介護の人手不足はなぜ起きるか|現状データと解決策の選び方
目次
「募集をかけても応募が来ない」——介護の人手不足は、規模としてはすでに国の推計に数字で置かれています。令和8年1月23日に閣議決定された介護分野の分野別運用方針は、令和10年度に必要となる就業者数を2,357,300人と推計し、同年度に見込まれる人手不足を259,300人程度としています。[1]
この記事の要点
- 不足の規模は国が数字で置いている — 令和10年度に259,300人程度。介護分野の有効求人倍率は令和6年度で4.08倍、都道府県別でも全都道府県が2.00倍以上です。
- 足りない理由は「辞めるから」より「入ってこない」 — 離職率は12.4%で横ばい(令和元年度の15.4%からは低下)、採用率は14.6%と低い水準のままです。
- 国は「生産性向上と国内人材でも埋まらない残り」を外国人の受入れ見込数として置いた — 緩和できるのは98,600人程度で、残る160,700人が受入れ見込数です。
- 打ち手は「採用に効く」ものと「定着に効く」ものが別 — 採用・定着の方策では賃金水準の向上(採用38.4%)と休暇の取りやすさ(定着57.9%)が最上位。採用活動まで含めると、効果率が最も高いのは有料職業紹介所の活用53.4%です。
- 同じ打ち手でもサービス系型で返り方が違う — 介護テクノロジーが効いたと答えた割合は、施設系(入所型)で昼76.8%・夜74.2%。施設系(通所型)の夜間は34.5%です。
⚠️ この記事が扱うのは人手不足の現状と、打ち手をどう選ぶかまでです。介護で外国人を受け入れるときの対象施設・試験・4つの採用ルートは介護で外国人を受け入れる条件と採用ルートにまとめています。
本記事は一般的な情報提供です。制度の数値・要件は変動するため、受け入れを具体的に検討する段階では、出入国在留管理庁および厚生労働省の最新の運用方針で確認してください。
介護の人手不足は、いまどのくらいか
国が置いている不足の数字は、令和10年度で259,300人程度です。介護分野の分野別運用方針は、厚生労働省が公表した第9期介護保険事業計画に基づく必要数をもとに、令和10年度に必要となる就業者数を2,357,300人と推計しました。そこから見込まれる不足のうち、生産性向上と国内人材確保の取組による緩和分(98,600人程度)を差し引いてもなお160,700人程度が残る、という置き方です。[1]
労働市場の指標も同じ向きです。介護分野の有効求人倍率は令和6年度で4.08倍。地域によって高齢化の状況は異なるものの、同方針は都道府県別でみても全都道府県が2.00倍以上で「依然として高い水準にある」としています。[1]
必要数は増える一方、実際の職員数は令和5年度に減った
必要とされる人数の見通しは増えているのに、実際の職員数は令和5年度に減少へ転じました。 厚生労働省が令和6年7月12日に公表した第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数によると、都道府県が推計した必要数の集計は2026年度に約240万人・2040年度に約272万人です(2022年度の約215万人と比べ、それぞれ約25万人増・約57万人増)。[2]
実際の人数は別の系列で公表されています。同省が令和7年12月19日に公表した介護職員数の推移では、令和6年10月1日時点の介護職員数は2,126,227人(対前年+487人)でした。[3]
| 介護職員数(各年度10月1日現在・常勤非常勤を含めた実人員数) | 職員数 |
|---|---|
| 令和元年度 | 210.6万人 |
| 令和2年度 | 211.9万人 |
| 令和3年度 | 214.9万人 |
| 令和4年度 | 215.4万人 |
| 令和5年度 | 212.6万人 |
| 令和6年度 | 212.6万人(2,126,227人・対前年+487人) |
厚生労働省の資料は、この系列に「介護職員数は令和5年度に初の減少」と注記しています。[4]必要数の見通しが2026年度に約240万人という水準で置かれている一方、実際の人数はその手前で足踏みしている、という2つの事実が同時に立っています。
⚠️ 「2040年度に約57万人不足」ではありません。 約57万人は2040年度の必要数272万人と2022年度の約215万人との差=必要数の増加分で、不足数として推計された値ではありません(同様に、2026年度の約25万人も増加分です)。[2]不足の推計値は次に見る分野別運用方針の側にあります。
需要の側も同じ図に載っています。同じ別紙が併載する要介護(要支援)認定者数は、令和元年度の667万人から令和6年度は720万人へ増えました(出典=厚生労働省「介護保険事業状況報告」)。[3]⚠️ 認定者数と職員数は別々の統計です=読めるのは向きだけで、支えられる側が増え、支える側が減ったという2本の線の方向です。
現場の不足感は事業所の65.8%
従業員が不足していると答えた事業所は65.8%で、前年度の65.2%から上がりました。 公益財団法人介護労働安定センターが令和8年7月29日に公表した令和7年度介護労働実態調査によると、事業所全体の従業員の過不足感は「大いに不足」11.1%・「不足」20.9%・「やや不足」33.8%の合計で65.8%です。「大いに不足」と「不足」だけでも32.0%にのぼります。[5]
職種別では訪問介護員が82.9%と調査対象職種のうちで最も高く、介護職員は69.8%です。⚠️ 訪問介護員の合計は前年度83.4%から0.5ポイント下がりました。ただし同調査は、訪問介護員でも「大いに不足・不足の合計=深刻な側は上昇している」と書いています=改善したとは読めません。[5]訪問系サービスの不足の深さと、そこで外国人が従事するときの条件は訪問系サービスで従事させるときの条件で扱っています。
⚠️ この記事には人数が何通りも出てきます。どれも別のものを数えた値で、引き算はできません。 「必要数240万人−実際の職員数212.6万人=27万人不足」という計算は成立しません——必要数は市町村が第9期介護保険事業計画に位置付けたサービス見込み量等に基づく都道府県の推計値の集計(足下を2022年度の約215万人として算出)で、実際の職員数は介護サービス施設・事業所調査による各年度10月1日時点の実人員数です。推計の前提も基準日も調査も違います。[2][3]
本記事が不足の数字として使うのは、分野別運用方針の259,300人程度(令和10年度)に一本化します。第9期の必要数と実際の職員数は、その横に並べて向きを読むための材料として扱います。
なぜ足りないのか——入口の細さと、出口で起きていること
離職率は下がってきたのに、採用率は低い水準のままです。 令和7年度介護労働実態調査によると、訪問介護員と介護職員を合わせた2職種の離職率は12.4%で横ばいの一方、採用率は14.6%にとどまりました。採用率は2年ぶりの上昇ですが、上昇幅は0.3ポイントで、昨年度に続き低い水準です。[5]長い目でみれば下がってきた指標です。分野別運用方針は、介護分野の離職率が令和元年度の15.4%から令和6年度に12.4%へ減少したことを、これまでの取組の成果として挙げています。[1]
