インドネシア人の特定技能採用|3つのルートと手続きの違い
目次
「日本側の手続きは在留資格認定証明書と査証だと分かった。ではインドネシア側は、誰が何をするのか」——インドネシア人の特定技能採用で詰まりやすいのはここです。出入国在留管理庁の手続解説は、海外から新たに受け入れる場合と、日本に在留する方を受け入れる場合を別々に説明しており、前者はさらに直接採用とP3MI利用の2パターンに分かれます。つまり実務としては3つのルートがあり、工程も、動くのが会社か本人かも違います。
この記事の要点
- ルートは3つ — 海外から直接採用/海外からP3MI経由/日本に在留する人の採用。在留資格の申請を出すのは、海外ルートなら会社、国内ルートなら本人です。
- IPKOLは「必須」ではなく「強く希望」 — 出入国在留管理庁の解説の表現は「インドネシア側は強く希望しています」です。同庁はインドネシアを、在留諸申請での提出書類は不要な国に分類しています。
- 「インドネシアの送り出し機関」では探す先が変わる — 特定技能で相手になるのはP3MI(インドネシア政府から許可を得た職業紹介事業者)で、出入国在留管理庁は技能実習の「認定送出機関」とは別のものと明記しています。
- 国内在住者を採る場合も手続きは残る — 雇用契約書の原本の提出・本人によるSISKOP2MIへの登録・駐日インドネシア大使館での海外労働者登録の3工程が、在留資格変更許可申請より前に入ります。
- 在留資格認定証明書の3か月と競合する — 海外ルートでは、証明書の交付後にインドネシア側の工程が続きます。有効期間は交付日から3か月以内で、しかもこの後工程の速度は会社側で詰められません。
- IPKOLの入力は英語かインドネシア語 — 直接採用パターンを選べるかは、社内にこの2言語で求人内容を書ける人がいるかで決まります。
- IPKOL・SISKOP2MIの登録手続に手数料はかからないとされている — インドネシア当局によれば手数料がかからず、P3MIを利用する場合の駐日インドネシア大使館の確認手続も無料・3日程度と案内されています。
本記事は一般的な情報提供です。インドネシア側の手続きはインドネシア政府が定めるもので、運用は変わることがあります。最新の内容は出入国在留管理庁の「インドネシアに関する情報」および駐日インドネシア共和国大使館で確認してください。
自社はどのルートか——手続きは3つに分かれる
まず、自社がどのルートに当たるかを決めます。出入国在留管理庁が公表しているインドネシアの手続解説は、海外から新たに受け入れる場合と日本に在留する方を受け入れる場合を別々の章立てで説明しており、前者はさらに直接採用パターンとP3MI(インドネシアの職業紹介事業者)を利用するパターンに分かれます。[1]
3ルートを工程ごとに横に並べます。
インドネシア人を特定技能で採用する3ルートの工程と担い手
2026年8月10日確認
| 工程 | 海外から採る(直接採用) | 海外から採る(P3MIを利用) | 日本に在留する人を採る |
|---|---|---|---|
| 求人の出し方【尼】 | 受入機関がIPKOLに登録して求人(インドネシア側が強く希望) | 解説に記載なし(求人票〔Job Order〕は日本側の職業紹介事業者が駐日インドネシア大使館へ提出) | 解説に記載なし(説明は雇用契約の締結から始まる) |
| インドネシア側の事業者の関与 | なし(P3MIを使わない形) | 受入機関が日本側の職業紹介事業者と提携し、その事業者がP3MIと提携契約を締結 | なし |
| 駐日インドネシア大使館の事前確認【尼】 | 解説に記載なし | 日本側の職業紹介事業者が求人票・提携契約書・雇用契約書(暫定版)等を提出して確認を受ける(無料・3日程度) | 解説に記載なし |
| 面接 | 受入機関(解説に規律の記載なし) | 受入機関(P3MIの同席は可・P3MIによる選考や情報提供は不可) | 受入機関(解説に規律の記載なし) |
