特定技能の義務的支援10項目|実施基準・残す書類・実費の負担
目次
特定技能1号で外国人材を受け入れると、生活や仕事の支援を実施する義務が企業に生じます。「何をどこまでやればいいのか」が曖昧なまま受け入れを進めると、支援漏れが在留期間の更新審査や実地調査で表面化することもあります。必ず行う支援は義務的支援10項目として具体的に定められており、実施の水準も時間・広さ・頻度で決まっています。
この記事の要点
- 義務的支援は10項目で、すべて実施する — 1つでも欠けると、支援計画を適正に実施していないことになります。支援義務があるのは1号のみで、2号にはありません。
- 実施の水準は数値で決まっている — 事前ガイダンスは3時間程度、生活オリエンテーションは8時間以上、住居の居室は1人当たり7.5㎡以上、定期面談は3か月に1回以上。
- 「やった」を証明する書類まで含めて義務 — 支援の状況に係る文書を作成し、雇用契約の終了の日から1年以上事業所に備え置く必要があります。
- 全部委託しても企業に残るものがある — 支援計画の作成、定期面談、実施状況の届出の取りまとめは、全部委託を選んでも企業の手元に残ります。
- 移行者は支援が軽くなる — 技能実習2号などから在留資格を変更し、同じ住居に住み続ける人は、入国時の送迎と住居の確保に係る支援が対象外になります。
支援の要件は入管法令で定められ、改正されることがあります。本記事は概要です。実施にあたっては、出入国在留管理庁の最新の運用要領を確認してください。
義務的支援とは——10項目すべてを計画に書き、すべて実施する
義務的支援は、特定技能1号の外国人材に対して必ず実施しなければならない支援で、「1号特定技能外国人支援計画」に全項目を記載したうえで、計画に沿って実施します。運用要領は、義務的支援はそのすべてを行う必要があり、すべてを行わなければ支援計画を適正に実施していないことになるとしています(技能実習2号などからの変更で、客観的状況に照らして明らかに不要な支援は除きます)。[1]特定技能2号には支援計画の作成・実施義務はありません。
支援計画は支援計画書(参考様式第1-17号)にまとめ、日本語と外国人材が十分に理解できる言語の両方で作成します。作成したら本人に写しを交付し、内容を説明したうえで、十分に理解したことについて署名を得て、在留諸申請時に提出します。「十分に理解することができる言語」は母国語に限られませんが、内容を余すことなく理解できる言語である必要があります。
任意的支援——計画に書くと義務になる
義務的支援とは別に、行うことが望ましいとされる任意的支援があります。実施は義務ではなく、運用要領は項目ごとに具体例を挙げています。
- ①事前ガイダンスに加えて — 入国時の気候と服装、本国から持参すべき物・持参してはならない物、入国後に当面必要となる金額と用途、企業から支給される物(作業着など)
- ③住居に加えて — 雇用契約の解除・終了後、次の受け入れ先が決まるまでの住居確保への配慮
- ⑥日本語学習に加えて — 社内での日本語指導・講習の企画運営、日本語能力の試験の受験支援や資格取得者への優遇、入学金・月謝・教材費の全部または一部の負担
- ⑦相談対応に加えて — 相談窓口の一覧をあらかじめ手渡す、相談・苦情専用の電話番号やメールアドレスの設置、労災保険制度の周知と手続の補助
- ⑧交流促進に加えて — 行事に参加できるようにするための有給休暇の付与や勤務時間の配慮、企業が率先して交流の場を設けること
これらは定着に効く一方、支援計画に記載すると実施義務が生じます。実施しきれない支援を「やる予定」として計画に書き込まず、続けられる範囲で決めるのが安全です。採用後の定着まで含めた組み立ては特定技能外国人の定着支援で解説しています。
10項目を「いつやるか」で分けて見る
10項目は番号順に並んでいますが、自社の負担を見積もるときは実施のタイミングで3つに分けた方が実態に近いです。入国前後に集中する支援は一度で終わり、在留期間中ずっと続く支援が継続的な工数になります。①〜⑩のすべてが下の3つの表(タイミング別)のいずれかに入ります(②の送迎だけは入国時と帰国時で時期が離れるため、1つ目と3つ目の表に分かれます)。
入国・在留資格変更の前後に行う支援(一度で終わる)
| 項目 | いつ | 何をするか |
|---|---|---|