離職率は改善しているのに、不足していると答えた事業所は増えている。「定着が悪いから足りない」という説明だけでは、いまの数字は説明できません。
採用率14.6%が離職率12.4%を上回っているのに、職員数はほぼ横ばい(令和6年10月1日時点で対前年+487人)です。 率の側では、同調査が採用率と離職率の差を増減率2.2%として公表しています。[5]それでも実人員が増えないのは、2つが別の調査の別の指標だからです。採用率・離職率は介護労働安定センターの調査に回答した事業所の在籍者数(期首)を分母とする率、職員数は厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査による全数推計の実人員数[3]で、母集団も算出方法も違います。⚠️ 率の増減率と実人員数の増減を、同じものとして扱うことはできません。
そのうえで、事業所の不足感は前年度から0.6ポイント上がりました(65.2%→65.8%)。増えているのは必要とされる人数の側でもあります(上の要介護認定者数)。回答事業所のなかでは人が動いていても、必要量の増加に追いつかない——これが数字の並びから読める形です。
不足の原因は事業所の中だけにもありません。方針は「高齢化の進展等に伴って増大を続ける介護サービス需要」を受け入れの必要性の前提に置いています。[1]そして採る側は、介護の外の労働市場と競合しています。厚生労働省は「介護関係職種は他産業と比較し有効求人倍率が高く、人材確保に課題を抱える中、昨今の賃上げで先行する他産業と人材の引き合いとなっている状況にあり、介護分野の人材確保が大変厳しい状況にある」と整理しました。[4]
同じ資料の令和7年4月の値でみると、介護関係職種の全国平均は3.77倍・職業計の全国平均は1.08倍(いずれもパートタイムを含む常用)。[4]介護の募集は「求職者1人あたり3件以上の求人が出ている」市場で行うことになります(4.08倍は令和6年度の年度値、3.77倍は令和7年4月の月次の値です)。
地域差はこの平均より大きく開きます。 同じ資料の都道府県別グラフ(令和7年4月)では、介護関係職種の有効求人倍率は最も高い東京都で7.39倍、最も低い岩手県で1.92倍。全国平均3.77倍を超えるのは、東京都のほか奈良県4.96倍・愛知県4.44倍・岐阜県4.32倍・大阪府4.26倍・石川県4.25倍・愛媛県4.12倍・埼玉県4.11倍・岡山県4.06倍などです(職業計の全国平均は1.08倍)。[4]同じ「介護の採用」でも、地域によって競争の激しさが4倍近く違います。
「今後さらに厳しくなるのはどこか」も県名つきで公表されています。 同省の資料は75歳以上人口の2015年→2025年の増加倍率を示しており、埼玉県1.56倍・千葉県1.52倍・神奈川県1.48倍・愛知県1.45倍・大阪府1.44倍が上位で、東京都は1.33倍(11位)、山形県1.10倍・秋田県1.11倍・鹿児島県1.11倍は緩やかです(全国1.34倍)。[6]⚠️ 需要の伸び方は都市部と地方で向きが逆です——都市部は「これから急に増える」側、地方は「もともと多く、増え方は緩やか」側。採用計画を何年分で組むかは、この差で変わります。
自県で何人増やす必要があるか(47都道府県)
必要数は都道府県ごとに公表されています。 第9期介護保険事業計画に基づく必要数の別紙は、47都道府県それぞれについて 2022年度の介護職員数・2026年度と2040年度の必要数・「現状推移を見込んだ介護職員数」 を並べています。[2]下表の右2列は、必要数から「現状推移を見込んだ職員数」を引いた差(編集部算出=同一資料内の引き算)です。
都道府県別の介護職員の必要数と、現状推移との差
2026年度・2040年度=都道府県が行った推計(令和6年7月12日公表)/2022年度=介護サービス施設・事業所調査
| 都道府県 | 2022年度の職員数 | 2026年度の必要数 | 2026年度の現状推移 | 差(2026年度) | 差(2040年度) |
|---|---|---|---|---|---|
| 北海道 | 100,523 | 113,701 | 93,141 | 20,560 | 56,057 |
| 青森県 | 28,091 | 32,150 | 26,968 | 5,182 | 12,043 |
| 岩手県 | 24,466 | 26,052 | 23,822 | 2,230 | 5,987 |
| 宮城県 | 35,059 | 37,488 | 35,686 | 1,802 | 7,055 |
| 秋田県 | 22,878 | 23,546 | 22,157 | 1,389 | 4,684 |
| 山形県 | 20,856 | 21,394 | 19,810 | 1,584 | 5,809 |
| 福島県 | 33,401 | 35,638 | 33,431 | 2,207 | 7,504 |
| 茨城県 | 43,548 | 48,065 | 44,224 | 3,841 | 12,241 |
| 栃木県 | 27,057 | 35,271 | 27,196 | 8,075 | 14,700 |
| 群馬県 | 38,481 | 40,428 | 39,271 | 1,157 | 9,341 |
| 埼玉県 | 98,862 | 121,799 | 104,724 | 17,075 | 30,783 |
| 千葉県 | 88,960 | 106,260 | 95,414 | 10,846 | 28,266 |
| 東京都 | 181,690 | 212,525 | 184,367 | 28,158 | 73,473 |
| 神奈川県 | 145,016 | 168,664 | 151,616 | 17,048 | 43,820 |
| 新潟県 | 41,795 | 43,469 | 41,697 | 1,772 | 10,600 |
| 富山県 | 19,325 | 22,463 | 19,543 | 2,920 | 4,888 |
| 石川県 | 19,931 | 22,750 | 21,672 | 1,078 | 1,854 |
| 福井県 | 13,693 | 12,349 | 12,158 | 191 | -72 |
| 山梨県 | 14,072 | 15,072 | 14,476 | 596 | 1,455 |
| 長野県 | 38,095 | 41,174 | 39,528 | 1,646 | 8,238 |
| 岐阜県 | 33,739 | 36,434 | 34,618 | 1,816 | 8,639 |
| 静岡県 | 55,567 | 59,061 | 56,688 | 2,373 | 10,593 |
| 愛知県 | 104,845 | 128,461 | 110,281 | 18,180 | 33,516 |
| 三重県 | 32,584 | 34,344 | 33,086 | 1,258 | 5,606 |
| 滋賀県 | 20,549 | 22,275 | 20,387 | 1,888 | 9,051 |
| 京都府 | 42,668 | 45,854 | 44,444 | 1,410 | 5,849 |
| 大阪府 | 193,974 | 215,481 | 191,186 | 24,295 | 61,877 |