| 雇用契約の締結 | 受入機関(締結した契約書はIPKOLに電子データで登録) | 受入機関(締結した契約書の原本を駐日インドネシア大使館へ提出し確認を受ける) | 受入機関(締結した契約書の原本を駐日インドネシア大使館へ提出し確認を受ける) |
| 在留資格認定証明書の交付申請【日】 | 受入機関 | 受入機関 | 該当なし |
| 交付された認定証明書の渡し方【日】 | 受入機関が原本を本人へ郵送 | 受入機関が原本を本人へ郵送(日本側の職業紹介事業者やP3MIを介して郵送することも可能) | 該当なし |
| SISKOP2MIへの登録【尼】 | 本人(査証申請の前) | 本人(査証申請の前) | 本人(在留資格変更許可申請の前) |
| 登録が完了したときに発行されるもの【尼】 | インドネシア在外労働者保護庁のID番号 | インドネシア在外労働者保護庁のID番号 | 移住労働者証(E-PMI) |
| 駐日インドネシア大使館での海外労働者登録【尼】 | 解説に記載なし | 解説に記載なし | 本人(完了した者には同大使館が推薦状を発行) |
| 査証発給申請【日】 | 本人(ID番号の写し等を在インドネシア日本国大使館・総領事館へ提示) | 本人(ID番号の写し等を在インドネシア日本国大使館・総領事館へ提示) | 該当なし |
| 移住労働者証(E-PMI)が出る時点【尼】 | 発給された査証をSISKOP2MIに登録し、出国前オリエンテーション等の出国前手続を終えたとき | 発給された査証をSISKOP2MIに登録し、出国前オリエンテーション等の出国前手続を終えたとき | SISKOP2MIの登録が完了したとき(上の行) |
| 在留資格変更許可申請【日】 | 該当なし | 該当なし | 本人 |
| 入国・在留【日】 | 上陸審査で上陸条件に適合すると認められれば「特定技能」の在留資格が付与 | 上陸審査で上陸条件に適合すると認められれば「特定技能」の在留資格が付与 | 該当なし(変更が許可されれば完了) |
出典:出入国在留管理庁「インドネシア国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ」(海外から新たに受け入れる場合/日本に在留する方を受け入れる場合)および同庁のフローチャート。工程は同解説の記載順。【日】【尼】は同解説が各工程に付している区分(【日】=日本側の手続、【尼】=インドネシア側の手続)で、区分の表示がない工程は空欄。「解説に記載なし」は、同解説に該当する工程の記述が見当たらないことを示す。
社内の段取りとしては、この表の「受入機関」と書かれた行が自社の作業、「本人」と書かれた行が候補者に案内して進捗を確かめる作業です。とくに海外から採る2ルートは、在留資格認定証明書が交付されたあとの工程がほぼ本人側に移ります。出入国在留管理庁も、受入機関からも本人に登録するよう説明してほしいとしています。[1]
海外から呼び寄せるか、すでに日本にいる人を採るかで期間と費用の見通しがどう変わるかは、国籍によらない一般論として特定技能は国内採用と海外採用どっち?にまとめています。
IPKOL・SISKOP2MI・E-PMI——名前は3つ、出てくる場面は別
この3つの固有名詞は、登場する場面も、触る人も違います。IPKOLは求人の入口(直接採用パターンで受入機関が登録)、SISKOP2MIは本人の登録先(3ルート共通)、E-PMIはそこから発行される移住労働者証です。
IPKOL——「強く希望」であって、日本側の申請要件ではない
出入国在留管理庁の解説は、P3MIを利用せずインドネシアから新たに受け入れる場合について、次のように書いています。[1]
インドネシア政府が管理する求人・求職のための「労働市場情報システム(IPKOL)」に日本側受入機関が登録して求人することを、インドネシア側は強く希望しています。