| ① 事前ガイダンス | 在留資格認定証明書の交付申請前(変更を伴う場合は変更申請前) | 労働条件・活動内容・入国手続き・費用負担などを、理解できる言語で説明する |
| ② 出入国する際の送迎(入国時) | 上陸の手続を受ける港・空港から | 事業所または住居まで送迎する |
| ③ 住居の確保・生活に必要な契約の支援 | 入居前・契約前 | 住居探しの補助・連帯保証人の引き受け・社宅の提供のいずれか。銀行口座、携帯電話、電気ガス水道の契約を補助する |
| ④ 生活オリエンテーション | 入国後(変更を伴う場合は変更後)遅滞なく | 生活ルール・行政手続き・相談窓口・医療機関・防災防犯・法的保護の情報を、理解できる言語で提供する |
在留期間中ずっと続く支援(継続的に工数がかかる)
| 項目 | 頻度・体制 | 何をするか |
|---|---|---|
| ⑤ 公的手続等への同行 | 必要に応じて随時 | 住民登録・社会保障・税などの手続きに同行し、窓口での書類記入をサポートする |
| ⑥ 日本語学習の機会の提供 | 習得状況に応じて継続的に | 日本語教室・認定日本語教育機関の案内と入学手続の補助、自主学習教材やオンライン講座の情報提供と契約補助、登録日本語教員等との契約による講習提供のいずれか |
| ⑦ 相談・苦情への対応 | 1週間当たり勤務日に3日以上・休日に1日以上+夜間 | 職場・生活上の相談に理解できる言語で遅滞なく対応し、必要に応じて行政窓口を案内・同行する |
| ⑧ 日本人との交流促進 | 必要に応じて随時(年間を通じて行うことが望ましいとされる) | 地域行事や自治会の案内、参加手続の補助、必要に応じた同行と説明を行う |
| ⑩ 定期的な面談・行政機関への通報 | 3か月に1回以上 | 本人と、その監督をする立場にある者のそれぞれと面談し、法令違反を把握したら関係行政機関へ通報する |
その出来事が起きたときだけ行う支援
| 項目 | 起きる場面 | 何をするか |
|---|---|---|
| ② 出入国する際の送迎(帰国時) | 出国のとき(一時帰国は含まない) | 港・空港まで送迎し、保安検査場の前まで同行して入場を確認する |
| ⑨ 転職支援 | 人員整理・倒産など企業側の都合で雇用契約を解除するとき | (a) 業界団体等を通じた受け入れ先の情報提供 (b) ハローワーク等の案内・同行 (c) 推薦状の作成 (d) 職業紹介事業の許可または届出がある場合の紹介あっせん のいずれか。あわせて求職活動のための有給休暇の付与と離職時の行政手続の情報提供は両方とも必要 |
⑨の転職支援の義務が生じるのは、外国人本人の責めに帰すべき事由によらずに雇用契約を解除する場合です。本人の自己都合による退職では生じません。
支援が要らないケース・もう一度必要になるケース
義務的支援は10項目すべてが対象ですが、「客観的状況に照らして明らかに不要」な支援は実施しなくても差し支えないとされています。実務では、対象外になるケースと、いったん終わった支援がもう一度必要になるケースが混在します。
| 場面 | 支援の扱い |
|---|---|
| 技能実習2号などから特定技能1号へ変更(すでに国内に在留) | ②入国時の送迎は対象外。任意で国内の移動を送迎することは可 |
| 技能実習生として住んでいた社宅等に引き続き住む | ③住居の確保に係る支援は不要。ただし寝室は1人当たり4.5㎡以上必要 |
| 引き続き住んでいた社宅等から退去せざるを得なくなった | ③新たな住居の確保に係る支援が必要になる |
| 受け入れ後に本人が転居する(配置換えなどで通勤が困難になった場合を含む) | ③住居の確保に係る支援をあらためて行う。ただし特段の事情がなく本人の都合で転居する場合は対象外 |
| 転職して別の受け入れ企業と契約した | ①事前ガイダンスと④生活オリエンテーションを、新しい企業があらためて実施 |
| 本人の離職が決まった(雇用契約はまだ継続中) | ③住居の確保に係る支援と⑦相談・苦情への対応は継続 |
| 本人が一時帰国する | ②送迎の対象に含まれない |
| 特定技能2号へ移行した | 支援計画の作成・実施義務がなくなる |
どこまでやれば「実施した」ことになるのか——数値の基準と義務の範囲