| 兵庫県 | 96,748 | 101,585 | 99,674 | 1,911 | 13,902 |
| 奈良県 | 26,840 | 30,907 | 25,635 | 5,272 | 12,458 |
| 和歌山県 | 23,992 | 24,320 | 23,925 | 395 | 3,263 |
| 鳥取県 | 10,802 | 11,787 | 10,393 | 1,394 | 2,954 |
| 島根県 | 17,077 | 17,688 | 16,935 | 753 | 3,391 |
| 岡山県 | 36,179 | 36,922 | 35,869 | 1,053 | 4,440 |
| 広島県 | 53,239 | 53,732 | 53,480 | 252 | 10,039 |
| 山口県 | 28,124 | 31,108 | 28,462 | 2,646 | 2,712 |
| 徳島県 | 15,170 | 15,821 | 15,078 | 743 | 1,872 |
| 香川県 | 18,359 | 19,668 | 18,023 | 1,645 | 6,095 |
| 愛媛県 | 31,692 | 34,028 | 32,611 | 1,417 | 6,275 |
| 高知県 | 13,967 | 14,725 | 14,314 | 411 | 1,984 |
| 福岡県 | 86,049 | 94,458 | 87,009 | 7,449 | 19,729 |
| 佐賀県 | 15,717 | 16,965 | 15,653 | 1,312 | 4,659 |
| 長崎県 | 28,559 | 30,029 | 29,100 | 929 | 3,247 |
| 熊本県 | 32,297 | 37,228 | 32,408 | 4,820 | 9,553 |
| 大分県 | 23,194 | 24,264 | 22,896 | 1,368 | 8,836 |
| 宮崎県 | 22,101 | 24,308 | 21,745 | 2,563 | 7,771 |
| 鹿児島県 | 33,149 | 35,820 | 33,248 | 2,572 | 8,194 |
| 沖縄県 | 21,518 | 24,902 | 22,071 | 2,831 | 11,059 |
出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」別紙5。差の2列は編集部算出(同一資料内の必要数−現状推移を見込んだ介護職員数)。⚠️ 同別紙の注2のとおり、3列とも介護予防・日常生活支援総合事業のうち従前の介護予防訪問介護等に相当するサービスに従事する介護職員を含みます。注3のとおり、現状推移を見込んだ職員数は近年の入職・離職の動向等による推計で、令和6年度以降に追加的に取り組む新たな施策の効果は基本的に含まれていません。注4=石川県の数値は能登半島地震発生前の介護サービス見込み量等を用いた推計です。
差の大きさは規模に比例します。2026年度の差が1万人を超えるのは東京都28,158人・大阪府24,295人・北海道20,560人・愛知県18,180人・埼玉県17,075人・神奈川県17,048人・千葉県10,846人。2040年度になると東京都は73,473人、大阪府61,877人、北海道56,057人、神奈川県43,820人、愛知県33,516人まで開きます。一方で福井県は2040年度の必要数が現状推移を下回ります(唯一のマイナス)=人手不足の形は全国一律ではありません。
⚠️ この差を「不足数」と呼ばないでください。 同別紙の注3のとおり、現状推移の側には令和6年度以降の新しい施策の効果が入っていません=何もしなかった場合に開く差であって、確定した不足の予測ではありません。自事業所の計画に使うなら、自県の行が示す「必要な増分の規模」として読むのが適切です。
辞める理由の1位は、賃金ではなく人間関係
直前の介護の仕事を辞めた理由の最多は「職場の人間関係に問題があったため」で27.3%です。 令和7年度介護労働実態調査の労働者調査(中途採用者の前職を尋ねた設問)で、次に多いのは「勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があったため」21.0%、「他に良い仕事・職場があったため」17.2%でした。[5]
さらに中身が分かれています。人間関係を理由に挙げた人のうち、その約半数が「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」と答えています(45.8%)。[5]年齢でみると、離職率は29歳以下で17.3%と他の年齢階層より高い一方、同じ層は採用率も32.1%で最も高く、増減率(採用率−離職率)も全階層で最大です。[5]若手は出入りが激しい層で、抜けているだけではありません。
賃金だけを動かしても、辞める理由の1位には届きません。では人間関係に何が効くのかは、同じ調査が事業所側にも尋ねています。「人間関係が良好な職場づくり」を行っている事業所のうち54.6%が職場定着に効果があったと答え(実施率74.2%)、「悩み、不満、不安などを上司以外に相談できる担当者・相談窓口の設置」でも37.7%が定着に効果があったとしています(実施率49.3%)。[5]相談窓口はまだ半数の事業所しか置いていない打ち手です。
働く側の不満の1位も「人手が足りない」
働く側の悩みの1位は「人手が足りない」で52.3%です。 令和7年度介護労働実態調査の労働条件・仕事の負担についての悩み・不安・不満等は、「人手が足りない」52.3%が最多で、次いで「仕事内容のわりに賃金が低い」38.1%、「昇給がない、少ない」29.9%、「身体的負担が大きい」23.9%でした。[5]
満足度の側も同じ向きです。同調査の満足度D.I.(「満足」+「やや満足」から「不満足」+「やや不満足」を引いたポイント)では、最大のマイナスが「人員配置体制」の▲18.5ポイントで、「賃金水準」の▲12.3ポイントより大きく出ています。[5]
人が足りない状態そのものが、いま働いている人の不満の筆頭にある。しかも満足度では配置体制が賃金より大きなマイナスになっている。不足そのものが、定着の側でも最大の変数として現れている——調査が示すのはここまでで、因果の向きまでは示されていません。それでも、賃金を先に動かすか配置を先に動かすかの順序を決めるときの材料にはなります。
国は不足をどう埋めると置いているか
令和10年度の不足259,300人程度のうち、生産性向上で47,100人程度・追加的な国内人材の確保で51,500人程度を埋め、残る160,700人を外国人の受入れ見込数として置いています。 介護分野の分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定)の記述です。[1]
令和10年度に見込まれる介護分野の人手不足を、何で埋めると置いているか
令和8年1月23日閣議決定
| 令和10年度に見込まれる介護分野の人手不足の埋め方(分野別運用方針の記述) | 区分 | 人数 |
|---|---|---|
| 令和10年度に見込まれる人手不足 | 総額 | 259,300人程度 |
