特定技能 介護の人数枠|外国人は何人まで?事業所と分野全体の上限
目次
「うちの事業所では、結局、特定技能外国人を何人まで受け入れられるのか」——介護の受け入れを検討するとき、最初に詰まるのがこの人数枠です。答えは2階建てです。手前は事業所ごとの上限で、事業所の日本人等の常勤介護職員の総数が上限という一行のルール。奥には介護分野全体の受入れ見込数126,900人という国の上限があり、埋まり具合によっては「新規の受け入れが止まる」形で効きます。
難しいのは、手前では「常勤介護職員」に誰を数えるかで結果が大きく変わり、奥では「介護の枠」として出回る数字が3種類あります。以下では、職員名簿の判定、分野全体の枠の読み方、上限到達時に止まる手続き、人員配置基準への算入時期、そして公的文書がまだ答えを出していない論点まで整理します。
この記事の要点
- 事業所の上限=日本人等の常勤介護職員の総数 — 技能実習生・EPA介護福祉士候補者・留学生は「日本人等」に含まれず、事務職員・就労支援を行う職員・看護業務を行う看護師および准看護師も「介護等を主たる業務として行う常勤職員」に含まれません(病院・診療所では看護補助者とその指導看護師が逆に分母に入ります)。常勤介護職員が0〜1人の事業所は上限も0〜1人で、受け入れた本人で分母を増やすことはできません。
- 分野全体の上限=126,900人・充足率58.9%(2026年3月末・速報値)。「介護の枠」として出回る135,000人・126,900人・160,700人はどれも実在し、指す対象が違います。計画の前提に使う数字は126,900人です。
- 止まるのは100%到達時ではない — 明文の停止条件は「受入れ見込数を超えることが見込まれる場合その他必要とされる人材が確保されたと認められる場合」で、期間の定めはありません。外食業で示されたのは、在留者数が上限の約3か月手前にあった時点の速報値と、そこから超過が見込まれるという判断でした(その約1か月後に方針を公表、さらに約2週間半後に実施)。この時間差を介護の増加ペースに当てた試算では、充足率95%前後・残り約1.7年(起点=2026年3月末)でその水準に届きます。予告が短いのは駆け込み申請で上限を超えるのを防ぐためだと法務大臣が会見で説明しており、介護でも同じ短さを見込むのが安全側です。
- 上限に達しても、止まるのは入口だけ — 外食業で取られた措置では、在留期間の更新と分野内の転職は対象外でした。
- 育成就労にも同じ分母の上限が課される(ケアの質・指導体制の確保が上乗せ)。「常勤」の定義・常勤換算・端数には明文がなく、介護報酬側の「常勤換算方法」をそのまま分母に持ち込むこともできません。
本記事は一般的な情報提供です。介護分野の人数枠・受入れ見込数・停止や再開の運用・人員配置基準上の取扱いは変動するため、採用を判断する前に出入国在留管理庁および厚生労働省の最新の公表内容を確認してください。「◯年に上限到達」といった時期を断定する情報は、公式の発表か民間の試算かを見極めてください。本記事が②節で示す年数も公表値と外食業の実例から置いた目安であって、到達時期の予測ではありません。
介護の「人数」には3つの別ルールがある
介護で「人数」と言うとき、性質の違う3つのルールが混在するので、まず分けて押さえます。
| ルール | 何を決めるか | 根拠 |
|---|---|---|
| ① 事業所ごとの受け入れ人数枠 | その事業所で何人まで受け入れられるか | 入管法(介護分野の分野別運用方針・厚生労働省告示) |
| ② 分野全体の受入れ見込数 | 介護分野全国で何人まで受け入れるか(1号特定技能=126,900人、育成就労と合わせた分野全体は160,700人) | 入管法(分野別運用方針・令和8年1月23日閣議決定) |
| ③ 人員配置基準への算入 | 受け入れた人をいつから職員として数えられるか | 介護保険(介護報酬の人員配置基準) |
①と②はどちらも「何人まで」ですが効き方が違います。①は自社の申請が通るかどうかを直接決める基準で、②は分野全体の枠が埋まると新規の受け入れが止まる形で効きます。③は採用可否でなく配置計画の話です。
① 受け入れ人数枠(事業所の常勤介護職員数が上限)
介護分野では、事業所単位で、1号特定技能外国人の数が、その事業所の日本人等の常勤の介護職員の総数を超えないことが求められます(分野別運用方針〔令和8年1月23日閣議決定〕第二2(3)②・厚生労働省告示第66号〔第2条第三号〕)。[1]目安や努力目標ではなく告示上の基準で、適合は在留諸申請の中で審査され、上限を超える人数での受け入れは、すでに上限まで受け入れている事業所の追加申請を含め認められません。[2]
分母に数える「日本人等の常勤介護職員」の範囲
上限を見積もる鍵は、分母に何を数えるかです。運用要領別冊は次のように定めています。
「日本人等」に含まれる外国人材(3類型)
- 介護福祉士国家試験に合格したEPA介護福祉士
- 在留資格「介護」により在留する者
- 永住者や日本人の配偶者など、身分・地位に基づく在留資格により在留する者
なお告示の条文は、この3類型に加えて入管特例法に定める特別永住者も「日本人等」に含むと明記しており、その常勤介護職員も分母に入りますが、別冊の3類型にも様式第1-2号の内訳欄にも独立して挙がっていないため、記載欄は申請時に確認してください。
「日本人等」に含まれない人(明文で名指しされている3類型)
- 技能実習生
- EPA介護福祉士候補者(国家試験に合格する前の人)
- 留学生
さらに、ここで数える介護職員は「介護等を主たる業務として行う常勤職員」に限られ、別冊は介護施設の事務職員、就労支援を行う職員、看護業務を行う看護師および准看護師はこれに含まれない、と明記しています。[3][4]
職員名簿で数えてみる(20人の事業所で上限9人になる例)
分母の範囲は条文で読むと単純ですが、実際の名簿に当てると印象が変わります。職員20人の介護老人保健施設を例に、運用要領別冊の明文で1行ずつ判定します。
| 名簿の職員(人数) | 分母 | 明文上の根拠 |
|---|---|---|
| 日本人の常勤介護職員(6人) | 数える | 「日本人等の常勤の介護職員」の本体 |
| 在留資格「介護」の常勤介護職員(1人) | 数える | 日本人「等」に含まれる(在留資格「介護」により在留する者) |
| 国家試験に合格したEPA介護福祉士(1人) | 数える | 日本人「等」に含まれる(介護福祉士国家試験に合格したEPA介護福祉士) |
| 永住者の常勤介護職員(1人) | 数える | 日本人「等」に含まれる(身分・地位に基づく在留資格。告示が明記する特別永住者も同様に数える) |
| EPA介護福祉士候補者(1人) | 数えない | 日本人「等」に含まれない(明文) |
| 技能実習生・介護(3人) | 数えない | 日本人「等」に含まれない(明文) |
| 留学生のアルバイト(2人) | 数えない | 日本人「等」に含まれない(明文) |
| 常勤の事務職員(2人) | 数えない | 「介護等を主たる業務として行う常勤職員」でない(事務職員) |
| 就労支援を行う職員(1人) | 数えない | 「介護等を主たる業務として行う常勤職員」でない(就労支援を行う職員) |
