インドネシア人の国民性は?性格の傾向と職場で配慮すること
目次
「インドネシアの人はどんな性格なのか」「職場で何を変えればいいのか」——この2つは、たいてい同時に出てきます。結論から言うと、国民性の話は受け入れ準備の材料にはなっても、採用するかどうかの判断には使えません。だから、性格の記述をそのまま鵜呑みにするのでも捨てるのでもなく、使える場所と使ってはいけない場所に仕分けるのが先です。ここから出てくる「傾向」は個人差が大きく、目の前の一人に当てはまるとは限りません。
この記事の要点
- およそ8人に1人はイスラム教徒ではない — 外務省の基礎データによると、宗教の内訳はイスラム教87%、キリスト教10.4%、ヒンズー教1.7%、仏教0.7%です(2023年、宗教省統計)。宗教が違えば配慮の中身も変わります。
- 「配慮」と呼べるものと、そうでないものが混ざっている — 職場で決める項目には、①会社が決めてよい配慮の中身、②省令が定める雇用契約の基準、③労働条件そのもの、の3つが混在します。②③は会社の一存で動かせません。どの項目がどれかは記事後半の一覧表に区分を付けて示します。
- 支援計画に書けば、任意の配慮も義務になる — 礼拝スペースの提供などを1号特定技能外国人支援計画に記載すると、その時点で支援義務が生じます。
- 国民性の情報は、選考の基準にはできない — 厚生労働省は宗教を「本来自由であるべき事項」とし、面接でたずねること自体が就職差別につながるおそれがあるとしています。
- 実務の解は「聞き出す」ではなく「先に開示する」 — 会社が用意できること(用意しないことも含めて)を募集の段階で示し、本人が必要なら申し出られる状態にします。
本記事は一般的な情報提供です。宗教や生活習慣の受け止め方には個人差があり、国籍で一律に決まるものではありません。統計・制度の最新の内容は、外務省・厚生労働省・出入国在留管理庁の公表情報で確認してください。
インドネシア人=イスラム教徒、で準備すると外れることがある
インドネシアはイスラム教徒が多数派ですが、全員ではありません。外務省の基礎データによると、宗教の内訳は次のとおりです。[1]
インドネシアの宗教の内訳
2023年、宗教省統計
| 宗教 | 割合 |
|---|---|
| イスラム教 | 87% |
| キリスト教 | 10.4%(プロテスタント7.4%・カトリック3%) |
| ヒンズー教 | 1.7% |
| 仏教 | 0.7% |
出典:外務省「インドネシア共和国 基礎データ」(更新日=令和8年7月16日)。同ページは宗教の出所を2023年・宗教省統計と注記。
イスラム教以外はおよそ13%で、8人に1人にあたります(合算はトモハタによるものです)。民族も約1,300あります。[1]同じ「インドネシアの人」でも、前提はそろっていません。
信仰が違えば、配慮すべき中身も変わります。 厚生労働省の受入れ・定着マニュアルは、宗教別の参考資料でキリスト教について「多く方が毎週日曜日に礼拝に行きます」(フィリピンを例にした解説)、ヒンドゥー教について「基本的には菜食主義です」(ネパールを例にした解説)としています。[2]インドネシアの非ムスリムについて書かれた資料ではありませんが、イスラム教を前提に組んだ配慮が誰にでも当たるわけではないことは分かります。休みたい曜日が変わることも、避ける食材が牛肉側に増えることもあります。
だから、全員に同じ前提を置かない。ハラル対応の弁当を一律に用意する、礼拝スペースの利用を全員に案内する、といった一律対応は、当てはまらない人には居心地の悪さになります。会社が用意できることを並べておき、必要な人が選べる形にするほうが外れません。
よく言われる「国民性」は、傾向として語られているもの
性格そのものを測った公的統計は、外務省・厚生労働省・出入国在留管理庁・観光庁の公表資料を「性格」「国民性」で確認した範囲では見つかりませんでした。上位の記事でよく挙がる記述を8つ並べると、インドネシアを名指しした公的資料に接地するのは2つだけでした。確認できる範囲と、確認できない範囲を分けます(下の表で「確認できなかった」と書いているものは、いずれも上の4府省庁の公表資料を確認した範囲での話です)。
| よく言われること | 公的資料で確認できる範囲 | 職場での置き換え |
|---|---|---|
| 温厚で、日本人に友好的 | 厚生労働省の受入れ・定着マニュアルのインドネシア国別ページが、文化の欄に「日本人に対し友好的」「世界第4位の人口もあり、多様性を尊重している」と記載(⚠️ この欄には出典記号が付いておらず、同ページの出典注記〔JETRO・外務省〕は海外労働者数と宗教の欄に付いています) | 「言わなくても察してくれる」と考えない。写真つき手順書や指差しカードなど、口頭以外の伝え方を先に用意する |
| 時間や納期の感覚がゆるやか(「ジャム・カレット=ゴムの時間」と呼ばれることがある) | この記述に接地する公的資料は確認できなかった | 国民性の話にせず、始業・休憩・納期の期待値を書面と掲示で最初に示す。日本人の新人に説明するのと同じ手順を踏む |
| 信仰が生活に組み込まれている | 外務省の基礎データでイスラム教87%(2023年、宗教省統計)。同マニュアルは習慣・休日として礼拝/豚肉とお酒はNG/ラマダンを挙げる | 会社として用意できる範囲(場所・時間・食事)を先に決め、本人に申し出てもらう形にする |
| 家族や仲間とのつながりを大切にする | この記述に接地する公的資料は確認できなかった | 休日や一時帰国の希望を、いつ・誰に出すかを入社前に決めて伝えておく |
| 人前で叱られることを強く嫌う・面子を重んじる | 国を特定した公的資料は確認できなかった。ただし厚生労働省の受入れ・定着マニュアルは、外国人材一般について「人前で叱られ慣れていない方もいます」とし、別室での指摘を勧めている | 注意・指摘は人前を避けて別室で。ほめ言葉ではさむ「サンドイッチ法」も同マニュアルの対策例 |