| ├ 介護ロボット・ICT等の活用などによる生産性向上(5年間で2%程度・令和10年度まで) | 内訳 | 47,100人程度 |
| ├ 処遇改善、高齢者及び女性の就業促進等による追加的な国内人材の確保(令和10年度まで) | 内訳 | 51,500人程度 |
| ├ (上の2つによる緩和分の小計) | 小計 | 98,600人程度 |
| └ なお不足すると見込まれる分=介護分野全体の受入れ見込数(令和6年度から5年間) | 内訳 | 160,700人 |
⚠️ 「内訳」の3行を足すと「総額」になります(「小計」行は上2行の再掲)。
- 生産性向上47,100人
- 追加的な国内人材の確保51,500人
- 外国人の受入れ見込数160,700人
出典:出入国在留管理庁「介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針」(令和8年1月23日閣議決定)。受入れ見込数は令和6年度から令和10年度までの5年間の数値。
⚠️ 方針は「外国人で6割を埋める」と書いているわけではありません。 順序は逆で、生産性向上と国内人材の確保を行ってもなお不足すると見込まれる残りを、受入れ見込数として置いたという書き方です。[1]結果として、その残余が不足全体の62%にあたります(編集部算出=同一資料内の160,700人÷259,300人)。緩和分は98,600人程度にとどまります。
この160,700人の中身は、1号特定技能126,900人(令和6年度から5年間)と育成就労33,800人(令和9年度から2年間)。⚠️ 対象期間が違う2つの数字です。方針は1号特定技能の見込数を、令和10年度末までの5年間の受入れの上限として運用するとしています。[1]
⚠️ 配分はいずれも国全体の推計であって、自社の不足に当てる数字ではありません。 「うちも不足の6割を外国人で埋めるべき」という話ではなく、国が制度の枠を決めるときに置いた前提です。自社が何から手を付けるかは、打ち手ごとに「やってみて効いたか」の実測から決めることになります。
4つの打ち手を、事業所が「効果があった」と答えた割合で比べる
採用に効果があったと事業所が答えた方策の1位は賃金水準の向上38.4%、職場定着の1位は休暇の取りやすさ57.9%で、効く先が採用と定着で分かれます。 令和7年度介護労働実態調査は、実際にその方策を行っている事業所だけに効果を尋ねているため、「やってみてどうだったか」の側から並べられます(分母=行っている事業所)。[5]
| 打ち手 | 国の位置づけ(分野別運用方針・第9期の人材確保対策) | 事業所の回答(令和7年度介護労働実態調査) | どの設問の値か |
|---|---|---|---|
| ①賃金・処遇改善 | 令和6年度介護報酬改定で処遇改善関連加算を一本化し、令和6年度2.5%・令和7年度2.0%のベースアップにつながるよう加算率を引上げ | 賃金水準の向上=採用38.4%/定着51.6%(実施率61.4%) | 採用・職場定着の方策で「効果があった」割合(分母=行っている事業所) |
| ②働き方と定着(休暇・人間関係) | 多様な人材の確保・育成/離職防止・定着促進 | 休暇の取りやすさ=採用28.6%/定着57.9%(実施率75.4%)。人間関係が良好な職場づくり=定着54.6%(実施率74.2%) | 同上 |
| ③介護テクノロジー | 令和10年度までに47,100人程度の生産性向上(5年間で2%程度)。導入費用の補助と令和6年度改定での加算創設 | 導入効果=昼間の業務負担の軽減53.8%・夜間47.2%(サービス系型による差が大きい) | 別の設問=導入効果で「効果がある」+「やや効果がある」の合計(分母=回答事業所8,899) |
| ④採用チャネル | 該当する記載を確認できず(2026年8月14日時点・分野別運用方針の国内人材確保の取組の列挙に、募集媒体・職業紹介・ハローワークの語は見当たらない) | 有料職業紹介所を活用=採用53.4%(実施率37.9%)/友人・知人などの紹介依頼=47.3%(実施率66.0%)/ハローワーク等に相談=41.8%(実施率64.8%) | 採用活動で「採用に効果があった」割合(分母=行っている事業所) |
⚠️ この4つに序列はありません。 ①②④は同じ軸(実施している事業所のうち効果があったと答えた割合)ですが、③だけは設問も分母も別で、同じ物差しには載りません。採用に効くものと定着に効くものも別です。外国人の受け入れは、これらと並ぶ5つ目の選択肢として次の節で扱います。
⚠️ 国の3分類とは切り口が違います。 方針が51,500人程度(追加的な国内人材の確保)として挙げているのは処遇改善と高齢者・女性の就業促進等で、①賃金・処遇改善はここに含まれます。[1]一方、④採用チャネル(どの媒体で募集するか)は方針の列挙に出てきません。ここで4つに割っているのは事業所が明日動かせるレバーの単位です。
①賃金・処遇改善——採用・定着の方策では上位、ただし原資が要る
賃金は、採用・職場定着の方策のなかで採用に効果があったと答えた割合が最も高い項目です(⚠️ 別設問の採用活動まで含めると、有料職業紹介所の活用53.4%が上回ります=後述の④)。水準の側も動いています。令和7年度介護労働実態調査によると、賃金支払形態が月給の人の通常月の平均月収は254,951円で前年度比+2.4%、職種別の伸びは訪問介護員4.1%・介護職員3.1%・生活相談員3.1%でした。[5]分野別運用方針も、令和6年度の介護職員(月給・常勤の者)の平均給与額が令和5年度と比べて4.3%(約1.4万円)増加したとしています。[1]
定着の側でも上位ではありますが、1位ではありません。同じ「職場定着に効果があった」の軸で並べると、休暇の取りやすさ57.9%・人間関係が良好な職場づくり54.6%に次いで、賃金水準の向上は51.6%(「本人の希望や人間関係などに配慮した配置・異動」も51.6%)。[5]⚠️ 賃金は採用と定着の両方に効く一方、実施率は低いままです(61.4%。休暇75.4%・人間関係74.2%)——原資が要るぶん、着手のハードルが高い打ち手です。⚠️ 同調査は賃金水準の向上について、質問では引き上げ幅を特定しておらず、回答者がそれぞれ任意の幅を想定して答えているため注意が必要だと注記しています=他の方策と同じ精度で並べられる数字ではありません。[5]原資の側では、方針が令和6年度改定での加算の一本化に加えて処遇改善加算の更なる取得促進に向けた取得要件の弾力化を行ったとしています。[1]自事業所がどの加算区分まで取れているかは、賃上げの前に確認する順序になります。
外国人材を受け入れる場合の給与額の決め方(日本人と同等以上の報酬の考え方、地域の相場、加算の扱い)は外国人材の給与の決め方にまとめています。
②働き方と定着——1位は休暇の取りやすさ
定着で1位に立つ「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」は、実施率でも75.4%と最多です。次に多く実施されているのは「人間関係が良好な職場づくり」で74.2%でした。[5]