| 看護業務を行う常勤の看護師(2人) | 数えない | 「介護等を主たる業務として行う常勤職員」でない(看護業務を行う看護師・准看護師) |
数えるのは6+1+1+1で9人——この事業所が受け入れられる1号特定技能外国人も最大9人で、名簿の頭数20人に対し分母は半分以下になります。
効くのは在留資格による絞り込み(技能実習生・EPA候補者・留学生を落とす)と、職種による絞り込み(事務・就労支援・看護を落とす)の2つです。逆に在留資格「介護」やEPA介護福祉士として働く職員がいれば分母に入るため枠は広がります(分母を増やす打ち手は後述)。
すでに人がいる事業所で「あと何人採れるか」
上限は「その事業所で受け入れている1号特定技能外国人の総数」にかかり、追加で採れる人数は分母からすでに受け入れている人数を引いた残りです。
- すでに特定技能外国人がいる場合 — 日本人等の常勤介護職員が9人で、すでに1号特定技能外国人を4人受け入れているなら、追加で受け入れられるのは5人までです。
- 技能実習生がすでにいる場合 — 技能実習生は分母に数えず、枠も減らしません。日本人等の常勤介護職員8人+技能実習生3人の事業所なら、1号特定技能外国人の上限は8人のままです(技能実習側の基本人数枠は常勤職員数に応じた別ルール=特定技能・技能実習・育成就労の違い)。
- 複数の事業所を運営する法人 — 人数枠は法人単位でなく事業所単位です。A事業所10人・B事業所4人なら、Aは最大10人・Bは最大4人。法人合計をまとめて一方の事業所で受け入れることはできませんが、同一法人内の別の事業所でそれぞれ雇用すること自体は各事業所の枠の範囲内で可能です。
この「事業所単位で常勤介護職員の総数を上限とする」数え方は介護分野に固有で、介護以外の多くの分野には企業ごとの人数枠がありません(詳細は特定技能で企業に求められる受け入れ要件)。
常勤介護職員が1人以下の小規模事業所は何人受け入れられるか
日本人等の常勤介護職員が1人の事業所なら、受け入れられる1号特定技能外国人も1人まで、0人の事業所には受け入れの枠自体が生じないことになります。前述のルールから、総数が0人なら上限も0人になる、という読みです。ただし、分母が0人・1人のケースを名指しで説明した公的文書は確認できていません(告示第66号・運用要領別冊・分野別運用方針・Q&A Q33・分野参考様式第1-2号・厚生労働省の対象施設の案内まで確認した範囲)。以下は条文の文言からの帰結として読んでください。
サービス提供責任者と非常勤の登録ヘルパーで回す訪問介護事業所、開設まもない事業所、常勤の介護職員が少ない小規模なデイサービスは、名簿の頭数に対して分母が極端に小さくなります(枠の小ささがそのまま採用計画の制約になります。開設まもない事業所が2027年4月1日の制度開始後に育成就労で受け入れられるかは、①事業所が開設後3年以上 ②同一法人の他の介護事業所が開設後3年以上 ③法人が体制要件〔研修体制・相談体制・受入れ開始前の職員/利用者/家族への説明会・法人内の協議体制〕の4つすべてを満たす、のいずれかに当たるかで決まります=③だけ全充足が要ります。整理は特定技能 介護の受け入れ)。
「まず1人受け入れて、その人で枠を広げる」という組み立ては成り立ちません。 1号特定技能外国人も育成就労外国人も「日本人等」の列挙に含まれていないためです(詳細は後述の「公的文書で決まっていないこと」)。
在留諸申請で提出する分野参考様式第1-2号(事業所の概要書)も、②現在受け入れている1号特定技能外国人の数と、③日本人等の常勤の介護職員の数(日本人/国家試験に合格したEPA介護福祉士/在留資格「介護」/身分・地位に基づく在留資格の4内訳)を別の欄に並記させる様式で、様式自体に不等式や判定欄はないものの、この対比が審査で見られることが読み取れます。[5]
分母が小さいときの打ち手
- 分母に入る職員を確保する — 前述の3類型(在留資格「介護」・EPA介護福祉士・永住者等)の常勤介護職員を確保すれば分母は増えます。非常勤職員の常勤化も同じ方向ですが、常勤と認められる基準の明文はありません(後述の「公的文書で決まっていないこと」)。
- 分母の大きい別事業所を先に見る — 同一法人に常勤介護職員の多い事業所があるなら、そちらでの受け入れを先に検討できます。ただし様式第1-2号は「特定技能外国人が実際に業務に従事する事業所」について記載する決まりで、実態を伴う異動は届出のうえで可能でも、書類上だけの付け替えは想定されていません。
- 中長期は在留資格「介護」への移行 — 受け入れた本人が介護福祉士を取得して在留資格「介護」へ移れば、その後は分母に入ります(詳細は特定技能 介護の受け入れ)。
分母が1人以下の事業所の受け入れ可否は在留諸申請の中で審査される判定で、計画を固める前に専門家に確認してください。
医療機関(病院・診療所)は看護師の扱いが反転する
運用要領別冊は、医療機関の看護補助者とその指導者を次のとおり算定基準に含めると定めています。
| 医療機関の職種 | 人数枠の分母 |
|---|---|
| 診療報酬上の看護補助者(看護師・准看護師の指導の下で療養生活上の世話〔食事・清潔・排泄・入浴・移動等〕を行う職員) | 数える |
| 同一病棟でその看護補助者の指導を行っている看護師・准看護師 | 数える |
| 看護補助者の指導に当たらない、看護業務を行う看護師・准看護師 | 数えない |
病棟が複数ある病院では「同一病棟で」という限定が効き、看護補助者を指導していない病棟の看護師は分母に入らないため、病院全体の看護師数をそのまま分母にすることはできません。
育成就労外国人にも同じ分母の上限が課される
令和8年1月23日に閣議決定された介護分野の分野別運用方針は、特定技能制度と育成就労制度(2027年4月1日施行=育成就労とは)を1本の方針で定めています。育成就労実施者に課す条件として、次のように書かれています(第三4(3)ア②)。
事業所で受け入れることができる育成就労外国人は、事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数を上限とし、ケアの質の担保や適切な指導体制を確保できる人数にすること。
分母の考え方は特定技能(第二2(3)②)と同じで、育成就労側にはさらに「ケアの質の担保や適切な指導体制を確保できる人数」という上乗せがあります。
ただし、育成就労外国人が特定技能の人数枠の分母に入るのか(技能実習生と同じ扱いになるのか)は、この方針にも運用要領別冊にも書かれていません。また、特定技能の枠と育成就労の枠が合算で運用されるのか、それぞれ別々に「総数を上限」と数えるのかを定めた記載も見当たりません。この点は次節の未確定論点として扱ってください。
公的文書で決まっていないこと(常勤の定義・パート・端数・兼務・基準日)
分母の判定でよく質問が出るのに告示にも運用要領別冊にも答えが書かれていない論点があります。「たぶんこうだろう」で埋めると計画が崩れます。