「必須」と書かれることがありますが、一次資料の表現はこのとおりです。同庁はさらに、インドネシアを在留諸申請の際の提出書類は不要だが相手国側に送出手続が定められている国に分類し、これらの手続きについて「あくまで相手国側の送出しのための手続であって、日本側の在留諸申請上の手続ではありません」と位置づけています。[2]IPKOLに登録したことを証明する書類を入管へ出すわけではない、ということです。逆に、登録すれば日本側の審査が通りやすくなるという性質のものでもありません。
とはいえ、無視してよい手続きでもありません。IPKOLは日本・インドネシア間の協力覚書(2019年6月25日署名)に定義が置かれた仕組みで、同覚書は日本政府の約束として「求人の公表及び SSW 候補者のデータベースの入手のためのアクセスを得るため、IPKOL に登録するよう AO に周知すること」(SSW=特定技能外国人、AO=受入機関)を挙げています。[3]インドネシア側はIPKOLへの登録が無料であることから求職登録を促す広報をしており、日本での就職を希望する方はIPKOLにアクセスして求職先を検索するとのことです。[1]候補者を探す側の実利があるという建て付けです。
⚠️ 登録の入力は英語かインドネシア語です。 出入国在留管理庁のフローチャートは、システムへの登録はオンラインで「入力方法は英語とインドネシア語となります」としています。[4]つまり直接採用パターンを選ぶかどうかは、社内にこの2言語で求人内容を書ける人がいるかで実質的に決まります。いないなら、P3MIを利用するパターン(日本側の職業紹介事業者が間に入る形)が現実的な選択肢になります。
⚠️ 直接採用パターンでは、締結した雇用契約書もIPKOLに電子データで登録する必要があるとされています。[1]契約を結んで終わりではない点を、社内の手順に残しておいてください。
なお、この協力覚書は継続期間つきの文書で、更新を重ねながら運用されています。⚠️ ただし覚書の署名や更新は受け入れの要件ではありません——出入国在留管理庁は、覚書を作成した国でなければ受け入れができないものではない、としています。更新の状況を採用可否の条件として読まないでください(署名17か国の一覧と各国の更新状況は国別の手続き一覧にあります)。
SISKOP2MIとE-PMI——同じ書類が、ルートによって出る時点が違う
SISKOP2MI(海外労働者管理システム)へ登録するのは、受入機関ではなく本人です。ここは3ルートに共通しますが、登録が完了したときに何が発行されるかがルートで変わります。出入国在留管理庁の解説はそれぞれ次のように書き分けています。[1]
- 海外から新たに受け入れる場合 — 在留資格認定証明書を交付された方が、査証申請を行う前にSISKOP2MIへ登録します。「この登録が完了した際に、インドネシア政府から電子的にインドネシア在外労働者保護庁のID番号が発行される」ため、これを取得したうえで在インドネシア日本国大使館・総領事館へ査証申請を行います。移住労働者証(E-PMI)が発行されるのはその後で、発給された査証をSISKOP2MIに登録し、出国前オリエンテーションなど必要な出国前の手続を終えたときです。
- 日本に在留する方を受け入れる場合 — 在留資格変更許可申請を行う前に本人が登録し、「この登録が完了した際に、インドネシア政府から電子的にインドネシア在外労働者保護庁の移住労働者証(E-PMI)が発行される」とされています。登録完了の時点でE-PMIが出る、という順序です。
つまり海外ルートでは「ID番号 → 査証 → E-PMI」、国内ルートでは「E-PMI → 大使館での海外労働者登録 → 在留資格変更許可申請」。同じ名前の書類を同じタイミングで待っていると、待つ場所を間違えます。
⚠️ 海外ルートでは、この後工程が在留資格認定証明書の有効期間と競合します。 出入国在留管理庁の運用要領は「在留資格認定証明書の有効期間は、交付日から3か月以内である」としています。[5]証明書が交付されてから入国までは、SISKOP2MIへの登録とID番号の発行〔インドネシア側〕→ 査証発給申請と発給〔日本側〕→ 発給された査証のSISKOP2MIへの登録と出国前手続を経たE-PMIの発行〔インドネシア側〕→ 上陸審査〔日本側〕 と、両国の工程が交互に入ります。[1]この連なりが3か月に収まらなければ、証明書は取れているのに入国できません。