| 「いいえ」と言わず、曖昧に「できる」と答える | 国を特定した公的資料は確認できなかった。同マニュアルは外国人材一般について「『分かりました』を鵜呑みにせず、依頼の理解度を確認しましょう」としている | 復唱・期限の再確認を手順に入れる。理解度の確認を相手の性格の問題にしない |
| 楽観的・細かいことを気にしない | この記述に接地する公的資料は確認できなかった | 品質基準や不良の判定基準を、口頭でなく現物・写真で示す |
| 助け合いを大切にする(相互扶助の文化) | この記述に接地する公的資料は確認できなかった | 属人化させず、誰が何を担当するかを書いて配る |
2つ目の「時間の感覚」は、記事や体験談ではよく挙がる一方、根拠となる公的資料には行き着きませんでした。接地しない記述を前提に人を評価すると、評価の中身が「その人の仕事ぶり」から「国籍の印象」へすり替わります。時間の守り方は、伝え方と仕組みの問題として扱うほうが動かしやすい。 遅れが起きたときに直せるのは、印象ではなく手順のほうです。
厚生労働省の受入れ・定着マニュアルは、5W1Hを意識してあいまいさを排除するとして次の言い換えを挙げています。[2]
×「金曜日に会議があるので、できるだけ早く資料の提出をして下さい」 ○「今週金曜日の会議で資料を使います。今週の木曜日12時までに資料を作成して私に提出してください」
「できるだけ早く」が伝わらなかったことを国民性で説明すると、次に同じことが起きます。言い換えのほうは今日から変えられます。同じマニュアルは、返ってきた「分かりました」についても「鵜呑みにせず、依頼の理解度を確認しましょう」としています。[2]
叱り方も、性格の話ではなく手順の話にできます。 同マニュアルは「人前で叱られ慣れていない方もいます」として、海外では子どものころからほめられて育ち叱られること自体に慣れていない人が多い傾向があること、叱られることで人間としての尊厳を傷つけられたと捉える人もいて、それが人前だとなおさら強くストレスになりうることを挙げています。[2]対策として示されているのは、ポジティブな言い回しで行動の変化を促すこと、なるべく人前を避けてさりげなく別室に呼んで注意・指摘をすること、注意や指摘をほめ言葉ではさむ「サンドイッチ法」です。
同マニュアルは、ニュースになっている政治・宗教の話題が職場での口論に発展する例も挙げ、対策として「政治や宗教はお互いに尊重し、職場でそれについての議論はしない」といったルールを決めて事前に労働者へ周知することを示しています。[2]これらはいずれも国籍を特定せず、外国人材一般について書かれたものです。
その話は何に使えて、何に使ってはいけないか
国民性の情報は受け入れ準備の初期仮説には使えますが、採用するかどうかの判断には使えません。線を引いているのは特定技能の省令・労働基準法第3条・公正な採用選考の考え方で、受け持つ場所がそれぞれ違います。
まず、特定技能に固有の基準です。特定技能雇用契約の内容の基準を定める省令は、第1条で次のように求めています。[3]
外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしていないこと。
⚠️ 「福利厚生施設の利用」まで入っているのが、この記事の話と直結します。運用要領はこの福利厚生施設を「社員住宅、診療施設、保養所、体育館など」と例示しています。[4]⚠️ 条文が禁じているのは「外国人であることを理由として」の差別的な取扱いです。社員住宅や保養所の使い方を、日本人の従業員と別扱いにすると、ここに触れます。
寮・社宅はとくに具体的に決まっています。 支援の運用要領は、住居について「同等の業務を行う日本人と同等の処遇を確保する必要があります。例えば、日本人労働者に社宅を提供するのであれば同等に社宅を提供する必要があり、居室の広さについても、同等の広さを確保する必要があります」としたうえで、次の2点を求めています。[5]
- 居室の広さ — 「1人当たり7.5㎡以上を満たすことが求められます」。「ルームシェアするなど複数人が居住することとなる場合には、居室全体の面積を居住人数で除した場合の面積が7.5㎡以上でなければなりません」(技能実習2号等からの変更で既存の社宅に住み続ける場合などの例外あり)。⚠️ 何人部屋にするかは会社の自由ではありません。
- 家賃として徴収できる額 — 会社が自ら借主になって貸す場合、「社宅等を貸与することにより経済的利益を得てはなりません」。徴収できるのは「借上げに要する費用(管理費・共益費を含み、敷金・礼金・保証金・仲介手数料・更新手数料・途中解約金等は含まない)を入居する特定技能外国人の人数で除した額以内の額」です(自己所有の物件は建設・改築の費用や耐用年数から算出した合理的な額)。しかもこれは雇用契約が満たすべき基準なので、在留資格の手続きに関わります。同じ第1条は、報酬の額が日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上であることも別に求めています。[3]
次に労働基準法第3条(均等待遇)です。[6]
使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
「国籍」だけでなく「信条」も並んでいます。 「イスラム教徒だから夜勤から外す」「インドネシアの人だから時給はこの額から」は、どちらもここに触れます。本人の希望で夜勤を外すのと、会社が信仰を理由に外すのは、別の行為です。条文が挙げているのは「賃金、労働時間その他の労働条件」で、採用するかどうかの入口は、次に見る公正な採用選考の考え方が受け持ちます。厚生労働省も「雇用主にも、採用方針・採用基準・採否の決定など、『採用の自由』が認められています」としたうえで、「しかし、『採用の自由』は、応募者の基本的人権を侵してまで認められているわけではありません」と続けています。[7]採否の側は、この考え方が線を引いています。