10項目のうち5つには、運用要領で具体的な水準が示されています。「実施した」と言えるかどうかがこの数値で判断されるため、自社で回すか委託するかを決める前に確認しておく箇所です。
| 支援 | 求められる水準 | 下限の扱い |
|---|---|---|
| ① 事前ガイダンス | 3時間程度 | 技能実習生を同一機関で引き続き雇用する場合などで短縮しても、1時間に満たないと適切に実施したとはいえない |
| ④ 生活オリエンテーション | 少なくとも8時間以上 | 生活環境に変化のない移行者などでも、4時間に満たないと適切に実施したとはいえない |
| ③ 住居の居室の広さ | 1人当たり7.5㎡以上(ルームシェアは居室全体を居住人数で割った面積で判断) | 建築基準法上の「居室」を指し、ロフトは含まれない。技能実習2号などから変更して既存の社宅に住み続ける場合は、寝室が1人当たり4.5㎡以上。あわせて同等の業務を行う日本人と同等の処遇が必要(日本人に社宅を提供するなら同等に提供し、広さも同等を確保する) |
| ⑦ 相談・苦情への対応 | 1週間当たり勤務日に3日以上・休日に1日以上、就業時間外(夜間)にも対応できる体制 | 委託する場合、委託先は自社の勤務時間に合わせて相談時間帯を設定する必要がある |
| ⑩ 定期的な面談 | 3か月に1回以上、本人と監督者のそれぞれと実施 | 同席の1回では足りない。実施できるのは支援責任者または支援担当者に限られる。派遣形態で受け入れる場合、監督者は派遣先の監督的立場にある者。漁業(洋上操業)は無線・船舶電話での連絡に代え、帰港時に面談することも可 |
①事前ガイダンス——説明する10点と実施のしかた
①の事前ガイダンスは、対面またはビデオ通話などで本人確認をしたうえで実施します。文書の郵送やメールの送信のみでは認められません。説明が必要な事項は次の10点です。
- 従事させる業務の内容、報酬の額その他の労働条件
- 日本で行うことができる活動の内容
- 入国にあたっての手続き(在留資格認定証明書の交付日から3か月以内の入国、変更許可を受けるまでは新しい就労先で働けないこと など)
- 保証金の徴収や違約金を定める契約をしておらず、今後もしないことが見込まれること
- 契約の申込みの取次ぎや海外での準備に関して外国の機関に費用を支払っている場合は、その額と内訳を十分に理解して合意していること
- 支援に要する費用を、直接・間接に本人へ負担させないこと
- 入国する港・空港での出迎えと、事業所または住居までの送迎を行うこと
- 住居の確保に係る支援の内容(社宅を貸与する予定なら広さと本人が負担する金額を含む)
- 相談・苦情の申出を受ける体制(曜日・時間帯・方法)
- 支援担当者の氏名と連絡先
義務としての実施期限は在留諸申請の前ですが、運用要領は雇用契約の締結時以前に行うことが望まれるとしています。説明事項に労働条件など「契約前に本人が把握しておくべき情報」が含まれるためです。なお、事前ガイダンスの実施を現地の送出機関に委託すること自体は排除されていませんが、その送出機関が保証金を徴収している場合は、企業が支援体制の基準を満たしていないと判断される可能性があります。
④生活オリエンテーション——提供する6分野
④の生活オリエンテーションで提供する情報は、6つの分野に分かれています。金融機関・医療機関の利用、交通ルール、ゴミ出し、災害情報、日本で違法となる行為などの「生活一般」に加えて、住居地や所属機関に関する届出の手続き、相談・苦情の窓口の連絡先(支援担当者、地方出入国在留管理局、労働基準監督署、ハローワーク、法務局、警察署、市区町村、法テラス、大使館・領事館)、理解できる言語で受診できる医療機関、防災・防犯と緊急時の対応、そして残業代の不払いなどを知ったときの相談先や年金の受給権・脱退一時金を含む法的保護に必要な事項です。テレビ電話や動画視聴による実施も認められますが、内容について質問があったときに応答できる体制が必要です。
社会保障・税の手続きの説明では、保険料や税に未納があると在留諸申請(在留期間の更新・在留資格の変更)が不許可になる場合があることを伝えるよう定められています。支援と在留審査が実務上つながるのはこの点です。
