インドネシア人の特定技能|出稼ぎの実情と3ルート
目次
「日本側の手続きは在留資格認定証明書と査証だと分かった。ではインドネシア側は、誰が何をするのか」——インドネシア人の特定技能採用で詰まりやすいのはここです。出入国在留管理庁の手続解説は、海外から新たに受け入れる場合と、日本に在留する方を受け入れる場合を別々に説明しており、前者はさらに直接採用とP3MI利用の2パターンに分かれます。つまり実務としては3つのルートがあり、工程も、動くのが会社か本人かも違います。
この記事の要点
- ルートは3つ — 海外から直接採用/海外からP3MI経由/日本に在留する人の採用。在留資格の申請人(申請の名義人)は、海外ルートなら会社、国内ルートなら本人です。
- インドネシアは特定技能の入り方がベトナム型と逆 — 特定技能1号の在留者を資格取得ルート別に見ると、インドネシアは試験ルートが60.7%(ベトナムは技能実習ルートが71.3%・2025年12月末時点)。⚠️ これはすでに在留している人がどう資格を得たかで、いまの応募者の構成そのものではありません。
- IPKOLは「必須」ではなく「強く希望」 — 出入国在留管理庁の解説の表現は「インドネシア側は強く希望しています」です。同庁はインドネシアを、在留諸申請での提出書類は不要な国に分類しています。
- 「インドネシアの送り出し機関」では探す先が変わる — 特定技能で相手になるのはP3MI(インドネシア政府から許可を得た職業紹介事業者)で、出入国在留管理庁は技能実習の「認定送出機関」とは別のものと明記しています。
- 国内在住者を採る場合も手続きは残る — 雇用契約書の原本の提出・本人によるSISKOP2MIへの登録・駐日インドネシア大使館での海外労働者登録の3工程が、在留資格変更許可申請より前に入ります。
- 在留資格認定証明書の3か月と競合する — 海外ルートでは、証明書の交付後にインドネシア側の工程が続きます。有効期間は交付日から3か月以内で、この後工程の速度を会社側で直接詰めることはできません(ただし入国前説明会の準備など、会社側の工程は残ります)。
- IPKOLの入力は英語かインドネシア語 — 直接採用パターンを選べるかは、社内にこの2言語で求人内容を書ける人がいるかで決まります。
- IPKOL・SISKOP2MIの登録手続に手数料はかからないとされている — インドネシア当局によれば手数料がかからず、P3MIを利用する場合の駐日インドネシア大使館の確認手続も無料・3日程度と案内されています。
本記事は一般的な情報提供です。インドネシア側の手続きはインドネシア政府が定めるもので、運用は変わることがあります。最新の内容は出入国在留管理庁の「インドネシアに関する情報」および駐日インドネシア共和国大使館で確認してください。
自社はどのルートか——手続きは3つに分かれる
分かれ目は2つだけです。①候補者がいまインドネシアにいるか日本にいるか ②海外から採るなら、職業紹介事業者を挟むか自社で直接探すか。この2問で3ルートのどれかに決まります。出入国在留管理庁が公表しているインドネシアの手続解説は、海外から新たに受け入れる場合と日本に在留する方を受け入れる場合を別々の章立てで説明しており、前者はさらに直接採用パターンとP3MI(インドネシアの職業紹介事業者)を利用するパターンに分かれます。[1]
3ルートを工程ごとに横に並べます。
インドネシア人を特定技能で採用する3ルートの工程と担い手
2026年8月14日確認
| 工程 | 海外から採る(直接採用) | 海外から採る(P3MIを利用) | 日本に在留する人を採る |
|---|---|---|---|
| 申請人(フローチャートが挙げる対象者) | 帰国した技能実習2号・3号の良好修了者/試験に合格した者 | 帰国した技能実習2号・3号の良好修了者/試験に合格した者 | 技能実習2号・3号を良好に修了した者/試験に合格した者(日本に在留中の技能実習生・留学生などの中長期在留者) |
| 求人の出し方【尼】 | 受入機関がIPKOLに登録して求人(インドネシア側が強く希望) | 解説に記載なし(求人票〔Job Order〕は日本側の職業紹介事業者が駐日インドネシア大使館へ提出) | 解説に記載なし(説明は雇用契約の締結から始まる) |
| インドネシア側の事業者の関与 | なし(P3MIを使わない形) | 受入機関が日本側の職業紹介事業者と提携し、その事業者がP3MIと提携契約を締結 | なし |
| 駐日インドネシア大使館の事前確認【尼】 | 解説に記載なし | 日本側の職業紹介事業者が求人票・提携契約書・雇用契約書(暫定版)等を提出して確認を受ける(無料・3日程度) | 解説に記載なし |
| 面接 | 解説に規律の記載なし | 受入機関が行う(P3MIの同席は可・P3MIによる選考や情報提供は不可) | 解説に規律の記載なし |
| 雇用契約の締結 | 受入機関(締結した契約書はIPKOLに電子データで登録) | 受入機関(締結した契約書の原本を駐日インドネシア大使館へ提出し確認を受ける) | 受入機関(締結した契約書の原本を駐日インドネシア大使館へ提出し確認を受ける) |
| 在留資格認定証明書の交付申請【日】 | 受入機関 | 受入機関 | 該当なし |
| 交付された認定証明書の渡し方【日】 | 受入機関が原本を本人へ郵送 | 受入機関が原本を本人へ郵送(日本側の職業紹介事業者やP3MIを介して郵送することも可能) | 該当なし |
| SISKOP2MIへの登録【尼】 | 本人(査証申請の前) | 本人(査証申請の前) | 本人(在留資格変更許可申請の前) |
| SISKOP2MIの登録完了時に発行されるもの【尼】 | インドネシア在外労働者保護庁のID番号 | インドネシア在外労働者保護庁のID番号 | 移住労働者証(E-PMI) |
| 駐日インドネシア大使館での海外労働者登録【尼】 | 解説に記載なし | 解説に記載なし | 本人(完了した者には同大使館が推薦状を発行) |
| 査証発給申請【日】 | 本人(ID番号の写し等を在インドネシア日本国大使館・総領事館へ提示) | 本人(ID番号の写し等を在インドネシア日本国大使館・総領事館へ提示) | 該当なし |
| 移住労働者証(E-PMI)が出る時点【尼】 | 発給された査証をSISKOP2MIに登録し、出国前オリエンテーション等の出国前手続を終えたとき | 発給された査証をSISKOP2MIに登録し、出国前オリエンテーション等の出国前手続を終えたとき | SISKOP2MIへの登録が完了したとき(大使館での海外労働者登録より前) |