採用の入口については、厚生労働省が公正な採用選考の基本として、まず物差しそのものを示しています。[7]
「公正な採用選考」を行うには、「応募者が、求人職種の職務遂行上必要な適性・能力をもっているかどうか」という基準で採用選考を行うことが必要です。
同じページは、採用選考についてもう一歩踏み込んで、こう書いています。
採用選考においても、この理念にのっとり、人種・信条・性別・社会的身分・門地などの事項による差別があってはならず、適性・能力に基づいた基準により行われることが求められます。
国民性は、この「適性・能力」ではありません。 どの国の出身かは、その人が仕事をこなせるかどうかとは別のことだからです。同じページは、そこから外れる事項の例も挙げています。
例えば、本籍地や家族の職業など「本人に責任のない事項」や、宗教や支持政党などの「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)」は、本人が職務を遂行できるかどうかには関係のないこと・適性と能力には関係のないことであり、これらを採用基準にしないことが必要です。
同じページは、たずねること自体にも踏み込んでいます。
適性・能力に関係のない事項は、それを採用基準としないつもりでも、応募用紙に記載させたり面接時にたずねたりすれば、その内容は結果としてどうしても採否決定に影響を与えることとなり、就職差別につながるおそれがあります。
個人情報の収集にも制限があります。同ページは、求職者の個人情報を保護する観点から、職業安定法第5条の5および指針(平成11年労働省告示第141号)により、社会的差別の原因となるおそれのある個人情報などについては原則として収集が認められない、としています。[7]
つまり、「配慮の準備」と「選考の基準」は別の作業です。分けて扱えば、どちらも止まりません。
| 国民性の情報の使い道 | 可否 | 根拠・理由 |
|---|---|---|
| 受け入れ前に、職場で決めておくことを洗い出す(礼拝・食事・休暇の扱い) | 使える | 会社側の準備であり、応募者の評価ではない |
| 寮・保養所などの福利厚生施設の使い方を、日本人の従業員と別扱いにする | 使えない(法令の基準) | 省令第1条が、外国人であることを理由に福利厚生施設の利用その他の待遇で差別的な取扱いをしていないことを求めている(運用要領の例示=社員住宅・診療施設・保養所・体育館など) |
| 求人票や職場紹介で、会社が用意できる配慮を先に示す | 使える | 応募者に情報を渡す行為であり、応募者を選別しない |
| 応募者の国籍・国民性を採否の判断材料にする | 使えない(行政の考え方) | 厚生労働省は、採用選考においても「人種・信条・性別・社会的身分・門地などの事項による差別があってはならず、適性・能力に基づいた基準により行われることが求められます」としている |
| 応募者の宗教・信条を採用基準にする | 使えない(行政の考え方) | 厚生労働省は宗教を「本来自由であるべき事項」とし、採用基準にしないことが必要としている |
| 応募用紙に記載させる・面接でたずねる | 使えない(行政の考え方) | 採用基準にしないつもりでも、結果として採否決定に影響し就職差別につながるおそれがあるとされる |
| 「◯◯国の人は△△だから」を理由に賃金・労働時間などの労働条件を変える | 使えない(法令の禁止) | 労働基準法第3条が、国籍・信条・社会的身分を理由とする労働条件の差別的取扱いを禁じている |
| 社会的差別の原因となるおそれのある個人情報を集める | 使えない(法令の制限) | 厚生労働省の公正な採用選考の基本が、職業安定法第5条の5および指針(平成11年労働省告示第141号)により原則として収集が認められない、としている |
⚠️ 一律に配慮しないことと同じくらい、一律に決めつけないことが要ります。「イスラム教徒は残業できないはずだから」と会社が先回りして仕事を割り振るのは、本人の希望を確かめないまま労働条件を動かす行為にあたり得ます。
職場で決めておくこと——「配慮」と「基準」を混ぜない
礼拝スペースの用意も、食事への配慮も、特定技能の制度が企業に義務づけているものではありません。⚠️ ただし休暇は別です。 上の省令第1条は、外国人が一時帰国を希望した場合には必要な有給休暇を取得させるものとしていること、も求めています。[3]ラマダン明けや家族の行事で一時帰国を希望されたときの扱いは、会社が決める話ではなく雇用契約が満たすべき基準の話です。
一時帰国の休暇——「必ず認める」でも「会社の自由」でもない
運用要領は、この基準の中身を次のように具体化しています。[4]断りきれない義務でも、自由に断れる裁量でもない、その中間だと分かります。
- 原則 — 一時帰国の申出があった場合は、「事業の適正な運営を妨げる場合等業務上やむを得ない事情がある場合を除き、何らかの有給の休暇を取得することができるよう配慮を求めるもの」とされています。
- 断れる場合の中身 — 「業務上やむを得ない事情」は、「担当する業務が他の労働者が代替することが不可能な業務であって、休暇取得希望日に当該外国人が業務に従事しなければならないことについて合理的な理由がある場合」と定義されています。忙しいから、では足りません。
- 断るときにすること — 「業務上やむを得ない事情により、一時帰国休暇の取得を認めない場合は、代替日を提案するなどの配慮をするよう留意してください」。
- 年次有給休暇を使い切っていたら — 「既に労働基準法上の年次有給休暇を全て取得した特定技能外国人から、一時帰国を希望する申出があった場合にも、追加的な有給休暇の取得や無給休暇を取得することができるよう配慮することが望まれます」。
- 休んだ人を不利に扱わない — 「一時帰国のために休暇を取得したことを理由に、就労上の不利益な扱いをしていることが判明した場合は、本基準に不適合となることもあり得ます」。休ませたうえで査定を下げる、が最も危ない形です。