- 「常勤」の定義そのもの — 明文にあるのは「日本人等の常勤の介護職員の総数」「介護等を主たる業務として行う常勤職員」という語までで、週何時間以上を常勤とするかの定義は置かれていません。運用要領本体の「フルタイム=原則週5日以上・年間217日以上・週30時間以上」は受け入れる特定技能外国人本人の就労条件の定義で、分母の日本人職員の「常勤」の定義ではありません。「社会保険に加入する正規雇用の職員」とする民間解説もありますが、そのような定義を置いた公的文書は確認できていません。
- パート・短時間職員の常勤換算と端数 — 短時間勤務の職員を勤務時間割合で分母に積み上げてよいかの計算方法は見当たりません。⚠️ここは民間の解説が正反対に割れています——「短時間職員は分母に含まれない」と言い切るものと、「パート・非常勤は常勤換算で計算する」と断定するものの両方があり、どちらも明記した公的文書は確認できていません(端数の扱いも同様に不明です)。
- 生活相談員・機能訓練指導員・介護支援専門員と、兼務職員 — 別冊が分母から外すのは前述の事務職員・就労支援・看護師等の3職種だけで、相談員・機能訓練指導員・ケアマネジャーが「介護等を主たる業務として行う常勤職員」に当たるかの記載はなく、介護と事務・相談業務を兼務する職員の「主たる業務」を勤務時間の割合で見るのか職務分掌で見るのかを定めた記載もありません。
- 「事業所」の単位そのもの — 別冊が書いているのは「人数枠は、事業所単位で」という表現までで、併設事業所や同一建物内に複数の指定がある場合の単位は記載がなく、指定の単位で考えるのが自然ですが明文の裏づけはありません。
- 数える基準日と、期中に人数が動いた場合 — いつ時点の名簿で数えるか(申請日か、就労開始日か)を定めた記載はなく、受け入れ後に常勤介護職員が退職して上限を割った場合、すでに在留している1号特定技能外国人の扱いがどうなるかも同様です。⚠️ ただし人数枠は在留期間の更新申請でも審査対象になります(人数枠を定める告示第66号第2条は特定技能基準省令〔特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令〕第2条第1項第13号の委任=受入れ機関側の基準で、上陸許可だけでなく在留資格変更・在留期間更新の審査でも見られます)。明文がない以上、実務では分母に入る職員の補充か、別事業所への実態を伴う配置転換で埋めるのが現実的な対応です(前記の打ち手と同じ手段です)。
- 1号特定技能外国人本人・育成就労外国人 — 前述のとおり「日本人等」の列挙に含まれておらず、分母に数える根拠は条文上見当たりません(除外を名指しした条文があるわけではありません)。なお建設分野の人数枠は、分母から「1号特定技能外国人を除く」と除外を明文化しており(特定技能制度に関するQ&A Q33)、介護の条文にこの種の明文はありません。
上記は2026年8月9日時点で、厚生労働省告示第66号(令和7年4月21日改正)・運用要領別冊(同日一部改正)・分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定)・運用要領本体(令和8年4月)を確認した範囲の記載です。確認先は、在留諸申請にかかわる判定であれば管轄の地方出入国在留管理局、制度の運用そのものであれば運用要領別冊が示す厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課 福祉人材確保対策室です。
訪問系サービスに従事させる場合の人数枠
2025年4月21日から訪問系サービスへの従事が認められましたが、人数枠のルール自体は施設系と同じです。告示と分野別運用方針が訪問系に求めているのは事業所の遵守事項(講習・同行訪問によるOJT・キャリアアップ計画・ハラスメント対策・緊急時の体制整備)と、本人要件としての介護職員初任者研修課程等の修了・実務経験等で、人数枠を別に定める規定は置かれていません。なお「実務経験が1年以上」という水準を示しているのは告示・方針ではなく運用要領別冊で、同別冊は例外(日本語能力試験N2相当など在留資格上求められる水準より高い能力を持つ場合に限り、同行訪問を長く行う等の措置を条件に1年未満でも可)も併せて定めています。[3]訪問系の要件と手続きの全体像は訪問介護の特定技能解禁で整理しています。
② 分野全体の受入れ見込数(介護は126,900人・充足率58.9%)
事業所の分母をクリアしても、介護分野全体の枠が埋まれば新規の受け入れは止まります。外食業では2026年4月13日から在留資格認定証明書の交付が停止されました。介護は——2026年8月9日時点で、介護分野が受け入れ停止になったという出入国在留管理庁の公表はありません(同庁の介護分野のページと特定技能制度のお知らせ欄で確認した範囲)。
ただし、その「残り4割」(充足率58.9%・2026年3月末・速報値)の読み方は、枠として出回る数字が3種類あるせいで難しく、まず数字を分けます。
「介護の枠」として出回る3つの数字(135,000/126,900/160,700)
介護の受け入れ枠を調べると、135,000人・126,900人・160,700人という3つの数字に出会います。どれも実在する公的な数字で、対象が違うだけです。
| 数字 | 何の数か | 期間 | 出どころ |
|---|---|---|---|
| 135,000人 | 1号特定技能外国人の受入れ見込数(令和6年3月設定の旧値) | 令和6年度からの5年間 | 介護分野の運用方針(令和6年3月設定) |
| 126,900人 | 1号特定技能外国人の受入れ見込数(現行) | 令和6年度から令和10年度末までの5年間 | 介護分野の分野別運用方針 第一2(4)イ(令和8年1月23日閣議決定) |
| 160,700人 | 介護分野全体の受入れ見込数(特定技能1号+育成就労) | 令和6年度から令和10年度までの5年間 | 同方針 第一2(4)ア |
特定技能の枠は減り、分野全体の枠は増えています。 旧方針・現行方針とも「令和10年度に見込まれる人手不足から、生産性向上と国内人材確保で緩和される分を引いた残り」として受入れ見込数を導いており、積み上げを並べると数字が動いた理由が見えます。
| 積み上げの項目(令和10年度の見込み) | 令和6年3月設定(旧) | 令和8年1月23日閣議決定(現行) |
|---|---|---|
| 見込まれる介護人材の不足 | 227,000人程度 | 259,300人程度 |
| 生産性向上で緩和される分 | 47,000人程度 | 47,100人程度 |
| 追加的な国内人材確保で緩和される分 | 45,000人程度 | 51,500人程度 |
| 残る不足=受入れ見込数 | 135,000人(すべて特定技能1号) | 160,700人(特定技能1号126,900人+育成就労33,800人) |
旧方針はすべて特定技能1号でしたが、現行方針は1号と育成就労の2本に分けて示しています(上表のとおり1号は減り、全体は増えています)。[6]1号側が減った理由について、出入国在留管理庁の資料はこう書いています。
受入れ見込数は、受入れ上限として運用するものであるが、令和6年3月の設定時より更なる生産性向上、国内人材確保の取組を行うよう見直すなどして、精査した。[7]
