外国人介護福祉士|在留資格「介護」の取得と会社がやること
目次
「特定技能で採った介護職員が、あと2年で通算5年に達する」——ここで初めて調べ始めると、間に合わない準備がいくつも出てきます。介護分野には特定技能2号がなく、5年より先も同じ人に働き続けてもらう基本の道筋は、介護福祉士の資格を取って在留資格「介護」へ変更することです(5年目の試験に届かなかった場合の1年の延長も、この道筋の中にあります)。そこで会社が用意するのは受験対策よりも先に実務経験の記録と実務者研修のスクーリングで、どちらも受験する年に慌てて揃うものではありません。見積りの材料もあります。厚生労働省は介護福祉士国家試験の受験者・合格者を在留資格別に公表しており、特定技能1号に絞った合格率が直近3回分そろっています。
この記事の要点
- 介護に特定技能2号はない — 5年より先も雇う道筋は介護福祉士の取得と在留資格「介護」への変更です。移行後は在留期間更新の回数に制限がなく、家族(配偶者・子)の帯同もできます。
- 資格取得は自社の受け入れ枠も広げる — 在留資格「介護」の職員と国家試験に合格したEPA介護福祉士は人数枠の分母に入り、特定技能1号・技能実習生・EPA介護福祉士候補者は入りません。
- 受験資格は在留資格ではなく「働いた施設と職種」で決まる — 社会福祉振興・試験センターは受験資格に国籍・年齢・学歴等の制約はないとしており、特定技能で働いた期間もそのまま実務経験に算入されます。
- 会社の負担の中心は実務者研修のシフト — 介護職員初任者研修の修了者なら受講時間数は450時間ではなく320時間で、通学が要るのは面接授業45時間と医療的ケアの演習が中心です。
- 合格率は厚生労働省が在留資格別に公表している — 特定技能1号は第36回38.5%・第37回33.3%・第38回33.0%。同じ3回で全体も82.8%から70.1%へ下がっています。
- 試験上の配慮は「申請しないと付かない」 — 全ての漢字へのふりがな付記と試験時間1.5倍は、EPA介護福祉士候補者には申請不要で付きますが、それ以外の外国籍の受験者は受験申し込み時に申請して初めて認められます。申込みを支える会社側の作業です。
- 5年目に落ちても終わりとは限らない — パート合格と最長1年の在留期間延長があり、特定技能所属機関が学習計画を本人とともに作成して厚生労働省へ提出することが要件に入っています。提出は郵送のみで、申請期限も決まっています。
- 養成施設ルートの経過措置は「①だけ」令和13年度卒業者まで延長された — 卒業後5年間の資格取得は延長されましたが、5年従事後の資格継続は令和8年度卒業者で終了します(令和8年6月25日公布の改正法)。厚生労働省が公開している図の注記は改正前の内容のままです。
本記事は一般的な情報提供です。介護福祉士国家試験の受験資格・実務者研修の科目免除・在留資格の要件と必要書類は改正されることがあります。実際に計画を立てる際は、出入国在留管理庁・厚生労働省・社会福祉振興・試験センターの最新の案内で必ず確認してください。
介護に特定技能2号はなく、5年より先は在留資格「介護」へ移る
介護分野は特定技能2号の対象分野とされていないため、特定技能1号の通算5年を超えて同じ人に働いてもらうには、介護福祉士の資格を取って在留資格「介護」へ変更する道筋になります。出入国在留管理庁は介護分野について「現行の専門的・技術的分野の在留資格『介護』があることから、特定技能2号の対象分野とはしていません」と明記しています。[1]
移行したあとの働き方は、特定技能1号とは条件が変わります。厚生労働省の「外国人介護人材受入れの仕組み」は、在留資格「介護」の特徴として家族(配偶者・子)の帯同が可能であることと、在留期間更新の回数制限なしであることを挙げています。[2]在留期間そのものは「5年、3年、1年又は3月」で、更新の回数に上限がない、という組み立てです。[3]
- 在留期間の数え方・更新の実務は特定技能の在留期間と更新
- 家族を呼ぶときの手続きや扶養の考え方は特定技能で家族の帯同はできる?
- EPA・技能実習/育成就労・特定技能・在留資格「介護」の4制度の比較は特定技能「介護」とは?
⚠️ 特定技能1号のまま在留期間だけを延ばす方法はありません。 後述するパート合格による延長を使っても、厚生労働省の図が示す上限は通算6年です。[2]その先も同じ職員に働いてもらうなら、資格の取得が前提になります。
資格を取らせると、自社が次に採れる人数の枠が増える
資格取得の支援は本人の定着だけでなく、その事業所で受け入れられる特定技能外国人の上限にも効きます。介護分野の人数枠は事業所単位で「日本人等の常勤の介護職員の総数」を上限としており、運用要領別冊はこの「日本人等」に在留資格「介護」により在留する者と国家試験に合格したEPA介護福祉士を含める一方、「日本人『等』の中には、技能実習生、EPA介護福祉士候補者、留学生は含まれません」としています。[4]上限そのものは「一号特定技能外国人の数が、当該事業所の日本人等の常勤の介護職員の総数を超えないこと」と定められているため、1号特定技能外国人自身は数えられる側(分子)で、分母には入りません。
帰結は単純です。特定技能1号の職員が介護福祉士になって在留資格「介護」へ変わると、その人は分母の側に移り、同じ事業所で受け入れられる1号特定技能外国人が1人分増えます。 逆に、資格を取らせないまま5年で帰国すると、枠は増えないまま採用のやり直しが発生します。資格取得支援を福利厚生ではなく「次の1人を採るための投資」として予算化できるかは、ここの読み方で変わります。
⚠️ 分母に移るのは在留資格「介護」へ変更したあとです(EPAの場合は国家試験に合格して介護福祉士になったあと)。合格しただけ・受験予定というだけでは分母に入りません。誰を分母に数えるか、様式にどう書くかを含む数え方の全体は介護の特定技能 人数枠と受け入れ上限にまとめています。
⚠️ 投資である以上、回収できないこともあります。 在留資格「介護」の該当する活動は「本邦の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動」で、特定の勤務先に紐づく建て付けではありません。[5]資格を取らせても、その人が自社に居続けるとは限らない——資格取得支援は本人の在留を延ばす手段であって、雇用を固定する手段ではありません。むしろ、5年で帰国する前提が外れるぶん、その先の雇用は処遇と職場の側で決まるようになります。この前提に立った定着の組み立ては外国人材の定着支援で扱っています。
受験資格の3ルート——自社の職員はどれに当たるか
