自動車運送業で特定技能の外国人を採用するには|要件・試験・運転免許
目次
自動車運送業(トラック・タクシー・バス)で特定技能の外国人を採用しようとすると、「試験に合格した人材を見つけても、日本の運転免許がなければ現場で運転できない」というつまずきが起きやすい分野です。2024年に追加された比較的新しい分野で、区分(トラック・タクシー・バス)ごとに試験・日本語要件・必要な運転免許が分かれるためです。結論を先に言うと、自動車運送業で押さえるべき固有ルールは①区分ごとの試験と日本語要件(タクシー・バスは参照枠のB1相当以上が基本)②日本の運転免許(トラック=第一種、タクシー・バス=第二種+新任運転者研修)③自動車運送業分野特定技能協議会への加入と企業側の許可要件の3つです。そして日本の免許をまだ持たない人材については、在留資格「特定活動(特定自動車運送業準備)」で先に入国させ、雇用契約の下で免許を取らせる道筋が制度として用意されています。このページで、これらを順に整理します。
この記事の要点
- 区分はトラック・タクシー・バスの3つ — 区分ごとに「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」があり、日本語要件も「日本語教育の参照枠」でトラックはA2.2相当以上、旅客を扱うタクシー・バスはB1相当以上(企業が一定の措置を講じる場合はA2.2相当)と異なります。
- 日本の運転免許が前提(この分野固有) — 試験合格や在留資格とは別に、トラックは第一種、タクシー・バスは第二種運転免許+新任運転者研修の修了が必要です。免許取得・切替の期間を採用計画に見込みます。
- 外免切替が使えるのは第一種免許まで — トラックは外国免許からの切替が使えますが、タクシー・バスに必要な第二種免許は外免切替の対象外で、日本国内での取得が必要です。第二種免許には受験資格(原則21歳以上・免許保有通算3年以上)もあり、旅客区分の採用難度を大きく左右します。受験資格は大型免許・中型免許(第一種)にも定められているため、大型車・中型車を運転させるトラック区分でも同じ確認が必要です。
- 日本の免許がない人材には準備期間の在留資格がある — 「特定活動(特定自動車運送業準備)」で入国させ、雇用契約の下で免許取得・新任運転者研修を進められます。在留期間の上限はトラック6か月・タクシー・バス1年で、更新はできません。
- 協議会への加入と企業側の許可要件がある・所管は国土交通省 — 受け入れ企業は在留諸申請の前に自動車運送業分野特定技能協議会の構成員になるほか、自動車運送事業を営む者であることなど固有の要件を満たす必要があります。
本記事は一般的な情報提供です。自動車運送業分野は2024年に追加された新しい分野で、要件・運用が整備途上のため、最新の内容は出入国在留管理庁および国土交通省の分野別の運用方針で必ず確認してください。
自動車運送業の特定技能はここが特徴
自動車運送業で特定技能を受け入れるときは、他の分野にはない固有のポイントが前提になります。まずここを押さえます。[1]
- 2024年3月29日の閣議決定で追加された新しい分野 — 運用が整備途上のため、最新情報の確認が特に重要です。現状は特定技能1号のみで、特定技能2号での受入れはできません(分野固有の運用要領で明記)。
- 業務区分はトラック・タクシー・バス — 事業用自動車の運転と、これに付随する業務が対象です。区分ごとに試験・要件が分かれます。
- 日本の運転免許が必要(この分野固有) — トラックは第一種運転免許、タクシー・バスは第二種運転免許+新任運転者研修の修了が求められます。
- 免許取得のための準備在留がある(この分野固有) — 免許・研修が未了の人材は「特定活動(特定自動車運送業準備)」で受け入れられます。
- 日本語要件が区分で異なる — 旅客を扱うタクシー・バスは「日本語教育の参照枠」のB1相当以上(企業が一定の措置を講じる場合はA2.2相当)、貨物中心のトラックは同参照枠のA2.2相当以上が基準です。実務上の証明書類は、トラックがJFT-BasicまたはJLPT N4以上、タクシー・バスがJLPT N3以上とされています。
