ビルクリーニングで特定技能の外国人を採用するには|要件・試験・事業所登録
目次
ビルクリーニング(建築物内部の清掃)で特定技能の外国人を採用しようとして、「自社の営業所で受け入れられるのか」でつまずく企業は少なくありません。この分野には、受け入れる営業所が「建築物清掃業」などの知事登録を受けていることという固有の要件があり、まずここを確認しないと採用が進まないためです。押さえるべきは①営業所の知事登録 ②本人の試験 ③協議会への加入の3点です。[1]
この記事の要点
- 営業所の知事登録がこの分野固有の関門 — 建築物清掃業(1号)または建築物環境衛生総合管理業(8号)の登録が必要。登録には清掃作業監督者などの人的要件と、真空掃除機・床みがき機などの物的要件があります。
- 試験の実費は本人4,400円+合格証明書11,000円 — 1号評価試験はCBT方式でテストセンターの営業日ならいつでも受験でき、合格発表は毎月15日と末日の2回。
- 協議会の加入は無料だが、登録支援機関に代行させることはできません — 受入企業自身が厚生労働省へ手続きします。
- ホテルの客室清掃・ベッドメイクは対象に入る — 一方で民泊や共同住宅の住戸専有部分の清掃は対象外。線引きは清掃対象が住宅かどうかで決まります。
- 雇用形態は直接雇用 — 派遣での受け入れはできません。
- 1号・2号の両方がある — さらに、2号評価試験などに不合格でも一定要件を満たせば通算在留期間が最長6年になる取り扱いがあります。
本記事は一般的な情報提供です。ビルクリーニング分野の要件・対象業務の範囲は変動するため、最新の内容は出入国在留管理庁・厚生労働省および公益社団法人全国ビルメンテナンス協会の公表内容で必ず確認してください。
ビルクリーニングの特定技能はここが特徴
他分野と最も違うのは、企業(営業所)側に固有の登録要件があることです。
- 対象業務は「建築物内部の清掃」 — オフィスビル・商業施設・ホテルなどの建物内部の清掃作業が対象です。
- 営業所の知事登録が必要 — 受け入れる営業所が、都道府県知事から建築物清掃業または建築物環境衛生総合管理業の登録を受けていることが、この分野固有の要件です。
- ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入が必要 — 受け入れ企業は協議会の構成員になります。
- 特定技能1号・2号の両方がある — 2号では、複数の作業員を指導しながら清掃に従事し、現場を管理する業務が対象です。1号と2号の違いは特定技能1号と2号の違いで解説しています。
営業所の知事登録(この分野の最大の関門)
受け入れを行う営業所が知事登録を受けていなければ、他の条件をすべて満たしても受け入れに進めません。 出入国在留管理庁は、受入れ機関の基準として次のように定めています。
特定技能所属機関は、都道府県知事より、建築物衛生法第12条の2第1項第1号に規定する建築物清掃業又は同項第8号に規定する建築物環境衛生総合管理業の登録を受けた営業所において1号特定技能外国人又は2号特定技能外国人を受け入れることとしていること。
登録は「建築物清掃業(1号)」と「建築物環境衛生総合管理業(8号)」の2種類があり、どちらか一方の登録があれば受け入れられます。清掃を専業とする事業者は1号登録で足りることが多く、8号は空調・給排水・空気環境測定まで含めて総合管理を担う事業者向けです。それぞれの登録要件は次のとおりです。
| 要件 | 建築物清掃業(1号) | 建築物環境衛生総合管理業(8号) |
|---|---|---|
| 人的要件 | ・清掃作業監督者(ビルクリーニング技能士〔1級または単一等級〕または建築物環境衛生管理技術者であって、厚生労働大臣の登録を受けた清掃作業監督者講習を修了した者) ・従事者は研修を修了 | ・統括管理者(建築物環境衛生管理技術者であって、厚生労働大臣の登録を受けた講習を修了した者) ・清掃作業監督者(左と同じ) ・空調給排水管理監督者 ・空気環境測定実施者 |
| 物的要件 | (1) 真空掃除機 (2) 床みがき機 | (1) 真空掃除機 (2) 床みがき機 (3) 空気環境測定業の機械器具 (4) 残留塩素測定器 |
出典:公益社団法人全国ビルメンテナンス協会「特定技能・育成就労」(受入機関の雇用要件)。
自社の営業所がまだ未登録の場合、採用活動より先に着手すべきは清掃作業監督者の確保です。清掃作業監督者になるには、ビルクリーニング技能士(1級または単一等級)または建築物環境衛生管理技術者の資格を持ったうえで、厚生労働大臣の登録を受けた講習を修了する必要があります。資格と講習には期間がかかるため、ここが受け入れ開始時期を決める律速になりやすい部分です。