| 在留資格変更許可申請【日】 | 該当なし | 該当なし | 本人 |
| 入国・在留【日】 | 上陸審査で上陸条件に適合すると認められれば「特定技能」の在留資格が付与 | 上陸審査で上陸条件に適合すると認められれば「特定技能」の在留資格が付与 | 該当なし(変更が許可されれば完了) |
出典:出入国在留管理庁「インドネシア国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ」(海外から新たに受け入れる場合/日本に在留する方を受け入れる場合)および同庁のフローチャート。工程は同解説の記載順。【日】【尼】は同解説が各工程に付している区分(【日】=日本側の手続、【尼】=インドネシア側の手続)で、区分の表示がない工程は空欄。「解説に記載なし」は、同解説に該当する工程の記述が見当たらないことを示す。
社内の段取りとしては、この表の「受入機関」と書かれた行が自社の作業、「本人」と書かれた行が候補者に案内して進捗を確かめる作業です。とくに海外から採る2ルートは、在留資格認定証明書が交付されたあとの工程がほぼ本人側に移ります。出入国在留管理庁も、受入機関からも本人に登録するよう説明してほしいとしています。[1]
海外から呼び寄せるか、すでに日本にいる人を採るかで期間と費用の見通しがどう変わるかは、国籍によらない一般論として特定技能の採用の流れ(国内採用と海外採用)にまとめています。
インドネシアからの出稼ぎは増えているのか——特定技能では試験ルートが6割
日本で働くインドネシア人は増えています。⚠️ ただしインドネシアの海外送出全体はほぼ横ばいで、増えているのは日本側の受け入れです。そして特定技能の入り方はベトナム型と逆——全分野を合計すると、実習からの移行ではなく試験に合格して入る人が6割を占めます。⚠️ ただしこの6割は分野によって大きく変わります(介護は試験88.6%・漁業は技能実習69.9%)。自社の分野で見てください。
厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると、令和7年10月末時点でインドネシア国籍の外国人労働者は228,118人で、同表の国籍別の並びではベトナム・中国・フィリピン・ネパールに次ぐ5番目です。[2]同じ資料の推移表では令和3年10月末が52,810人なので、4年で約4.3倍になった計算です(編集部算出=同じ推移表の2時点の比)。対前年増加率は34.6%で、外国人労働者全体の増加率11.7%を大きく上回ります。同資料が「対前年増加率が大きい主な3か国」として挙げるのはミャンマー(42.5%)・インドネシア・スリランカ(28.9%)で、インドネシアはその2番目です。[3]
在留資格別の内訳は次のとおりです。
日本で働くインドネシア人の在留資格別の構成(令和7年10月末時点)
2026年8月14日確認
| 在留資格 | インドネシア国籍 | 全国籍計 |
|---|---|---|
| 技能実習 | 52.6% | 19.4% |
| 専門的・技術的分野の在留資格 | 36.4% | 33.7% |
| (うち特定技能) | 30.5% | 11.1% |
| 特定活動 | 4.7% | 4.3% |
| 身分に基づく在留資格(永住者・定住者など) | 3.4% | 25.1% |
| 資格外活動(留学生のアルバイトなど) | 2.9% | 17.5% |
出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和7年10月末時点)[別表1]国籍別・在留資格別外国人労働者数。構成比は同表が国籍ごとに掲げている値。「専門的・技術的分野の在留資格」には特定技能1号・2号のほか技術・人文知識・国際業務、介護、技能などが含まれる(同表の注記)。
全国籍計と並べると、日本で働くインドネシア人の在留資格は技能実習に大きく偏っています。永住者・定住者などの身分にもとづく在留資格は全国籍計よりはるかに少なくなっています(⚠️ ただしこれはインドネシア固有ではなく、ベトナム3.9%・ネパール3.2%など送り出しの多い国に共通する形です)。
⚠️ ただしこの表は「特定技能でどう入ってくるか」を示すものではありません。 厚生労働省が数えているのは日本で事業主に雇用されている人(永住者や留学生のアルバイトを含みます)で、インドネシア国内にいる候補者は含まれません。[3]また同資料の注記は、技能実習等から特定技能へ移行しても離職を伴わず同一の事業主に引き続き雇用される場合には届出の義務がない、としています。[3]同注記が述べているのは届出義務の不在までで、集計にどう反映されるかは書かれていません。⚠️ 移行した人の一部が特定技能として数え直されない可能性がある=この表の特定技能の比率は実際より低めに出ているかもしれない、というのが編集部の見立てです。
特定技能でどう入ってきているか——インドネシアは試験ルートが6割
入り方そのものは、出入国在留管理庁が国籍別・ルート別に公表しています。
特定技能1号の在留者を、資格を得たルート別に見る(2025年12月末時点)
2026年8月14日確認
| 国籍 | 総数 | 試験ルート | 技能実習ルート |
|---|---|---|---|
| ネパール | 12,277人 | 11,711人(95.4%) | 566人(4.6%) |
| ミャンマー | 44,315人 | 38,677人(87.3%) | 5,637人(12.7%) |
| インドネシア | 86,523人 | 52,560人(60.7%) | 33,849人(39.1%) |
| 全国籍計 | 382,341人 | 174,625人(45.7%) | 207,399人(54.2%) |
| 中国 | 21,418人 | 6,309人(29.5%) | 15,100人(70.5%) |
| ベトナム | 158,497人 | 45,404人(28.6%) | 113,009人(71.3%) |
| フィリピン | 35,521人 | 10,083人(28.4%) | 25,338人(71.3%) |
出典:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数(詳細版)」【第7表】(全分野)国籍・地域別 試験ルート・技能実習ルート別 特定技能1号在留外国人数(令和7年12月末現在)。構成比は同表の実数から編集部が算出(各ルートの人数÷総数)。総数には検定ルート・介護福祉士養成施設修了ルート・EPA介護福祉士候補者ルートを含むため、試験と技能実習の合計は100%になりません。同表は86の国・地域を掲げており、ここに載せたのは在留者数の多い国と試験ルートの比率が高い国を、試験ルート比の高い順に抜き出したものです。