育成就労外国人の受入れ見込数33,800人は、令和9年度から2年間(令和10年度末までの受入れの上限)として特定技能1号とは別に定められています。停止の仕組みも別々で、特定技能1号の交付停止は126,900人、育成就労認定の停止は33,800人を超えることが見込まれる場合が条件です(詳細は育成就労とは)。
出入国在留管理庁の介護分野のページは、いまも135,000人と記載しています
「まだ135,000人の枠がある」という情報は、古い数字を引いたものとは限りません。出入国在留管理庁の介護分野のページ(「2025年4月21日現在」と記載)には、2026年8月9日の閲覧時点で「受入れ見込数(5年間の最大値)135,000人」と掲載されたままで、同ページからリンクされている運用方針のPDFも令和6年3月設定の「最大で13万5,000人」のままです。数字が食い違う情報に当たったときは、その情報が拠る方針の時点(令和8年1月23日閣議決定か、令和6年3月設定の旧方針か)で見分けられます。採用計画の前提に使う数字は126,900人です。[8]
枠はどこまで埋まっているか(充足率58.9%)と、残り枠の読み方
介護分野の特定技能1号在留者数は74,745人で、受入れ見込数126,900人に対する充足率は58.9%です(2026年3月末時点・速報値)。同じ公表資料に外食業の数値も載っているので、資料をまたがずに並べられます。
| 項目(2026年3月末時点・速報値) | 介護 | 外食業(比較) |
|---|---|---|
| 受入れ見込数(1号特定技能外国人) | 126,900人 | 50,000人 |
| 在留者数(特定技能1号) | 74,745人 | 47,714人 |
| 受入れ見込数の充足率 | 58.9% | 95.4% |
| 年間増加数(令和7年3月末と令和8年3月末の在留者数の差) | 26,332人 | 16,498人 |
| 年間増加数 ÷ 受入れ見込数(編集部算出) | 20.8% | 33.0% |
年間増加数26,332人は、数値が公表されている16分野のなかで最も大きい増加数です(同資料の合計は105,373人で、その約4分の1=編集部算出)。ただし令和8年1月に受入れ対象分野へ追加されたリネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野は在留者数・充足率・年間増加数とも「-」で未公表のため、19分野すべてを比べた結果ではありません。
人数と「速さ」は別です。増加人数は介護が外食業の約1.6倍ですが、枠に対する消費の速さで見ると外食業のほうが速く、1年で枠の約33%(介護は約21%)にあたります。⚠️ この段落と上表最下段の比率(約1.6倍・約33%・約21%・約4分の1)は、同一資料内の公表値どうしを割った編集部算出で、公式の指標ではありません(充足率58.9%・95.4%は入管庁の公表値そのもので、編集部算出ではありません)。[9]
公表されている数字だけで単純に割ると、残りの枠52,155人(126,900人 − 74,745人)は、年間増加数26,332人でおよそ2.0年ぶんにあたります。
この2.0年ぶんの使い方:同一資料内の公表値(2026年3月末時点・速報値)を割っただけの単純計算(編集部算出)で、公式の予測ではありません。到達時期の断定には使えませんが、採用計画の点検の目安にはなります——計画の規模を残り枠と比べ、余裕がなければ前倒しや別ルートを検討します。
ただし、この2.0年は「枠が100%埋まるまでの年数」であって、「新規の受け入れが止まるまでの年数」ではありません。 外食業では100%到達を待たずに措置の方針が決まりました(どの時点で動くかは次の「受け入れ停止は何を見て判断されるか」で検算します)。
この割り算は2つの前提に乗っており、どちらも固定ではありません。
- 前提①:増加ペースが一定とは限らない — ペースが上がっている分野では、実際より遅く出ます。一方、月単位で到達時期を示す民間の試算は増加の加速を前提に置くことがあります(「直近の増加率が前年の1.47倍だったから毎年1.47倍」と置けば、到達時期は数年単位で前倒しになります)。試算を見たら、①どこまでが公表値で、どこからが仮定か ②何時点のデータか ③公式発表か民間試算かの3点を確認してください。
- 前提②:上限(分母)そのものが書き換わることもある — 介護分野の受入れ見込数も前述のとおり135,000人から126,900人へ改定された前例があります。上限が下がれば残り枠は縮み、引き上げられれば伸びますが、改定は自動的に起きるものでもありません。政府基本方針は、受入れ見込数を「大きな経済状況の変化が生じない限り1号特定技能外国人の受入れの上限として運用」するとしており、見直しは制度所管大臣と分野所管大臣の協議を経ます。上限は「動きうるが、動くとは限らない変数」として扱うのが実際に近くなります。[10]
受け入れ停止は何を見て判断されるか(介護分野の停止の仕組み)
充足率58.9%を「半分以上残っている」と読むと、外食業で起きたことと合いません。外食業で措置の方針が公表されたのは、上限5万人に対して在留者数が約4万6千人(2026年2月末・速報値)=約92%の段階でした(この約92%は同一資料内の概数どうしを割った編集部算出です。3月末時点の95.4%は方針公表のあとに出たスナップショットで、判断根拠として示された数字ではありません)。[11]
⚠️ ここで「介護も92%で止まる」と当てはめるのは誤りです。 方針が判断の根拠として示したのは比率ではなく、「本年5月頃に受入れ見込数を超えることが見込まれる状況」——つまりデータ時点(2月末)から見て約3か月先に上限を超える見込みという時間差でした。外食業の92%は、その時間差を外食業の増加ペース(1年で枠の約33%)に当てたときの結果にすぎません。
そこで、同じ「約3か月先」の時間差を介護の増加ペースに当て直すと、位置はこう変わります。
この試算の前提:介護側の3つの値(受入れ見込数126,900人・在留者数74,745人・年間増加数26,332人)は同一資料内の公表値ですが、割り算に使う「3か月」は外食業の資料から置いた仮定です(外食業の公表資料が示したのは「2月末現在で約4万6千人」「5月頃に超えることが見込まれる」という2点で、その差=約3か月をここでは使っています)。方針の明文に期間の定めはなく、この3か月の取り方が変われば答えも動きます。公式の予測ではない目安として読んでください。
| 手順 | 介護に当てはめた計算 |
|---|---|
| 3か月ぶんの増加数(年間増加数26,332人 ÷ 4) | 約6,583人 |
| 措置が視野に入る在留者数(126,900人 − 6,583人) | 約120,317人(充足率約95%) |
| そこまでの残り(120,317人 − 74,745人) | 約45,572人 |
| 年間増加数26,332人で割った年数 | 約1.7年(起点=2026年3月末) |