- 雇用形態は直接雇用に限られる — 労働者派遣による受け入れはできません。
- 自動車運送業分野特定技能協議会への加入が必要 — 受け入れ企業は在留諸申請の前に協議会の構成員になります(所管は国土交通省)。
以下で、それぞれを詳しく見ていきます。
業務区分ごとの要件比較(トラック・タクシー・バス)
自動車運送業の要件は、トラック(貨物)とタクシー・バス(旅客)とで、日本語レベル・運転免許・追加要件が変わるのが最大のポイントです。まずは区分ごとの違いを一覧で確認してください。
| 区分 | 技能試験 | 日本語要件 | 運転免許 | 外免切替の可否 | 追加要件 | 準備在留の上限 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| トラック(貨物) | 自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック区分) | 「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上(証明=JFT-Basic または JLPT N4以上) | 第一種運転免許 | 切替の対象になり得る | なし | 6か月 |
| タクシー(旅客) | 自動車運送業分野特定技能1号評価試験(タクシー区分) | 「日本語教育の参照枠」のB1相当以上(またはA2.2相当※・証明=JLPT N3以上) | 第二種運転免許 | 対象外(日本国内で取得が必要) | 新任運転者研修の修了 | 1年 |
| バス(旅客) | 自動車運送業分野特定技能1号評価試験(バス区分) | 「日本語教育の参照枠」のB1相当以上(またはA2.2相当※・証明=JLPT N3以上) | 第二種運転免許 | 対象外(日本国内で取得が必要) | 新任運転者研修の修了 | 1年 |
日本語能力を証明する書類は、運用要領で区分ごとに次のとおり定められています(実務で提出するもの)。上の「日本語要件」は分野別運用方針が定める水準、こちらはその水準を実際に証明する試験です。[2]
| 区分 | 日本語能力を証する書類として認められる試験 |
|---|---|
| トラック(貨物) | 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の合格証明書、または日本語能力試験(JLPT)N4以上の合格証明書のいずれか |
| タクシー(旅客) | 日本語能力試験(JLPT)N3以上の合格証明書 |
| バス(旅客) | 日本語能力試験(JLPT)N3以上の合格証明書 |
トラックについては、修了した技能実習2号の職種・作業の種類にかかわらず、技能実習2号を良好に修了した者はJFT-Basic・日本語能力試験(N4以上)のいずれの試験も免除されます(後述)。
※タクシー・バスは、受け入れ企業が「B1相当以上の日本語能力修得に向けた学習プランの作成」と「乗客対応の指導を受けた自社の従業員を意思疎通の補助要員として同乗させること」(バスの離島路線等には代替措置あり)の両方を行う場合に限り、A2.2相当の人材にも従事させられます(一般貸切旅客自動車運送事業=いわゆる貸切バス・観光バスの事業は、この引き下げ措置の対象から除かれます)。「準備在留の上限」=在留資格「特定活動(特定自動車運送業準備)」で在留できる期間の上限です。
ポイントは、旅客を扱うタクシー・バスは、貨物中心のトラックより日本語要件・免許・研修のすべてで一段高いハードルが課されることです。自社が採用したい区分がどこに当たるかを最初に確認し、必要な準備を区分ごとに見積もっておきましょう。
分野をまたぐ試験の全体像(日本語試験の要件・技能実習2号修了による免除ルート・分野別の試験名一覧)は特定技能の試験で解説しています。
日本の免許がない人材を受け入れる道筋——在留資格「特定活動(特定自動車運送業準備)」
自動車運送業の採用計画でつまずきやすいのが、「試験には受かったが日本の運転免許がない人材をどう受け入れるか」という問題です。この分野には、そのための専用の在留資格が用意されています。[3]