送り出しの多い国のうち、ベトナム・中国・フィリピンは技能実習ルートが7割前後。インドネシアは逆に、試験ルートが60.7%を占めます。⚠️ インドネシアが唯一というわけではありません。同表で試験ルートの比率がインドネシアを上回る国は、在留者300人以上に限っても韓国・台湾・ネパール・ミャンマー・スリランカ・インド・バングラデシュの7か国あります(在留者数はいずれもインドネシアより少なく、最大のミャンマーで44,315人)。[4]
⚠️ ただし「試験6割」は分野で反転します
同じ資料は分野別にも集計されています。インドネシア国籍で見ると、分野によって主流のルートが入れ替わります。
| 分野 | インドネシア国籍の1号在留者 | 試験ルート | 技能実習ルート |
|---|---|---|---|
| 介護 | 21,139人 | 18,725人(88.6%) | 2,310人(10.9%) |
| 漁業 | 3,879人 | 1,168人(30.1%) | 2,711人(69.9%) |
出典=出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数(詳細版)」の分野別表(令和7年12月末現在)。構成比は同表の実数から編集部が算出(各ルートの人数÷その分野のインドネシア国籍の総数)。
介護は試験ルートが9割近くを占める一方、漁業は技能実習ルートが7割で、全分野計とは逆になります。「インドネシア=試験ルート」と一般化せず、自社の分野の数字で見てください。
そのうえで採用計画に効くのは次の点です。ベトナムでの経験や一般論をそのまま当てると「実習修了者を待つ」前提になりますが、分野によっては試験合格者を採る道のほうが太い、ということです。⚠️ もっとも技能実習ルートも33,849人と厚く、どちらか一方ではありません。⚠️ またこの表が示すのはすでに特定技能で在留している人がどう資格を得たかであって、いま応募してくる候補者の構成そのものではありません。
⚠️ 「海外ルート=未経験者、国内ルート=経験者」という二分法は成り立ちません。 出入国在留管理庁のフローチャートは、海外から受け入れる2ルートの申請人にも「帰国した技能実習2号又は3号を良好に修了した者」と「試験に合格した者」の両方を挙げています。[5]実習修了者を海外から呼び戻す道も、試験合格者を国内で採る道もあります。
技能実習を修了した人は試験の負担が軽くなります。運用要領は、技能実習2号を良好に修了している場合は「原則として、修了した技能実習の職種・作業の種類にかかわらず、日本語能力水準について試験その他の評価方法による証明は要しない」(N4レベルの試験免除)としています。[6]⚠️ ただし免除は無条件ではありません——同要領は、介護分野の介護日本語評価試験については介護職種・介護作業の技能実習2号を良好に修了した者を除き免除されないこと、自動車運送業分野(タクシー・バス運転者)と鉄道分野(運輸係員)はN3レベルが必要になることを、あわせて留意事項として挙げています。⚠️ ここで免除されるのは日本語能力の証明です。技能試験の免除は別の要件(技能実習2号の良好修了と、修了した職種・作業と従事する業務の関連性)で判断されます。分野ごとの条件は特定技能の試験で確認してください。
送出先として、日本は選ばれているのか
上位ではありますが、首位ではありません。インドネシア移住労働者保護省(KP2MI)の2025年の年次報告によると、同年の送出(送出サービス件数)は296,948件で前年比 −0.16%、送出先の上位5か国は台湾・香港・マレーシア・日本・シンガポールの順で、日本は4番目です。[7]月次で見ると順位は入れ替わり、2025年12月は台湾・マレーシア・香港・日本・シンガポール、2026年6月はマレーシア・台湾・日本・香港・シンガポールの順でした。
⚠️ ここが「増えているのか」への正確な答えです。 インドネシアの海外送出は全体としてほぼ横ばい(前年比 −0.16%)である一方、日本で働くインドネシア人は前年比 34.6%増えています。送り出しの総量が増えたのではなく、日本向けの比重が上がっているという構図です。⚠️ 2つの統計は数えているものが違う(KP2MI=送出サービスの件数/厚生労働省=日本で雇用されている人の数)ため、割り算や引き算はできません。
⚠️ ただし「日本と台湾・香港が同じ候補者を取り合っている」とは読めません。 同じ報告は、送出の主流が個人雇用主のもとで働く部門であり、職種の上位5つが家事使用人・介護者・農園労働者・作業員・家事労働者だとしています。[7]台湾・香港向けの多くは家事・介護の個人雇用で、特定技能で製造業や外食の人材を探す企業とは母集団が重なりません。読み取れるのは、送出先が1か国に集中していないという構図までです。
⚠️ 在留資格別の構成比を、出入国在留管理庁が公表する特定技能の在留者数と足し引きしないでください。 上の表は厚生労働省が事業主の届出から集計した全在留資格の労働者数で、集計主体も母集団も時点も違います。特定技能だけに絞ると国籍別の順位も変わります。分野別・都道府県別の内訳は特定技能外国人の人数統計にあります。
IPKOL・SISKOP2MI・E-PMI——名前は3つ、出てくる場面は別
この3つの固有名詞は、登場する場面も、触る人も違います。IPKOLは求人の入口(直接採用パターンで受入機関が登録)、SISKOP2MIは本人の登録先(3ルート共通)、E-PMIはそこから発行される移住労働者証です。
IPKOL——「強く希望」であって、日本側の申請要件ではない
出入国在留管理庁の解説は、P3MIを利用せずインドネシアから新たに受け入れる場合について、次のように書いています。[1]
インドネシア政府が管理する求人・求職のための「労働市場情報システム(IPKOL)」に日本側受入機関が登録して求人することを、インドネシア側は強く希望しています。
「必須」と書かれることがありますが、一次資料の表現はこのとおりです。同庁はさらに、インドネシアを在留諸申請の際の提出書類は不要だが相手国側に送出手続が定められている国に分類し、これらの手続きについて「あくまで相手国側の送出しのための手続であって、日本側の在留諸申請上の手続ではありません」と位置づけています。[8]IPKOLに登録したことを証明する書類を入管へ出すわけではない、ということです。逆に、登録すれば日本側の審査が通りやすくなるという性質のものでもありません。