①④⑦⑩は理解できる言語での実施が必要ですが、常時通訳を雇う必要があるとまでは定められていません。⑦の相談・苦情対応について運用要領は、通訳の確保が困難な場合に応急的に同僚の外国人を通訳に充てることや、翻訳機・翻訳アプリを使うことも差し支えないとしています。ただしプライバシー保護と正確性の観点から、詳細な聞き取りは通訳を確保したうえで行う必要があります。
⑤「公的手続への同行」の範囲——行政書士の領域との線引き
数値ではなく「どこまでが義務の範囲か」で線が引かれている項目もあります。⑤の公的手続等への同行は、住民登録や社会保障・税などの手続きへの同行と窓口での書類記入のサポートまでです。一方、在留資格の申請書類の作成や申請取次は行政書士(や弁護士)の領域で、義務的支援には含まれません。登録支援機関に支援を委託する場合も、申請取次・書類作成まで任せられると読み違えないようにし、必要に応じて行政書士などの専門家と連携します。
なお、企業の案内に基づいて同行に代えて申請取次を利用する場合、その費用は企業が負担する必要があります(本人が相談内容によらず独自の判断で行うものは除きます)。行政書士との連携を前提に体制を組むなら、この費用も見込んでおきます。
実施とあわせて生じる義務——残す書類と支援の実費
基準どおりに実施したうえで、支援を回すと日常的に発生するのが、実施した記録の備え置きと支援にかかる実費の負担です。どちらも委託の有無にかかわらず企業に生じる義務で、「支援を実施した」と認められるための要件に直結します。
支援ごとに残す書類——雇用契約の終了から1年以上保存する
義務的支援は、実施するだけでなく実施した記録を残すところまでが要件です。受け入れ企業は「1号特定技能外国人支援の状況に係る文書」を作成し、支援を行う事業所に特定技能雇用契約の終了の日から1年以上備え置く必要があります。支援に関し、法令違反や基準不適合の事実を隠す目的で必要な記録等を作成しない行為は、受け入れ企業の欠格事由となる不正行為に挙げられています。
備え置く文書は、次の4つの管理簿で構成されます。
- 支援実施体制に関する管理簿 — 事務所の名称・所在地・連絡先、職員数、各月の支援人数と行方不明者数、支援責任者・支援担当者の履歴書と就任承諾書、対応可能な言語と相談担当者に関する事項
- 支援の委託契約に関する管理簿 — 支援委託契約書(参考様式第5-10号)、支援経費の収支
- 支援対象者に関する管理簿 — 対象者の氏名・生年月日・国籍地域・性別・在留カード番号、支援計画の内容、支援の開始日と終了日(終了理由を含む)
- 支援の実施に関する管理簿 — 9つの区分ごとの記録(事前ガイダンス/送迎/住居・生活契約/生活オリエンテーション/日本語学習/相談等/交流促進/転職支援/定期面談。⑤公的手続等への同行は生活オリエンテーションの区分に含めて記録します)。記録項目は区分ごとに異なり、たとえば送迎は出迎え日・見送り日・担当者、住居は住所・形態・家賃等を残します
このうち、実施のたびに所定の様式を保存するよう明記されているのは次の4項目です。[2]
| 支援の項目 | 保存する書類 | 本人の署名 |
|---|---|---|
| ① 事前ガイダンス | 事前ガイダンスの確認書(参考様式第5-9号) | 必要 |
| ④ 生活オリエンテーション | 生活オリエンテーションの確認書(参考様式第5-8号) | 必要 |
| ⑦ 相談・苦情への対応 | 相談記録書(参考様式第5-4号) | — |
| ⑩ 定期的な面談 | 定期面談報告書(本人用=参考様式第5-5号/監督者用=参考様式第5-6号) | — |
記録は書面に代えて電磁的記録でも構いません(スキャナで読み取った画像を含む)。事業所に備え置き、求めに応じて出せる状態にしておきます。
この表は、委託先から何を受け取るべきかのリストにもなります。 全部委託していても記録の備え置きは受け入れ企業の義務なので、委託先が実施したぶんの確認書・相談記録書・定期面談報告書は写しを回してもらう必要があります。契約時に「どの様式を・どの頻度で共有するか」を決めておくと、年1回の届出の直前に慌てずに済みます。
⑩の面談は、本人と監督者の双方が同意していればオンラインでも実施できます。使えるのは互いの表情を確認しながら会話できる方式で、音声だけの通話は該当しません。その場合は面談の様子を録画して雇用契約の終了の日から1年以上保管し、地方出入国在留管理局から閲覧を求められたら応じる必要があります。面談対象者が対面を希望したとき、待遇に問題がある疑いや第三者の介入の疑いがあるときは、あらためて対面で行います。