- 家族が来日したとき — 家族が「短期滞在」で来日した場合は、「家族の滞在中は有給休暇を取得することができるよう、配慮しなければなりません」とされています。⚠️ 「家族を大切にする」という記述には接地する公的資料が見当たらない一方で、家族が来たときに何をするかは制度側に書かれている、ということです。
- 書く場所 — 「一時帰国の申出があった場合は、必要な有給又は無給休暇を取得させることを特定技能雇用契約で定めることとしてください」。確認対象の書類は雇用条件書の写し(参考様式第1-6号)で、10か国語の翻訳様式が公開されています。
出入国在留管理庁の「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」は、支援を必ず行う「義務的支援」と、加えて行うことが望ましい「任意的支援」に分け、義務的支援はその全てを行う必要があり、全てを行わなければ支援計画を適正に実施していないことになるとしています(技能実習2号等から特定技能1号へ在留資格を変更した場合などで、客観的状況に照らして明らかに不要な支援は除く、という但書が付いています)。[5]その義務的支援を通して読むと、「宗教」という語が出てくるのは、生活オリエンテーションで情報提供しなければならない事項のうち「医療機関の利用方法等」の1か所だけです。
アレルギー・宗教上の理由により治療に制限がある場合は、医療機関にその旨を説明すること
礼拝スペースと食事は、義務的支援の項目に入っていません。入っていない=やらなくてよい、ではなく、特定技能の制度としては会社が決めてよいということです。⚠️ これは「他の法令も何も言っていない」という意味ではありません(このあと見る労働契約法第5条のように、別の軸がかかる場面があります)。決めた内容は求人票や職場紹介にそのまま書けるので、決めておくほど採用の場面で説明しやすくなります。
⚠️ ただし書いたら義務になります。同じ運用要領は、任意的支援についても「1号特定技能外国人支援計画に記載した場合には支援義務が生じることとなります」としています。[5]礼拝スペースの提供を支援計画に書き込めば、その時点で裁量ではなくなります。支援計画に書くのは「必ず続けられること」に絞り、それ以外は求人票や職場紹介で伝える——という切り分けが現実的です。
義務的支援そのものの中身は特定技能の義務的支援、雇用契約が満たすべき基準の全体像は特定技能で企業に求められる受け入れ要件で整理しています。
判断の材料になるのが、厚生労働省の受入れ・定着モデル事業がまとめた事業者向けマニュアルと、観光庁が飲食・宿泊事業者向けにまとめたおもてなしガイドです。⚠️ 後者は訪日旅行者の受け入れを想定した資料です。礼拝や食材そのものの説明は職場でも同じですが、どこまで対応するかの水準(専用の調理器具を用意する、貸切風呂を案内する等)は宿泊・飲食の商品設計を前提にしたもので、雇用主に課された基準ではありません。以下は「決めるときの材料」として読んでください。
礼拝——何回が勤務時間にかかるかは、季節と勤務時間帯で変わる
観光庁のガイドは、礼拝(サラート)を「夜明け前、昼、午後、日没時、夜と1日5回5分程度」とし、「礼拝の時間は日の出・日没などの太陽の動きによって決まります」としています。[8]つまり時刻は固定ではなく、季節で動きます。勤務時間にかかるのが何回になるかは、勤務時間帯と季節によって変わるので、シフトを組む前に本人と確認しておくと行き違いが起きにくくなります。 1回の所要は資料で幅があります。観光庁のガイドは「5分程度」、厚生労働省の受入れ・定着マニュアルは「1回5分〜10分」としています。[2]社内で休憩の設計をするときは、長いほうで見ておくと足りなくなりません。
⚠️ 「5回とも現場を抜けられないから無理」と先に諦めないでください。 同マニュアルは「イスラム教で1日5回の礼拝が義務付けられていますが、状況に合わせて礼拝の義務は緩和されます」とし、個人で行う場合は時間も柔軟に行われているようだ、としています。[2]どこまで必要かは人によって違うので、勤務時間帯を示したうえで本人と詰めるのが早道です。曜日については、同マニュアルがインドネシアとの面談の日程調整の注意として「金曜日は礼拝があるのでなるべく避ける」を挙げています(現地との調整についての記述で、日本国内の勤務シフトについて書かれたものではありません)。金曜の扱いも確認項目に入れておくと漏れません。
場所については「広いスペースを用意する必要はありませんが、可能であれば礼拝スペースを設けることをお勧めします」としたうえで、「畳一畳ほどのスペース、あるいは椅子一つ分ほどの仕切られた部屋があれば良いでしょう」と書かれています。⚠️ 同マニュアルは「不要」ではなく「広くなくてよいから設けることを勧める」側に立っている点に注意してください。
場所を決めるときに効くのが、観光庁のガイドの次の記述です。[8]礼拝の前に手・足などを水で清めること(ウドゥ)、「トイレなどの不潔な場所での礼拝は禁じられています」こと、「礼拝は夫婦間や家族間でなければ男女分かれて行われ」ること。ここから、場所選びで見るのは3点です——水場が近いか/トイレの個室で代替していないか/男女で分けられるか。空いているのがトイレしかない、という状態は場所を用意したことになりません。
食事——注意すべきは豚肉そのものより、加工食品と調味料
観光庁のガイドは、豚について「注意すべきは豚肉だけではありません。内臓、皮膚、体毛や豚由来成分にも注意が必要です」とし、具体例に調味料・添加物に含まれる乳化剤、ショートニング、ゼラチン、コラーゲンを挙げています。アルコールについては「多くのムスリムは酒(みりんを含む)を口にしません」とし、「醤油等の調味料に含まれる微量のアルコールについても口にしないムスリムもいる」としています。[8]社員食堂や仕出し弁当で間違えやすいのは、豚肉そのものよりこちらです。