とはいえ、無視してよい手続きでもありません。IPKOLは日本・インドネシア間の協力覚書(2019年6月25日署名)に定義が置かれた仕組みで、同覚書は日本政府の約束として「求人の公表及び SSW 候補者のデータベースの入手のためのアクセスを得るため、IPKOL に登録するよう AO に周知すること」(SSW=特定技能外国人、AO=受入機関)を挙げています。[9]インドネシア側はIPKOLへの登録が無料であることから求職登録を促す広報をしており、日本での就職を希望する方はIPKOLにアクセスして求職先を検索するとのことです。[1]候補者を探す側の実利があるという建て付けです。
⚠️ 登録の入力は英語かインドネシア語です。 出入国在留管理庁のフローチャートは、システムへの登録はオンラインで「入力方法は英語とインドネシア語となります」としています。[5]つまり直接採用パターンを選ぶかどうかは、社内にこの2言語で求人内容を書ける人がいるかで実質的に決まります。いないなら、P3MIを利用するパターン(日本側の職業紹介事業者が間に入る形)が現実的な選択肢になります。
⚠️ 直接採用パターンでは、締結した雇用契約書もIPKOLに電子データで登録する必要があるとされています。[1]契約を結んで終わりではない点を、社内の手順に残しておいてください。
なお、この協力覚書は継続期間つきの文書で、更新を重ねながら運用されています。⚠️ 直近の更新は6か月と短くなっています——出入国在留管理庁の一覧で継続期間の更新が明記されているのは3か国で、ネパールとミャンマーが「2024年4月1日から5年間」であるのに対し、インドネシアは「2026年6月25日から6か月間」です(覚書本体は継続期間を5年間と定めています)。[8]制度の運用が短い周期で見直され得るということなので、長期の受け入れ計画を置くときは同庁のページで継続期間を確認してください。⚠️ ただし覚書の署名や更新は受け入れの要件ではありません——出入国在留管理庁は、覚書を作成した国でなければ受け入れができないものではない、としています。更新の状況を採用可否の条件として読まないでください(署名17か国の一覧と各国の更新状況は国別の手続き一覧にあります)。
SISKOP2MIとE-PMI——同じ書類が、ルートによって出る時点が違う
SISKOP2MI(海外労働者管理システム)へ登録するのは、受入機関ではなく本人です。ここは3ルートに共通しますが、登録が完了したときに何が発行されるかがルートで変わります。出入国在留管理庁の解説はそれぞれ次のように書き分けています。[1]
- 海外から新たに受け入れる場合 — 在留資格認定証明書を交付された方が、査証申請を行う前にSISKOP2MIへ登録します。「この登録が完了した際に、インドネシア政府から電子的にインドネシア在外労働者保護庁のID番号が発行される」ため、これを取得したうえで在インドネシア日本国大使館・総領事館へ査証申請を行います。移住労働者証(E-PMI)が発行されるのはその後で、発給された査証をSISKOP2MIに登録し、出国前オリエンテーションなど必要な出国前の手続を終えたときです。
- 日本に在留する方を受け入れる場合 — 在留資格変更許可申請を行う前に本人が登録し、「この登録が完了した際に、インドネシア政府から電子的にインドネシア在外労働者保護庁の移住労働者証(E-PMI)が発行される」とされています。登録完了の時点でE-PMIが出る、という順序です。
つまり海外ルートでは「ID番号 → 査証 → E-PMI」、国内ルートでは「E-PMI → 大使館での海外労働者登録 → 在留資格変更許可申請」。同じ名前の書類を同じタイミングで待っていると、待つ場所を間違えます。
⚠️ 海外ルートでID番号の取得を飛ばせないのは、覚書に根拠があるからです。 同覚書は日本政府の約束として「インドネシアの SSW 候補者が在留資格認定証明書及び GoI が発行する SISKOTKLN の ID 番号を取得した後にのみ駐インドネシア日本使節団が就労査証が発給されるよう確保すること」を挙げています(GoI=インドネシア政府)。[9]認定証明書だけでは査証申請の前提が揃わないということです。
⚠️ 海外ルートでは、この後工程が在留資格認定証明書の有効期間と競合します。 出入国在留管理庁の運用要領は「在留資格認定証明書の有効期間は、交付日から3か月以内である」としています。[6]証明書が交付されてから入国までは、SISKOP2MIへの登録とID番号の発行〔インドネシア側〕→ 査証発給申請と発給〔日本側〕→ 発給された査証のSISKOP2MIへの登録と出国前手続を経たE-PMIの発行〔インドネシア側〕→ 上陸審査〔日本側〕 と、両国の工程が交互に入ります。[1]この連なりが3か月に収まらなければ、証明書は取れているのに入国できません。
しかもこの連なりの速度を、会社側で直接詰めることはできません。証明書の交付後に申請や登録を行うのは本人と両国の当局で、受入機関にできるのは案内と進捗の確認です。出国前の説明会も、協力覚書ではインドネシア政府の実施事項(「インドネシアで選ばれた SSW 候補者に対する出国前説明会を実施すること」)として置かれています。[9]
⚠️ ただしこの期間に会社の仕事がゼロになるわけではありません。 同じ覚書は日本政府の約束として「日本に入国する前に AO が SSW 候補者に入国前説明会を実施することを確保すること」「日本に入国した後に AO が SSW 候補者に入国後説明会を実施することを確保すること」を挙げています(AO=受入機関)。[9]入国前の説明会は自社が実施する側なので、待っている間に準備しておく工程です。⚠️ 各工程の所要日数は、出入国在留管理庁の解説には示されていません(示されているのはP3MI利用時の大使館の確認手続=3日程度だけです)。したがって余裕がどれだけ要るかは事前に計算できません。証明書の交付を採用の完了と見なさず、交付の時期そのものを後ろ倒しにできないかを先に検討するのが安全側です。
⚠️ 候補者が18歳未満のときは、この3か月が締切として効きます。 同じ運用要領の留意事項は、外国人が18歳未満であっても認定証明書の交付申請は可能だが「日本に上陸する時点においては、18歳以上でなければなりません」とし、続けて有効期間が3か月以内であることから「外国人が18歳未満で在留資格認定証明書交付申請を行う場合は、在留資格認定証明書の有効期間を考慮して申請を行うよう留意してください」としています。[6]18歳の誕生日から逆算して申請時期を決める、ということです。