第三者の介入を防ぐため、運用要領は次の運用を望ましいものとして挙げています——開始前に部屋全体を映してもらい周囲に人がいないことを確認する、イヤホンや別のモニター・マイクがないことを確認する、正面(カメラ)を向いて話してもらう、不審な点があれば面談後に個別に連絡して確認する、毎回同じ質問を同じ順で繰り返さない。受け入れ後の初回と担当者交代後の初回は対面、オンラインを使う場合でも1年に1回以上は対面が望ましいとされています。
これらの記録は、1年分をまとめて出入国在留管理庁へ提出する定期届出の下敷きにもなります。定期届出は2025年4月から年1回になり(新ルールでの初回提出は2026年4月〜5月)、事務負担の全体像は特定技能の維持費・ランニングコストで解説しています。[3]
支援の実費は項目ごとに企業が持つ
義務的支援に要する費用は、直接・間接を問わず外国人本人に負担させられません(給与からの天引きのような形も不可)。どの費目を本人に負担してもらえるかという全体の線引きは特定技能の採用費用・相場で整理していますが、10項目の実施でとくに判断に迷いやすい実費は次のとおりです。
| 支援の場面 | 企業が負担するもの | 本人が負担してよいもの |
|---|---|---|
| ② 送迎 | 本人と同行者の交通費、車を使う場合の燃料代・道路通行料・駐車場料金・保険料 | — |
| ③ 住居(本人名義で賃貸を契約) | 家賃債務保証業者を利用した場合の保証料 | 敷金・礼金 |
| ③ 住居(借上げた社宅を貸与) | 借上費用のうち、入居人数で割った額を超える分(貸与により経済的利益を得ることは不可) | 借上げに要する費用(管理費・共益費を含み、敷金・礼金・保証金・仲介手数料・更新手数料・途中解約金は含まない)を入居人数で割った額までの家賃相当額 |
| ③ 住居(自己所有の社宅・寮を貸与) | 建設・改築費と耐用年数・入居人数から算出した合理的な額を超える分(同じく経済的利益を得ることは不可) | 建設・改築等に実際に要した費用(土地の購入代・造成費は除く)、物件の耐用年数、入居人数などを勘案して算出した合理的な額 |
| ③ 住居に付随する家電・家具・食器などの備品、火災保険・損害保険 | — | 実費の範囲内で、耐用年数と入居人数を勘案した合理的な額。ただしその費用で提供される利益が本人に帰属し、本人がそれを十分に理解して合意していることが条件(保険は被保険者・請求権者が本人であるかを確認する) |
| ⑦ 相談対応(各種申請の相談で、同行に代えて申請取次を利用する場合) | 企業の案内に基づいて申請取次を利用するときの費用 | — |
| ⑥ 日本語学習 | 入学案内・教材やオンライン講座の情報提供、入学・利用手続の補助にかかる費用 | 日本語教室の入学金・月謝(企業が任意で補助することも可) |
| ⑦ 相談対応(通院・入院への同行) | 同行する支援担当者の交通費・日当 | — |
②の送迎で、委託先の登録支援機関が社用車や自家用車で送迎する場合、生活オリエンテーションの実施などと一体で行う運送を除いて、道路運送法上の許可がなければ同法違反となる可能性が高いとされています。委託先が車で迎えに行けるとは限らないため、送迎の手段は契約前に確認しておくと確実です。
渡航準備費用(往路の航空券代を含む)や入国後の当面の生活費を企業が本人に貸し付けること自体は差し支えありません(返済方法が労働法令に違反しないよう留意します)。一方で、一定期間勤務することを条件に返済を免除する契約や、返済途中で退職した場合に残額を一括返済させる契約は、不当に金銭の移転を予定する契約として欠格事由に当たります。
自社で回すか、委託するか
ここまでの実施基準・記録・実費を踏まえて、自社で回すか登録支援機関に委託するかを判断します。材料は3つ——自社で回した場合の工数、委託しても企業の手元に残る義務、そして一部委託するなら何を出せるかです。
自社で回すと年にどれだけの時間がかかるか
自社支援を検討するときに効いてくるのは、時間が明示されている支援の合計と、体制として空けておく必要のある時間です。運用要領で時間・頻度が示されている支援だけを足すと、次のようになります。
| 支援 | 初年度 | 2年目以降 |