辞める理由の1位が人間関係だったことと重ねると、定着の上位に来ているのは設備投資も加算の取り直しも要らない項目です。休暇を申請しやすいか、シフトを変えられるか、指導の言葉づかいがどうか。同じ「定着に効果があった」の軸では、休暇57.9%・人間関係54.6%に続いて、賃金51.6%と「本人の希望や人間関係などに配慮した配置・異動」51.6%が並びます。⚠️ 配置・異動も同率=シフトや担当の組み替えは、原資を要さずに定着へ効いたと答えられている打ち手です。[5]
いま在籍している職員のなかにも、これから抜けうる層があります。 同調査で、今後5年間に家族の介護をする可能性があると答えた労働者は50.2%。そのうち、現在の職場で家族介護をしながら仕事を続けるのは難しいと思うと答えた人が39.8%でした。[5]同調査は、介護休業制度の利用目的を正しく伝えることや、相談できる環境の構築も定着の要素だと整理しています。休暇とシフトの柔軟性は、採用の話であると同時にこの層を残す打ち手でもあります。
短期の穴を埋める手も、調査に載るようになりました。過去1年間にスポットワーク(単発の仕事のマッチング)を利用したことがある事業所は8.9%で、そのうち約3割(28.0%)がスポットワークから正社員等へ雇用したと答えています。[5]⚠️ 令和7年度に新設された設問で、利用している事業所はまだ1割弱です。
採用した外国人材に続けて働いてもらう側の実務(生活面の支援、面談、相談窓口)は採用後の定着支援で扱っています。
③介護テクノロジー——効く度合いがサービス系型で大きく違う
効果があるとした割合は全体で昼53.8%・夜47.2%ですが、施設系(入所型)では76.8%・74.2%です。
介護テクノロジー(ICT機器・介護ロボット等)の導入効果
令和7年度(令和8年7月29日公表)・回答事業所8,899
| 導入効果(「効果がある」+「やや効果がある」の合計) | 全体 | 訪問系 | 施設系(入所型) | 施設系(通所型) | 居住系 | 居宅介護支援 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 昼間の業務負担の軽減 | 53.8% | 48.6% | 76.8% | 51.0% | 60.1% | 46.0% |
| 夜間の業務負担の軽減 | 47.2% | 39.9% | 74.2% | 34.5% | 62.5% | 27.5% |
| 勤務時間(残業など)の短縮 | 42.7% | 42.3% | 51.6% | 40.8% | 43.6% | 40.4% |
| 業務の活性化 | 43.3% | 42.5% | 53.3% | 41.4% | 46.4% | 38.4% |
| 介護の質の向上 | 40.1% | 36.5% | 58.4% | 38.3% | 44.8% | 28.6% |
出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度『介護労働実態調査』結果の概要について」図表7-2-1。「効果がある」と「やや効果がある」の合計。夜間の業務負担の軽減は、全回答から「夜間業務がない」の選択肢を回答したものを差し引いた値を100として算出。
夜勤のある入所型なら、効果を感じたと答える事業所が7割を超える帯にいます。同じ機器でも、施設系(通所型)の夜間は34.5%、居宅介護支援は27.5%で、投資が同じように返るとは限りません。[5]
効果の中身も、一般的なイメージとはずれます。同調査で「日常的に利用している」割合が高いのは、介護ソフトの「利用者情報(ケア記録・ケアプラン等)の入力・保存・転記の機能」72.2%、施設内のWiFi設備53.9%、ベッドセンサー(施設系(入所型)66.7%・居住系41.4%)です。一方、移乗を支援する介護テクノロジー(マッスルスーツなど)の日常利用は1.9%(施設系(入所型)でも9.1%)、入浴を支援するものは6.7%(施設系(入所型)19.7%)にとどまります。[5]
全体で最も日常使いされているのは記録と情報共有のICTです。見守りセンサー(ベッドセンサー)は全体では19.4%で、施設系(入所型)66.7%・居住系41.4%と、入所型を中心に使われています。装着型や移乗支援のロボットは、まだ日常の道具になっていません。⚠️ 同調査は機器の種類ごとの効果までは尋ねていません(効果の設問は「介護テクノロジー」全体に対するもの)=「よく使われているものが効く」とは言えず、読めるのは普及の段階の差までです。
費用の側にも道はあります。方針は、介護テクノロジーの導入費用に対する補助を行っていること、令和6年度介護報酬改定で介護テクノロジーを活用した継続的な業務改善の取組を評価する加算が創設されたこと、生産性向上の支援策を一括して案内するワンストップ型の総合的な事業者支援窓口の全都道府県への設置を促していることを挙げています。[1]効果があるかを社内で議論する前に、この窓口で自事業所が使える支援を聞くほうが順序として早く済みます。
④採用チャネル——人づてが最多、効果率が最も高いのは有料職業紹介
労働者が現在の法人に就職した主な経路の1位は「友人・知人からの紹介」で33.8%です。 次いでハローワーク19.4%。勤続1年未満に限っても1位は同じく友人・知人からの紹介(29.3%)で、2位が「求人情報サイト」21.3%でした。[5]
⚠️ ただし「多くの人が通った経路」と「効果があったと答えた割合」は別です。 事業所側の採用活動でみると、実施率が高いのは「職員に対して友人・知人などの紹介を依頼」66.0%・「ハローワークや福祉人材センターの担当者に相談」64.8%(効果があったはそれぞれ47.3%・41.8%)。一方、実施率は37.9%と低いのに、行っている事業所の53.4%が「採用に効果があった」と答えているのが「有料職業紹介所を活用」で、これは調査した採用活動のなかで最も高い効果率です(「民間の有料求人情報サイトを活用」は実施率36.3%・効果44.8%)。[5]
読み方は2つに分かれます。無料でできる打ち手を先に尽くすなら、いま働いている職員が知人に勧められる状態か(②の定着)から。費用をかけてでも人数を確保するなら、調査上の効果率が最も高いのは紹介会社の活用です。⚠️ トモハタは特定技能の採用について人材紹介会社・登録支援機関へのご紹介(送客)を行っており、この分野の情報提供で収益を得ています。 上の数値は介護労働安定センターの調査によるもので、当社の実績ではありません。外国人材を紹介会社経由で採用する場合の手数料の目安と料金体系の見方は特定技能の人材紹介手数料にまとめています(日本人採用の有料職業紹介とは相場が異なります)。
⚠️ 次の診断が返すのは外国人を採用する場合のルートと概算費用です。賃金・働き方・介護テクノロジーの側は返しません。
外国人の受け入れを打ち手に入れる前に
外国籍労働者を受け入れている介護事業所は18.6%で、前年度から2.8ポイント上昇しました。 令和7年度介護労働実態調査によると、受け入れていない事業所は約8割(78.7%)です。[5]
| 外国籍労働者の今後の受け入れ方針(令和7年度介護労働実態調査・カッコ内は前年度) | 割合 |
|---|---|
| 受け入れている事業所(n=1,659):現在の水準を補充する程度の受け入れをする | 47.5%(49.3%) |
| 同:今後、積極的に受け入れを拡大していきたい | 26.4%(32.3%) |