登録には6年の有効期間がある(更新漏れに注意)
この登録は一度取れば終わりではありません。 建築物衛生法は「登録の有効期間は、六年とする」(第12条の2第4項)と定めており、6年ごとの更新が必要です。
特定技能外国人を雇用している最中に登録が失効すると、受け入れの前提条件を欠くことになります。長期雇用が前提の在留資格なので、在職期間と登録の更新時期が重なる場面は必ず来ます。採用の検討に入る段階で、自社の登録の有効期限を確認しておいてください。[2]
ビルクリーニングで必要な試験
本人に求められるのは、技能試験と日本語試験の両方の合格です(技能実習2号からの移行は免除)。
- 技能試験 — 「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」。
- 日本語試験 — 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の合格、または日本語能力試験(JLPT)N4以上。水準と各試験の対応は特定技能の日本語試験で解説しています。
ビルクリーニングの技能実習2号を良好に修了した人は、これらの試験が免除されます。清掃の現場に慣れた人材を受け入れやすいルートです(特定技能・技能実習・育成就労の違い)。
ここでいう「良好に修了している」とは、出入国在留管理庁の運用要領によれば、技能実習を2年10か月以上修了したうえで、①技能検定3級またはこれに相当する技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格しているか、②合格していなくても、実習実施者が出勤状況・技能等の修得状況・生活態度等を記載した評価に関する書面で良好な修了を認めた場合を指します。候補者が免除対象かどうかは、この2年10か月と、実技試験の合格または評価書面の有無で判断します。[3]
1号評価試験の中身と受験料
1号評価試験は学科・実技ともにCBT(コンピュータで解答する方式)で、ピアソンVUEに委託して実施されています。[4]
| 1号評価試験の項目 | 内容 |
|---|---|
| 受験手数料 | 日本で受験:4,400円(消費税10%込み)/外国で受験:30USドル |
| 受験資格 | 試験日において17歳以上(インドネシア国籍の場合は18歳以上)。日本で受験する場合は在留資格を有していること |
| 学科試験 | 20問・40点満点・20分・満点の60%以上で合格 |
| 実技試験 | 30問・60点満点・30分・満点の60%以上で合格 |
| 受験日 | テストセンターの営業日であればいつでも受験可能 |
| 実施国 | 日本のほか、フィリピン・カンボジア・ネパール・ミャンマー・モンゴル・スリランカ・インドネシア・ベトナム・バングラデシュ・ウズベキスタン・パキスタン・タイ・インド・マレーシア・ラオス・キルギスのピアソンVUEテストセンター |
出典:公益社団法人全国ビルメンテナンス協会「ビルクリーニング特定技能1号評価試験」(受験手数料・試験内容)。
学科と実技は毎回セットで受験する必要があり、問題は日本語(漢字にひらがなのルビあり)で出題されます。実施国が日本を含め17か国にわたるため、海外にいる候補者を現地で受験させてから呼び寄せるルートも取りやすい分野です。
候補者に試験対策をさせる場合、全国ビルメンテナンス協会が学習テキスト・試験問題のサンプルPDF・CBTの操作を練習できる体験コーナーを公開しています。受験案内は英語・ベトナム語・インドネシア語・ミャンマー語など15言語で用意されているため、海外の候補者にもそのまま案内できます。
日本語試験・技能試験の全体像と免除ルートは特定技能の試験にまとめています。
合格から就労までのスケジュールの読み方
合格発表は毎月15日と末日の年24回で、受験した時期によって発表日が決まります。採用スケジュールを引くときは、このサイクルから逆算します。
| 受験した期間 | 合格発表日 |
|---|---|
| その月の1日〜15日 | その月の末日 |
| その月の16日〜末日 | 翌月の15日 |
つまり受験から合格発表までは、最短で約2週間、最長でも約1か月です。試験日が固定されておらずテストセンターの空き枠で受験できるため、「次の試験日まで数か月待つ」という事態は起こりにくい設計になっています。
合格率は「受ければ通る」水準ではない
採用計画は、受験=合格の前提で組まないほうが安全です。 全国ビルメンテナンス協会は試験期間ごとに受験者数・合格者数・合格率を公表しており、直近の実績は次のとおりです。