なお前提として、自動車運送業分野特定技能1号評価試験の受験には、日本または外国で取得した有効な運転免許の保有が必要です(後述の試験概要を参照)。つまりこの分野で採用対象になるのは「運転免許を一切持たない人材」ではなく、母国などで免許を持っているが、日本の免許をまだ持っていない人材です。
制度の趣旨 — 1号特定技能外国人として自動車運送業分野の業務に従事するには、日本の運転免許の取得(タクシー・バスではさらに新任運転者研修の修了)が必要になるため、その準備期間として在留資格「特定活動」による入国・在留が認められています。
分野別運用方針では、運転免許の取得や新任運転者研修の受講以外の要件を満たした者について、受入れ機関との雇用契約の下で入国・在留を認めるとされています。つまり技能試験・日本語試験には合格済みであることが前提で、かつ在留の初日から企業との雇用契約が存在する構造です。[4]
| 特定活動(特定自動車運送業準備)の項目 | 内容 |
|---|---|
| 在留期間の上限 | トラック運送業=6か月/タクシー運送業・バス運送業=1年 |
| 在留期間の更新 | できない |
| 特定技能1号の通算在留期間への算入 | 算入されない |
| 雇用契約 | 受入れ機関との雇用契約の下で在留する |
| 前提となる要件 | 技能試験・日本語試験の合格(日本の運転免許の取得・新任運転者研修の受講以外の要件を満たしていること) |
| 認められる活動 | 運転免許の取得手続、新任運転者研修の受講、車両清掃等の関連作業 |
企業にとって重要な点は3つあります。
- 準備期間は特定技能1号の5年を消費しない — この在留期間は特定技能1号の通算在留期間に算入されません。準備期間を使っても、その後の特定技能1号としての在留可能期間が短くなることはありません。
- 在留期間は更新できない — トラック6か月・タクシー・バス1年という上限内に免許取得(と新任運転者研修)が完了しなければなりません。教習所の予約状況や試験の再受験まで見込んだ計画が必要です。なお免許取得後に特定技能1号として働くには、在留資格変更許可申請が別途必要です(自動的に切り替わるものではありません)。期間内に免許取得が完了しない場合、この在留資格のまま在留を続けることはできません。[2]
- この期間は営業運転ができない — 認められる活動は免許取得手続・研修受講・車両清掃等の関連作業に限られます。雇用契約の下にあるため人件費は発生する一方、売上を生む運転業務には従事させられないということです。この準備期間中の人件費は、採用計画の段階で見込んでおく必要があります。
日本の運転免許は別の段取りが必要(この分野の要)
自動車運送業がほかの分野と最も違うのは、日本の運転免許が業務の前提になる点です。
- トラック(貨物) — 第一種運転免許。車両区分に応じた免許が必要です。
- タクシー・バス(旅客) — 第二種運転免許に加えて、新任運転者研修の修了が求められます。
免許を用意する経路は、大きく2つに分かれます。
経路①:外国の免許から切り替える(外免切替)——ただし第一種免許のみ
すでに母国で運転免許を持っている人材について、日本の免許に切り替える方法です。切替には、外国の運転免許を受けた後、その国等に通算して3か月以上滞在していたことが条件とされています(警察庁)。この滞在実績が確認できない場合は切替の対象になりません。
ここが自動車運送業の採用で決定的に重要な点です。外免切替の対象は第一種免許であり、第二種免許は対象外です。 警察庁の「外国免許等関係事務取扱い要領」は、この一部免除の対象を一貫して「第一種免許の運転免許試験の一部免除」として定めており、第二種免許についての規定は置かれていません。[5]
つまり、トラック(第一種)は外免切替が使えるのに対し、タクシー・バス(第二種)は外免切替では免許を用意できません。タクシー・バスで採用する場合は、後述のとおり日本国内で第二種免許を取得する経路しかありません。
なお外免切替の手続きは2025年10月1日から見直しが実施されており、住民票の写しの提出が原則として必要になったほか、短期滞在の在留資格では申請が認められないこと、学科・技能の確認方法が厳格化されたことが公表されています。[6]切替がどの程度スムーズに進むかは国籍や個人の状況によって変わるため、採用前に候補者ごとに切替の可否と必要な手続きを確認しておくことをおすすめします。