外食業の92%をそのまま当てると早く見積もり、100%(=残り2.0年)を待つと遅く見積もります。目安は充足率95%前後・約1.7年です。この約1.7年後に来るのは措置そのものではなく、在留者数が「上限の3か月手前」に達する時点です。外食業ではこの水準(2月末・約4万6千人)が判断根拠として示され、方針の公表が3月27日、農林水産大臣から法務大臣への要請が4月3日、措置の開始が4月13日でした。[11][12]同じ順番なら、介護でも約1.7年後(起点=2026年3月末)にこの水準へ達し、その約1か月後に方針が公表され、さらに約2週間半後に実施という並びになります。効いてくるのは最後の2週間半で、公表を見てから動き始めると、書類の準備や差戻しの余地がほとんど残りません。
この2週間半という短さは、偶然ではありません。 法務大臣は令和8年4月17日の記者会見で、外食業の停止が「発表から実施まで2週間半と短期間だった」理由を問われ、こう答えています。
これは、早期にアナウンスする必要もある一方、関係者に与える影響も考慮しつつ、駆け込み申請による受入れ見込数の上限超過を防止する必要など、様々な事情を考慮して決定したものです。[13]
つまり、予告が長いと駆け込み申請で上限を超えてしまうため、短くせざるを得ないという構造です。介護で同じ判断が働けば、予告期間も同じように短くなると考えて計画するのが安全側になります。
もっとも、この95%も機械的な閾値ではありません。判断の手順は、介護分野の分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定・別紙1)そのものに書かれています——「受入れ見込数は上限として運用する」という制度共通の言い回しとは別に、介護の126,900人を名指しして、何を見て・誰が・どう止めるかを定めた条文が置かれています。
| 項目 | 分野別運用方針の定め |
|---|---|
| 停止を求める人 | 厚生労働大臣(法務大臣に対して求める) |
| 停止を求める条件 | 1号特定技能外国人の受入れ見込数(126,900人)を超えることが見込まれる場合その他必要とされる人材が確保されたと認められる場合 |
| 人手不足の状況を把握する指標 | ①介護分野の1号特定技能外国人および育成就労外国人の在留者数(定期的に法務省から厚生労働省に提供)②有効求人倍率 ③介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数と実績値との対比等 |
| 止まる手続き | 在留資格認定証明書の交付(入管法第7条の2第3項・第4項) |
| 再開の手順 | 再び人材の確保を図る必要性が生じた場合に、厚生労働大臣が法務大臣に交付の再開の措置を求める |
指標は3つありますが、どの水準で措置に入るかの数値基準は方針に書かれていません。
指標②③の出発点の値は、同じ方針の第一2(3)に書かれています。介護分野の有効求人倍率は令和6年度で4.08倍、しかも都道府県別に見ても全都道府県が2.00倍以上です。指標③の必要数は、「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(令和6年7月12日公表)から推計した令和10年度に必要となる就業者数235万7,300人です。停止の兆しは在留者数のほか、有効求人倍率が高水準から下がるか、介護保険事業計画の必要数に実績が追いつくかも方針に書き込まれた観測点です。「充足率が何%になったら計画を前倒しに切り替えるか」を先に決めておくと動けます。[2]
上限に達したとき、介護で止まる手続き・止まらない手続き
外食業の対応方針は、申請の種類ごとに次のとおり扱いを示しています。
| 申請の種類(外食業分野で公表された4区分) | 外食業:2026年4月13日以降に受理された申請 | 外食業:2026年4月13日より前に受理された申請 |
|---|---|---|
| 在留資格認定証明書の交付申請(海外からの新規呼び寄せ) | 不交付 | 受入れ見込数の範囲内で順次交付。ただし在留資格変更許可申請が優先されるため「交付までに相当な遅延が生じることが見込まれます」 |
| 他の在留資格から特定技能1号への変更申請 | 原則不許可(例外=①②③) | 受入れ見込数の範囲内で順次許可。ただし「許可する時点での在留者数の状況によっては、特定技能1号でなく、特定活動(特定技能1号移行準備)への変更又は同在留資格での在留期間更新(更新は1回まで)を案内する場合があります」 |
| 特定活動(特定技能1号移行準備)への変更申請 | 不許可(例外=①②) | 不許可(例外=①②に加え、2026年3月27日までに食品産業特定技能協議会の加入申請を行っているもの) |
| 在留期間の更新申請 | 通常どおり処理 | 通常どおり処理 |
例外①=外食業分野で特定技能1号として在留する人からの申請(転職等=通常どおり審査)、②=技能実習(医療・福祉施設給食製造作業)を修了した人、③=既に外食業分野の特定活動(特定技能1号移行準備)の許可を受けている人。特定技能1号への変更申請では②③が受入れ見込数の範囲内で順次許可(②を優先)となり、この場合も上表の但し書き(許可時点の在留者数の状況によっては、1号でなく特定活動〔特定技能1号移行準備〕への変更や同資格での更新〔1回まで〕を案内する場合がある)が同じように付きますが、特定活動への変更申請では例外に当たれば「通常どおり審査」となります。特定活動への変更が不許可となる扱いは受理日で区切られておらず、例外①②は受理日を問わず通常どおり審査されます。[11]
線は申請が受理された日で引かれますが、措置日前の申請が一律に守られるわけではありません。国内の変更許可申請は優先処理される一方、海外からの呼び寄せは上表のとおり遅延が見込まれ、同じ「措置日前」でも国内ルートと海外ルートで扱いが非対称です。なお、措置日前にすでに交付された認定証明書を持ち、まだ入国していない人の扱いは3つの公表資料のいずれにも記載がなく確認できません(該当者は地方出入国在留管理官署へ個別に確認してください)。
介護に同じ措置が取られたと仮定すると、止まらない側は在留期間の更新と介護分野内での転職に伴う在留資格変更、止まる側は海外からの新規呼び寄せ、留学・技能実習など他の在留資格から介護の特定技能1号への変更、特定活動(特定技能1号移行準備)への変更になります。一方、介護福祉士の国家資格を取得して在留資格「介護」へ移る手続きは、この措置の列挙に含まれません(対象は上表の4区分のためです)。介護に特定技能2号はなく、5年超の就労はこの移行が基本の道筋です(5年目の国家試験でパート合格した場合の最長1年の在留期間延長=通算最長6年の措置を含め、特定技能 介護の受け入れ)。停止局面で取れる手は外食業の特定技能はいつ再開?の整理が介護にもそのまま当てはまります。
外食業の技能実習修了者向け配慮は対応方針の個別記載で、介護分野で同様の配慮が置かれるとは限りません——対象範囲と例外は、その時点で公表される対応方針で確認してください。影響の受け方を分けるのは、すでに国内にいて試験を経ずに特定技能1号へ進める人材ルートの有無です(介護の免除ルートはいずれも国内にいる人の「変更」ルート=介護の特定技能試験)。
在留資格申請の取次ぎや書類の作成は行政書士などの専門家の領域です。受理日がスケジュールを左右する場面では専門家と連携してください。分野をまたいだ停止の運用・全19分野の充足率一覧は特定技能の受け入れ停止、在留者数の統計(国籍別・都道府県別)は特定技能の統計データで整理しています。