食肉そのものにも決まりがあります。同ガイドは「イスラムの定める適切な、と畜方法で処理された肉(ハラール肉)以外を口にすることは避けるべきとされています」としています。[8]ハラル認証のある食材に切り替えるかどうかも、会社が決める範囲です。
同ガイドは調理器具・食器についても、「きちんと洗っていれば問題ないという声は多いですが、共用を不快に感じるムスリムもいます」として、専用の調理器具・調理場所・食器を用意する対応を挙げています。[8]どこまで対応するかは会社が決める部分で、決めたうえで正直に伝えるのが現実的です。
厚生労働省の受入れ・定着マニュアルは、社内行事について「歓迎会や飲食を伴う会社の行事で無理やり勧めることは絶対にやめましょう」としています。[2]
断食(ラマダン)と、日常のふるまい
ラマダンについて同マニュアルは「毎年約1か月間、日中の飲食を断ちます」「⚠️ 毎年同じ日ではありません」とし、日中は軽い水分補給のみで日没から日の出前までに1日分の食事をするため、勤務時間内に水分補給などの配慮があると良いとしています。[2]
動き方には規則があります。観光庁のガイドは、イスラム暦が西暦より1年11日短いため「西暦基準で考えると毎年早まる形になる」としています。[8]毎年およそ11日ずつ前へずれるので、いまは繁忙期を外れていても数年で重なります。
⚠️ その年の日付は在外公館の注意喚起で確認できます——在インドネシア日本国大使館が実務の確認先になります。2026年の例では、同大使館が令和8年2月18日付で断食月を2月19日から3月20日頃までとし、「その後、断食明け大祭(レバラン)及びレバラン関連休暇が3月24日(火)頃まで続く見込みです」としました。[9]断食が明けたあとに大祭と連休が続くという形なので、シフトで身構えるのは断食期間そのものより、この後半です。同大使館は「例年、レバラン期間中は帰省に伴う大規模な交通渋滞が発生します」ともしています(在留邦人への注意喚起としての記述です)。一時帰国の希望が出るとすればこの時期になりやすい、という当たりは付けられます。
⚠️ ここは「配慮があるとよい」で終わらせないほうがよい部分です。労働契約法第5条は次のように定めています。[10]
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
断食中の従業員に真夏の屋外作業をそのまま割り当てる、といった場面では、宗教への配慮というより安全の確保の問題になります。礼拝スペースを設けるかどうかとは、判断の質が違います。
日常のふるまいでは、次の3点が挙げられています。
- 頭に触れない — 厚生労働省のマニュアルは、イスラム教では頭は神聖なものとされ触ってはいけないとされる、人前で頭を叩くのはあってはならない行為、としています。[2]
- 右手を優先する — 観光庁のガイドは「イスラムの教えでは食事に右手を使うこととされています。そこから派生して、日常生活でも右手を優先的に使う人が多くいます」としています。[8]物や書類を渡す場面で効きます。
- 素肌を見せる場面 — 同ガイドは「家族以外に素肌を見せることを嫌がるムスリムが多いため、男女ともに大浴場は避ける傾向があります」とし、対応例として貸切風呂の案内を挙げています。[8]社員旅行の行き先を決めるときの論点になります。
決めることの一覧
ここが記事の中心です。 表の左端に区分を付けました。区分の意味は次のとおりで、記事の他の場所はすべてこの表を指しています。
| 区分 | 意味 | 会社にできること | 根拠 |
|---|---|---|---|
| ① | 会社が決めてよい配慮の中身 | 用意する/しないを決めて、先に開示する | 義務的支援の項目に無い(⚠️ 支援計画に書けば義務になる) |
| ② | 省令が定める雇用契約の基準 | 満たしたうえで運用を決める。満たさなければ在留資格の手続きに影響する | 特定技能雇用契約の内容の基準を定める省令 第1条 |
| ③ | 労働条件そのもの | 会社が説明できる状態を作る。変更は本人との合意が要る | 労働契約法第8条「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」(第9条は就業規則による不利益変更を制限)[10] |
⚠️ ②と③を「配慮」と呼んで会社の判断だけで動かさないでください。信条を理由に労働時間を変えれば労働基準法第3条に、断食中の作業内容は労働契約法第5条の安全の確保にかかります。
⚠️ ①の行はイスラム教を信仰する人を想定しています(およそ8人に1人には当てはまりません)。②③の行は宗教と関係なく全員にかかります。観光庁のガイドも「教えの解釈や実践方法は個人で異なる」としています。[8]①は決める項目の見本であって、全員に当てはめるチェックリストではありません。
| 区分(①配慮/②省令の基準/③労働条件) | 決めること | 論点 | 会社から先に伝えられる形 |
|---|---|---|---|
| ①+③ | 勤務中の礼拝 | かかる回数は季節と勤務時間帯で変わる。休憩の取り方で吸収できるか(⚠️ 休憩の位置をずらすなら労働条件の変更) | 「休憩時間に礼拝していただけます。1回5〜10分程度と伺っています」 |
| ① | 礼拝の場所 | 水場が近いか。トイレの個室で代替しない。専用の部屋か、会議室の空き時間の割り当てか | 「◯◯室を、使っていない時間帯に使えます。手洗い場は同じ階にあります」 |
| ① | 場所を用意しない場合 | 用意できない事情をどう伝えるか | 「礼拝専用のスペースは設けていません。休憩室をお使いいただけます」 |
| ③ | 服装 | ヒジャブを着けたまま就業できるか。⚠️ 信条に由来する服装をどこまで制限できるかの一次資料は確認できなかった=制限ありきで決めず、着けたまま就業できる形(作業帽の下・専用のもの等)を先に探す | 「作業帽の下に着けていただけます」 |
| ① | 社員食堂・仕出し弁当の中身 | 豚由来成分(乳化剤・ゼラチン等)と調味料(みりん・醤油)の表示。弁当持参の可否 | 「原材料を掲示します。豚由来の成分を含む日もあります。お弁当の持参もできます」 |