| 同:今後、新たな受け入れはしない予定 | 14.8%(14.1%) |
| 同:無回答 | 11.3%(4.3%) |
| 受け入れていない事業所(n=7,002):今後も受け入れようとは思わない | 61.9%(59.2%) |
| 同:今後、受け入れを検討してみたい | 27.7%(30.1%) |
| 同:受け入れたいが手続きがわからない | 5.6%(6.8%) |
| 同:無回答 | 4.8%(3.8%) |
⚠️ 「拡大したい」26.4%の低下(前年度32.3%)は、意欲の低下と読み切れません。 同じグループの無回答が4.3%→11.3%と7ポイント増えているため、選択肢を選ばなくなった分が数字を押し下げている可能性があります。[5]確かなのは、受け入れている事業所の割合そのものは18.6%へ上がったことです。受け入れていない事業所のうち、入口の情報が足りないために止まっている層(受け入れたいが手続きがわからない)は5.6%で、多数派ではありません。
課題は「わからない」から「コスト」へ入れ替わる
受け入れの経験がある事業所とない事業所では、挙げる課題の順位が入れ替わります。
外国籍労働者の受け入れの課題(受け入れの有無別)
令和7年度(令和8年7月29日公表)・回答事業所8,899(複数回答)
| 受け入れの課題(複数回答・全12項目) | 全体 | 受け入れている | 受け入れていない |
|---|---|---|---|
| 利用者や他の従業員との意思疎通(日本語能力及びコミュニケーション)が難しい | 49.1% | 45.0% | 51.2% |
| 受け入れのための住宅や寮などを確保することが困難 | 39.6% | 33.2% | 42.0% |
| 外国籍労働者の仕事上のサポート役の負担が大きい | 35.7% | 32.8% | 37.2% |
| 受け入れ後の生活の管理や支援が難しい | 34.1% | 25.1% | 37.1% |
| 受け入れのためのコストが高い | 31.7% | 43.2% | 29.7% |
| 受け入れの手続きが煩雑 | 28.7% | 27.8% | 29.5% |
| 外国籍労働者の人材確保(自事業所とのマッチング)が困難 | 24.6% | 12.1% | 28.1% |
| 受け入れ後の生活支援の仕方がわからない | 23.9% | 8.4% | 28.0% |
| 利用者が外国籍労働者によるサービス提供に抵抗がある | 21.8% | 10.2% | 25.1% |
| 受け入れについて他の従業員の理解を得ることが難しい | 11.7% | 5.8% | 13.3% |
| その他 | 5.7% | 4.2% | 6.2% |
| 特にない | 15.1% | 12.1% | 15.6% |
出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和7年度『介護労働実態調査』結果の概要について」図表8-3-1。
経験の前後で、悩みの中身が入れ替わっています。 受け入れていない事業所で相対的に高いのは「受け入れ後の生活支援の仕方がわからない」28.0%で、受け入れている事業所では8.4%まで下がります。逆に受け入れている事業所で相対的に高いのは「受け入れのためのコストが高い」43.2%(受け入れていない事業所は29.7%)でした。[5]「利用者が抵抗がある」25.1%→10.2%、「人材確保(自事業所とのマッチング)が困難」28.1%→12.1%も大きく下がります。
やってみる前の不安(わからない・利用者が抵抗する・そもそも人が見つかるのか)は、やってみると小さくなる。代わりに残るのはお金の話、という形です。判断に効くのは、いま自社が抱えている不安が「経験すれば消える種類」なのか「経験しても残る種類」なのかという区別です。
- 残る側=費用は介護の外国人採用にかかる費用と47都道府県の補助金へ。⚠️ 介護は都道府県ごとに受け入れ環境整備の補助制度があり、支出をそのまま抱える前提で判断する必要はありません。
- 消える側=意思疎通・生活支援・サポート役の負担(それぞれ49.1%・23.9%・35.7%)は、自社で全部抱えるか委託するかで負担が変わります。委託の範囲と自社に残る手続きは介護の登録支援機関の選び方にまとめています。
「受け入れると確保できなくなる」ではない
同じ調査には、受け入れている事業所のほうが従業員の人数・質の評価が厳しい、という結果もあります。「人数・質ともに確保できていない」と答えた割合は、受け入れている事業所で36.6%、受け入れていない事業所で22.1%。受け入れている在留資格別では特定技能1号39.6%・技能実習38.7%です。[5]
⚠️ これを「外国人を受け入れると確保できなくなる」と読まないでください。 調査は因果を示していません。確保が厳しい事業所ほど受け入れに動いている、と読むほうが自然です。自社が同じ位置(人数も質も足りない)にいるなら、それは他の打ち手と並行して検討する材料になります。
制度側の輪郭だけ押さえる
枠にはまだ約4割の余地があり(編集部算出=100%−充足率58.9%)、直近1年で26,332人増えています。 介護分野の特定技能1号は、令和6年度から5年間の受入れ見込数が126,900人。[1]出入国在留管理庁の公表によると、令和8年3月末時点の在留者数は74,745人・受入れ見込数の充足率は58.9%(速報値)で、1年間の増加数は26,332人でした。[7]
雇用形態は直接雇用に限られ、労働者派遣は認められていません(分野別運用方針・第二2(2))。[1]繁忙期だけ人を借りる形は、介護では制度上の選択肢になりません。もう1点、受入れ見込数を超えることが見込まれる場合などには、厚生労働大臣の求めにより在留資格認定証明書の交付が一時的に停止される仕組みが方針に置かれています。[1]⚠️ 停止の措置が現に取られているかは変動するため、採用計画を確定させる前に出入国在留管理庁の公表で確認してください。
育成就労は技能実習に代わる新しい制度で、介護分野の受入れ見込数33,800人は令和9年度から2年間の枠として置かれています。[1]制度の全体像は育成就労制度とは、技能実習との違いは特定技能と技能実習の違いにまとめています。
自社の事業所が対象施設に当たるか、本人にどんな試験が要るか、技能実習・育成就労やEPAを含む4つの採用ルートをどう比べるかは介護で外国人を受け入れる条件と採用ルートにまとめています。事業所ごとに何人まで受け入れられるかは介護で受け入れられる人数の上限で、職員名簿の例から1行ずつ判定できます。制度そのものの全体像(どの在留資格で何ができるか、企業側に何が求められるか)は特定技能で採用するときの全体像にあります。
訪問系サービスは、まだ多くの事業所が選択肢に入れていません。令和7年4月から一定条件の下で認められた訪問系サービスへの従事について、今後の受け入れ方針は「受け入れる予定はない」が47.2%で最多でした(対象となる訪問系サービスを行う事業所 n=2,934。法人の従業員規模別では19人以下58.1%・300人以上33.2%)。[5]規模が小さいほど、様子見の側に寄っています。
何から手を付けるか