③ 人員配置基準への算入(特定技能1号は就労開始から)
3つ目の「人数」のルールが、介護報酬の人員配置基準(利用者数に対して必要な介護職員数)に、受け入れた外国人をいつから算入できるかです。
介護分野の1号特定技能外国人は、就労開始と同時に人員配置基準へ算入できます。平成31年3月29日付の厚生労働省社会・援護局長ほかの通知は、介護報酬および障害福祉サービス等報酬上の配置基準について「就労と同時に職員等とみなす取扱いとしても差し支えないものであること」と示しています。[14]
ただし同じ通知は続けて、「一定期間、他の日本人職員とチームでケアに当たる等、受入施設における順応をサポートし、ケアの安全性を確保するための体制をとることを求める」と条件を置いています。この「一定期間」が何か月なのかを示した明文はありません。期間の目安を挙げている解説もありますが通知本文に数字はなく、「体制をいつまで敷くか」は自施設判断となり、判断の根拠として何を残すかも通知は定めていません。研修記録・チームでケアする体制とその解除時期・判断した会議体と日付を残しておけば、「配置基準に算入できる」ことと「初日から一人で任せきる」ことを分けて説明できます。
在留資格別の算入タイミング
| 在留資格 | 人員配置基準に算入できるタイミング |
|---|---|
| 特定技能1号(介護) | 就労開始と同時に算入できる(就労当初はチームでケアする体制が前提。期間の明文はなし) |
| 技能実習(介護) | 原則は実習を開始した日から6か月を経過してから。令和6年度介護報酬改定により、要件を満たす場合は就労開始直後からの算入も可能(日本語能力試験N1・N2の合格者は従前どおり就労開始から算入可) |
| EPA介護福祉士候補者 | 原則は就労を開始した日から6か月を経過してから。緩和の要件・内容は技能実習と同じ(N1・N2の合格者は従前どおり就労開始から算入可) |
技能実習・EPA側の「6か月」は令和6年度介護報酬改定で緩和されましたが、無条件ではありません——受入れ施設の研修体制・安全管理体制(一定の経験のある職員とのチームケア、安全対策担当者の配置等)の整備と、事業者が本人の日本語能力・研修の実施状況・管理者等の意見を勘案して算入すると意思決定したことが要件で、対象は通所系・短期入所系・居住系・多機能系・施設系(訪問系は対象外)。この見直しの対象は「EPA介護福祉士候補者及び技能実習生」で、特定技能1号の取扱いは変更されていません。[15][16]
夜勤の任せ方にも違いがあります。介護職種の技能実習では技能実習生以外の介護職員の同時配置(単独夜勤の禁止)が求められ、業界ガイドラインでも夜勤は原則2年目以降とする努力義務が置かれていますが、特定技能1号にこうした夜勤固有の制限はありません。[17]
介護報酬の「常勤換算方法」は人数枠の数え方とは別のルール
配置基準の話で必ず出てくるのが「常勤換算」(介護報酬の基準側の用語)で、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第2条第八号は次のように定義しています。
常勤換算方法 当該事業所の従業者の勤務延時間数を当該事業所において常勤の従業者が勤務すべき時間数で除することにより、当該事業所の従業者の員数を常勤の従業者の員数に換算する方法をいう。[18]
つまり介護報酬側では、短時間勤務の職員も勤務時間の割合で人数に換算しますが、①の人数枠(入管法側)にはこの常勤換算の規定がなく、配置基準で使っている常勤換算後の職員数をそのまま人数枠の分母に持ち込むことはできません。
なお「算入できる」とは、その人を配置基準の頭数に数えてよいという意味です。人員配置基準上の「常勤」は、常勤の従業者が勤務すべき時間数(32時間を下回る場合は32時間が基本)勤務していることで判定されるため、特定技能のフルタイム要件(週30時間以上等)を満たしていても、事業所の所定勤務時間との関係で常勤扱いになるかは別に決まります。
受け入れの前提:自社の事業所が「対象施設」か
自社の事業所が厚生労働省の示す対象施設に当たる必要があり、判断の軸は「その事業所で、介護福祉士の受験資格につながる介護等の業務をさせられるか」で、範囲は老人福祉法・介護保険法にとどまらず児童福祉法関係・障害者総合支援法関係・生活保護法関係の施設・事業や病院・診療所(看護補助の業務)も含みます。区分ごとの全体像と、条件つきで対象になる施設(有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、小規模多機能型居宅介護など)は特定技能 介護の受け入れで判定できます。[19]
従事できる業務の範囲(できる業務・できない業務)
現行の分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定)第二2(1)が定める従事できる業務は身体介護等で、運用要領別冊はこれを「入浴、食事、排せつ、整容・衣服着脱、移動の介助等」と敷衍しています。日本人職員が通常従事する関連業務(掲示物の管理、物品の補充など)に付随的に携わるのは差し支えありませんが、別冊は「専ら関連業務に従事することは認められません」としています(別冊の業務範囲に医行為を含める記載はありません)。⚠️ 民間の解説にある「レクリエーションの実施・機能訓練の補助」という付随業務の例示は、令和6年3月設定の旧方針の文言で、現行方針にはこの句がありません(別冊が旧方針を「抜粋」として載せたままのため混在しています)。2025年4月21日からは、一定の要件のもとで訪問系サービスにも従事できます(訪問介護の特定技能解禁)。
介護の特定技能は「直接雇用のみ」(派遣は不可)
特定技能で派遣が認められているのは農業・漁業の2分野で、介護は対象外です。厚生労働省告示第66号第1条は、労働者派遣の対象としない旨を上陸許可の基準としており、運用要領別冊は「派遣することも、派遣された者を受け入れることもできません」とし、これに反した場合は「以後5年間は、特定技能外国人の受入れができないこととなります」としています。[3]
雇用形態では、あわせてフルタイムでの就労(運用要領の定義=週5日以上・年間217日以上・週30時間以上。同要領は「通常の労働者」にアルバイト・パートタイム労働者を含めないとしています)と、報酬が同じ業務の日本人労働者と同等以上であることも前提になります。[20]なお1人の特定技能外国人が複数の企業と雇用契約を結んで就労することはできません(特定技能制度に関するQ&A Q32=フルタイム要件からの帰結)。[21]
ここまで扱っていない受け入れ条件が2つあり、本人の試験要件(介護技能評価試験・介護日本語評価試験・日本語試験=参照枠A2.2相当以上。免除ルートあり)は介護の特定技能試験、介護分野における特定技能協議会への加入(在留諸申請の前に入会証明書が要る)は特定技能 介護の受け入れで解説しています。介護固有の上乗せの下地になる共通要件(雇用契約・支援体制・支援計画の基準と受け入れ後の義務)は特定技能で企業に求められる受け入れ要件で整理しています。