| 試験期間 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | うち日本国内での受験 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年2月1日〜2月15日 | 495人 | 320人 | 64.6% | 190人中111人(58.4%・編集部算出) |
| 2025年4月26日〜5月10日 | 269人 | 154人 | 57.2% | 88人中43人(48.9%・編集部算出) |
2つの実績に共通するのは、日本国内で受験した人の合格率が、全体より低いことです(2026年2月は全体64.6%に対し国内58.4%、2025年4-5月は全体57.2%に対し国内48.9%)。国内在住者からの採用を想定する場合は、不合格からの再受験を織り込んだ日程を組んでおくと安全です。CBTはテストセンターの空き枠で受験できるため、再受験のリードタイムは比較的短く済みます。
合格後、在留資格の手続きには合格証明書が必要です。発行手数料は 11,000円(消費税10%込み)で、原則として就職先の企業が発行手続きを行います(本人ではなく企業側の作業になる点に注意してください)。
これらの期間に加えて、在留資格の申請・審査の期間が必要になります。全体の流れは特定技能の採用の流れで解説しています。
対象となる業務
ビルクリーニングの1号で従事できるのは、建築物内部の清掃です。オフィスビル・商業施設・宿泊施設などの建物内部の床・壁・什器・衛生設備などの清掃作業が中心になります。2号になると、建築物内部の清掃に複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する業務および同業務の計画作成・進行管理その他のマネジメント業務が対象に広がります。
自社の請負業務は対象に入るか(できる清掃・できない清掃)
判断の軸は「清掃対象が住宅でないこと」と「清掃に必要な技能が1号評価試験の試験範囲に含まれること」の2つです。厚生労働省は2026年7月13日付で「従事できる業務」の質疑応答集(Q&A)を公表し、現場で迷いやすいケースに個別に回答しています(出入国在留管理庁と協議済み)。主なものを整理すると次のとおりです。
| 現場・作業 | 主な業務として従事できるか |
|---|---|
| ホテルの客室清掃(ベッドメイク・アメニティ補充を含む) | ○ できる |
| 病院や延べ面積3,000㎡未満など、特定建築物に当たらない建物の内部清掃 | ○ できる |
| 共同住宅の共用部分の清掃 | ○ できる |
| 建物の引渡し前・運用開始前の清掃 | ○ できる(多数の利用者が利用する建築物になる予定であれば) |
| 民泊の清掃 | ✕ できない(清掃対象が住宅のため) |
| 共同住宅の住戸専有部分(退去後の原状回復清掃) | ✕ できない(清掃対象が住宅のため) |
| 空気環境管理・給排水管理・害虫等防除・産業廃棄物処理・機器運転保守・警備 | ✕ できない |
表中の「特定建築物」は建築物衛生法上の用語で、政令が指定する用途・規模の建築物を指します。延べ面積3,000㎡以上=興行場・百貨店・集会場・図書館・博物館・美術館・遊技場/店舗・事務所/学校教育法1条の学校以外の学校(研修所を含む)/旅館。延べ面積8,000㎡以上=専ら学校教育法1条の学校・幼保連携型認定こども園(同法施行令第1条)。
2点、実務でよく取り違えられます。①特定技能の対象は特定建築物に限りません — 清掃対象が「多数の利用者が利用する建築物(住宅を除く)」であればよく、3,000㎡未満の建物でも従事できます(上記Q&Aが明示)。②共同住宅は特定建築物ではありません — 法第2条の例示には「共同住宅」が出てきますが、施行令第1条の指定用途には含まれていないためです。ただし共同住宅の共用部分の清掃は、特定建築物かどうかとは別に、特定技能の主な業務として従事できます(上記Q&A)。
とくに注意したいのがホテルの客室清掃です。「客室清掃は宿泊分野では」と考えて見送る企業がありますが、清掃を請け負う事業者であればビルクリーニング分野で従事できます。厚生労働省は職務記述書を引きながら「床、浴室、トイレ、洗面台等の清掃からアメニティ補充やベッドメイク作業など、衛生かつ美観が整えられた客室を商品として納品するために必要な一連の業務である客室清掃は主な業務に含まれる」としています。