厚生労働省は介護福祉士の資格取得方法を4つのルート(養成施設・実務経験・福祉系高校・EPA)と整理しています。[6]このうち福祉系高校ルートは日本の高校で所定の科目を修めるルートで、いま働いている外国人職員にも、これから採る人材にも当てはまりません。以下では企業が関わる3つ(実務経験・養成施設・EPA)を扱います。いま特定技能1号で働いている職員が使えるのは実務経験ルートです。ルートごとに、必要な期間・必要な研修・会社側の作業が変わります。
| 受験資格のルート | 必要な期間・日数 | 必要な研修 | 会社側の作業 |
|---|---|---|---|
| 実務経験ルート(特定技能1号の職員が使う) | 従業期間3年以上(1,095日以上)かつ従事日数540日以上(両方を満たす) | 実務者研修の修了(介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修〔3号研修を除く〕の修了でも可) | 従業期間・従事日数の記録、実務者研修の受講先の確保とシフト調整 |
| 養成施設ルート(留学生を採る場合) | 介護福祉士養成施設で2年以上 | — | 卒業年度と経過措置の期限の確認(下記) |
| EPAルート(EPA介護福祉士候補者) | 受入れ機関で4年間の就労・研修 | 社会福祉振興・試験センターの受験資格の図は、実務者研修を「EPA介護福祉士候補者以外」に求められる要件として示している | 国際厚生事業団(JICWELS)を通じた受け入れ(年1回のサイクル) |
実務経験ルートで押さえる点は、判定の軸が在留資格ではないことです。社会福祉振興・試験センターは「受験資格は、国籍、性別、年齢、学歴等の制約はありません」としており、実務経験の対象になる施設(事業)と職種で働いていれば、特定技能1号として働いた期間もそのまま算入されます。[7]
2つの日数の定義も、記録の取り方に直結します。従業期間は「実務経験の対象となる施設(事業)及び職種での在職期間」で、産休・育休・病休などの休職期間を含みます。従事日数は「雇用契約に基づき、実際に介護等の業務に従事した日数」で、休暇・欠勤・出張・研修で従事しなかった日はここから落ちます(1日の勤務時間は問いません)。[7]つまり従業期間は在籍していれば積み上がりますが、従事日数は勤務実績の記録がないと後から立証できません。
申込みのタイミングにも余地があります。試験センターは、申込み時点で実務経験を満たしていなくても、試験実施年度の3月31日までに必要な日数となる見込みなら「実務経験見込み」として受験できるとしています。[7][8]3年に達するのが年明けになる職員でも、その年度の試験に間に合う場合があります。
制度の側も、この算入を前提に組まれています。運用要領別冊は、介護分野で特定技能外国人を受け入れる事業所について「介護福祉士国家試験の受験資格の認定において実務経験として認められる介護等の業務に従事させることができる事業所でなければなりません」としています。[4]つまり、特定技能で受け入れられている時点で、その事業所は実務経験を積ませられる事業所である、という関係です。
⚠️ 逆向きは成り立ちません。試験センターがいう「実務経験の範囲」のほうが広く、特定技能の受け入れ対象施設の一覧(特定技能「介護」とは?に掲載)と同じものではありません。受験資格を判定するときは、対象施設一覧ではなく実務経験の範囲で確認してください。[9]
なお、実務経験ルートで実務者研修の修了が必要になったのは平成28年度(第29回)試験からです。[7]それ以前の情報が残っている資料を参照すると、この要件が抜けます。
養成施設ルートの経過措置は令和13年度卒業者まで延びた(延びたのは①だけ)
養成施設を卒業して介護福祉士になるルートには期限つきの経過措置があり、この期限が令和8年の法改正で動きました。厚生労働省の改正法案の概要は、見直し内容をこう書いています。[10]
介護福祉士養成施設卒業者に係る現在の経過措置(①卒業後5年間の資格取得、②5年従事後の資格継続)について、①については令和13年度卒業者まで延長し、②については規定どおり令和8年度卒業者までで終了とする。
⚠️ 「経過措置が5年延長された」とまとめて読むと誤ります。 延長されたのは①(卒業後5年間は国家試験に合格していなくても介護福祉士の資格を有することができる扱い)だけで、②(その5年間に介護の業務へ5年従事すれば資格が継続する扱い)は令和8年度卒業者までで終わります。令和9年度から令和13年度までの卒業者は、卒業後5年の間に国家試験に合格しなければ資格がなくなる形になります(令和14年度以降の卒業者には、この「卒業後5年間」の扱い自体がありません)。
この改正を含む社会福祉法等の一部を改正する法律は、令和8年6月25日に法律第51号として公布されています。[11]施行期日は令和9年4月1日で、この経過措置の見直しの一部は公布日からとされています。[10]
⚠️ 厚生労働省が公開している「外国人介護人材受入れの仕組み」の図は、2026年8月14日時点でも注1が「令和8年度までの卒業者には卒業後5年間の経過措置が設けられている」という改正前の記載のままです。[2]留学生を養成施設ルートで採る計画を立てるときは、図の注記ではなく改正法の内容で年度を確認してください。
会社の負担は試験対策より「実務者研修のシフト」
実務者研修は450時間ですが、介護職員初任者研修を修了していれば320時間まで下がり(130時間ぶんが科目免除)、そのうち通学が要るのは面接授業と医療的ケアの演習です。会社が組むのは450時間ぶんの勤務外しではなく、45時間前後のスクーリングと演習をどう勤務に入れるかになります。
厚生労働省の資料は、すでに修了している研修に応じた受講時間数を次のように示しています。[6]
| すでに修了している研修 | 実務者研修の受講時間数 |
|---|---|
| なし(原則) | 450時間 |
| 介護職員初任者研修 | 320時間 |
| 生活援助従事者研修 | 410時間 |
| 介護に関する入門的研修 | 430時間 |
| 訪問介護員研修1級 | 95時間 |
| 訪問介護員研修2級 | 320時間 |
| 訪問介護員研修3級 | 420時間 |
| 介護職員基礎研修 | 50時間 |
厚生労働省は、この免除を踏まえて「450時間全てを受講する必要のある者は少なく、320時間の受講が平均的な姿」とし、初任者研修修了者の受講時間の内訳を通信授業275時間+面接授業45時間+医療的ケアの演習として図示しています(実務者研修の総定員約53万人のうち通信課程の定員は約51万人=約9割・平成30年4月現在)。[12]面接授業でなければならないのは科目「介護過程Ⅲ」で、通学の核はこの科目です。[13]医療的ケアは講義50時間とは別に演習の修了が必要とされています。[6]
シフトの前提として効く条件が2つあります。1つは修業年限が6か月以上(科目の読み替えがある場合は1か月以上)であること。もう1つは、実務経験と実務者研修はどちらが先でも並行でもよいとされていることです。[6]3年の実務経験が終わるのを待って研修を始める必要はないため、2年目のうちに受講先とスクーリングの日程を押さえておくと、3年目に受験資格が立ちます。