自社で「何人・いつから」受け入れられるかを確認する
事業所ごとに分母を数え直す
前記の名簿の例にならって日本人等の常勤介護職員を事業所ごとに数え、すでに受け入れている1号特定技能外国人の人数を引いた残りが追加で受け入れられる人数です。判定に迷う職員を洗い出す
パート職員や兼務職員の扱いなど前記の「決まっていないこと」に当たる職員がいれば、その時点で公的窓口・専門家への確認に回します(見積もりが後からずれると採用計画ごと崩れます)。分野全体の枠に対する自社の計画の位置を確かめる
枠が100%埋まるまでは約2.0年ぶん、外食業と同じ時間差なら約1.7年(いずれも起点=2026年3月末)で措置が視野に入る水準(充足率95%前後)に届きます。計画の規模と時期をこの位置と突き合わせ、余裕がなければ前倒しか別ルートを検討します。あわせて、枠の状況に左右されない手続き(協議会への入会と入会証明書の取得)は先に済ませておきます。配置基準への影響と採用ルートを決める
特定技能1号は就労開始から配置基準に算入できます。就労当初のチームでケアする体制を前提に配置計画へ織り込み、試験合格者の採用か技能実習からの移行かを、費用も踏まえて選びます。試験合格から実際の入職までにかかる期間は介護の特定技能試験で目安を示しています。
前倒しの理由は時間です。外食業で線が引かれたのは申請が受理された日でしたから、間に合わせるべきは「受理まで」——協議会の入会証明書(事務局窓口での確認完了後おおむね2週間)と、申請書類をそろえる期間です。予告は約2週間半で、入会証明書の発行だけでおおむね2週間かかります。公表を見てから入会申請を始めたのでは、書類の準備や差戻しの余地がほとんど残りません。だから協議会への入会は、枠の状況と関係なく先に済ませておくのが確実です。
なお受理後の審査には、海外呼び寄せなら在留資格認定証明書の交付が平均68.6日、国内在住者なら在留資格変更の許可が平均64.7日かかります(どちらか一方・いずれも令和8年5月許可分の公表値)。こちらは措置日の線引きの外側ですが、就労開始までの逆算には必要です(内訳と出典=特定技能 介護の受け入れ。入会証明書の有効期間と事業所単位の縛りは特定技能 介護の登録支援機関の選び方、費用の目安は介護の特定技能 採用費用・相場)。
まとめ
介護で何人採れるかは2階建てです。手前の事業所の上限は「日本人等の常勤介護職員の総数」というルールで、在留資格と職種の絞り込みが重なるため名簿の頭数と分母は大きく食い違うことがあります。奥の分野全体の上限は126,900人・充足率58.9%(2026年3月末・速報値)。100%到達の目安は公表値の単純計算で約2.0年ですが、外食業の時間差を当てた試算では約1.7年(起点=2026年3月末)で充足率95%前後へ届き、そこから公表・実施と進む位置になります(外食業では公表の約2週間半後に実施=公表を見てから動き始めるのでは準備の余地がほとんど残りません)。枠として出回る135,000人・160,700人との違いを押さえ、計画の前提には126,900人を使ってください。
止まるとしても入口だけです。枠の状況に左右されない手続き(対象施設の確認・事業所の分母の把握・協議会への入会)から進めておくのが確実です。常勤の定義や兼務・基準日といった実務の要所には明文がなく、公的窓口や専門家に確認する領域です。介護の採用全体は特定技能 介護の受け入れ、制度の全体像は特定技能採用の完全ガイドをご覧ください。
分母の見積もりが固まった後の「採用計画をどう組むか」「支援体制をどこに委託するか」を相談したい場合は、条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します(提携先のサービスをご紹介しています)。個々の職員を分母に数えてよいかという在留諸申請上の判定は、地方出入国在留管理局や行政書士などの専門家の領域です。
よくあるご質問
- 介護で特定技能外国人は何人まで受け入れられますか?
- 事業所単位で、1号特定技能外国人の総数が、その事業所の日本人等の常勤介護職員の総数を超えない範囲です。分母に数えるのは「介護等を主たる業務として行う常勤職員」に限られ、技能実習生・EPA介護福祉士候補者・留学生や、事務職員・就労支援を行う職員・看護業務を行う看護師および准看護師は含まれません(病院・診療所では看護補助者とその指導看護師が逆に含まれます)。職員が20人いても分母は9人、という事業所もあり得ます。なお、この事業所ごとの上限とは別に、介護分野全体の受入れ見込数126,900人という上限も設けられています。
- すでに特定技能外国人がいる場合、あと何人採れますか?
- 上限は受け入れている1号特定技能外国人の総数にかかるため、残りの枠は分母からすでに受け入れている人数を引いた数です。日本人等の常勤介護職員が9人で、すでに4人受け入れているなら、追加で受け入れられるのは5人までです。
- パート職員は人数枠の分母に数えられますか?
- 告示と運用要領別冊が定めているのは「日本人等の常勤の介護職員の総数」という範囲までで、何時間以上を「常勤」とするか、短時間職員を常勤換算で積み上げてよいか、端数をどう扱うかを定めた記載は見当たりません。判定が在留諸申請に関わる場合は、地方出入国在留管理局や行政書士などの専門家に確認して進めてください。
- 育成就労にも介護の人数枠はありますか?
- あります。令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針は、育成就労実施者に課す条件として「事業所で受け入れることができる育成就労外国人は、事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数を上限とし、ケアの質の担保や適切な指導体制を確保できる人数にすること」と定めています。分母の考え方は特定技能と同じで、育成就労側にはケアの質・指導体制の確保という上乗せがあります。なお、育成就労外国人が特定技能の人数枠の分母に入るかを定めた記載は見当たりません。
- 複数の事業所がある法人では、人数枠はどう数えますか?
- 人数枠は法人単位ではなく事業所単位で数えます。事業所ごとに日本人等の常勤介護職員の総数を数え、それがその事業所で受け入れられる1号特定技能外国人の上限になります。たとえばA事業所10人・B事業所4人の法人なら、Aは最大10人・Bは最大4人で、法人合計14人をまとめてどちらかの事業所で受け入れることはできません。
- 常勤の介護職員が1人しかいない小規模な事業所でも、特定技能外国人を受け入れられますか?
- 日本人等の常勤介護職員が1人なら、受け入れられる1号特定技能外国人も1人までで、0人の場合は受け入れの枠自体が生じないことになります。これは条文が「総数を超えないこと」と定めていることからの帰結で、0人・1人のケースを名指しで説明した公的文書は確認できていません。受け入れた1号特定技能外国人や育成就労外国人は「日本人等」の列挙に含まれないため、その人たちで分母を増やす組み立ては成り立ちません。判定が在留諸申請に関わる場合は、地方出入国在留管理局や行政書士などの専門家に確認して進めてください。
- 介護分野の枠はどこまで埋まっていますか?