|---|---|---|
| ① 事前ガイダンス | 3時間程度(受け入れ1人につき1回) | — |
| ④ 生活オリエンテーション | 8時間以上(受け入れ1人につき1回) | — |
| ⑩ 定期面談 | 年4回以上×(本人+監督者)=年8回以上の面談 | 年8回以上の面談(変わらず必要) |
| ⑦ 相談対応 | 週4日以上(勤務日3日+休日1日)+夜間の待機体制 | 週4日以上+夜間の待機体制(変わらず必要) |
事前ガイダンス3時間程度と生活オリエンテーション8時間以上を合わせると、1人受け入れるごとに初年度は11時間前後の実施になります。それとは別に、年8回以上の面談と週4日以上の相談体制が受け入れ人数にかかわらず必要です。②③⑤⑥⑧の所要時間は個別事情によるため、ここには含めていません。
自社で全部の支援を実施している場合、倒産などで転職支援を実施できなくなることが見込まれるときは、自社に代わって支援を行う者(登録支援機関や関連企業など)をあらかじめ確保しておく必要があります。この備えも自社支援を選ぶときの検討材料です。
時間の目安は運用要領が示す実施水準から算出したもので、実際の所要時間は人数・国籍・住居の状況によって変わります。委託した場合の費用の目安は登録支援機関の費用相場で解説しています。
委託しても企業の手元に残るもの
支援計画の全部を登録支援機関に委託しても、支援に関する義務がすべて企業から消えるわけではありません。委託の設計で見落としやすいのは次の点です。
- 定期面談は「一部だけ外注」ができない — ⑩の定期面談は支援責任者または支援担当者が実施する必要があり、支援計画の全部の実施を委託する場合を除き、第三者への委託は認められません(通訳人などを履行補助として同席させることは可能です)。
- 支援計画を作るのは企業 — 全部委託しても、支援計画の作成そのものは受け入れ企業が行います(登録支援機関が作成を補助することは差し支えありません)。
- 届出の取りまとめも企業 — 全部委託した場合、支援の実施状況を届け出る法令上の義務は登録支援機関にも生じますが、その届出は受け入れ企業を経由し、企業と連名で提出します。届出書の作成者欄に登録支援機関は署名できず、委託先から実施状況を取りまとめて提出するのは企業です。届出が適正に履行されていないと、特定技能外国人の受け入れは原則として認められません。
- 委託先の選定責任は消えない — 全部委託しても、委託先の体制からして実効性ある支援を行えないと認められるときは、受け入れが認められない場合があります。委託すれば自動的に基準を満たすわけではありません。
委託先が支援を続けられなくなったり、実効性のある支援が期待できない事情が生じたりした場合の対処は登録支援機関の変更(乗り換え)で解説しています。
一部委託の置き所——外に出せる項目・出せない項目
企業が支援体制の基準を自ら満たしている場合は、企業の責任のもとで複数の第三者に委託できます(全部委託と異なり、委託しない部分の支援体制は自社で満たす必要があります)。そのうえで一部委託を検討する場合、外注しやすい項目とそうでない項目は次のように分かれます。
| 項目 | 理解できる言語での実施 | 実施主体の縛り | 一部委託するときの置き所 |
|---|---|---|---|
| ① 事前ガイダンス/④ 生活オリエンテーション/⑦ 相談・苦情対応 | 必須 | なし | 多言語の体制がなければ委託先へ出す |
| ⑩ 定期的な面談 | 必須 | 支援責任者または支援担当者に限る(全部委託を除き第三者委託不可) | 自社に残る(制度上、外に出せない) |
| ② 送迎/⑤ 公的手続等への同行 | 明示なし | なし | 自社で回しやすい(単発・言語依存が低い) |
| ③ 住居の確保/⑥ 日本語学習/⑧ 交流促進/⑨ 転職支援 | 明示なし | なし | 地域の情報・ネットワークの有無で判断が分かれる |
この表からわかるとおり、一部委託を選ぶと⑩の定期面談は自社で実施することになり、それを担う支援責任者・支援担当者には外国人材と中立な立場であることなどの要件がかかります。つまり一部委託は「委託の一形態」というより、自社支援の体制要件を満たしたうえで一部を外に出す選択です。