⚠️ 受講費用は受講先ごとに異なります。2026年8月14日時点で、厚生労働省および社会福祉振興・試験センターの公表資料を確認した範囲では、実務者研修の受講費用の全国的な統計は確認できませんでした。 金額の側で公的に置かれているのは負担軽減の仕組みのほうです。厚生労働省が示す2つを押さえておくと、費用の話は具体になります。[12]
- 受講費用の貸付=実務者研修の受講費用20万円(上限)。実施主体は都道府県または都道府県が適当と認める団体です。⚠️ 免除の条件は「働き続けること」だけではありません——同じ資料の制度説明は「実務者研修施設を卒業した日から1年以内に介護福祉士の登録をおこない、○○県内で、2年間、介護の業務に従事した場合等に、貸付金の返還が免除されます」としています。つまり国家試験に合格して登録できなければ返還が発生します。会社が全額を負担するか、貸付を使って本人に借りてもらうかは、この条件込みで決めることになります。
- 代替要員の雇上げ経費への助成=研修を受ける職員の穴を埋める人件費を、地域医療介護総合確保基金が支援します。⚠️ シフトの調整コストは、この助成の有無で見え方が変わります。
金額の目安と都道府県ごとの補助金は介護の特定技能 採用費用と47都道府県の補助金で扱っています。⚠️ 上の2つは全国共通の枠組みで、実際に使えるかと条件は都道府県ごとに異なります。
合格率をどう見積もるか
厚生労働省は介護福祉士国家試験の受験者・合格者を在留資格別に公表しており、特定技能1号に絞った合格率は第36回38.5%・第37回33.3%・第38回33.0%です。[14]学習支援の規模を見積もるときは、代替指標を探さずにこの数字を直接使えます。次の表は、厚生労働省が同じ資料で公表している直近3回の内訳です。
| 区分 | 第36回 | 第37回 | 第38回(令和8年実施) |
|---|---|---|---|
| 特定技能1号 受験者数 | 1,950人 | 4,932人 | 10,406人 |
| 特定技能1号 合格者数 | 751人 | 1,643人 | 3,435人 |
| 特定技能1号 合格率 | 38.5% | 33.3% | 33.0% |
| 技能実習 受験者数 | 596人 | 155人 | 517人 |
| 技能実習 合格率 | 47.0% | 32.3% | 43.9% |
| 全体 受験者数 | 74,595人 | 75,387人 | 78,469人 |
| 全体 合格率 | 82.8% | 78.3% | 70.1% |
⚠️ 技能実習の行は母数が2〜3桁で、年による振れが大きい列です(第37回は受験者155人)。技能実習から特定技能へ移行させた職員を抱えている場合の参考として置いていますが、この3点で傾向を読まないでください。
3回を通算すると、特定技能1号の受験者は17,288人・合格者は5,829人で、通算の合格率は33.7%です。おおむね3人に1人という水準を前提に置くと、学習支援を5年目の直前に集中させる計画は成り立ちません。受験者数は3回で5.3倍になっており、この制度で在留資格「介護」を目指す人はすでに珍しい存在ではありません。
⚠️ 合格率の低下を特定技能の側の事情だけに帰属させないでください。 同じ3回で、特定技能1号は5.5ポイント下がっていますが、全体の合格率も82.8%から70.1%へ12.7ポイント下がっています。試験自体の難度や受験者構成の変化と、外国人職員に固有の事情を、この2列だけで切り分けることはできません。
逆に、全体の合格率を自社の職員の見込みに使うのも適切ではありません。第38回の受験者78,469人のほとんどは日本人で、日本語で出題される国家試験を第二言語で受ける集団とは条件が違います。参考として、同じ第38回のEPA介護福祉士候補者は合格者380名・合格率31.8%でした。[15]在留資格別の公表がある以上、見積りの主軸は特定技能1号の実測に置き、EPA候補者の値は別集団の参考として扱うのが素直です。
合格率を動かす最大の変数は、日本語です
在留資格別の合格率は「いまの水準」を示しますが、支援の投入量を決めるには何を上げれば合格率が動くのかが要ります。厚生労働省の令和6年度老人保健健康増進等事業として実施された調査研究(第36回国家試験の受験申請者への調査・回答1,131人)は、日本語能力試験のレベル別に筆記試験の合格率を出しています。[16]
| 日本語能力試験のレベル | 国家試験(筆記)の合格率 |
|---|---|
| N1 | 86.7% |
| N2 | 53.4% |
さらに、N2以上に限った合格者の割合は在留資格で差がありました——特定活動(EPA介護福祉士候補者)81.0%・留学(養成校の留学生)79.7%・技能実習55.9%・特定技能50.4%。
⚠️ この調査が集計したのは筆記試験の合否で、実技を含む最終合否ではないため、厚生労働省の合格発表資料とは必ずしも一致しません(同調査の注記)。
読み方は2つあります。①日本語をN2まで上げると、特定技能でも合格者の割合が2人に1人まで上がる(在留資格だけで見た実測33.0%に対して)。②同じN2以上でも在留資格で30ポイント近い差がある=日本語だけでは説明が付かず、学習時間の確保と介護の専門知識の教え方が残りの変数になります。日本語教育への投資は最初に効く一手ですが、それだけでは足りない、というのがこの2つの数字の含意です。
会社は実際に何をしているか
同じ調査は、職場・監理団体・登録支援機関から受けた支援も聞いています(複数回答・n=1,131)。[16]
| 受けた支援 | 割合 |
|---|---|
| 施設や法人の職員に、勉強を教えてもらった | 36.0% |
| 日本語の先生に、日本語を教えてもらった | 26.7% |
| 勤務時間やシフトの調整をしてもらった | 24.8% |
| テキストや問題集などの費用を負担してもらった | 20.3% |
| ほかの外国人職員と一緒に勉強する機会を与えてもらった | 17.7% |
| 勉強の目標や計画を決めてもらった | 17.3% |
⚠️ 最も多い支援でも36.0%=受けていない人のほうが多い分布です。裏返せば、この6つを組み合わせるだけで多数派より手厚い体制になります。⚠️ これは「支援を受けた人の割合」であって、支援と合格率の関係を測った数字ではありません。
ふりがなと試験時間1.5倍は、申請しないと付きません
合格率の見積りと同じくらい結果を動かすのが、試験当日の条件です。社会福祉振興・試験センターは、外国籍の受験者への配慮を2通りに分けています。[17]
| 対象 | 配慮の内容 | 申請 |
|---|---|---|