しかもこの連なりの速度は、会社側では詰められません。証明書の交付後に動くのは本人と両国の当局で、受入機関に残るのは案内と進捗の確認だけです。出国前の説明会にいたっては、協力覚書でインドネシア政府の実施事項(「インドネシアで選ばれた SSW 候補者に対する出国前説明会を実施すること」)として置かれています。[3]⚠️ 各工程の所要日数は、出入国在留管理庁の解説には示されていません(示されているのはP3MI利用時の大使館の確認手続=3日程度だけです)。したがって余裕がどれだけ要るかは事前に計算できません。証明書の交付を採用の完了と見なさず、交付の時期そのものを後ろ倒しにできないかを先に検討するのが安全側です。
⚠️ 旧称で書かれた資料に当たることがあります。 2019年署名の協力覚書は同種のシステムを「SISKOTKLN」の名称で定義しており[3]、現行の手続解説は「SISKOP2MI」で統一されています。[1]両者の関係(改称か後継か)を示す公的な告知は確認できなかったため、本記事は現行の手続解説の名称に従っています。手続きを進めるときの名称はSISKOP2MIです。
P3MIは技能実習の「送り出し機関」とは別のもの
「インドネシアの送り出し機関を探せばいい」と考えると、探す先を間違えます。特定技能で相手になるのはP3MIで、出入国在留管理庁の解説は注記でこう明記しています。[1]
P3MIとは、インドネシア政府から許可を得た職業紹介事業者を指す用語で、インドネシア語の「Perusahaan Penempatan Pekerja Migran Indonesia」の略語です。なお、P3MIは、インドネシア人労働者の海外下の送り出しを行っていますが、技能実習生の送り出しに関与するインドネシアの「認定送出機関」とは異なります。
検索で出てくる「インドネシアの送り出し機関」の一覧は、技能実習の認定送出機関やその関連団体であることがあります。制度が違えば当たる先も違います。 認定を受けたP3MIの名称・連絡先は、インドネシア労働省が公表する一覧を確認するよう案内されており、出入国在留管理庁の「インドネシアに関する情報」ページからその一覧へのリンクが張られています。[6]⚠️ 同庁は、相手国政府からの情報提供のタイミング等により掲載情報が最新でない可能性があるとしています。[1]
受入企業がP3MIと直接契約するのではない
P3MIの利用は任意ですが、使う場合の契約の形は決まっています。出入国在留管理庁の解説によれば、受入機関は日本側の職業紹介事業者と提携し、さらにその職業紹介事業者がP3MIとの間で職業紹介に関する提携に係る契約を締結する必要があるとのことです。そのうえで、日本側の職業紹介事業者が求人票(Job Order)に加え、P3MIとの提携契約書および雇用契約書(暫定版)等を駐日インドネシア大使館に提出し、確認を受けます。この手続きは費用が無料で、3日程度を要するとのことです。手続きが終わると、提出した書類は日本側の職業紹介事業者に返却されます。[1]
⚠️ 面接は必ず受入機関が行う必要があるとされています。同庁の解説は、P3MIの同席は可能としつつ、P3MIが独自の基準で申請人をどの受入機関と面接させるかを選考したり、受入機関に申請人の情報を提供したりすることはできないと明記しています。[1]「候補者を絞り込んで連れてきてもらう」形は想定されていません。
人材の紹介を受けるときの職業安定法上の注意点(求職者の人選はあっせんに当たり、日本の職業紹介事業者の許可が要るという整理)は、国をまたいで共通なので特定技能の対象国と国別の手続きで扱っています。
なぜこの建て付けなのか