もう1つの注意点は、8号(建築物環境衛生総合管理業)の登録があっても、任せられる業務が広がるわけではないことです。8号登録を受けている営業所でも、ビルクリーニング分野の特定技能外国人が空気環境の調整・測定や給排水の管理に従事することはできません。登録の種類ではなく在留資格の技能で範囲が決まります。
清掃以外の作業をどこまで任せられるか
清掃に従事する日本人が通常行う関連業務に付随的に従事することは差し支えありません(例:建築物と構造上一体とみなせる外周部の清掃、資機材倉庫の整備作業)。ただし専ら関連業務に従事させることは認められません。
なお「1日あたり何割まで」といった許容割合について、厚生労働省は「許容される具体的な割合は個々に異なります」としており、一律の数値基準は示されていません。割合の目安を示す情報も見かけますが、一次資料で確認できるのはここまでです。判断に迷う配置は、Q&Aと職務記述書に当てて個別に確認するのが確実です。[5]
宿泊(客室清掃)との違い(混同しやすいポイント)
「清掃」という共通点から宿泊分野と混同されることがありますが、業務範囲が異なる別の分野です。
- ビルクリーニング — オフィスビル・商業施設などの建築物内部の清掃を専門に担う分野。受け入れ営業所が建築物清掃業などの登録を受けている必要があります。
- 宿泊 — ホテル・旅館でのフロント・接客・企画・広報などの宿泊サービス全般が対象で、客室清掃もその業務の一部に含まれます。
ホテル・旅館の自社スタッフによる客室清掃は宿泊分野の業務に含まれる場合があり、一方で清掃を専門に請け負う事業者はビルクリーニング分野に当たります。自社の業態(清掃専業か、宿泊サービスの一環か)で進め方が変わるため、迷う場合は確認しておきましょう。
受け入れ企業に求められる要件
営業所の知事登録に加えて、企業側には次の条件が求められます。
- 雇用形態は直接雇用 — 出入国在留管理庁の分野別情報では、ビルクリーニング分野の雇用形態は「直接」とされています。農業・漁業のような派遣形態での受け入れはできず、登録を受けた営業所が直接雇用する形になります。
- ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入 — 特定技能外国人を受け入れる前に構成員になっておく必要があります。協議会は厚生労働省 健康・生活衛生局 生活衛生課が設置しています。[6]
- 支援体制の確保 — 1号特定技能外国人への支援計画の策定と実施。登録支援機関へ全部委託すれば基準を満たしたものとみなされます(詳細は特定技能で企業に求められる受け入れ要件)。
- 所管省庁の調査等への協力 — 厚生労働省が行う調査や指導に協力すること。
なお、出入国在留管理庁のビルクリーニング分野の情報に示されているのは分野全体の受入れ見込数で、事業所ごとの人数枠は示されていません(介護分野のように常勤職員数と連動した上限が分野基準として定められている分野とは、この点が異なります)。自社で何人まで受け入れられるかは、最新の分野別運用方針で確認してください。
協議会の加入で間違えやすい2点
加入費用はかかりません。 厚生労働省は「ビルクリーニング分野特定技能協議会の加入にあたって、費用はかかりません」と明記しています。
一方で、手続きを登録支援機関に代行させることはできません。 厚生労働省は入会手続きについて「登録支援機関の代行による手続きは、認めておりません」とし、さらに「登録支援機関が自ら特定技能所属機関となる場合を除き、支援を委託された登録支援機関は、ビルクリーニング分野特定技能協議会には加入できません」としています。支援の多くを登録支援機関に委託する場合でも、協議会の入会申請だけは自社で行う作業として工数を見込んでおく必要があります。
手続きは申請ページからの電子申請で、厚生労働省の確認後に構成員資格証明書が電子媒体でメール送付されます。
加入は「在留申請の前」+審査に1か月程度
協議会への加入は、在留諸申請より前に済ませておく必要があります。 令和6年2月15日付けで運用要領が一部改正され、令和6年6月15日に施行された結果、受入機関は地方入管局への在留申請を行う前に協議会の構成員となることが求められるようになりました。
期間の見込みも厚生労働省が示しています。加入審査には1か月程度かかるとして、早めの申請を呼びかけています。[7]つまり採用スケジュールは、
協議会の入会申請 →(審査 約1か月)→ 構成員資格証明書の交付 → 在留諸申請
の順で逆算する必要があります。試験の合格発表サイクル(最短2週間)よりも、この1か月のほうが効いてくる場面は多いはずです。登録支援機関に代行させられない手続きでもあるため、自社の担当者を早めに決めておくと滞りません。ビルクリーニング以外の分野でも受け入れる場合は分野ごとの加入が必要で、全17分野の協議会名・加入の期限・加入企業数は分野別協議会の一覧にまとめています。