| EPA介護福祉士候補者 | 全ての漢字にふりがなを付記した問題用紙の配付/試験時間が通常の1.5倍 | 不要 |
| それ以外の外国籍の方・日本に帰化された方 | 同じ内容 | 受験申し込み時の申請が必要 |
⚠️ ふりがな付きの問題用紙を選ぶと、通常の問題用紙は配付されません(併用はできません)。[17]
特定技能1号の職員は後者にあたります。 会社が受験申込みを支える場面で申請を一緒に済ませないと、本人は日本人と同じ問題用紙・同じ試験時間で受けることになります。学習支援を何年積んでも、当日の条件が変われば結果は変わります。申込みの支援に入る前に、まずここを確認してください。
⚠️ 介護福祉士国家試験は、特定技能で入国するための試験(介護技能評価試験・介護日本語評価試験)とは別のものです。 入口の試験とその免除ルートは特定技能の試験|分野別の技能試験一覧と免除ルートで扱っています。入口の試験に合格していることは、国家試験の受験資格にも合格見込みにも直結しません。
5年目に落ちても終わりではない——パート合格と在留期間の延長
第38回試験からパート合格(合格パートの受験免除)が導入され、在留期間の通算5年に達する直前の試験で全パートを受験して一定の要件を満たした人には、最長1年の在留期間延長が認められます。厚生労働省の概要は要件をこう定めています。[18]
第38回介護福祉士国家試験(令和8年実施)より、介護分野の特定技能外国人のうち、特定技能の在留期間(通算5年)経過直前の介護福祉士国家試験において全パートを受験し、①当該試験において1パート以上合格している、かつ②当該試験において総得点に対する合格基準点の8割以上の得点がある等の一定の要件(※)を満たした方については、最長1年間の在留期間延長を可能とする。
同じ概要が挙げる「その他の要件」に、会社の作業が2つ入っています。
本人の学習意欲と受験の誓約
翌年度の国家試験合格に向けた学習意欲があり、翌年度の国家試験を受験することを誓約すること。特定技能所属機関が学習計画を作成して提出
特定技能所属機関において学習計画(翌年度の国家試験合格を目指すための具体的な支援計画および国家試験対策に係る講座・研修等の受講予定を含む)を、対象者本人とともに作成し、厚生労働省に提出すること。
延長は自動では取れません。 学習計画の中身に「国家試験対策の講座・研修の受講予定」が含まれる以上、受験結果が出てから講座を探し始めるのでは間に合いません。5年目に入る前に、対策講座の候補と社内の学習時間の確保を決めておく作業になります。対策講座の費用の考え方は介護の特定技能 採用費用と47都道府県の補助金で扱っています。
パート合格そのものの仕組みも押さえておくと、翌年の設計がしやすくなります。社会福祉振興・試験センターによると、合格したパートは翌年・翌々年まで受験が免除されます。ただし申込みでパートを選べるのは第38回でパート合格に該当した人だけで、初回受験者や第38回で不合格だった人は全パート受験です。また、不合格だったパートの一部だけを選んで受験することはできません。[19]
「合格基準点の8割以上」が何点かは、厚生労働省がその回ごとに示します。 第38回は総得点125点に対し合格基準点が64点で(総得点の60%程度を基準とし、問題の難易度で補正した値)[20]、延長措置の案内はこれを受けて 「合格基準点64点の8割以上の52点以上の得点があり、かつ、1パート以上合格していることが条件です。」 と明記しています。[21]⚠️ 合格基準点は回ごとに動きます(難易度で補正されるため)=前年の点数をそのまま目標に据えず、受験する年の案内で確認してください。
⚠️ ここに最大の落とし穴があります。前年までにパート合格していても、5年目は全パートを受験してください。 厚生労働省のQ&Aは「不合格パートのみの受験ではなく、全パート受験されたい」としており、5年目の結果で判定される3つのケースを示しています。[21]
| 5年目の受験の仕方と結果 | 扱い |
|---|---|
| 全パート受験し、残りのパートも合格 | 国家試験に合格した扱い=在留資格「介護」への変更が可能 |
| 全パート受験し、1パートのみ合格+総得点が合格基準点の8割以上 | 合格扱いにはならないが、延長の手続きができる |
| 全パート受験し、1パートのみ合格+総得点が8割未満 | 合格扱いにならず、延長も不可 |
パート合格制度そのものは「合格したパートの受験が免除される」仕組みですが、延長を取りにいく年だけは免除を使わずに全部受ける——ここを取り違えると、要件の②(総得点が合格基準点の8割以上)を満たしようがなくなります。
⚠️ この措置の対象は「特定技能1号」だけです。 同じQ&Aは「『特定技能1号』以外の在留資格(『技能実習』や『特定活動』(EPA介護福祉士候補者)など)に係る在留申請は本措置の対象としない」としています。[21]技能実習生を抱えている場合、この延長は使えません。
どのパートで合格が出ているかも公表されています。第38回のパート別合格者数はAパート3,935人・Bパート1,509人・Cパート6,181人でした。[15]
厚生労働省の「外国人介護人材受入れの仕組み」も、この要件を満たした場合の在留を最長6年間と図示しています。[2]
延長の申請は郵送のみ・期限つきです
要件を満たしても、申請しなければ延長は認められません。根拠は令和8年1月21日付 社援発0121第10号(令和8年3月30日一部改正)で、手続きは次のとおりです。[21]
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出方法 | 郵送のみ受付(持ち込み・メール送付での受付は行われません) |
| 提出先 | 厚生労働省 社会・援護局福祉基盤課 福祉人材確保対策室 資格・試験係 |
| 提出書類 | ①確認依頼書(別紙様式1)②受験年度の「介護福祉士国家試験結果等について」の写し ③在留カード(表面)の写し ④学習計画(別紙様式2) |
| 申請期限 | 第38回(令和8年実施)に係る申請は令和8年4月30日 消印有効 |
第38回は試験が1月25日、合格発表が3月16日、申請期限が4月30日でした。厚生労働省は「合格発表前に学習計画の策定をするなど、事前に確認依頼書類の準備をお願いしたい」としています。[21]合格発表を見てから講座を探し始める運び方は、この案内が想定していない進め方です。期限はその回ごとに設定されるため、受験する年の案内で必ず確認してください。
⚠️ 登録支援機関に支援を委託していても、確認依頼書を出すのは会社です。 同じQ&Aは「確認依頼書については、特定技能所属機関(特定技能外国人と雇用契約を結んでいる施設・事業所等)においてとりまとめて厚生労働省に郵送いただきたい」としています(学習計画の「支援責任者」欄には、委託している場合は登録支援機関の支援責任者を記載します)。[21]結果確認通知書の海外への発送は行われないため、様式1の返送先には国内の特定技能所属機関または登録支援機関の住所を書きます。