仲介の形をここまで細かく決めているのは、悪質な仲介事業者(ブローカー)の介在を抑える意図があるからです。出入国在留管理庁が公表している制度概要は、二国間取決めで両国が共有する情報に「保証金の徴収、違約金の定め」に関するものを含むとしています。[7]インドネシア側も、IPKOLの活用が悪質なブローカー対策にも資するとしているとのことです。[1]
⚠️ 相手先の選定で迷ったときは、手数料の安さより、この枠組みに沿った契約関係になっているか(日本側の職業紹介事業者を介しているか、面接を自社が行う建て付けか)を先に確認するほうが、後戻りが少なくなります。
日本にいるインドネシア人を採用する場合、手続きは減るのか
減りますが、消えません。出入国在留管理庁の解説が示す順序は次のとおりで、インドネシア側の工程が在留資格変更許可申請より前に3つ入ります。[1]
雇用契約の締結と、雇用契約書の原本の提出
特定技能に係る雇用契約を締結します。締結した雇用契約書(原本)は、駐日インドネシア大使館に提出し確認を受ける必要があるとのことです。提出は大使館へ直接持参するほか、切手を貼付した返信用封筒等を添付して送付することも可能とされています。
本人がSISKOP2MIへ登録し、E-PMIの発行を受ける
在留資格変更許可申請を行う前に、日本で就労するインドネシア国籍の方自らがSISKOP2MIにオンラインで登録しなければならないとされています。登録が完了した際に移住労働者証(E-PMI)が発行されます。
駐日インドネシア大使館で海外労働者登録手続を行う
E-PMIを取得したうえで、駐日インドネシア大使館に海外労働者登録手続を行う必要があるとされています。出入国在留管理庁のフローチャートは、インドネシア政府が「日本に在留する技能実習生や留学生などの中長期在留者であるインドネシア国籍の方」について同大使館での登録手続を求めるとしたうえで、登録手続を完了した者には同大使館が推薦状を発行するとしています。[4]同庁は、受入機関からも本人に、登録と大使館での手続について相談するよう説明してほしいとしています。
⚠️ この推薦状は大使館の運用にとどまらず、日本・インドネシア間の協力覚書にも根拠が置かれています。同覚書は日本政府の約束として「AO に対し、現在日本に在留している SSW 候補者は駐日インドネシア使節団から在留資格変更の推薦を取得することが求められることを周知すること」を挙げています(SSW=特定技能外国人、AO=受入機関)。[3]本人に伝えるのは会社の役割として想定されている、ということです。
在留資格変更許可申請
本人が地方出入国在留管理官署に対し、「特定技能」への在留資格変更許可申請を行います。変更が許可されれば一連の手続は完了です。
⚠️ 効くのは順序です。 SISKOP2MIへの登録と大使館での海外労働者登録を「あとでまとめて」に回すと、在留資格変更許可申請を出す段になって止まります。東京から遠い場合の懸念については、同庁のQ&Aが、駐日インドネシア大使館は郵送での手続を受け付けているとのことだとしたうえで、詳細は同大使館に確認するよう案内しています。[8]
在留資格変更許可申請そのものに必要な書類は特定技能の申請に必要な書類で扱っています。在留資格の申請書類の作成や申請取次は行政書士などの専門家の領域です。個別の事案は行政書士などの専門家と連携して進めてください。
インドネシアだから変わること、変わらないこと
在留資格「特定技能」の要件そのものは、国籍では変わりません。上陸許可基準に旅券の発行国に関する要件があり、法務省告示が除外しているのは1か国だけです(インドネシアは含まれません)。この告示の内容は特定技能の対象国と国別の手続きで解説しています。
国籍で実際に変わるのは、ここまで見たインドネシア側の手続きと、次の点です。
- 技能試験の受験資格の年齢 — 分野によっては、受験できる年齢にインドネシア国籍だけ別の下限が置かれています。海外から採る場合は候補者の年齢で逆算が変わるため、自社の分野の実施要領を必ず確認してください。分野ごとの条件は特定技能の試験、介護は介護分野の試験、農業は農業で特定技能の外国人を採用するにまとめています。