相談対応・多言語対応・中立的な担当者の配置といった体制が整わない場合は、登録支援機関に支援計画の全部を委託する選択肢があります。全部委託すると企業は支援体制に関する基準を満たすものとみなされますが、このみなし規定が働くのは1社に全部を委託した場合で、1人分の支援計画の全部の実施を複数の登録支援機関に分けて委託することはできません(委託の範囲とみなし規定の仕組みは登録支援機関とはで解説しています)。どちらを選ぶかの判断基準・自社支援に必要な体制は特定技能は自社支援?登録支援機関に委託?、委託先を探す段階に進むなら登録支援機関の選び方、契約直前の確認は契約前チェックリスト、委託料の内訳は登録支援機関の費用相場をご覧ください。
市区町村への「協力確認書」——2025年4月から加わった手続き
2025年4月1日から、受け入れ企業には地方公共団体の共生施策への協力が求められ、その一環として市区町村へ「協力確認書」を提出する手続きが加わりました。提出先は入管ではなく市区町村で、支援計画とは別の手続きです。
- いつ — 初めて受け入れる場合は雇用契約の締結後、在留資格認定証明書の交付申請または在留資格変更許可申請を行う前。すでに受け入れている場合は、施行後に初めて在留資格変更許可申請または在留期間更新許可申請を行う前。
- どこへ — 外国人材が活動する事業所の所在地と住居地が属する市区町村のそれぞれ(両方が同じ市区町村なら1通)。
- 何度 — 初めて在留諸申請を行う際に一度提出すれば、同じ事業所で働く他の特定技能外国人の申請や再申請では再提出は不要です。記載事項(事業所の所在地・住居地・担当者連絡先など)が変わったときは、あらためて提出します。転職・転出や帰国のときに市区町村へ連絡する必要はありません。
ここでいう共生施策とは、各種行政サービス、交通・ゴミ出しのルール、医療・公衆衛生、防災訓練・災害対応、地域イベント、日本語教室など、外国人材の支援に資する施策を指します。支援計画の作成でも、事業所所在地と住居地の市区町村の共生施策を確認し、確認した市区町村名・確認日・確認方法を支援計画書に記入します。確認は基本的に市区町村ホームページの閲覧で行うことが想定されています。
協力要請に応じない状態が続き、支援の実施が確保されず在留・支援計画の実施に重大な支障が生じていると認められる場合には、改善命令等の対象になり得るとされています。
支援漏れはどう発覚し、何が起きるか
支援が計画どおりに回らなくなったときは、認知の日から14日以内に「1号特定技能外国人支援計画の実施困難に係る届出書(参考様式第3-7号)」を提出します。対象は、計画に記載した支援を実施できなかった場合と、面談や相談を通じて把握した問題を社内で解決できず行政機関等へ相談した場合(非自発的離職でハローワークに相談した転職支援を含む)です。本人の申出により支援を実施しなかった場合は届出の対象外ですが、その申出があったことは記録として保管しておく必要があります。支援計画の全部を登録支援機関に委託している場合、この届出は不要で、代わりに委託先が特異事案報告書(参考様式第4-3号)を提出します。
添付する書類も場面ごとに決まっています。実施予定だった支援ができなくなったときは支援実施困難に係る理由書(参考様式第5-13号)、非自発的離職者に転職支援を行ったときは転職支援実施報告書(参考様式第5-12号)、相談を端緒に労働基準監督署へ通報したときは相談記録書(参考様式第5-4号)の写しを添えます。支援を通じて自社が基準を満たさなくなっていると分かった場合は、実施困難の届出ではなく基準不適合に係る届出書(参考様式第3-5号)を提出します。
届け出ないまま支援漏れが残ると、年1回の定期届出や、地方出入国在留管理局が行う実地調査、在留期間の更新審査の場で表面化します。そこから先は段階が上がります。
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 指導・助言 | 出入国在留管理庁長官が、支援計画の適正な実施などを確保するために必要な指導・助言を行う |
| 報告徴収・立入検査 | 報告や帳簿書類の提出を命じられ、事業所への立入検査を受ける。拒否や虚偽の回答は30万円以下の罰金 |
| 改善命令と公示 | 期限を定めて改善措置を命じられ、その旨が公示される。応じたら改善報告書(参考様式第5-2号)を提出する |