⚠️ 在留期限が結果の前後に来る職員がいる場合は、扱いが変わります。[21]
- 結果が出る前に在留期限を迎える — 通算在留期間を過ぎて「特定技能1号」で在留することはできません。ただし帰国後に要件を満たすと判明した場合は延長が可能で、厚生労働省へ確認依頼を行い、その結果を踏まえて地方出入国在留管理局へ申請します。⚠️ 帰国日から1年以内に入国する場合のみ対象なので、申請は速やかに行う必要があります。
- 結果が出た直後に在留期限を迎える — 在留期間更新の申請は在留期限の到来前に行う必要があるため、厚生労働省への確認手続は合格発表後直ちに行います。更新手続きの前に在留期限が来てしまう場合は、上と同じく帰国後の申請になります。
EPAという別ルート——枠と時期が合うか
EPA介護福祉士候補者の受け入れは、国際厚生事業団(JICWELS)が「日本の唯一の受入れ調整機関」とされており、民間の紹介で受け入れることはできません。[22]試験センターも「EPA候補者以外の外国人の方は、EPAルートでは申し込みできません」として、受験ルートの側でも閉じた枠組みであることを示しています。[23]
制度の性格そのものも、人手不足への手当てとは別に置かれています。厚生労働省は「候補者の受入れは、看護・介護分野の労働力不足への対応ではなく、二国間の経済活動の連携の強化の観点から、経済連携協定(EPA)に基づき、公的な枠組で特例的に行うものである」と明記しています。[24]
企業の実務に効く条件は次のとおりです。
- 在留期間は上限4年で、4年目に国家試験を受験します。[24]
- 受入れ機関で4年間、介護業務に従事(原則転職不可)。[25]
- マッチングは年1回のサイクルです。JICWELSが案内する2027年度受入れでは、フィリピン・インドネシアの求人登録申請の受付が2026年3月5日〜4月8日、マッチングがフィリピンで同年7月下旬〜10月中旬という日程になっています。[25]
- 受入れの規模は、2008年度から2025年度の受入れまでで累計8,809名が来日です(3か国合計)。[25]同じ介護分野で、特定技能「介護」の在留者数は令和8年3月末時点の速報値で74,745人です。[26]⚠️ 前者は18年分の来日の累計、後者はある時点の在留者数で、集計の対象が違います(引き算や割り算はできません)。
いま働いている職員の5年問題を解く手段としてEPAが選択肢になりにくいのは、規模より日程です。募集は年1回のサイクルで、求人登録から入国までに1年以上かかります。すでに在籍している職員の在留期限には間に合いません。
延長には「会社が計画を出す」という共通の構造がある
EPAにも、不合格だった候補者の滞在を1年延長する扱いがあります。これは制度に常設された権利ではなく、閣議決定で繰り返し認められてきた措置です——厚生労働省の枠組図は、平成23年3月から令和7年2月まで8回の閣議決定を根拠として挙げています。[24]そして条件の立て方が、特定技能のパート合格延長とよく似ています。厚生労働省が入国年度ごとに示す条件ア〜オのうち、ウとエは受入れ機関側の作業です(下の引用は令和4年度に入国した候補者を対象とする回のものです)。[27]
ウ 受入れ機関により、令和8年度の国家試験合格を目指すため、候補者の特性に応じた研修改善計画が組織的に作成されていること。
エ 受入れ機関により、令和8年度の国家試験合格に向けた受入れ体制を確保するとともに、上記計画に基づき適切な研修を実施するとの意思が表明されていること。
⚠️ EPA側にも本人の得点要件(条件オ=前年度の国家試験の得点が一定の水準以上)があります。[27]どちらの制度でも「本人の点数」と「会社の計画」の両方が要る、という並びです。
EPA候補者の合格率は国によって大きく違い、受験の回数でも差が出ます。第38回は全体で31.8%でしたが、初受験者44.8%・再受験者21.4%、国別ではベトナム・インドネシア・フィリピンで水準が分かれています。[28]⚠️ EPAは4年目に初回受験なので、この初受験と再受験の差は「就労しながら4年かけて準備した回」と「延長の1年で臨む回」の差でもあります。
特定技能の延長要件が「特定技能所属機関において学習計画を…作成し、厚生労働省に提出すること」であるのと同じで、どちらの制度でも、延長は本人の点数だけでは決まらず、会社が計画を出して初めて成立します。 制度をまたいで同じ形をしている以上、「試験の結果を見てから考える」という運び方は、どちらのルートでも間に合いません。
合格したら——在留資格「介護」への変更手続き
合格後は在留資格変更許可申請を行いますが、出入国在留管理庁が共通の必要書類に挙げているのは合格証ではなく「介護福祉士登録証(写し)」です。[3]在留資格「介護」に該当する活動は「本邦の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動」とされており、資格の登録を終えていることが前提に置かれています。
厚生労働省のパート合格の資料も、合格した場合の流れを「在留資格『介護』に変更可能(※速やかに変更許可申請を行う)」と図示しています。[18]在留期限が近い年度に合格する人ほど、合格発表の直後から動く前提で段取りを組むことになります。
移行のときに自社の条件が問われるのが報酬です。出入国在留管理庁が在留資格「介護」の資料で示す上陸許可基準(出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令・平成2年法務省令第16号)は、在留資格「介護」について 「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」 を求めています(このほか、技能実習の活動に従事していた場合は、修得した技能等の本国への移転に努めるものと認められることが挙げられています)。[5]⚠️ この省令は条文上は上陸審査の基準です(在留資格変更の許可は法第20条第3項の「相当の理由」で判断されます)。ただし入管庁が同じ資料で在留資格「介護」の要件として掲げている以上、取得後の給与が日本人の介護福祉士と同等額以上であることは、移行を考えるうえで外せない条件として扱うのが実務的です。資格取得支援を計画に入れるなら、取得後の処遇も同じ時期に決めることになります。
⚠️ 合格発表から登録証が届くまでには時間差があります。 社会福祉振興・試験センターは、登録申請について「提出された書類に不備がなければ、1か月半程度で登録証を発送します」としています。[29]第38回でいえば合格発表が3月16日なので、そこから登録申請を経て登録証が届くのは早くても4月末以降という並びです。2026年8月14日時点で、出入国在留管理庁の在留資格「介護」のページ・厚生労働省のパート合格および在留期間延長の資料・試験センターの登録手続きの案内を確認した範囲では、この空白期間の在留の扱いを定めた記載は確認できませんでした。在留期限がこの時期に重なる職員がいる場合は、地方出入国在留管理局や行政書士などの専門家に早めに取扱いを確認してください。申請中の在留の扱いと審査に要する期間は特定技能の在留期間と更新で整理しています。