- 海外で試験が実施されている分野の顔ぶれ — 出入国在留管理庁の制度概要によると、漁業と木材産業の技能試験の海外実施国はインドネシアの1か国のみです(2025年12月末時点・速報値)。[7]この2分野で海外から採るなら、実質的にインドネシアが対象になります(漁業で特定技能の外国人を採用する・木材産業で特定技能の外国人を採用する)。
- 候補者の母集団の厚み — 同資料の国籍・地域別では、インドネシアは86,955人・構成比22.3%でベトナムに次ぐ2位です(2025年12月末時点・速報値/特定技能1号と2号の合計)。[7]分野別・都道府県別の内訳と1号だけの数値は特定技能外国人の人数統計にあります。
- 介護には別ルートがある — 介護分野では、特定技能とは別にEPA(経済連携協定)にもとづく受け入れの枠組みがあります。ルートの比較は特定技能で介護の外国人を採用するで扱っています。
- 入社後に効くのは制度ではなく準備 — 宗教や生活習慣への職場での配慮は、採否の判断材料ではなく受け入れ準備の材料です。インドネシア人の国民性と職場での配慮で、公的資料で確認できる範囲と、職場で決めておくことを整理しています。
インドネシア側の手続きに費用はかかるか
インドネシア固有の費用は、出入国在留管理庁の公表資料の範囲では見当たりません。 同庁の「インドネシア側の手続に関するQ&A」は、IPKOLやSISKOP2MIによる登録手続等の手数料について「インドネシア当局によれば、手数料はかからないとのことです」としています。[8]P3MIを利用する場合の駐日インドネシア大使館の検証手続も、費用は無料で3日程度とされています。[1]
⚠️ ただし、インドネシアだから安く済む、とは言えません。上の3ルートのうち、P3MIを利用するパターンでは日本側の職業紹介事業者が間に入るため、その紹介手数料が乗ります。費用差を生むのは国籍ではなくルートの選び方で、直接採用パターンを選べるかどうかは、前述のとおり社内にIPKOLへ英語かインドネシア語で入力できる人がいるかに左右されます。総額の考え方は特定技能の採用費用・相場、紹介手数料の水準は人材紹介手数料の相場で扱っています。
技能実習を修了した人をそのまま採る場合
技能実習からの移行では、インドネシア側の手続きが一段軽くなる場合があります。同庁のQ&Aは、技能実習2号または3号を良好に修了した方が技能実習先に引き続き特定技能外国人として雇用される場合には、受入機関がIPKOLに登録することをインドネシア当局は必ずしも求めていないものとされている、としています。ただし同じQ&Aは、インドネシアから来日する場合であっても日本国内に在留している場合であっても、SISKOP2MIにより移住労働者証(E-PMI)の発行を受けなければならないものとされている、としています。[8]省けるのはIPKOLで、SISKOP2MIとE-PMIは残ります。
⚠️ このとき、技能実習で付き合いのある認定送出機関が、そのまま特定技能の窓口になるとは限りません。出入国在留管理庁の解説は認定送出機関とP3MIを別のものとして書き分けており、特定技能側の手続きはSISKOP2MIと駐日インドネシア大使館が中心です。職業紹介を挟むならP3MIになります。
⚠️ 移行の途中で「特定活動」を挟む前提が、覚書に書き込まれています。 日本・インドネシア間の協力覚書は2021年9月10日に在インドネシア日本国大使館とインドネシア外務省の間で口上書が交換され、日本政府の約束の1つが修正されました。修正後の文言は「日本国内において技能実習2号又は3号を良好に修了し、同じ AO に申請し、同様の業務を行う SSW 候補者に対して、その SSW への移行プロセスにおいて、日本の関係法令に従い在留資格『特定活動』が交付されるよう確保すること」で、修正前は同じ箇所が「特定技能」でした。[3]⚠️ 覚書が約束しているのは移行の過程で「特定活動」が交付されるよう確保することまでで、どの案件で必要になるか、会社側に申請の作業が生じるかは書かれていません。実習の修了と特定技能の許可が同じ日に繋がらない場合があることだけ見込んでおき、具体の要否は行政書士などの専門家に確認してください。制度としての移行要件(試験免除の範囲など)は特定技能・技能実習・育成就労の違いで解説しています。