| ① | 調理器具・食器 | 専用のものを分けるか、共用のままにするか | 「調理器具は共用です/◯◯は専用のものを用意しています」 |
| ① | 歓迎会などの社内行事 | 酒や豚肉を勧めない運用を、幹事と参加者にどう周知するか | 「飲み物と食事は選べる形にします」 |
| ① | 社員旅行・慰安旅行 | 大浴場のある行き先か。個室浴・貸切の選択肢があるか。⚠️ 自社の保養所を使うなら、その利用は省令の福利厚生施設にあたる=日本人と別扱いにしない | 「大浴場のほかに個室のお風呂がある宿を選んでいます」 |
| ③ | 断食期間(ラマダン)の勤務 | 日中の休憩と水分補給、残業や夜勤の組み方。時期は年によって動く | 「期間中は休憩の取り方を相談できます」 |
| ② | 一時帰国の休暇 | 年次有給休暇を使い切った場合にどう扱うか。断るときの「業務上やむを得ない事情」を誰がどう判断するか。雇用条件書に書いたか | 「一時帰国のご希望には有給休暇で対応します。年次有給休暇を使い切っている場合もご相談ください。希望は◯か月前までに◯◯へお知らせください」 |
| ② | 寮・社宅 | ⚠️ 会社の裁量が最も狭い行です。居室は1人当たり7.5㎡以上(複数人なら居室全体÷人数)/社宅の貸与で経済的利益を得てはならず、徴収できるのは借上げに要する費用÷入居人数以内/日本人に社宅を出すなら同等に出し、広さも同等にする | 「寮は◯人部屋(1人あたり◯㎡)で、ご負担は月◯円です。借上げの費用を人数で割った額の範囲です」 |
| ② | 報酬 | 同じ仕事をする日本人と同等以上になっているか。説明できる根拠を持っているか | 「時給は◯◯円で、同じ工程の社員と同じ基準です」 |
| ③ | 残業・夜勤・休日出勤 | 断られる前提でシフトを組めるか。日本人スタッフでどうカバーするか。⚠️ 残業代が出ること自体が伝わっているか | 「残業は月◯時間程度/夜勤は月◯回のシフトです。残業には時間外手当がつきます」 |
| ① | 職場での話題のルール | 政治・宗教の議論を職場でしない、という共通ルールを置くか | 「政治と宗教の話題は職場ではしない、を全員のルールにしています」 |
厚生労働省の受入れ・定着マニュアルは、残業・休日出勤について「土日曜出勤や残業を断る」という事例を挙げ、対策としてシフトでの人材配置と、有給休暇や休日についての事前意思確認の方法をあらかじめ考えておくこと、日本人スタッフでカバーする場合は十分な説明や代休・休日出勤でフォローすることを示しています。[2]同マニュアルは別の事例で、残業を断る背景に「単純に、残業したら『残業代』が出る、という認識がないこと」もあるとして、残業すると残業代が受け取れるという説明を対策に挙げています。宗教でも国民性でもなく、説明の不足が原因のことがある、ということです。
本人に確かめるのが確実。ただし確かめる順番がある
本人の希望を確かめる場は、選考ではなく内定後の受け入れ準備に置きます。厚生労働省が「たずねること自体が就職差別につながるおそれがある」としているのは採用選考の場面についてなので、選考が終わってからのほうが、同じ会話でもリスクが小さくなります。
求人・面接の段階=会社が用意できることを開示する
礼拝の場所と時間、食事の扱い、休暇の申請方法など、会社側がすでに決めたことを職場紹介として伝えます。用意しないと決めたことも同じように伝えます。応募者の信仰をたずねる必要はありません。厚生労働省の受入れ・定着マニュアルも、面接の準備の項で「お祈りがOKなど、宗教的な配慮があることはアピールポイントになる」としています。[2]⚠️ この項は本人に希望を聞くことも勧めていて、そこは本記事が採らない部分です(下の⚠️参照)。ただし会社の側から配慮を名乗るという点は、選考の場でも安心して行えます。
内定後・受け入れ準備の段階=生活面の希望を擦り合わせる
入社日・配属・住居を決める作業と一緒に、勤務時間中の休憩の取り方、社員食堂の使い方、休日の希望の出し方を確認します。労働条件と生活の設計の話であり、採否の判断はすでに終わっています。
⚠️ 「条件を先に伝える」という順番自体は、制度側にも置かれています。 在留資格認定証明書の交付申請前(すでに日本にいる人なら在留資格の変更申請前)に行う「事前ガイダンス」は義務的支援で、情報提供しなければならない事項に「業務の内容、報酬の額その他の労働条件に関する事項」が含まれます。[5]運用要領は、実施を雇用契約の締結時以前が望まれる、ともしています。⚠️ ここで義務になっているのは労働条件の情報提供であって、礼拝や食事の配慮を開示することではありません。ただ、先に伝えてから決めるという順番は制度がすでに採っているものです。海外にいる内定者とオンラインで面談するなら、厚生労働省の受入れ・定着マニュアルが日程調整の注意として、インドネシアとの時差を日本時間マイナス2時間とし、曜日は「金曜日は礼拝があるのでなるべく避ける」ことを挙げています。[2]同マニュアルは、時間は日本時間でなく現地時間で伝えること、面接は「やさしい日本語」で行い、送るメールは漢字にふりがなを付けることも書いています。
入社後=決めた運用を定期的に見直す
最初に決めた運用が現場で回っているかを確かめます。特定技能1号では、本人と、その監督をする立場にある者(直接の上司や雇用先の代表者等)それぞれとの定期的(3か月に1回以上)な面談が義務的支援に位置づけられており、実施できるのは支援責任者または支援担当者です。[5]
⚠️ 同じ厚生労働省の資料でも、向きが違って見える部分があります。受入れ・定着マニュアルは面接前の準備として「仕事のときお祈りはしたいですか?お昼休みだけでもいいですか?」といった質問例を挙げ、面接では「宗教や文化について希望を聞き、準備できる範囲を伝える」としています。[2]一方で公正な採用選考の基本は、適性・能力に関係のない事項を面接でたずねること自体が就職差別につながるおそれがある、としています。[7]本記事は安全側に立ち、選考の場では「準備できる範囲を伝える」側だけを行い、「希望を聞く」側は内定後に回す形をとっています。⚠️ 上に引いた質問例を、そのまま面接で使わないでください。