在留資格「介護」に切り替わると、永住許可の年数の数え方も変わります。永住許可のガイドラインが求める「就労資格で引き続き5年以上」の就労資格から、特定技能1号は明示的に除かれているためです。[30]腰を据えて働き続けてもらう設計を考えるなら、資格を取る時期がそのまま将来の選択肢の起点になります。⚠️ 永住許可は素行・生計・公的義務の履行を含む個別の審査で、年数だけで決まるものではありません。除外の逐語・在留期間の長さの要件・経過措置を含む数え方の詳細は特定技能の在留期間と更新にまとめています。
報酬を得て業として行う在留資格の申請書類の作成は行政書士などの専門家の領域です(申請書等の提出=申請取次は、変更・更新なら承認を受けた自社・登録支援機関の職員も行えます)。書類の作成が必要な場合は専門家と連携してください。提出先・様式・誰が出せるかは特定技能の申請に必要な書類一覧で整理しています。
5年の時間割——いつ何を始めるか
逆算の起点は5年目の試験ではなく3年目です。実務経験3年を満たして実務者研修を修了した時点で受験資格が立ちます。厚生労働省がパート合格の資料に載せている例(7月に就労開始した場合)では、3年目に受験資格が立ち、最初の受験は4年目です。⚠️ 初回受験が3年目になるか4年目になるかは入職月で変わります(下の注意書き)。[18]
1年目:実務経験の記録を始める
従業期間(在職期間)と従事日数を月次で残す運用にします。従事日数は「実際に介護等の業務に従事した日数」なので、後からの再構成が難しい項目です。2年目:実務者研修の受講先とスクーリングの日程を押さえる
実務経験と実務者研修はどちらが先でも並行でもよく、修業年限は6か月以上です。3年目に受験資格を立てるには、この時点で面接授業の日程を勤務表に入れておきます。3年目:受験資格が立つ
従業期間1,095日以上・従事日数540日以上を満たし、実務者研修を修了します。試験実施年度の3月31日までに満たす見込みであれば「実務経験見込み」で申し込めます。1回目の受験(入職月により3年目または4年目)
受験資格が立った年度の試験を受けます。4月入職なら3年目の1月の試験に「実務経験見込み」で間に合い、年度の後半に入職した人は4年目になります。合格した場合は、速やかに在留資格変更許可申請を行います。介護福祉士登録証の交付までの時間差を見込んで動きます。5年目:2回目の受験(通算5年の直前)
この年の試験が、特定技能1号の在留期間の通算5年に達する直前の試験に当たります。パート合格による延長の要件を使う可能性があるため、前年度のうちに学習計画の材料(対策講座の候補・社内の学習時間)を決めておきます。6年目:要件を満たした場合の3回目の受験
1パート以上の合格などの要件を満たし、特定技能所属機関が学習計画を本人とともに作成して厚生労働省に提出した場合、最長1年の延長のなかで再受験できます。
⚠️ 「3年目に受験資格が立つ」は入職月でずれます。 受験資格は試験実施年度の3月31日までに従業期間・従事日数を満たせばよく、満たす見込みであれば「実務経験見込み」で申し込めます。[7]4月入職なら3年が経過するのは3年目の3月末なので、その年度の試験(1月末)に見込みで申し込めます。逆に、申込みが締め切られる9月上旬の時点で見込みが立たない場合は、初回受験が1年後ろへずれます。自社の入職月を、次の年内カレンダーに当てて確認してください。
1年の中では、いつ何が起きるか
第39回(令和9年1月実施)の日程は次のとおりです。[17]
| 時期 | 起きること | 会社の作業 |
|---|---|---|
| 7月下旬〜9月上旬 | 受験申込書の受付(第39回=令和8年7月22日〜9月2日) | 実務経験証明書の作成/ふりがな・試験時間延長の申請/実務経験見込みの判断 |
| 1月下旬 | 試験(第39回=令和9年1月31日) | — |
| 3月中旬〜下旬 | 合格発表(第39回=令和9年3月23日ホームページ掲載・3月26日結果通知発送) | 合格なら登録申請と在留資格変更の段取り/不合格なら延長申請(郵送・期限つき) |
申込みの受付は夏です。 学習支援を年明けから始めても、申込みの段階で必要な書類と申請は前年の夏に決まっています。⚠️ 日程は回ごとに変わるので、受験する年の案内で確認してください。
会社の作業の終点は「実務経験証明書」です。 毎月残した従業期間・従事日数の記録は、最終的に事業者が作成する実務経験証明書になります。同じ期間に複数の事業所へ所属していた職員には、これに加えて従事日数内訳証明書が要ります。[31]様式と作成例は試験センターが公開しているので、1年目のうちに一度開いて、毎月どの項目を残しておく必要があるかを決めておくと、3年目に記録を作り直さずに済みます。⚠️ 技能実習から特定技能へ移行した職員は、従業期間の起算点に注意が要ります——試験センターは「在留資格『技能実習』で就労されている方の従業期間算定開始日は、雇用開始日となります(入国後に行われる講習の期間は含みません)」としています。[31]
この並びで先に効いてくるのは、4年目・5年目ではなく1年目と2年目の作業です。従事日数の記録が残っていなければ3年目に受験資格を立てられず、スクーリングの枠を押さえていなければ実務者研修の修了が後ろへずれます。どちらも、5年目に気づいて取り返せる種類の準備ではありません。
会社が用意するもの(チェックリスト)
5年分の作業をまとめると、会社側でやることは記録・研修・学習支援・申請の4つに整理できます。
| 区分 | 用意するもの | 着手の目安 |
|---|---|---|
| 記録 | 従業期間(在職期間)と従事日数の月次記録/同じ期間に複数事業所へ所属する場合の内訳の整理 | 就労開始と同時 |
| 研修 | 実務者研修の受講先の確保/面接授業と医療的ケアの演習の日程を勤務表に入れる/すでに修了している研修(初任者研修など)の修了証明の保管 | 2年目まで |
| 学習支援 | 国家試験対策の講座・研修の候補/社内で確保する学習時間の設計 | 3年目まで |
| 学習計画(延長を使う場合) | 特定技能所属機関として作成し厚生労働省へ提出する学習計画(本人とともに作成) | 5年目の試験の前 |
| 申請 | 合格後の在留資格変更許可申請の段取り/介護福祉士登録証(写し)の入手/所属機関の代表者に関する申告書(令和8年4月15日以降の申請から追加) | 合格発表と同時 |
