体との関係を確認する — 監理団体が自動的に移行することはなく、あらためて許可を受ける必要があります。取引のある監理団体が許可を受ける方針かどうか、いつ申請する予定かを早めに確認しておくと、切り替え時に慌てずに済みます(監理団体・監理支援機関・登録支援機関の違いに申請スケジュールの目安を整理しています)。
- 政省令・分野別運用方針の公表を待つ — 監理支援機関の「優良」要件など、一部の細目は未公表です。断定せず、出入国在留管理庁の最新の公表を継続的に確認してください。
技能実習・特定技能との違い
技能実習・育成就労・特定技能は目的が異なります。違いをおおまかに整理すると次のとおりです。
| 目的 | 位置づけ | |
|---|---|---|
| 技能実習 | 国際貢献(技能移転) | 育成就労へ段階的に移行 |
| 育成就労 | 人材の確保と育成 | 原則3年で特定技能1号の水準まで育成 |
| 特定技能1号 | 即戦力の確保 | 一定の専門性・技能を持つ人材の就労 |
育成就労が技能実習と異なる大きな点のひとつが、一定の要件のもとで本人の意向による転籍が認められることです(後述)。技能実習と特定技能の制度上の違いをより詳しく知りたい場合は、特定技能と技能実習の違いもあわせてご覧ください。
日本語・技能の要件(就労開始時と特定技能への移行時)
育成就労は、就労を開始する時点から日本語能力の要件がある点が、技能実習との大きな違いのひとつです。開始時と、特定技能1号へ移行する時点の要件を整理すると次のとおりです。
| 時点 | 日本語の要件 | 技能の要件 |
|---|---|---|
| 育成就労の開始時 | 原則A1相当(試験合格、または認定日本語教育機関の就労課程でA1相当の講習を100時間以上受講) | 開始時点では課されない |
| 特定技能1号への移行時 | 「日本語教育の参照枠」のA2相当以上が基本(分野ごとの水準は分野別運用方針で定まる) | 技能検定3級、または特定技能1号評価試験などの合格 |
日本語の水準は、分野横断の原則(移行時はA2相当以上が基本)に対し、分野ごとの具体的な水準は分野別運用方針で定められ、分野の特性に応じて上乗せされることがあります。たとえば介護分野では開始時・移行時ともA2.2相当以上が求められ、専用の試験も課されます。鉄道分野でも、運輸係員の業務区分は開始時にA2.2相当以上が求められます。[2][6]自社の分野の水準は分野別運用方針で確認してください。移行の要件と流れは育成就労から特定技能への移行でくわしく解説しています。
対象分野
育成就労の対象分野は、2026年1月の閣議決定で17分野が定められました。これは特定技能の対象分野のうち航空・自動車運送業を除いたもので、介護・建設・農業・外食業などが中心です。17分野の一覧・特定技能との違い・自社が対象かの確認方法は育成就労の対象分野で詳しく解説しています。
対象分野は分野別の運用方針で定められ、特定技能で対象でも育成就労では対象外となる分野(航空・自動車運送業)があります。自社の業種が対象かどうかは、最新の運用方針で確認してください。
受け入れを支える窓口は許可制のまま変わる
技能実習で受け入れを支えてきた監理団体にあたる役割は、育成就労では別の許可を受けた機関が担います。許可制である点は維持され、受け入れ企業(育成就労実施者)の支援や監理を行います。
ここで注意したいのは、現在の監理団体が自動的に切り替わるわけではない点です。出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aは、監理団体が育成就労制度に関わる業務を行うためには新たに許可を受ける必要があるとしています。取引のある監理団体が許可を申請する方針かどうかは、企業側から確認しておきたいところです。なお、在留資格に関する申請の取次や書類の作成は行政書士などの専門家の領域であり、受け入れを支える機関の業務とは区別されます。
3者(技能実習・育成就労・特定技能の窓口)の違い、許可基準、申請のスケジュール、選ぶときの確認ポイントは監理団体・監理支援機関・登録支援機関の違いで詳しく整理しています。
本人意向の転籍
育成就労では、技能実習にはなかった本人の意向による転籍が、一定の要件のもとで認められます。やむを得ない事情による転籍に加えて、同一の業務区分内で、転籍制限期間(分野ごとに1〜2年)を超えて就労したことなどの要件を満たした場合に可能になる設計です。受け入れ・育成の計画は、転籍が起こりうる前提で、定着の工夫もあわせて考えることが大切になります。
転籍の2類型(やむを得ない事情/本人意向)・本人意向の転籍の要件・企業が備えることは育成就労の転籍制度で詳しく解説しています。
育成就労から特定技能1号への移行
育成就労は、特定技能1号への接続を前提に設計されています。育成就労(原則3年)を修了し、技能(技能検定3級または特定技能1号評価試験など)と日本語(「日本語教育の参照枠」のA2相当以上が基本・分野ごとの水準は分野別運用方針で確認〔例=介護はA2.2相当以上〕)の要件を満たせば、特定技能1号へ移行できます。[6]
特定技能1号へ移行すれば、対象分野で即戦力として就労を続けてもらうことができます。移行に必要な要件・流れは育成就労から特定技能への移行でくわしく解説しています。特定技能制度そのものの全体像は特定技能採用の完全ガイドをご覧ください。「育ててから長く働いてもらう」を見据えるなら、育成就労と特定技能はセットで理解しておくとよいでしょう。
企業から見た育成就労——メリットと注意点
育成就労を受け入れる企業の視点で、技能実習と比べたメリットと、あらかじめ押さえておきたい注意点を整理します(制度設計に基づく一般的な整理で、細目は分野別運用方針・運用要領で定まります)。
メリット
- 未経験・海外の人材を「採用してから育てられる」 — 特定技能が試験に合格した即戦力を採用する制度であるのに対し、育成就労は原則3年かけて特定技能1号の水準まで育てる制度です。まだ試験に合格していない未経験者や海外の人材を受け入れ、自社の現場で育成して特定技能へつなぐことができます。