「聞き出す」を目標にしないほうが、実際にはうまくいきます。本人が申し出やすいのは、会社が何を用意できるかを知ったあとだからです。開示が先、申し出が後。 ⚠️ 厚生労働省が示しているのは採用選考の場面の考え方なので、この順番にしても選考の基準に信条が混ざらないと言い切れるわけではありません。開示の仕方や、申し出を受けたあとの扱いによっては同じ問題が起きます。
インドネシアの人は、日本のどの分野で働いているか
介護・農業・漁業に厚く、それ以外の分野にも広く分布しています。まず全体では、インドネシアは特定技能1号の国籍・地域別で2位です。出入国在留管理庁の公表では86,523人・構成比22.6%で、ベトナムに次ぐ規模になります(2025年12月末時点)。[11]分野別・都道府県別の内訳は特定技能外国人の人数統計にまとめています。
ただし、分野ごとに顔ぶれは入れ替わります。全体ではベトナムが最多ですが、介護や農業のようにインドネシアが最も多い分野もあり、漁業のように在留者の大半をインドネシア出身者が占める分野もあります。分野ごとの内訳は上の統計記事にまとめており、受け入れの実務は分野別の記事で扱っています(インドネシア出身者の割合が高い例=特定技能で介護の外国人を採用する・農業で特定技能の外国人を採用する・漁業で特定技能の外国人を採用する)。
「インドネシア人とベトナム人のどちらを採るべきか」という比べ方をされることがあります。答えは「自社の分野にどちらの母集団が厚いか」で出ます。 分野別・国籍別の内訳を先に開き、候補者が実際に見つかりそうな国から当たる——印象で選ぶより手戻りが少なくなります。
⚠️ ここで分けておきたいのは、どの国の送り出しルートを当たるかという採用市場の選び方と、応募してきた個人を国籍で評価することは別だという点です。前者は母集団の話で、後者は上で見た採用基準の話です。国籍を選考の物差しに持ち込んだり、それを理由に賃金・労働時間などの労働条件を変えたりすれば、公正な採用選考の考え方と労働基準法第3条に戻ります。
国籍で変わること、変わらないこと
在留資格の要件は、原則として国籍では変わりません(法務省告示による例外が1か国だけあります)。変わるのは送り出し国側の手続きで、インドネシアの場合も相手国の制度に沿った登録や大使館での手続きがあります。国籍の例外と送り出し国側の手続きの詳細は、特定技能の対象国と国別の手続きで整理しています。
- 試験の受験資格 — 実は、国籍で実際に変わる条件がここにあります。技能試験の受験資格は満17歳以上が原則ですが、インドネシア国籍の場合は満18歳以上という扱いが置かれています(当サイトで確認できているのは介護と農業。農業2号は加えてミャンマー国籍も同じ扱いです)。⚠️ 一般に「17歳で受験して18歳で入国」という時間差が使えるところ、インドネシア国籍ではこの差が生まれません。分野別の条件は特定技能の試験、介護は介護分野の試験、農業は農業で特定技能の外国人を採用するにまとめています。
- 特定技能以外のルート — 介護では、インドネシアはEPA(経済連携協定)を結んだ3か国の1つです。介護福祉士の国家資格取得を前提に受け入れる別の枠組みがあり、比較は特定技能で介護の外国人を採用するで扱っています。
- 採用前の学習支援 — 漁業では、学習用テキストのインドネシア語版が大日本水産会から無料で公開されています。分野によっては、こうした現地語の教材が採用前の準備に使えます(漁業で特定技能の外国人を採用する)。
- 支援体制の言語 — 登録支援機関が対応できると届け出た言語には偏りがあります。全国の対応言語の分布は登録支援機関の統計で毎月更新しており、自社の県で母国語対応の候補が何社あるかの数え方は登録支援機関の選び方にあります。
- 採用ルート — すでに日本にいる人を採用するか、海外から呼び寄せるかで、期間も費用も変わります。違いは特定技能は国内採用と海外採用どっち?にあります。
- 入社後の支援 — 決めた配慮が現場で回るかどうかは、最終的に定着の話に合流します。入社前から1年までの時期別の実務は外国人材の定着支援で解説しています。
制度の全体像は特定技能で外国人を採用するにはにまとめています。在留資格の申請書類の作成や申請取次は行政書士などの専門家の領域です。個別の事案の判断は、行政書士などの専門家と連携して進めてください。
まとめ
やることは3つです。①宗教を一様と決めつけない——外務省の基礎データではイスラム教87%・キリスト教10.4%・ヒンズー教1.7%・仏教0.7%で、信仰が違えば配慮の中身も変わります(2023年、宗教省統計)。②職場で決めることを、配慮・省令の基準・労働条件に仕分ける——上の一覧表に区分を付けてあります。省令の基準と労働条件は、会社の一存では動かせません。③決めたことを先に開示し、本人の希望は内定後に擦り合わせる——選考の基準に信条が混ざるリスクを小さくするための順番です。
国民性の記述は、受け入れ準備の材料としては役に立ちます。採否の材料にすれば公正な採用選考の考え方に、労働条件や待遇の材料にすれば労働基準法第3条と省令の基準に触れます(この2つは賃金のように重なる部分があるので、片方だけ確認して足りるとは考えないでください)。使う場所を分けるだけで、同じ情報が準備の助けに変わります。
「インドネシアの人を受け入れる準備をどう組むか」「自社の分野だと、どの国から採用しやすいか」を相談したい場合は、条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します(提携先のサービスをご紹介しています)。
よくあるご質問
- インドネシア人の国民性には、どんな傾向があると言われますか?