対策講座は、公的な受け皿から探せます。 公益社団法人日本介護福祉士会は厚生労働省の補助事業として「外国人介護人材のための介護福祉士国家資格取得支援講座」を実施しており、わかりやすい日本語を用いたオリジナル教材と全国模試を使って全5回/1講座・受講料無料で開かれています(都道府県の介護福祉士会でも9月〜12月に開催)。[32]延長申請に添える学習計画には「国家試験対策に係る講座・研修等の受講予定」を書くことになるので、候補を先に押さえておくと計画が具体になります。
⚠️ この表の作業を登録支援機関と分担する場合は、委託の範囲を先に切り分けてください。登録支援機関へ委託できるのは1号特定技能外国人支援計画の「実施」で、計画の「作成」は受入れ機関の義務です(登録支援機関は作成を補助できるにとどまります)。介護福祉士の資格取得支援をどこまで手伝ってもらえるかは、契約で決める範囲になります。義務的支援として定められている項目の中身は特定技能の義務的支援10項目、委託しても自社に残る手続きの範囲は特定技能 介護の登録支援機関の選び方で整理しています。
資格取得の計画は、離職されてしまえば成立しません。就労開始から1年目までの支援の組み立ては外国人材の定着支援で扱っています。
まとめ
介護分野には特定技能2号がなく、5年より先も同じ職員に働いてもらう道筋は介護福祉士の取得と在留資格「介護」への変更です。受験資格は在留資格ではなく働いた施設と職種で決まるため、特定技能1号として働いた期間はそのまま実務経験に算入されます。会社が用意するのは、従業期間・従事日数の記録と、実務者研修のスクーリング(初任者研修の修了者なら受講時間数は320時間、通学の核は面接授業45時間と医療的ケアの演習)です。合格率は厚生労働省が在留資格別に公表しており、特定技能1号は直近3回の通算で33.7%——おおむね3人に1人という前提で学習支援を早い段階から計画に入れることになります。5年目に届かなかった場合もパート合格による最長1年の延長がありますが、特定技能所属機関が学習計画を作って厚生労働省へ提出することが要件で、これはEPAの滞在延長(受入れ機関による研修改善計画の組織的な作成)と同じ形です。どちらも、結果を見てから動いて間に合う手続きではありません。そして資格取得は本人の在留だけの話ではありません——在留資格「介護」へ移った職員は人数枠の分母に入るため、同じ事業所で受け入れられる特定技能外国人が1人分増えます。
介護の受け入れ全体の条件と4制度の比較は特定技能「介護」とは?、事業所ごとの人数枠は介護の特定技能 人数枠と受け入れ上限、制度の全体像は特定技能採用の完全ガイドをご覧ください。
「5年で帰す前提の採用をやめたい」「資格取得まで見据えた受け入れ体制をどう組むか」を相談したい場合は、条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します(提携先のサービスをご紹介しています)。
よくあるご質問
- 特定技能で採用した介護職員は、5年を超えて働いてもらえますか?
- 介護分野は特定技能2号の対象分野とされていないため、特定技能1号のままでは通算5年が上限です。5年より先も同じ人に働いてもらうには、介護福祉士の資格を取得して在留資格「介護」へ変更する道筋になります。在留資格「介護」は在留期間更新の回数に制限がなく、家族(配偶者・子)の帯同もできます。
- 特定技能で働いた期間は、介護福祉士国家試験の実務経験になりますか?
- 受験資格は在留資格ではなく、働いた施設(事業)と職種で判定されます。社会福祉振興・試験センターは受験資格に国籍・性別・年齢・学歴等の制約はないとしています。加えて、介護分野で特定技能外国人を受け入れる事業所は、運用要領別冊により「介護福祉士国家試験の受験資格の認定において実務経験として認められる介護等の業務に従事させることができる事業所」であることが求められています。必要なのは従業期間3年以上(1,095日以上)かつ従事日数540日以上で、両方を満たす必要があります。実際の判定は試験センターの「実務経験の範囲」で確認してください。
- 国家試験で、外国人にふりがなや試験時間の配慮はありますか?
- あります。ただし付き方が違います。EPA介護福祉士候補者は申請不要で、全ての漢字にふりがなを付記した問題用紙が配付され試験時間が通常の1.5倍になります。それ以外の外国籍の方・日本に帰化された方は、受験申し込み時の申請により同じ扱いが認められます。特定技能1号の職員は後者にあたるため、受験申し込みの段階で申請しないと配慮は付きません。
- 特定技能外国人に絞った介護福祉士国家試験の合格率は公表されていますか?
- 公表されています。厚生労働省の「介護福祉士国家試験の受験者・合格者・合格率の推移」は在留資格別の内訳を載せており、特定技能1号の合格率は第36回38.5%・第37回33.3%・第38回33.0%です。ただし同じ3回で全体の合格率も82.8%から70.1%へ下がっており、特定技能1号だけの事情として読める数字ではありません。
- 実務者研修のために、450時間ぶんのシフトを空ける必要がありますか?
- 実務者研修は原則450時間ですが、すでに修了している研修に応じて受講時間数が短縮されます。介護職員初任者研修を修了している人なら320時間で、その大部分は通信授業で消化できます。通学が必要なのは面接授業によることとされている「介護過程Ⅲ」(45時間)と医療的ケアの演習が中心で、勤務から外す時間はこの部分の調整が主になります。修了している研修が無ければ原則どおり450時間です。修業年限は6か月以上(一部読み替えがある場合は1か月以上)です。
- 5年目の国家試験に不合格だった場合、その職員は帰国することになりますか?
- 第38回試験から導入されたパート合格に該当し、他の要件も満たせば、最長1年の在留期間延長が認められます。要件には、全パートを受験して1パート以上合格していること、総得点に対する合格基準点の8割以上(第38回は52点以上)を得点していることに加えて、特定技能所属機関が学習計画を本人とともに作成して厚生労働省へ提出することが含まれます。提出は郵送のみで、申請期限も回ごとに決まっています(第38回は令和8年4月30日消印有効)。会社が計画を出さなければ延長は取れません。なお、この措置の対象は「特定技能1号」だけで、技能実習やEPA介護福祉士候補者には使えません。
- 職員が介護福祉士になると、自社が受け入れられる人数は増えますか?
- 増えます。事業所ごとの人数枠の分母は「日本人等の常勤の介護職員の総数」で、在留資格「介護」により在留する者と、国家試験に合格したEPA介護福祉士はこの「日本人等」に含まれます。一方、特定技能1号・技能実習生・EPA介護福祉士候補者・留学生は含まれません。数え方の全体は「介護の特定技能 人数枠」で解説しています。
- EPAで介護福祉士候補者を受け入れることはできますか?