⚠️ 旧称で書かれた資料に当たることがあります。 2019年署名の協力覚書は同種のシステムを「SISKOTKLN」の名称で定義しており[9]、現行の手続解説は「SISKOP2MI」で統一されています。[1]両者の関係(改称か後継か)を示す公的な告知は確認できなかったため、本記事は現行の手続解説の名称に従っています。手続きを進めるときの名称はSISKOP2MIです。
P3MIは技能実習の「送り出し機関」とは別のもの
「インドネシアの送り出し機関を探せばいい」と考えると、探す先を間違えます。特定技能で相手になるのはP3MIで、出入国在留管理庁の解説は注記でこう明記しています。[1]
P3MIとは、インドネシア政府から許可を得た職業紹介事業者を指す用語で、インドネシア語の「Perusahaan Penempatan Pekerja Migran Indonesia」の略語です。なお、P3MIは、インドネシア人労働者の海外下の送り出しを行っていますが、技能実習生の送り出しに関与するインドネシアの「認定送出機関」とは異なります。
検索で出てくる「インドネシアの送り出し機関」の一覧は、技能実習の認定送出機関やその関連団体であることがあります。制度が違えば当たる先も違います。 認定を受けたP3MIの名称・連絡先は、インドネシア労働省が公表する一覧を確認するよう案内されており、出入国在留管理庁の「インドネシアに関する情報」ページからその一覧へのリンクが張られています。[10]⚠️ 同庁は、相手国政府からの情報提供のタイミング等により掲載情報が最新でない可能性があるとしています。[1]
受入企業がP3MIと直接契約するのではない
P3MIの利用は任意ですが、使う場合の契約の形は決まっています。出入国在留管理庁の解説によれば、受入機関は日本側の職業紹介事業者と提携し、さらにその職業紹介事業者がP3MIとの間で職業紹介に関する提携に係る契約を締結する必要があるとのことです。そのうえで、日本側の職業紹介事業者が求人票(Job Order)に加え、P3MIとの提携契約書および雇用契約書(暫定版)等を駐日インドネシア大使館に提出し、確認を受けます。この手続きは費用が無料で、3日程度を要するとのことです。手続きが終わると、提出した書類は日本側の職業紹介事業者に返却されます。[1]
⚠️ 面接は必ず受入機関が行う必要があるとされています。同庁の解説は、P3MIの同席は可能としつつ、P3MIが独自の基準で申請人をどの受入機関と面接させるかを選考したり、受入機関に申請人の情報を提供したりすることはできないと明記しています。[1]「候補者を絞り込んで連れてきてもらう」形は想定されていません。
人材の紹介を受けるときの職業安定法上の注意点(求職者の人選はあっせんに当たり、日本の職業紹介事業者の許可が要るという整理)は、国をまたいで共通なので特定技能の対象国と国別の手続きで扱っています。
なぜこの建て付けなのか
仲介の形をここまで細かく決めているのは、悪質な仲介事業者(ブローカー)の介在を抑える意図があるからです。出入国在留管理庁が公表している制度概要は、二国間取決めで両国が共有する情報に「保証金の徴収、違約金の定め」に関するものを含むとしています。[11]インドネシア側も、IPKOLの活用が悪質なブローカー対策にも資するとしているとのことです。[1]
⚠️ 受入機関に関する情報が、インドネシア側で公表される仕組みがあります。 同覚書は、日本政府が受入機関に改善命令を行った場合はインドネシア政府へ通知し登録支援機関の一覧を共有すること、インドネシア政府が受入機関への改善命令に関する情報と登録支援機関の一覧をインドネシアで公表すること、を両政府の約束として挙げています。[9]⚠️ 覚書は公表の対象を「AO(受入機関)に対する改善命令に関する情報」とだけ書いており、個社名まで公表されるかは記載がありません。改善命令に関する情報が送り出し国側にも渡る枠組みがあるという前提で受け入れ体制を整えてください。
⚠️ 相手先の選定で迷ったときは、手数料の安さより、この枠組みに沿った契約関係になっているか(日本側の職業紹介事業者を介しているか、面接を自社が行う建て付けか)を先に確認するほうが、後戻りが少なくなります。あわせて、その日本側の事業者が職業安定法に基づく職業紹介事業者かを確認してください——出入国在留管理庁の解説も、P3MIとの提携契約を説明する同じ箇所の注記で「職業安定法に基づく職業紹介事業者については、下記の厚生労働省のURLをご参照ください」として厚生労働省の資料を案内しています。[1]
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日本にいるインドネシア人を採用する場合、手続きは減るのか
減りますが、消えません。出入国在留管理庁の解説が示す順序は次のとおりで、インドネシア側の工程が在留資格変更許可申請より前に3つ入ります。[1]
雇用契約の締結と、雇用契約書の原本の提出
特定技能に係る雇用契約を締結します。締結した雇用契約書(原本)は、駐日インドネシア大使館に提出し確認を受ける必要があるとのことです。提出は大使館へ直接持参するほか、切手を貼付した返信用封筒等を添付して送付することも可能とされています。
本人がSISKOP2MIへ登録し、E-PMIの発行を受ける
在留資格変更許可申請を行う前に、日本で就労するインドネシア国籍の方自らがSISKOP2MIにオンラインで登録しなければならないとされています。登録が完了した際に移住労働者証(E-PMI)が発行されます。
駐日インドネシア大使館で海外労働者登録手続を行う
E-PMIを取得したうえで、駐日インドネシア大使館に海外労働者登録手続を行う必要があるとされています。出入国在留管理庁のフローチャートは、インドネシア政府が「日本に在留する技能実習生や留学生などの中長期在留者であるインドネシア国籍の方」について同大使館での登録手続を求めるとしたうえで、登録手続を完了した者には同大使館が推薦状を発行するとしています。[5]同庁は、受入機関からも本人に、登録と大使館での手続について相談するよう説明してほしいとしています。
⚠️ この推薦状は大使館の運用にとどまらず、日本・インドネシア間の協力覚書にも根拠が置かれています。同覚書は日本政府の約束として「AO に対し、現在日本に在留している SSW 候補者は駐日インドネシア使節団から在留資格変更の推薦を取得することが求められることを周知すること」を挙げています(SSW=特定技能外国人、AO=受入機関)。[9]本人に伝えるのは会社の役割として想定されている、ということです。