最初に決めるのは打ち手ではなく、自社の不足がどの形をしているかです。 入口(応募が来ない)と出口(続かない)では、効いたと答えられている方策が違います。
入口の不足か、出口の不足かを分ける
過去1年の採用者数と離職者数を、期首(1年前の同じ日)の在籍者数で割って率にします(同調査と同じ分母の取り方です。期首在籍者数=現在の在籍者数−1年間の採用者数+1年間の離職者数)。全国値は採用率14.6%・離職率12.4%。離職率が12.4%より高いなら出口、採用率が14.6%より低いなら入口が課題です。両方なら出口から見ます。辞める人が出続ける限り、採っても水位が上がらないためです。
出口が課題なら、休暇と人間関係から見る
休暇の取りやすさと人間関係は、事業所が定着に効いたと答えた方策の1位と、辞めた人が挙げた理由の1位です。設備投資も加算の取り直しも要らない側から着手できます。
夜勤の負担が重いなら、介護テクノロジーが効く帯にいるか確認する
夜間の業務負担の軽減に効果があるとした割合は、サービス系型によって大きくひらきます(前節の表)。入所型で夜勤の負担が重いなら、人を増やさずに不足感を下げる経路が残っています。
入口が課題なら、無料の経路と有料の経路を分けて考える
就職経路の1位は友人・知人からの紹介(33.8%)=媒体を増やす前に、いまの職員が知人に勧められる状態かを確認できます。費用をかける側では、事業所が「採用に効果があった」と答えた割合が最も高いのは有料職業紹介所の活用(53.4%)でした(⚠️ 調査による数値です。当社は特定技能の採用について人材紹介会社・登録支援機関へのご紹介を行っています)。
生産性向上の支援は、都道府県のワンストップ窓口で確認する
介護テクノロジーの導入費用の補助や、令和6年度改定で創設された業務改善の加算など、使える支援は自事業所の所在地によって変わります。方針は、支援策を一括して案内するワンストップ型の事業者支援窓口を全都道府県へ設置することを促しています。
通年の募集が届かないなら、外国人の受け入れを選択肢に加える
同業の2割弱がすでに受け入れています(前節)。自社が対象施設か・何人まで・どのルートかは介護で外国人を受け入れる条件と採用ルートで確認できます。試験・協議会への加入・在留審査など自社の都合では動かせない日程が入るため、入職希望時期からの逆算が要ります。
4つの打ち手と外国人の受け入れは、排他ではありません。分野別運用方針は外国人の受入れ見込数を、生産性向上と追加的な国内人材の確保を行ってもなお不足すると見込まれる分として置いています。並行して進める組み方が、方針の側の前提です。[1]⚠️ どれか1つで人手不足がなくなる、という前提はこの数字からは置けません。順序を決めて、効いたかどうかを自社の採用率・離職率で確かめながら進めることになります。
よくあるご質問
- 介護の人手不足はどのくらい深刻ですか?
- 出入国在留管理庁の介護分野の分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定)は、令和10年度に259,300人程度の人手不足が見込まれるとしています。介護分野の有効求人倍率は令和6年度で4.08倍、都道府県別でも全都道府県が2.00倍以上です。現場の実感では、介護労働安定センターの令和7年度介護労働実態調査で、従業員が不足していると答えた事業所が65.8%(前年度65.2%)でした。
- 介護の人手不足はなぜ起きているのですか?
- 辞める人が増えているというより、入ってくる人が足りていません。介護労働安定センターの令和7年度介護労働実態調査では、訪問介護員と介護職員を合わせた離職率が12.4%で横ばいの一方、採用率は14.6%と低い水準にとどまっています。加えて高齢化でサービス需要が増え続けており、厚生労働省は賃上げで先行する他産業と人材の引き合いになっているとしています(令和7年4月の有効求人倍率は介護関係職種の全国平均3.77倍・職業計1.08倍)。
- 人手不足の対策は、何から手を付ければよいですか?
- 最初の1手は「打ち手を選ぶ」ではなく「自社の不足が入口(応募が来ない)なのか出口(続かない)なのかを、採用率と離職率で切り分ける」ことです(全国値=採用率14.6%・離職率12.4%)。両方なら出口から見ます。介護労働安定センターの令和7年度介護労働実態調査では、採用・定着の方策のうち採用に効果があったの最上位が賃金水準の向上38.4%、職場定着の最上位が有給休暇等の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり57.9%でした(別設問の採用活動では、有料職業紹介所の活用が53.4%で最も高い効果率です。いずれも同調査による数値で、当社の紹介実績ではありません)。介護テクノロジーは施設系(入所型)で昼76.8%・夜74.2%が効果ありとする一方、施設系(通所型)の夜間は34.5%で、サービス系型によって返り方が違います。
- 外国人の受け入れは打ち手として現実的ですか?
- 介護労働安定センターの令和7年度介護労働実態調査では、外国籍労働者を受け入れている介護事業所は18.6%で、前年度から2.8ポイント上昇しました。特定技能1号(介護分野)の在留者数は74,745人・受入れ見込数の充足率は58.9%です(令和8年3月末時点・速報値)。課題として多いのは意思疎通49.1%・住宅や寮の確保39.6%・サポート役の負担35.7%で、雇用形態は直接雇用に限られます。自社の事業所が対象施設に当たるか・何人まで受け入れられるかは、介護分野の受け入れ条件の解説記事で確認してください。
出典・参考(一次情報)
- 介護分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針(令和8年1月23日閣議決定)=「令和 10 年度に必要となる就業者数を推計すると、235 万 7,300 人となる」/「介護分野の有効求人倍率は、令和6年度においては 4.08 倍」「都道府県別の有効求人倍率でも、全都道府県において 2.00 倍以上にあり、依然として高い水準にある」/「人手不足が9万 8,600 人程度緩和されることが見込まれるものの、なお 16 万 700 人程度の人手不足が見込まれる」/「令和 10 年度には 25 万 9,300 人程度の人手不足が見込まれる中、介護ロボット、ICT等の活用などの取組による5年間で2%程度の生産性向上(令和 10 年度までに4万 7,100 人程度)や、処遇改善、高齢者及び女性の就業促進等による追加的な国内人材の確保(令和 10 年度までに5万 1,500 人程度)を行ってもなお不足すると見込まれる」/1号特定技能外国人の受入れ見込数12万6,900人(令和10年度末までの5年間の受入れの上限として運用)・育成就労外国人3万3,800人(令和9年度から2年間)/第二2(2)特定技能外国人の雇用形態「直接雇用に限る」/令和6年度の介護職員(月給・常勤の者)の平均給与額は令和5年度と比較して4.3%(約1.4万円)増加/令和6年度介護報酬改定で処遇改善関連加算を一本化し「令和6年度に 2.5%、令和7年度に 2.0%のベースアップへと確実につながるよう加算率の引上げを実施」/介護分野の離職率は「令和元年度には 15.4%であったが、令和6年度には 12.4%に減少した」/確認日2026年8月14日(出入国在留管理庁)