「協議会には受け入れから4か月以内に加入すればよい」という説明を見かけることがありますが、これは令和6年6月14日以前に受け入れを行った受入機関に向けた経過的な取り扱いです。これから初めて受け入れる企業には当てはまりません(在留申請より前の加入が必要)。
企業側に共通して求められる受け入れ要件は特定技能で企業に求められる受け入れ要件で解説しています。なお在留資格の申請取次や書類作成は行政書士などの専門家の領域なので、必要に応じて専門家と連携します。
採用ルート
ビルクリーニングで特定技能外国人を採用する主なルートは次のとおりです。
- 試験合格者を採用 — 国内・海外でビルクリーニングの試験に合格した人材を採用します。実施国が17か国あるため、海外での受験を経たルートも取りやすい分野です。
- ビルクリーニングの技能実習からの移行 — 試験免除でスムーズに移行できます。
- 国内在住者の採用 — すでに日本にいる特定技能外国人を採用すると、渡航費などの初期費用を抑えやすくなります。
費用の目安
費用の考え方は他分野と同じく「初期費用+月額の支援委託費」ですが、ビルクリーニングでは公的に金額が確定している費目がいくつかあります。
| 費目 | 金額 | 負担・備考 |
|---|---|---|
| 1号評価試験の受験手数料 | 4,400円(日本)/30USドル(外国) | 受験者本人が申込時に支払い |
| 合格証明書の発行手数料 | 11,000円 | 原則として就職先の企業が手続き |
| ビルクリーニング分野特定技能協議会の加入 | 無料 | 受入企業が自ら申請(代行不可) |
このほかに、人材紹介手数料(人材紹介手数料の相場)、在留資格の申請費用、渡航費などの初期費用と、登録支援機関への支援委託費(1人あたり月1.5〜3万円程度が目安)が発生します。総額の内訳と採用ルート別のモデルは特定技能の採用費用・相場で整理しています。
最も大きい費目は人件費です。ここには法令上の制約があり、特定技能基準省令第1条は第3号で「外国人に対する報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であること」と定めています。運用要領はこれを「同等の業務に従事する日本人労働者の報酬の額と同等以上であることを求めるもの」と説明しており、最低賃金を満たすだけでは足りません。外国人採用を人件費の圧縮手段として設計することはできない、というのが出発点になります。
あわせて同条第4号は、外国人であることを理由に「報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇」について差別的な取扱いをしていないことを求めています。基本給だけでなく手当や福利厚生の適用基準もこの対象に入ります。[3]
長く働いてもらうための道筋(2号と在留期間)
特定技能2号へ進むには、「ビルクリーニング分野特定技能2号評価試験」の合格、または「ビルクリーニング技能検定1級試験」の合格に加えて、現場管理業務の実務経験が2年以上必要です。実務経験は、複数の作業員を指導しながら清掃に従事し現場を管理する経験である必要があり、対象期間は週30時間以上の労働時間であることが求められます(ビルクリーニング分野特定技能協議会決定第2号)。技能検定1級ルートで2号へ移行する場合は実務経験証明書が別途必要で、実務経験の審査は全国ビルメンテナンス協会が行います。
2号は制度としては開かれていますが、移行の実績はまだ限られています。2号へ進める人材の育成には数年単位の時間がかかるため、当面は1号での受け入れを前提に計画を立て、2号は「将来の選択肢」として位置づけるのが現実的です。
あわせて押さえておきたいのが、通算在留期間が最長6年になる特例です。これは特定技能全体に設けられた当分の間の措置で、ビルクリーニングでは2号評価試験または技能検定1級試験が対象試験になります。特定技能1号の在留期間は通算5年ですが、これらの試験に不合格となった1号特定技能外国人のうち、各試験の合格基準点の80%以上を得点しており、かつ5年を超えて在留する相当の理由があると認められる場合は、最長1年間の延長が認められます。あと一歩で2号に届かなかった人材を、すぐに手放さずに済む余地があるということです(特例の全体像は特定技能の在留期間と更新で解説しています)。
登録支援機関の活用