制度の全体像は特定技能で外国人を採用するには、採用の進め方は特定技能の採用の流れにまとめています。
まとめ
やることは3つです。①自社のルートを1つに決める——海外から直接採用、海外からP3MI経由、日本に在留する人の採用のどれか。工程と担い手は冒頭の表にまとめています。②在留資格の申請より前に置かれた工程を先に潰す——直接採用ならIPKOLへの求人登録と雇用契約書の登録、P3MI利用なら駐日インドネシア大使館の検証手続、国内在住者ならSISKOP2MIの登録と大使館での海外労働者登録です。③職業紹介を挟むなら、契約の連なりを確認する——自社が契約するのは日本側の職業紹介事業者で、その事業者がインドネシア側のP3MIと提携契約を結ぶ形です。技能実習の認定送出機関とは別の枠組みになります。
インドネシア側の運用は変わることがあります。採用を具体化する時点で、出入国在留管理庁の「インドネシアに関する情報」で最新の内容を確認してください。[6]同庁は、インドネシア側の手続きの問い合わせ先として駐日インドネシア共和国大使館(東京都品川区東五反田5-2-9/電話 03-3441-4201/メール [email protected])を案内しています。[1]IPKOLへの登録方法もこの窓口が案内先です。
「自社の場合はどのルートで進めるべきか」「何から着手すればよいか」を相談したい場合は、条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します(提携先のサービスをご紹介しています)。
よくあるご質問
- インドネシア人を特定技能で採用するとき、日本側の手続きとは別に何が必要ですか?
- インドネシア側の送出手続きが必要です。出入国在留管理庁は、インドネシアを「在留諸申請の際の提出書類は不要だが、相手国側に送出手続が定められている国」に分類しています。同庁は、これらは「あくまで相手国側の送出しのための手続であって、日本側の在留諸申請上の手続ではありません」と位置づけたうえで、参考として手続きの内容を公表しています。具体的には、海外から新たに受け入れる場合は労働市場情報システム(IPKOL)への求人登録または駐日インドネシア大使館の検証手続、そして本人による海外労働者管理システム(SISKOP2MI)への登録と移住労働者証(E-PMI)の取得です。日本に在留している方を採用する場合も、雇用契約書の原本を駐日インドネシア大使館に提出して確認を受けること、本人がSISKOP2MIへ登録して駐日大使館で海外労働者登録を行うことが求められるとされています。
- IPKOL(労働市場情報システム)への登録は必須ですか?
- 出入国在留管理庁の解説の表現は「必須」ではなく「強く希望しています」です。同庁は、P3MIを利用せずインドネシアから新たに受け入れる場合について「インドネシア政府が管理する求人・求職のための『労働市場情報システム(IPKOL)』に日本側受入機関が登録して求人することを、インドネシア側は強く希望しています」としています。同庁はあわせて、インドネシア側の手続を行ったことを証明する書類を在留諸申請で提出する必要はない、としています。つまりIPKOLへの登録は日本側の在留資格の審査に直接効く要件ではありません。ただし日本・インドネシア間の協力覚書では、IPKOLを通じてインドネシア側が求職者のデータベースを提供することと、日本政府が受入機関にIPKOLへの登録を周知することが両政府の約束として書かれています。登録できないことを理由に採用計画を止める必要はありませんが、候補者を探す入口としての意味はあります。登録方法は駐日インドネシア大使館へ問い合わせるよう案内されています。
- P3MIは技能実習の「認定送出機関」と同じものですか?