在留資格変更許可申請
本人が地方出入国在留管理官署に対し、「特定技能」への在留資格変更許可申請を行います。変更が許可されれば一連の手続は完了です。
⚠️ 効くのは順序です。 SISKOP2MIへの登録と大使館での海外労働者登録を「あとでまとめて」に回すと、在留資格変更許可申請を出す段になって止まります。東京から遠い場合の懸念については、同庁のQ&Aが、駐日インドネシア大使館は郵送での手続を受け付けているとのことだとしたうえで、詳細は同大使館に確認するよう案内しています。[12]
在留資格変更許可申請そのものに必要な書類は特定技能の申請に必要な書類で扱っています。報酬を得て業として行う在留資格の申請書類の作成は行政書士などの専門家の領域です(申請書等の提出=申請取次は、変更・更新なら地方出入国在留管理局長が適当と認めた自社・登録支援機関の職員のほか、届出済みの弁護士・行政書士も、本人の依頼を受けて行えます)。個別の事案は行政書士などの専門家と連携して進めてください。
インドネシアだから変わること、変わらないこと
在留資格「特定技能」の要件そのものは、国籍では変わりません。上陸許可基準に旅券の発行国に関する要件があり、運用要領の留意事項は「退去強制令書の円滑な執行に協力しない国・地域」として告示が定めるものをイラン・イスラム共和国の1か国だけ挙げています(インドネシアは含まれません)。[6]この告示の内容は特定技能の対象国と国別の手続きで解説しています。
国籍で実際に変わるのは、ここまで見たインドネシア側の手続きと、次の点です。
- 技能試験の受験資格 — 受験できる年齢や条件は分野ごとの実施要領で定められています。海外から採る場合は候補者の年齢で逆算が変わるため、自社の分野の実施要領を必ず確認してください(2026年8月14日時点で、出入国在留管理庁の公表資料にインドネシア国籍固有の年齢下限を示す記載は確認できませんでした)。分野ごとの条件(介護の受験資格を含む)は特定技能の試験、農業は農業で特定技能の外国人を採用するにまとめています。
- 海外で試験が実施されている分野の顔ぶれ — 出入国在留管理庁の制度概要によると、漁業と木材産業の技能試験の海外実施国はインドネシアの1か国のみです(2025年12月末時点・速報値)。[11]この2分野で海外から採るなら、実質的にインドネシアが対象になります(⚠️ ただし木材産業の特定技能1号は全国籍計で15人と母数が小さく、漁業は4,590人です。同庁「特定技能在留外国人数(詳細版)」分野別表・令和7年12月末現在)(漁業で特定技能の外国人を採用する・木材産業で特定技能の外国人を採用する)。
- 候補者の母集団の厚み — 同資料の国籍・地域別では、インドネシアは86,955人・構成比22.3%でベトナムに次ぐ2位です(2025年12月末時点・速報値/特定技能1号と2号の合計)。[11]分野別・都道府県別の内訳と1号だけの数値は特定技能外国人の人数統計にあります。
- 介護には別ルートがある — 介護分野では、特定技能とは別にEPA(経済連携協定)にもとづく受け入れの枠組みがあります。ルートの比較は特定技能で介護の外国人を採用するで扱っています。
- 入社後に効くのは制度ではなく準備 — 宗教や生活習慣への職場での配慮は、採否の判断材料ではなく受け入れ準備の材料です。インドネシア人の国民性と職場での配慮で、公的資料で確認できる範囲と、職場で決めておくことを整理しています。
インドネシア側の手続きに費用はかかるか
登録手続そのものの手数料はかからないとされています。 同庁の「インドネシア側の手続に関するQ&A」は、IPKOLやSISKOP2MIによる登録手続等の手数料について「インドネシア当局によれば、手数料はかからないとのことです」としています。[12]同庁は別のページでも、IPKOLについて「同システムへの登録や求人・求職に費用は発生しないとのことです」、SISKOP2MIについて「SISKOP2MIへの登録やID番号の取得等に費用は発生しないとのことです」と、それぞれ独立に述べています。[8]
⚠️ ただし無料とされているのは、これらのシステムへの登録・求人求職・ID番号の取得です。 インドネシア側で生じる費用の全般について網羅した記載は、2026年8月14日時点の同庁の公表資料(手続解説・Q&A・二国間ページ・制度概要)では確認できませんでした。登録以外の負担が生じるかは駐日インドネシア大使館に確認してください。⚠️ 民間の解説には、移住労働者証の手続きでインドネシアの労働社会保険(BPJS Ketenagakerjaan)の支払いが要るとするものがありますが、2026年8月14日時点で出入国在留管理庁の公表資料(手続解説・Q&A・二国間ページ・制度概要)に該当する記載は確認できませんでした。
なお、それぞれの登録先は同庁が公表しています(IPKOL= https://imw.kemnaker.go.id/ /SISKOP2MI= https://siskop2mi.bp2mi.go.id/ )。[8]P3MIを利用する場合の駐日インドネシア大使館の検証手続も、費用は無料で3日程度とされています。[1]
⚠️ ただし、インドネシアだから安く済む、とは言えません。上の3ルートのうち、P3MIを利用するパターンでは日本側の職業紹介事業者が間に入るため、その紹介手数料が乗ります。費用差を生むのは国籍ではなくルートの選び方で、直接採用パターンを選べるかどうかは、前述のとおり社内にIPKOLへ英語かインドネシア語で入力できる人がいるかに左右されます。総額の考え方は特定技能の採用費用・相場、紹介手数料の水準は人材紹介手数料の相場で扱っています。
技能実習を修了した人をそのまま採る場合
技能実習からの移行では、インドネシア側の手続きが一段軽くなる場合があります。同庁のQ&Aは、技能実習2号または3号を良好に修了した方が技能実習先に引き続き特定技能外国人として雇用される場合には、受入機関がIPKOLに登録することをインドネシア当局は必ずしも求めていないものとされている、としています。ただし同じQ&Aは、インドネシアから来日する場合であっても日本国内に在留している場合であっても、SISKOP2MIにより移住労働者証(E-PMI)の発行を受けなければならないものとされている、としています。[12]省けるのはIPKOLで、SISKOP2MIとE-PMIは残ります。