| 罰則 | 改善命令に従わない・違反した場合は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 欠格事由 | 届出の不履行・虚偽の届出、改善命令違反、法令違反や基準不適合の事実を隠す目的で必要な記録等を作成しない行為は「不正行為」に当たり、特定技能雇用契約の締結日前5年以内に行った企業は特定技能所属機関になれない |
まとめ
義務的支援は、事前ガイダンスから定期面談まで10項目すべてを支援計画に書き、すべて実施する必要があります。実施の水準は、事前ガイダンス3時間程度・生活オリエンテーション8時間以上・居室1人当たり7.5㎡以上・相談対応は週4日以上+夜間・定期面談は3か月に1回以上と具体的に決まっており、実施の記録を雇用契約の終了から1年以上保存するところまでが要件です。全部委託を選んでも、支援計画の作成・定期面談・届出の取りまとめは企業の手元に残ります。自社で回すか委託するかは、継続的に工数がかかる⑤〜⑩と、理解できる言語での実施が必須な①④⑦⑩を自社で持てるかで判断すると、見立てを誤りません。
制度の全体像は完全ガイド、受け入れ側が満たすべき要件は特定技能の受け入れ要件をご覧ください。
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よくあるご質問
- 特定技能の義務的支援とは何ですか?
- 特定技能1号の外国人材が安定して働き生活できるよう、受け入れ企業が必ず実施しなければならない支援で、事前ガイダンス・送迎・住居確保・生活オリエンテーションなど10項目が定められています。1号特定技能外国人支援計画に全項目を記載して実施し、10項目のすべてを行わなければ支援計画を適正に実施していないことになります。支援義務があるのは特定技能1号のみで、2号にはありません。
- 義務的支援は自社で行わなければなりませんか?
- 自社で行うこともできますが、相談対応や多言語対応などの体制が必要です。体制が整わない場合は、登録支援機関に支援計画の全部を委託でき、全部委託すれば支援体制の基準を満たすものとみなされます。ただし1人分の支援計画の全部を複数の機関に分けて委託することはできず、支援計画の作成そのものは全部委託でも企業が行います。支援の実施状況の届出も受け入れ企業が取りまとめ、企業と連名で提出します。
- 義務的支援の定期面談はどのくらいの頻度で行いますか?
- 支援責任者または支援担当者が、対象の外国人材と、その監督をする立場にある者のそれぞれと、3か月に1回以上の頻度で面談する必要があります。面談で労働基準法違反などを把握した場合は労働基準監督署へ、資格外活動などの入管法違反を把握した場合は地方出入国在留管理局へ通報します。定期面談は、支援計画の全部を委託する場合を除き、第三者に委託できません。
- 特定技能の事前ガイダンスでは何を説明しますか?
- 在留資格認定証明書の交付申請前(在留資格変更を伴う場合は変更申請前)に、労働条件・活動内容・入国手続き、保証金の徴収の有無、支援費用を本人に負担させないこと、送迎や住居確保の内容、相談窓口と支援担当者の連絡先などを、本人が十分に理解できる言語で説明します。対面またはビデオ通話などで本人確認をしたうえで行う必要があり、文書の郵送やメールの送信のみでは認められません。
- 義務的支援を実施した記録は何を残せばよいですか?
- 支援の状況に係る文書を作成し、支援を行う事業所に特定技能雇用契約の終了の日から1年以上備え置く必要があります。事前ガイダンスは確認書(参考様式第5-9号)、生活オリエンテーションは確認書(参考様式第5-8号)に本人の署名を得て保存し、相談・苦情への対応は相談記録書(参考様式第5-4号)、定期面談は本人用・監督者用の定期面談報告書(参考様式第5-5号・第5-6号)を保存します。
- 義務的支援を実施しなかった場合どうなりますか?
- 出入国在留管理庁長官から指導・助言を受け、それでも改善されない場合は改善命令の対象となります。改善命令を受けるとその旨が公示され、命令に従わない場合は6月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります。届出の不履行や改善命令違反、法令違反や基準不適合の事実を隠す目的で必要な記録等を作成しない行為は不正行為として、契約日前5年以内に該当すると特定技能所属機関になれない欠格事由にも当たります。