- 介護分野の特定技能1号在留者数は74,745人で、受入れ見込数126,900人に対する充足率は58.9%です(2026年3月末時点・速報値)。この充足率は出入国在留管理庁の公表値です。同資料に掲載された年間増加数は26,332人で、数値が公表されている16分野のなかで最も大きい増加数です(令和8年1月に受入れ対象分野へ追加されたリネンサプライ・物流倉庫・資源循環の3分野は、在留者数・年間増加数とも未公表です)。
- 介護の枠は135,000人ではないのですか?
- 135,000人は令和6年3月に設定された旧値で、現行の1号特定技能外国人の受入れ見込数は126,900人です(令和8年1月23日閣議決定)。さらに、育成就労を含む介護分野全体の受入れ見込数は160,700人と定められています。3つとも実在する数字ですが、指している対象が違います。なお出入国在留管理庁の介護分野のページには、2026年8月9日の閲覧時点で135,000人と掲載されたままです。
- 介護分野の特定技能は受け入れ停止になりましたか?
- 2026年8月9日時点で、介護分野が受け入れ停止になったという出入国在留管理庁の公表はありません(同庁の介護分野のページと特定技能制度のお知らせ欄で確認した範囲)。停止されているのは外食業分野で、2026年4月13日以降に受理された在留資格認定証明書交付申請が不交付とされています。介護分野の停止は、1号特定技能外国人の受入れ見込数126,900人を超えることが見込まれる場合などに、厚生労働大臣が法務大臣に措置を求める仕組みです(令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針)。
- 上限に達したら、介護では何が止まりますか?
- 外食業で取られた措置を当てはめると、止まるのは海外からの新規呼び寄せ(在留資格認定証明書の交付)、他の在留資格から特定技能1号への変更、そして特定活動(特定技能1号移行準備)への変更です。すでに働いている人の在留期間の更新と、同じ分野内での転職に伴う変更は対象外とされました。認定証明書の交付申請と特定技能1号への変更申請は受理日(措置日の前か後か)で扱いが分かれますが、特定活動への変更は受理日で区切られず不許可とされています。また措置日より前に受理された認定証明書交付申請についても、在留資格変更許可申請が優先的に処理されるため「交付までに相当な遅延が生じることが見込まれる」とされています。介護分野で措置が取られた場合の対象範囲は、その時点で公表される対応方針で確認してください。
- 特定技能の外国人は介護の人員配置基準に算入できますか?
- 算入できます。平成31年3月29日付の厚生労働省通知で、介護分野の1号特定技能外国人は配置基準上「就労と同時に職員等とみなす取扱いとしても差し支えない」とされています。ただし一定期間、ほかの日本人職員とチームでケアに当たるなど、受入施設への順応をサポートしケアの安全性を確保する体制をとることが求められます。この「一定期間」の長さを示した明文はありません。
- 技能実習生の「6か月」ルールは変わりましたか?
- 令和6年度介護報酬改定で緩和されました。従来は就労・実習の開始から6か月を経過するまで(日本語能力試験N1・N2の合格者を除き)算入できませんでしたが、適切な研修体制・安全管理体制が整備された受入れ施設で、事業者が日本語能力・研修の実施状況・管理者や研修責任者等の意見を勘案して算入すると意思決定した場合は、就労開始直後から算入して差し支えないとされています。対象はEPA介護福祉士候補者と技能実習生で、特定技能1号の取扱いは変更されていません。
- どんな施設・事業所なら介護の特定技能を受け入れられますか?
- 介護福祉士国家試験の受験資格の認定で実務経験として認められる介護等の業務に、その人を従事させられる事業所が対象です。老人福祉法・介護保険法上の介護施設・事業所の多くが該当しますが、対象施設は厚生労働省が具体的に定めているため、自社の事業区分が当たるかは厚生労働省の案内で確認してください。
- 介護の特定技能は派遣で受け入れられますか?
- できません。介護は直接雇用のみで、派遣が認められるのは農業・漁業の2分野です。雇用契約に労働者派遣の対象としない旨を定めることが上陸許可の基準とされ、派遣で受け入れると以後5年間は特定技能外国人の受け入れができなくなります。あわせてフルタイム・報酬は日本人と同等以上が必要です。
出典・参考(一次情報)
- 厚生労働省告示第66号(介護分野の基準・平成31年3月15日告示/令和7年4月21日改正)(出入国在留管理庁)
- 介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針(令和8年1月23日閣議決定・別紙1)第一2(3)(4)・第一3・第二2(3)②・第三4(3)ア②(出入国在留管理庁)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領・別冊(介護分野/令和7年4月21日一部改正)p.13–14=事業所ごとの人数枠に係る要件/p.15=労働者派遣の禁止と、違反した場合の5年間の受入れ不可(出入国在留管理庁)
- 運用要領別冊(介護分野/令和7年4月21日改正)=厚生労働省が公開する同一文書(厚生労働省)
- 分野参考様式第1-2号(事業所の概要書)=受入数②と日本人等の常勤介護職員数③の記載欄・注意1「実際に業務に従事する事業所について記載すること」/日本人等の常勤の介護職員の数の記載欄(厚生労働省)
- 介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針(令和6年3月設定・旧方針/「最大で13万5,000人」・人手不足22万7,000人程度)(出入国在留管理庁)
- 分野別運用方針の主要な記載事項(令和8年1月23日閣議決定・受入れ見込数)(出入国在留管理庁)
- 特定技能(介護分野)=受入れ見込数を135,000人と記載したままの分野別ページ(「2025年4月21日現在」)(出入国在留管理庁)
- 特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年3月末時点・速報値)(出入国在留管理庁)
- 特定技能「外食業分野」における受入れ見込数の上限超過への対応(関連規定・政府基本方針の記載)(出入国在留管理庁)
- 特定技能「外食業分野」における受入れ上限の運用について(令和8年3月27日)(出入国在留管理庁)
- 特定技能「外食業分野」における在留資格認定証明書交付の一時停止措置について(令和8年4月13日)(出入国在留管理庁)
- 法務大臣閣議後記者会見の概要(令和8年4月17日)=外食業の停止措置で公表から実施までが短期間だった理由(駆け込み申請による受入れ見込数の上限超過の防止)(法務省)
- 外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いについて(第223回社会保障審議会介護給付費分科会 資料4・令和5年9月8日)=改定前の従来ルールと平成31年3月29日通知の原文(厚生労働省)
- 令和6年度介護報酬改定における改定事項について 3.(2)⑧ 外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いの見直し(厚生労働省)
- 令和6年度介護報酬改定について(改定資料の恒久ページ)(厚生労働省)
- 技能実習「介護」における固有要件について(夜勤業務等の取扱い)(厚生労働省)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第2条第八号=常勤換算方法の定義(e-Gov法令検索)
- 介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について(※1〜※3の条件つき区分を含む)(厚生労働省)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領(令和8年4月)=フルタイムの定義・同等報酬(出入国在留管理庁)
- 特定技能制度に関するQ&A Q32(複数企業での就労は不可)・Q33(受入れ機関ごとの上限は原則なし/介護・建設の例外)(出入国在留管理庁)