- 受け入れの斡旋は国際厚生事業団(JICWELS)が日本で唯一の受入れ調整機関とされており、民間の紹介では受け入れられません。マッチングは年1回のサイクルで、求人登録の受付から入国まで1年以上かかります。すでに雇用している特定技能1号の職員の在留期間に間に合う手段ではないため、その人については介護福祉士の取得を計画する形になります。
出典・参考(一次情報)
- 特定技能(介護分野)=「介護分野については、現行の専門的・技術的分野の在留資格「介護」があることから、特定技能2号の対象分野とはしていません。」(出入国在留管理庁)
- 外国人介護人材受入れの仕組み=在留資格「介護」の家族帯同可・在留期間更新の回数制限なし/特定技能1号は通算5年(要件該当時は最長6年)/養成施設ルートの経過措置の注記(厚生労働省)
- 在留資格「介護」=該当する活動/在留期間(5年、3年、1年又は3月)/必要書類に「介護福祉士登録証(写し)」(出入国在留管理庁)
- 特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領-介護分野の基準について-(運用要領別冊)=事業所ごとの人数枠に係る要件・「日本人等」の範囲(出入国在留管理庁)
- 在留資格「介護」(該当する活動と上陸許可基準)=入管法別表第一の二/上陸許可基準省令(平成2年法務省令第16号)「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること」(出入国在留管理庁)
- 国家試験受験資格に関する仕組み等について(第5回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会・令和7年10月20日)=実務者研修450時間の科目・修業年限・保有研修別の受講時間数(厚生労働省)
- 受験資格:実務経験+実務者研修=従業期間3年以上(1,095日以上)かつ従事日数540日以上/従業期間・従事日数の定義/実務経験見込み/「受験資格は、国籍、性別、年齢、学歴等の制約はありません」(社会福祉振興・試験センター)
- 従業期間計算表=試験実施年度の3月31日までに必要な従業期間1,095日以上を満たす必要があること(社会福祉振興・試験センター)
- 実務経験の範囲(受験資格の対象になる施設・事業と職種)(社会福祉振興・試験センター)
- 社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要=養成施設卒業者に係る経過措置の見直し(①卒業後5年間の資格取得は令和13年度卒業者まで延長/②5年従事後の資格継続は令和8年度卒業者までで終了)・施行期日(厚生労働省)
- 第221回国会 議案情報「社会福祉法等の一部を改正する法律案」=令和8年6月19日可決・令和8年6月25日公布(法律第51号)(参議院)
- 実務者研修の受講のための負担軽減策=320時間の内訳(通信授業275時間+面接授業45時間+医療的ケアの演習)・通信課程の定員が約9割・受講費用の貸付・代替要員の雇上げ助成(厚生労働省)
- 社会福祉士及び介護福祉士法施行規則等の一部を改正する省令の施行について(平成23年10月28日 社援発1028第1号)=面接授業によらなければならない「介護過程Ⅲ」(厚生労働省)
- 介護福祉士国家試験の受験者・合格者・合格率の推移=第36〜38回の在留資格別内訳(特定技能1号・技能実習)(厚生労働省)
- 第38回介護福祉士国家試験合格発表について(令和8年3月16日発表)=EPA介護福祉士候補者の合格者380名・31.8%/パート別合格者数(厚生労働省)
- 令和6年度老人保健健康増進等事業「外国人介護人材の介護福祉士国家資格取得の支援強化に関する調査研究事業」外国人介護福祉士国家試験受験者アンケート(有効回収数1,131件・有効回答率20.5%)=日本語能力試験のレベル別 国家試験(筆記)合格率/在留資格別・N2以上の合格者割合/職場等から受けた支援(三菱UFJリサーチ&コンサルティング(厚生労働省 令和6年度老人保健健康増進等事業))
- 第39回介護福祉士国家試験=受験申込書の受付期間・試験日・合格発表日/外国籍の受験者への配慮(漢字へのふりがな付記・試験時間1.5倍とその申請の要否)(公益財団法人社会福祉振興・試験センター)
- (概要)パート合格による介護分野の特定技能外国人の在留期間延長について=要件・学習計画の提出・6年目までの時間割の例(厚生労働省)
- 介護福祉士国家試験のパート合格(合格パートの受験免除)=翌年・翌々年まで合格パートの受験免除/申込パートを選べる対象者(社会福祉振興・試験センター)
- 第38回介護福祉士国家試験の合格基準及び正答について=総得点125点に対し得点64点以上/パートごとの合格基準点(Aパート32.23点・Bパート20.43点・Cパート11.33点)(厚生労働省)
- 介護福祉士国家試験のパート合格による通算在留期間の延長に関する措置について=令和8年1月21日付 社援発0121第10号(令和8年3月30日一部改正)/郵送のみ受付/第38回に係る申請期限/必要書類(確認依頼書・国家試験結果等の写し・在留カードの写し・学習計画)(厚生労働省)
- EPA制度の概要=「日本の唯一の受入れ調整機関」/インドネシア平成20年度・フィリピン平成21年度・ベトナム平成26年度からの受入れ(国際厚生事業団(JICWELS))
- 受験資格:EPA(経済連携協定)=EPA介護福祉士候補者の定義/「EPA候補者以外の外国人の方は、EPAルートでは申し込みできません」(社会福祉振興・試験センター)
- 経済連携協定に基づく受入れの枠組=「労働力不足への対応ではなく、二国間の経済活動の連携の強化の観点から」/介護福祉士候補者の在留期間は上限4年/4年目に国家試験受験(厚生労働省)
- EPA介護福祉士候補者 受入れについて=受入れ機関で4年間従事(原則転職不可)/累計8,809名が来日(2008〜2025年度受入れ)/年1回のマッチングサイクル(国際厚生事業団(JICWELS))
- 特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年3月末時点・速報値)=介護分野の在留者数74,745人・受入れ見込数126,900人(出入国在留管理庁)
- 滞在期間延長の条件について(介護福祉士候補者)=受入れ機関により研修改善計画が組織的に作成されていること 等の条件ア〜オ(厚生労働省)
- 第38回介護福祉士国家試験におけるEPA介護福祉士候補者の試験結果=全体31.8%/初受験者44.8%・再受験者21.4%/各国の合格者数等の推移(厚生労働省)
- 介護福祉士の登録=「提出された書類に不備がなければ、1か月半程度で登録証を発送します」(公益財団法人社会福祉振興・試験センター)
- 永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)=「引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。」(出入国在留管理庁)
- 「実務経験証明書」作成依頼書、実務経験証明書、従事日数内訳証明書の様式と作成例=証明書を作成する事業者向け/従事日数内訳証明書は同じ期間に複数の事業所に所属している場合に追加提出(公益財団法人社会福祉振興・試験センター)
- 国際介護人材支援=外国人介護人材のための介護福祉士国家資格取得支援講座(厚生労働省補助事業・全5回/1講座・受講料無料)(公益社団法人日本介護福祉士会)