- 開始時から日本語能力が担保される — 就労を開始する時点でA1相当(分野により上乗せ)の日本語要件があり、現場での意思疎通の土台をつくりやすい設計です。
- 育てて長く働いてもらう道筋がある — 原則3年の育成を経て特定技能1号(通算5年)へ、さらに特定技能2号に進めば在留期間の上限なく就労を続けられる設計です(いずれも要件を満たした場合)。育成就労3年と特定技能1号5年をあわせるとおおむね最長8年程度になりますが、これは各期間の合算による目安で、政府が「8年」と明示しているわけではありません。
注意点
- 本人の意向による転籍が起こりうる — 一定の要件(転籍制限期間は分野ごとに1年以上2年以下。介護は当分の間2年、鉄道は1年など)を満たすと、本人の意向による転籍が認められます。育てた人材が転籍しうる前提で、定着の工夫もあわせて考えることが大切です(育成就労の転籍制度)。
- 送り出し機関などへの手数料には負担ルールがある — 外国人本人が負担する手数料の上限は、受入れ機関から支払われる月給の2か月分までとされ、これを超える分は育成就労実施者(受け入れ企業)または監理支援機関が負担する設計です。費用の全体像を事前に確認しておきましょう。
- 1社あたりの受入れ人数に枠がある — 常勤職員数に応じた受入れ人数枠が設けられ、優良と認められれば枠の拡大が認められます。分野全体の受入れ見込数とは別の、1社あたりの枠の考え方です。[2]
まとめ
育成就労は、人材の確保と育成を目的とする新制度(2027年4月1日施行)で、技能実習を見直して創設されます。原則3年で特定技能1号の水準まで育て、特定技能へ移行する流れが基本で、対象分野は特定技能と原則一致、受け入れを支えるのは監理支援機関(技能実習の監理団体があらためて許可を受けて担う)です。一定要件のもとで本人意向の転籍が認められる点も技能実習と異なります。
制度は施行に向けて順次具体化される段階です。自社の業種が対象か、いつから何を準備すべきかは、出入国在留管理庁・外国人技能実習機構の最新の公表で確認しながら進めてください。
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よくあるご質問
- 育成就労の運用要領は公表されていますか?
- 公表されています。育成就労制度運用要領は出入国在留管理庁のページに本文・別紙・参考様式が掲載され、その後も改正が随時行われています(優良な育成就労実施者の基準・手続きと、その申告様式も改正で運用要領に盛り込まれました)。一方で、監理支援機関の『優良』要件など一部の細目は、決まり次第、運用要領の中で順次示される予定です。最新版がどれかを含め、細部は出入国在留管理庁の育成就労制度運用要領のページで確認してください。
- 育成就労はいつから始まりますか?
- 育成就労制度を定めた改正法は2024年6月21日に公布され、2027年4月1日に施行されます。施行に先立ち、監理支援機関の許可申請は2026年4月15日から、育成就労計画の認定に係る施行日前申請は2026年9月1日から、それぞれ受け付けが始まります。技能実習は施行日で即座に終わるわけではなく、2027年3月31日までの計画認定申請・原則2027年6月30日までの実習開始という経過措置があります。最新の時期は出入国在留管理庁の公表で確認してください。
- 育成就労と技能実習の違いは何ですか?
- 技能実習が「国際貢献(技能移転)」を目的とするのに対し、育成就労は「人材の確保と育成」を目的とする制度です。原則3年で特定技能1号の水準まで育てることを想定し、一定の要件のもとで本人の意向による転籍が認められる点も技能実習と異なります。
- 育成就労から特定技能には移れますか?
- はい。育成就労(原則3年)を修了し、技能(技能検定3級または特定技能1号評価試験など)と日本語(「日本語教育の参照枠」のA2相当以上を基本に、分野別運用方針が定める水準。介護などではA2.2相当以上)の要件を満たせば、特定技能1号へ移行できる設計です。育成就労は特定技能1号への接続を前提に組まれています。
- 育成就労の開始時に、日本語の要件はありますか?
- あります。原則として、日本語能力A1相当(日本語能力試験N5相当)の試験合格、または認定日本語教育機関の就労課程でA1相当の講習を100時間以上受講していることが必要です。介護など一部の分野では、開始時により高いA2.2相当以上の水準が求められます。自社の分野の要件は分野別運用方針で確認してください。
- 1社で受け入れられる育成就労外国人の人数に上限はありますか?
- あります。育成就労実施者(受け入れ企業)の常勤職員数に応じた受入れ人数枠が設けられており、優良であると認められれば枠の拡大が認められます。分野全体の受入れ見込数とは別の、1社あたりの枠の考え方です。
出典・参考(一次情報)
- 技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議 最終報告書(2023年11月)(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度Q&A/育成就労制度Q&A(Q56・Q63・Q75)/育成就労制度Q&A(Q41・Q48・Q50・Q74)(出入国在留管理庁)
- 出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(令和7年政令第340号)(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度の概要(令和8年7月改訂・施行までのスケジュール・技能実習に関する経過措置)(出入国在留管理庁・厚生労働省)
- 在留資格「技能実習」(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度に係る基本方針・分野別運用方針(出入国在留管理庁)