自社で生活支援の体制を整えるのが難しい場合は、登録支援機関へ委託できます。ただし前述のとおり、協議会への入会申請は委託できません。選び方は登録支援機関の選び方、契約前の確認は契約前チェックリストを参考にしてください。採用後の定着の工夫は特定技能外国人の定着支援で解説しています。
育成就労制度との関係(今後の動向)
ビルクリーニング分野は、2027年4月に施行が予定される育成就労制度でも対象分野として整備が進んでいます。分野別の運用方針が公表されており、分野特有の受け入れ基準を上乗せする基準告示も出入国在留管理庁の育成就労制度・関係法令ページに掲載されています(官報上の正式な公布日・告示番号は本記事執筆時点では未確認のため、最新の公表内容は同ページで確認してください)。[8]特定技能の受け入れ停止の状況と全19分野の充足率は特定技能の受け入れ停止と分野別の充足率で整理しています。
ビルクリーニングで働く特定技能外国人の実像
ビルクリーニングの特定技能1号在留者は9,202人(2026年3月末・速報値)で、受入れ見込数32,200人に対する充足率は28.6%です。枠に対してはまだ余地がある状態といえます(全分野の充足率の比較は特定技能の受け入れ見込数と充足率で整理しています)。
受入れ見込数の32,200人は令和8年1月23日の閣議決定による現行値です。出入国在留管理庁の分野別ページには37,000人という数値が残っていますが、これは令和6年3月29日閣議決定に基づく旧値で、同ページは「2024年4月1日現在」と記載されています。他の解説記事でも37,000人を見かけますが、現行の枠は32,200人です。
国籍の構成は他分野と傾向が異なります。 国籍別の内訳が公表されている直近の詳細統計(2025年12月末時点・1号8,395人)では、インドネシア(2,705人)がベトナム(2,276人)を上回って最多です。特定技能全体ではベトナムが最大の送出国なので、この分野は逆の構成になっています。送出機関や人材紹介会社を選ぶとき、また入社後の生活支援で用意する言語を考えるときは、この違いが判断材料になります。
データで見る:ビルクリーニングで働く特定技能外国人
2025年12月末時点
全国で就労中
8,395人
直近2.5年の伸び
+208%
2025年12月末時点で全国8,395人(2023年6月末の2,728人から+208%)。国籍はインドネシアが32.2%で最多、都道府県は東京都が1,480人で最多です。
どの国から来ているか
- インドネシア2,705人(32.2%)
- ベトナム2,276人(27.1%)
- 中国1,179人(14%)
- ミャンマー940人(11.2%)
- フィリピン562人(6.7%)
- その他733人(8.7%)
直近は中国が急増(2年半で+1240%)
どこで働いているか
- 東京都1,480人
- 千葉県1,326人
- 大阪府906人
- 神奈川県745人
- 北海道471人
年齢層
- 18-29歳59.4%
- 30-39歳27%
- 40+歳13.5%
男女比
- 男性30.9%
- 女性69.1%
出典:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数」(令和7年12月末)をトモハタが集計。数値はすでに就労している人の分布で、地域の人材供給・採用競合をつかむ目安です。募集のしやすさを保証するものではありません。
分野をまたいだ全体像(全分野の人数・国籍・都道府県の統計)は特定技能の統計データにまとめています。
まとめ
ビルクリーニングで特定技能の外国人を採用するには、①営業所が建築物清掃業/建築物環境衛生総合管理業の知事登録を受けていること ②本人が1号評価試験と日本語試験に合格していること(技能実習2号修了者は免除) ③ビルクリーニング分野特定技能協議会に加入することの3点を押さえます。とくに営業所の登録要件はこの分野固有で、未登録なら清掃作業監督者の確保から始まるため、採用より先に着手する必要があります。長期就労は特定技能2号への移行が道筋で、実務経験2年以上が要件になります。
制度の全体像は特定技能採用の完全ガイド、対象分野の一覧は特定技能の対象分野一覧、よくある失敗は特定技能採用でよくある失敗と注意点をご覧ください。
「自社の営業所でビルクリーニングの特定技能外国人を受け入れられるか」「営業所の登録要件を満たしているか」を相談したい場合は、条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します(提携先のサービスをご紹介しています)。
よくあるご質問
- ビルクリーニングで特定技能の外国人を採用するには何が必要ですか?