- 「温厚で日本人に友好的」「信仰が生活に組み込まれている」「家族や仲間とのつながりを大切にする」といった記述がよく挙がります。ただし性格そのものを測った公的統計は、外務省・厚生労働省・出入国在留管理庁・観光庁の公表資料を確認した範囲では見つかりませんでした。公的資料で確認できるのは、厚生労働省の受入れ・定着マニュアルが文化の欄に「日本人に対し友好的」「多様性を尊重している」と記載していること(同マニュアルは出典をJETRO・外務省としています)、外務省の基礎データで民族が約1,300、宗教はイスラム教が87%であること(2023年、宗教省統計)までです。個人差が大きく、目の前の一人に当てはまるとは限りません。
- インドネシア人は全員イスラム教徒ですか?
- 全員ではありません。外務省の基礎データによると、宗教の内訳はイスラム教87%、キリスト教10.4%(プロテスタント7.4%・カトリック3%)、ヒンズー教1.7%、仏教0.7%です(2023年、宗教省統計)。イスラム教以外はおよそ13%で、8人に1人にあたります。配慮の中身は宗教によって変わります(厚生労働省の受入れ・定着マニュアルは、ネパールを例にヒンドゥー教徒が牛肉を避けることを挙げています=インドネシアの非ムスリムについて書かれた記述ではありません)。国籍から一律に決めず、本人が申し出た内容に合わせて決めるのが確実です。
- 面接で宗教や食事のことを聞いてもいいですか?
- 選考の場でたずねることはおすすめできません。厚生労働省は、宗教を「本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)」として採用基準にしないことが必要としたうえで、適性・能力に関係のない事項は「応募用紙に記載させたり面接時にたずねたりすれば、その内容は結果としてどうしても採否決定に影響を与えることとなり、就職差別につながるおそれがあります」としています。厚生労働省が示しているのは採用選考の場面の考え方なので、実務では、会社が用意できる配慮(礼拝の場所・食事の扱い・休暇の申請方法)を先に開示し、本人が必要なら申し出られる状態にしておき、具体的な擦り合わせは内定後の受け入れ準備の段階で行う形が、リスクを小さくできます。
- 職場に礼拝スペースを用意する義務はありますか?
- 礼拝スペースそのものは、特定技能の制度上の義務ではありません。出入国在留管理庁の「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」で「宗教」という語が出てくるのは、生活オリエンテーションで情報提供する事項のうち「医療機関の利用方法等」の1か所だけで、礼拝スペースや食事は義務的支援の項目に入っていません。会社が決めてよい部分です。厚生労働省の「地域外国人材受入れ・定着モデル事業」でまとめられた事業者向けマニュアル(法令ではなく実務のノウハウです)は「広いスペースを用意する必要はありませんが、可能であれば礼拝スペースを設けることをお勧めします」としたうえで、「畳一畳ほどのスペース、あるいは椅子一つ分ほどの仕切られた部屋があれば良いでしょう」としています。用意しない場合も、その旨を募集の段階で伝えておけば、入社後の食い違いは避けられます。⚠️ ただし礼拝スペースの提供を1号特定技能外国人支援計画に記載した場合は、任意的支援であっても支援義務が生じます。職場で決める項目のうち何が会社の判断で決められ、何が省令の基準や労働条件にあたるかは、本文の一覧表に区分を付けて示しています。
- インドネシア人を採用するときのタブーは何ですか?
- 厚生労働省の「地域外国人材受入れ・定着モデル事業」でまとめられた事業者向けマニュアル(法令ではなく実務のノウハウです)は、イスラム教についての参考資料で、歓迎会や飲食を伴う会社の行事で豚肉やお酒を無理やり勧めないこと、頭は神聖なものとされるため触らないこと(人前で頭を叩くのはあってはならない行為とされています)を挙げています。観光庁が飲食・宿泊事業者向けにまとめたガイド(訪日旅行者の受け入れを想定した資料で、雇用主に課された基準ではありません)は、食事に右手を使うこととされ日常生活でも右手を優先する人が多いこと、家族以外に素肌を見せることを嫌がる人が多く大浴場は避ける傾向があることを挙げています。⚠️ いずれも全員に当てはまるものではありません。同ガイドは「教えの解釈や実践方法は個人で異なる」ともしています。
出典・参考(一次情報)
- インドネシア共和国 基礎データ(民族・宗教)(外務省)
- 事業者向け受入れ・定着マニュアル ~外国人と一緒にはたらくために~(令和5年3月)(厚生労働省(地域外国人材受入れ・定着モデル事業/受託者パーソルキャリア株式会社))
- 特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令 第1条(特定技能雇用契約の内容の基準)(e-Gov法令検索)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領(令和8年4月1日一部改正/第4章 特定技能雇用契約の基準・一時帰国のための有給休暇取得に関するもの)(出入国在留管理庁)
- 1号特定技能外国人支援に関する運用要領——1号特定技能外国人支援計画の基準について(令和7年4月1日一部改正)(出入国在留管理庁)
- 労働基準法 第3条(均等待遇)(e-Gov法令検索)
- 公正な採用選考の基本(採用選考時の基本的な考え方)(厚生労働省)
- ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム 旅行者おもてなしガイド(令和6年4月)(観光庁)
- 断食月(ラマダン)における注意喚起(令和8年2月18日/2026年のラマダン・レバランの期間と帰省の状況)(在インドネシア日本国大使館)
- 労働契約法 第5条(労働者の安全への配慮)(e-Gov法令検索)
- 特定技能在留外国人数のポイント(令和7年12月末/国籍・地域別の内訳)(出入国在留管理庁)