⚠️ このとき、技能実習で付き合いのある認定送出機関が、そのまま特定技能の窓口になるとは限りません。出入国在留管理庁の解説は認定送出機関とP3MIを別のものとして書き分けており、特定技能側の手続きはSISKOP2MIと駐日インドネシア大使館が中心です。職業紹介を挟むならP3MIになります。
⚠️ 移行の途中で「特定活動」を挟む前提が、覚書に書き込まれています。 日本・インドネシア間の協力覚書は2021年9月10日に在インドネシア日本国大使館とインドネシア外務省の間で口上書が交換され、日本政府の約束の1つが修正されました。修正後の文言は「日本国内において技能実習2号又は3号を良好に修了し、同じ AO に申請し、同様の業務を行う SSW 候補者に対して、その SSW への移行プロセスにおいて、日本の関係法令に従い在留資格『特定活動』が交付されるよう確保すること」で、修正前は同じ箇所が「特定技能」でした。[9]⚠️ 覚書が約束しているのは移行の過程で「特定活動」が交付されるよう確保することまでで、どの案件で必要になるか、会社側に申請の作業が生じるかは書かれていません。実習の修了と特定技能の許可が同じ日に繋がらない場合があることだけ見込んでおき、具体の要否は行政書士などの専門家に確認してください。制度としての移行要件(試験免除の範囲など)は技能実習から特定技能への移行で解説しています。
制度の全体像は特定技能で外国人を採用するには、採用の進め方は特定技能の採用の流れにまとめています。
なお、ここまでの工程のうち入社後の生活支援(住居の確保、日本語学習の機会の提供、相談・苦情への対応など)は、受入企業が自社で行うか、登録支援機関に実施を委託するかを選べます(1号特定技能外国人支援計画の作成そのものは受入企業の義務です)。委託先の選び方と費用の見方は登録支援機関の選び方で扱っています。
まとめ
やることは4つです。①候補者像をベトナムの経験で置き換えない——特定技能1号の在留者を資格取得ルート別に見ると、インドネシアは試験ルートが60.7%で、技能実習ルートが多数派のベトナムと逆です(すでに在留している人の資格取得経路であって、いまの応募者構成そのものではありません)。海外=未経験者、国内=経験者という二分法も成り立ちません。②自社のルートを1つに決める——海外から直接採用、海外からP3MI経由、日本に在留する人の採用のどれか。工程と担い手は冒頭の表にまとめています。③在留資格の申請より前に置かれた工程を先に潰す——直接採用なら(インドネシア側が強く希望している)IPKOLへの求人登録と、締結した雇用契約書の登録。P3MI利用なら駐日インドネシア大使館の検証手続。国内在住者ならSISKOP2MIの登録と大使館での海外労働者登録です。④職業紹介を挟むなら、契約の連なりを確認する——自社が契約するのは日本側の職業紹介事業者で、その事業者がインドネシア側のP3MIと提携契約を結ぶ形です。技能実習の認定送出機関とは別の枠組みになります。
インドネシア側の運用は変わることがあります。採用を具体化する時点で、出入国在留管理庁の「インドネシアに関する情報」で最新の内容を確認してください。[10]同庁は、インドネシア側の手続きの問い合わせ先として駐日インドネシア共和国大使館(東京都品川区東五反田5-2-9/電話 03-3441-4201/メール consular@kbritokyo.jp)を案内しています。[1]IPKOLへの登録方法もこの窓口が案内先です。
よくあるご質問
- インドネシア人の出稼ぎは日本で増えているのですか?どのルートの候補者が多いですか?
- 増えています。厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によると、令和7年10月末時点でインドネシア国籍の外国人労働者は228,118人で、令和3年10月末(52,810人)の約4.3倍です(編集部算出=同じ推移表の2時点の比)。対前年増加率は34.6%で、外国人労働者全体の11.7%を上回ります。ただし在留資格別に見ると、インドネシア国籍の労働者の52.6%が技能実習で、特定技能は30.5%です(全国籍計は技能実習19.4%・特定技能11.1%)。⚠️ ただしこの構成比は「特定技能でどう入ってくるか」を示すものではありません(厚生労働省が数えているのは日本で事業主に雇用されている人で、永住者や留学生のアルバイトを含み、インドネシア国内の候補者を含みません)。入り方は出入国在留管理庁が国籍別・ルート別に公表しており、特定技能1号の在留者では、インドネシアは試験ルートが60.7%・技能実習ルートが39.1%です(2025年12月末時点)。技能実習ルートが多数派のベトナム(71.3%)や全国籍計(54.2%)と逆で、インドネシアでは試験合格者を採る道のほうが太いということです。⚠️ この数字が示すのは、すでに特定技能で在留している人がどう資格を得たかであって、いま応募してくる候補者の構成そのものではありません。またインドネシアが唯一の例外ではなく、同表では韓国・台湾・ネパール・ミャンマーなど7か国が試験ルートの比率でインドネシアを上回ります。⚠️ この6割は全分野の合計で、分野別に見ると介護は試験88.6%・漁業は技能実習69.9%と入れ替わります。⚠️「海外ルート=未経験者、国内ルート=経験者」という二分法は成り立ちません(フローチャートは海外2ルートの申請人にも帰国した実習修了者を挙げています)。なお2つの統計は集計主体も母集団も時点も違うため、足し引きしないでください。
- インドネシア人を特定技能で採用するとき、日本側の手続きとは別に何が必要ですか?
- インドネシア側の送出手続きが必要です。出入国在留管理庁は、インドネシアを「在留諸申請の際の提出書類は不要だが、相手国側に送出手続が定められている国」に分類しています。同庁は、これらは「あくまで相手国側の送出しのための手続であって、日本側の在留諸申請上の手続ではありません」と位置づけたうえで、参考として手続きの内容を公表しています。具体的には、海外から新たに受け入れる場合は労働市場情報システム(IPKOL)への求人登録または駐日インドネシア大使館の検証手続、そして本人による海外労働者管理システム(SISKOP2MI)への登録と移住労働者証(E-PMI)の取得です。日本に在留している方を採用する場合も、雇用契約書の原本を駐日インドネシア大使館に提出して確認を受けること、本人がSISKOP2MIへ登録して駐日大使館で海外労働者登録を行うことが求められるとされています。
- IPKOL(労働市場情報システム)への登録は必須ですか?