- 採用する外国人が、ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験と日本語の試験(国際交流基金日本語基礎テスト〔JFT-Basic〕合格、または日本語能力試験〔JLPT〕N4以上)に合格していることが基本です。ビルクリーニングの技能実習2号を良好に修了した人は試験が免除されます。企業側は、都道府県知事から建築物清掃業または建築物環境衛生総合管理業の登録を受けた営業所であることに加え、ビルクリーニング分野特定技能協議会の構成員になる必要があります。
- ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験の受験料はいくらですか?
- 日本で受験する場合は4,400円(消費税10%込み)、外国で受験する場合は30USドルです(公益社団法人全国ビルメンテナンス協会)。試験は学科・実技ともにCBT方式で、ピアソンVUEのテストセンターの営業日であればいつでも受験できます。合格後に必要な合格証明書の発行手数料は11,000円(消費税10%込み)で、原則として就職先の企業が手続きを行います。
- ホテルの客室清掃やベッドメイクを任せられますか?
- できます。厚生労働省の質疑応答集(令和8年7月13日)は、職務記述書を引きながら「床、浴室、トイレ、洗面台等の清掃からアメニティ補充やベッドメイク作業など、衛生かつ美観が整えられた客室を商品として納品するために必要な一連の業務である客室清掃は主な業務に含まれる」としています。一方、清掃対象が住宅にあたる民泊の清掃や、共同住宅の住戸専有部分の退去後清掃は主な業務として従事できません。
- ビルクリーニングの特定技能外国人を派遣で受け入れられますか?
- できません。出入国在留管理庁の分野別情報では、ビルクリーニング分野の雇用形態は「直接」とされています。農業・漁業のように派遣形態が認められている分野とは異なり、知事登録を受けた営業所が直接雇用する形になります。
- ビルクリーニングの特定技能で任せられる仕事は何ですか?
- 1号では「建築物内部の清掃」が対象業務です。オフィスビル・商業施設・ホテルなどの建物内部の清掃作業に従事できます。特定技能2号では、建築物内部の清掃に複数の作業員を指導しながら従事し、現場を管理する業務および同業務の計画作成・進行管理その他のマネジメント業務が対象になります。
- ビルクリーニングの特定技能には事業所の登録が必要と聞きました。本当ですか?
- はい。受け入れる営業所が都道府県知事から「建築物清掃業」(建築物衛生法第12条の2第1項第1号)または「建築物環境衛生総合管理業」(同項第8号)の登録を受けていることが、この分野固有の要件として求められます。登録には人的要件(清掃作業監督者の配置など)と物的要件(真空掃除機・床みがき機など)があり、登録を受けた営業所での受け入れが前提になります。
- ビルクリーニング分野特定技能協議会への加入に費用はかかりますか?いつまでに加入すればよいですか?
- 費用はかかりません。厚生労働省は「ビルクリーニング分野特定技能協議会の加入にあたって、費用はかかりません」と明記しています。加入の時期は、令和6年6月15日施行の運用要領改正により、地方入管局への在留諸申請を行う前に構成員となっている必要があります。厚生労働省は加入審査に1か月程度かかるとして早めの申請を呼びかけているため、在留申請のスケジュールから逆算して手続きを始めてください。なお入会手続きは受入企業自身が行う必要があり、登録支援機関が代行することは認められていません。
出典・参考(一次情報)
- ビルクリーニング分野(出入国在留管理庁)
- 特定技能・育成就労(受入機関の雇用要件)(公益社団法人全国ビルメンテナンス協会)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領(令和8年4月1日一部改正版・第4章第1節「技能水準に関するもの」=技能実習2号の良好な修了/確認日2026年8月1日)/同(第5章第1節第1「報酬等に関するもの」=特定技能基準省令第1条/確認日2026年8月1日)(出入国在留管理庁)
- ビルクリーニング特定技能1号評価試験(公益社団法人全国ビルメンテナンス協会)
- ビルクリーニング分野における特定技能外国人に係る「従事できる業務」の質疑応答集(Q&A)について(令和8年7月13日)(厚生労働省)
- ビルクリーニング分野特定技能協議会について(厚生労働省)
- 告示の改正に伴う協議会加入手続きの見直しについて(加入審査の所要期間・在留申請前の加入)(厚生労働省)
- 育成就労制度・関係法令(上乗せ基準告示 等)(出入国在留管理庁)