- 第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について(令和6年7月12日公表・別紙1)=「第9期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、都道府県が推計した介護職員の必要数を集計すると、2026年度には約240万人(+約25万人(6.3万人/年))・2040年度には約272万人(+約57万人(3.2万人/年))となった」※()内は2022年度(約215万人)比/注1「2022年度(令和4年度)の介護職員数約215万人は、『令和4年介護サービス施設・事業所調査』による」/注2「介護職員の必要数(約240万人・272万人)については、足下の介護職員数を約215万人として、市町村により第9期介護保険事業計画に位置付けられたサービス見込み量(総合事業を含む)等に基づく都道府県による推計値を集計したもの」/確認日2026年8月14日(厚生労働省)
- 介護職員数の推移の更新(令和6年分)について(令和7年12月19日公表)=「各サービスの介護職員数を集計すると、令和6年10月1日時点で、2,126,227人(対前年+487人)となった」/別紙「介護職員数の推移」=令和元年度210.6万人・令和2年度211.9万人・令和3年度214.9万人・令和4年度215.4万人・令和5年度212.6万人・令和6年度212.6万人(注1「介護職員数は、常勤、非常勤を含めた実人員数。(各年度の10月1日現在)」)/同別紙に併載の要介護(要支援)認定者数=令和元年度667万人・令和2年度676万人・令和3年度688万人・令和4年度697万人・令和5年度705万人・令和6年度720万人(出典=厚生労働省「介護保険事業状況報告」)/確認日2026年8月14日(厚生労働省)
- 介護人材確保の現状について(第2回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会 参考資料3・令和7年6月9日)=「介護関係職種は他産業と比較し有効求人倍率が高く、人材確保に課題を抱える中、昨今の賃上げで先行する他産業と人材の引き合いとなっている状況にあり、介護分野の人材確保が大変厳しい状況にある」/介護職員数の推移の図に「介護職員数は令和5年度に初の減少」と注記/都道府県別有効求人倍率(令和7年4月)=「介護関係職種全国平均 3.77倍」「職業計全国平均 1.08倍」(出典=厚生労働省「職業安定業務統計」・パートタイムを含む常用の原数値)/確認日2026年8月14日(厚生労働省)
- 令和7年度「介護労働実態調査」結果の概要について(令和8年7月29日公表)=離職率12.4%(横ばい)・採用率14.6%(上昇幅0.3ポイント・「昨年度に続き低い水準」)・29歳以下の離職率17.3%/過不足感「大いに不足」11.1%+「不足」20.9%+「やや不足」33.8%=65.8%(前年度65.2%)・訪問介護員82.9%・介護職員69.8%/採用に効果があった方策1位「賃金水準の向上」38.4%・職場定着1位「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」57.9%(実施率75.4%)・「人間関係が良好な職場づくり」実施率74.2%/就職経路1位「友人・知人からの紹介」33.8%・ハローワーク19.4%(勤続1年未満は2位が求人情報サイト21.3%)/採用活動の実施率=友人・知人などの紹介依頼66.0%(効果47.3%)・ハローワーク等へ相談64.8%(効果41.8%)/直前の仕事を辞めた理由(介護関係)1位「職場の人間関係に問題があったため」27.3%・その内容の45.8%が「上司や先輩からの指導や言動がきつかったり、パワーハラスメントがあった」/月給の人の通常月の平均月収254,951円(前年度比+2.4%)/悩み・不安・不満1位「人手が足りない」52.3%・満足度D.I.「人員配置体制」▲18.5p/介護テクノロジー導入効果(図表7-2-1)昼53.8%・夜47.2%〔施設系(入所型)76.8%・74.2%/訪問系48.6%・39.9%/施設系(通所型)51.0%・34.5%/居住系60.1%・62.5%/居宅介護支援46.0%・27.5%〕・導入状況(図表7-1-1)移乗支援1.9%・入浴支援6.7%・WiFi設備53.9%/外国籍労働者を受け入れている18.6%(+2.8ポイント)・受け入れていない78.7%・受け入れの課題(図表8-3-1)と今後の方針(図表8-2-1/8-2-2)・訪問系での受け入れ方針(図表8-4-1)「受け入れる予定はない」47.2%〔19人以下58.1%・300人以上33.2%〕/図表2-3-1(方策の実施率と効果率=行っている事業所に占める割合)賃金水準の向上 実施61.4%〔採用38.4%・定着51.6%〕・有給休暇等の取得等 実施75.4%〔採用28.6%・定着57.9%〕・人間関係が良好な職場づくり 実施74.2%〔定着54.6%〕・相談窓口の設置 実施49.3%〔定着37.7%〕/図表2-1-1(採用活動)有料職業紹介所を活用 実施37.9%〔採用に効果53.4%=最高〕・民間の有料求人情報サイト 実施36.3%〔44.8%〕/図表8-2-1 無回答 R7 11.3%・R6 4.3%/図表8-3-1 全12項目/今後5年間に家族介護をする可能性50.2%・うち現職場では続けられないと思う39.8%/スポットワーク利用8.9%・うち正社員等へ雇用28.0%/確認日2026年8月14日(公益財団法人介護労働安定センター)
- 介護人材確保の現状について(第1回社会保障審議会福祉部会 福祉人材確保専門委員会 資料5・令和7年5月9日)=「都道府県別有効求人倍率(令和7年3月)と地域別の高齢化の状況」=「介護分野の有効求人倍率は、地域ごとに大きな差異があり、地域によって高齢化の状況等も異なる」「介護関係職種全国平均 3.97倍」「職業計全国平均 1.16倍」(資料出所=厚生労働省「職業安定業務統計」)/同ページの75歳以上人口(2015年→2025年・( )は倍率)=埼玉県77.3万人→120.9万人(1.56倍・順位1)・千葉県70.7→107.2(1.52倍)・神奈川県99.3→146.7(1.48倍)・愛知県80.8→116.9(1.45倍)・大阪府105.0→150.7(1.44倍)・東京都146.9→194.6(1.33倍・順位11)・鹿児島県26.5→29.5(1.11倍)・秋田県18.9→20.9(1.11倍)・山形県19.0→21.0(1.10倍)・全国1632.2→2180.0(1.34倍)(国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(平成30年3月推計)」より作成)/確認日2026年8月14日(厚生労働省)
- 特定技能1号の受入れ見込数及び在留者数について(令和8年3月末時点・速報値)=介護分野の受入れ見込数126,900人・在留者数74,745人・受入れ見込数の充足率58.9%・年間増加数26,332人(※3「年間増加数は、令和7年3月末在留者数と令和8年3月末在留者数の差(速報値)」)/確認日2026年8月14日(出入国在留管理庁)