- 出入国在留管理庁の解説の表現は「必須」ではなく「強く希望しています」です。同庁は、P3MIを利用せずインドネシアから新たに受け入れる場合について「インドネシア政府が管理する求人・求職のための『労働市場情報システム(IPKOL)』に日本側受入機関が登録して求人することを、インドネシア側は強く希望しています」としています。同庁はあわせて、インドネシア側の手続を行ったことを証明する書類を在留諸申請で提出する必要はない、としています。つまりIPKOLへの登録は日本側の在留資格の審査に直接効く要件ではありません。ただし日本・インドネシア間の協力覚書では、IPKOLを通じてインドネシア側が求職者のデータベースを提供することと、日本政府が受入機関にIPKOLへの登録を周知することが両政府の約束として書かれています。登録できないことを理由に採用計画を止める必要はありませんが、候補者を探す入口としての意味はあります。登録方法は駐日インドネシア大使館へ問い合わせるよう案内されています。
- P3MIは技能実習の「認定送出機関」と同じものですか?
- 別のものです。出入国在留管理庁の解説は、P3MIをインドネシア語「Perusahaan Penempatan Pekerja Migran Indonesia」の略でインドネシア政府から許可を得た職業紹介事業者を指す用語と説明したうえで、注記で「P3MIは、インドネシア人労働者の海外下の送り出しを行っていますが、技能実習生の送り出しに関与するインドネシアの『認定送出機関』とは異なります」と明記しています。なお特定技能でP3MIを利用するかどうかは任意で、利用する場合も受入機関がP3MIと直接契約するのではなく、受入機関が日本側の職業紹介事業者と提携し、その事業者がP3MIと職業紹介の提携契約を結ぶ形とされています。
- 日本に在留しているインドネシア人を採用する場合、インドネシア側の手続きは不要になりますか?
- 減りますが、なくなりません。出入国在留管理庁の解説では、日本に在留する方を受け入れる場合も、締結した雇用契約書の原本を駐日インドネシア大使館に提出して確認を受けること、本人が在留資格変更許可申請を行う前にSISKOP2MIへ登録して移住労働者証(E-PMI)の発行を受けること、それを取得したうえで駐日インドネシア大使館で海外労働者登録手続を行うことが求められるとされています。同庁のフローチャートは、登録手続を完了した方には駐日インドネシア大使館が推薦状を発行するとしています。順序として、これらは在留資格変更許可申請より前に置かれている点に注意してください。
- 在留資格認定証明書が交付されれば、あとは待つだけですか?
- 待つだけにはなりません。出入国在留管理庁の運用要領は「在留資格認定証明書の有効期間は、交付日から3か月以内である」としています。海外から受け入れる場合、証明書の交付後は、本人によるSISKOP2MIへの登録とID番号の取得(インドネシア側の手続)、査証発給申請と発給(日本側の手続)、発給された査証のSISKOP2MIへの登録と出国前オリエンテーション等を経た移住労働者証(E-PMI)の発行(インドネシア側の手続)、上陸審査(日本側の手続)と続きます。この間、申請や登録を行うのは本人と両国の当局で、会社にできるのは案内と進捗の確認です。ただし会社の仕事がゼロになるわけではなく、日本・インドネシア間の協力覚書は受入機関が入国前説明会・入国後説明会を実施することを日本政府の約束として挙げているため、待つ間に準備しておく工程があります。各工程の所要日数は同庁の解説に示されていないため、必要な余裕を事前に計算することはできません(⚠️ 在留資格認定証明書の交付までの標準処理期間は同庁が別に公表していますが、インドネシア側の各工程の日数は本記事が当たった同庁の資料には見当たりませんでした・2026年8月14日時点)。証明書の交付を採用の完了と見なさないでください。
- 技能実習を修了したインドネシア人をそのまま特定技能で雇う場合も、IPKOLへの登録が必要ですか?
- 出入国在留管理庁のQ&Aは、技能実習2号または3号を良好に修了した方が技能実習先に引き続き特定技能外国人として雇用される場合には、受入機関がIPKOLに登録することをインドネシア当局は必ずしも求めていないものとされている、としています。ただし同じQ&Aは、インドネシアから来日する場合であっても日本国内に在留している場合であっても、インドネシア国籍の方が特定技能外国人として稼働するためにはSISKOP2MIにより移住労働者証(E-PMI)の発行を受けなければならないものとされている、としています。IPKOLは省ける場合があっても、SISKOP2MIとE-PMIは残る、という整理です。
出典・参考(一次情報)
- インドネシア国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ(出入国在留管理庁)
- 「外国人雇用状況」の届出状況表一覧(令和7年10月末時点)[別表1]国籍別・在留資格別外国人労働者数/[参考表]国籍別外国人労働者数の推移(厚生労働省)
- 「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】(令和7年10月末時点)(厚生労働省)
- 特定技能在留外国人数(詳細版)【第7表】(全分野)国籍・地域別 試験ルート・技能実習ルート別 特定技能1号在留外国人数(令和7年12月末現在)(出入国在留管理庁)
- インドネシア特定技能外国人に係る手続の流れについて(フローチャート/海外新規・P3MI利用・日本在留の3枚)(出入国在留管理庁)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領(在留資格認定証明書の有効期間)(出入国在留管理庁)
- インドネシア人移住労働者の送出・保護に関する統計(Data Penempatan dan Pelindungan Pekerja Migran Indonesia/月次報告の一覧)(インドネシア移住労働者保護省(KP2MI))
- 特定技能に関する二国間の協力覚書/特定技能に関する各国別の手続き(出入国在留管理庁)
- 在留資格「特定技能」を有する外国人に係る制度の適正な運用のための基本的枠組みに関する協力覚書(日・インドネシア/2019年6月25日署名・和文)(出入国在留管理庁)
- インドネシアに関する情報(手続の解説・フローチャート・Q&A・MOC・P3MIの一覧へのリンク)(出入国在留管理庁)
- 外国人労働者に関する制度概要(二国間取決めの署名状況・国籍地域別の在留者数・技能試験および日本語試験の実施国)(出入国在留管理庁)
- インドネシア側の手続に関するQ&A(手数料・郵送での手続・技能実習修了者の取扱い)(出入国在留管理庁)