- 別のものです。出入国在留管理庁の解説は、P3MIをインドネシア語「Perusahaan Penempatan Pekerja Migran Indonesia」の略でインドネシア政府から許可を得た職業紹介事業者を指す用語と説明したうえで、注記で「P3MIは、インドネシア人労働者の海外下の送り出しを行っていますが、技能実習生の送り出しに関与するインドネシアの『認定送出機関』とは異なります」と明記しています。なお特定技能でP3MIを利用するかどうかは任意で、利用する場合も受入機関がP3MIと直接契約するのではなく、受入機関が日本側の職業紹介事業者と提携し、その事業者がP3MIと職業紹介の提携契約を結ぶ形とされています。
- 日本に在留しているインドネシア人を採用する場合、インドネシア側の手続きは不要になりますか?
- 減りますが、なくなりません。出入国在留管理庁の解説では、日本に在留する方を受け入れる場合も、締結した雇用契約書の原本を駐日インドネシア大使館に提出して確認を受けること、本人が在留資格変更許可申請を行う前にSISKOP2MIへ登録して移住労働者証(E-PMI)の発行を受けること、それを取得したうえで駐日インドネシア大使館で海外労働者登録手続を行うことが求められるとされています。同庁のフローチャートは、登録手続を完了した方には駐日インドネシア大使館が推薦状を発行するとしています。順序として、これらは在留資格変更許可申請より前に置かれている点に注意してください。
- 在留資格認定証明書が交付されれば、あとは待つだけですか?
- 待つだけにはなりません。出入国在留管理庁の運用要領は「在留資格認定証明書の有効期間は、交付日から3か月以内である」としています。海外から受け入れる場合、証明書の交付後は、本人によるSISKOP2MIへの登録とID番号の取得(インドネシア側の手続)、査証発給申請と発給(日本側の手続)、発給された査証のSISKOP2MIへの登録と出国前オリエンテーション等を経た移住労働者証(E-PMI)の発行(インドネシア側の手続)、上陸審査(日本側の手続)と続きます。この間に会社が動く工程はなく、案内と進捗の確認が中心になります。各工程の所要日数は同庁の解説に示されていないため、必要な余裕を事前に計算することはできません。証明書の交付を採用の完了と見なさないでください。
- 技能実習を修了したインドネシア人をそのまま特定技能で雇う場合も、IPKOLへの登録が必要ですか?
- 出入国在留管理庁のQ&Aは、技能実習2号または3号を良好に修了した方が技能実習先に引き続き特定技能外国人として雇用される場合には、受入機関がIPKOLに登録することをインドネシア当局は必ずしも求めていないものとされている、としています。ただし同じQ&Aは、インドネシアから来日する場合であっても日本国内に在留している場合であっても、インドネシア国籍の方が特定技能外国人として稼働するためにはSISKOP2MIにより移住労働者証(E-PMI)の発行を受けなければならないものとされている、としています。IPKOLは省ける場合があっても、SISKOP2MIとE-PMIは残る、という整理です。
出典・参考(一次情報)
- インドネシア国籍の方々を特定技能外国人として受け入れるまでの手続の流れ(出入国在留管理庁)
- 特定技能に関する二国間の協力覚書/特定技能に関する各国別の手続き(出入国在留管理庁)
- 在留資格「特定技能」を有する外国人に係る制度の適正な運用のための基本的枠組みに関する協力覚書(日・インドネシア/2019年6月25日署名・和文)(出入国在留管理庁)
- インドネシア特定技能外国人に係る手続の流れについて(フローチャート/海外新規・P3MI利用・日本在留の3枚)(出入国在留管理庁)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領(在留資格認定証明書の有効期間)(出入国在留管理庁)
- インドネシアに関する情報(手続の解説・フローチャート・Q&A・MOC・P3MIの一覧へのリンク)(出入国在留管理庁)
- 外国人労働者に関する制度概要(二国間取決めの署名状況・国籍地域別の在留者数・技能試験および日本語試験の実施国)(出入国在留管理庁)
- インドネシア側の手続に関するQ&A(手数料・郵送での手続・技能実習修了者の取扱い)(出入国在留管理庁)