経路②:日本で新たに第二種免許等を取得する
外免切替の要件を満たさない場合、およびタクシー・バスで必要な第二種免許については、日本国内で取得することになります。ここで採用可否を実際に左右するのが、第二種免許の受験資格です。
- 原則 — 21歳以上で、普通免許等の保有期間が通算3年以上であること。
- 受験資格特例教習を修了した場合 — 19歳以上・保有期間が通算1年以上に緩和されます(2022年5月13日施行)。[7]
この受験資格は第二種免許だけの話ではありません。 警察庁の受験資格特例教習の対象は「第二種免許、大型免許及び中型免許」とされており、大型免許・中型免許(いずれも第一種)にも受験資格が定められています。原則は免許ごとに異なり、大型免許は21歳以上・保有期間が通算3年以上、中型免許は20歳以上・通算2年以上です(特例教習を修了した場合はいずれも19歳以上・通算1年以上)。
つまりトラック区分でも、大型車・中型車を運転させる場合は同じ制約がかかります。トラックの準備在留の上限は6か月とタクシー・バスより短いため、大型・中型免許の取得を前提にした採用では、期間内に受験資格を満たして取得まで到達できるかを、より早い段階で確認しておく必要があります。
外国で取得した運転免許の保有期間が、この「通算3年(中型は2年・特例の場合1年)」に算入されるかどうかは、公的な一次情報で確認できませんでした。 ここは採用可否と期間計画を大きく左右する論点です。第二種免許が必要なタクシー・バスはもちろん、大型車・中型車を運転させるトラックでの採用でも、候補者ごとに、管轄の運転免許試験場・公安委員会へ個別に確認することを強くおすすめします。本記事では確認できていない事項を断定せず、確認すべき論点として記載しています。
第二種免許の受験資格が満たせるかどうかは、前述の「特定活動(特定自動車運送業準備)」の在留期間の上限(タクシー・バスは1年・更新不可)の中で免許取得が完了するかに直結します。タクシー・バス区分の採用計画では、この受験資格の充足見込みを最初に確認しておくのが安全です。
いずれの経路でも、免許取得は技能試験の合格や在留資格の取得とは別の手続き・期間です。前節の「特定活動(特定自動車運送業準備)」の在留期間の上限(トラック6か月・タクシー・バス1年)は更新できないため、この期間内に免許取得が完了する見通しが立つかどうかが、候補者を選ぶ段階での実質的な判断基準になります。
就業までの流れと期間の見通し
自動車運送業では「採用を決めてから実際にハンドルを握るまで」に複数の段取りが挟まります。候補者の状態によって必要なステップが変わるため、3つのパターンに分けて整理します。
| 候補者の状態 | 就業までに必要なステップ | 期間の考え方 |
|---|---|---|
| 日本の運転免許を保有済み(国内在住者など) | 協議会加入 →(タクシー・バスは資格外活動許可を得たうえで)新任運転者研修の受講・修了 → 特定技能1号への在留諸申請(研修の修了を証する書類を提出)→ 許可 → 就業 | 免許取得の期間が不要なため最短 |
| 試験合格済み・日本の免許は未取得(母国等の免許は保有) | 協議会加入 → 特定活動(特定自動車運送業準備)での在留諸申請 → 入国・日本の免許取得(タクシー・バスは新任運転者研修)→ 特定技能1号への在留資格変更許可申請 → 就業 | 特定活動の在留期間の上限(トラック6か月・タクシー・バス1年)が、日本の免許取得に充てられる最大期間 |
| 技能試験・日本語試験が未受験(母国等の免許は保有) | 技能試験・日本語試験の受験・合格 → 上記いずれかの流れへ | 試験の実施時期に左右される |
期間を見積もるうえでの固定的な制約は、次の3つです。
- 協議会への加入は在留諸申請の「前」に済ませる必要がある — 順序が決まっているため、ここが遅れると全体が後ろにずれます。国土交通省のQ&Aでは、事務局における届出事項の内容確認に1か月程度を要する見込みとされています。加入申請は国土交通省のサイトからオンラインで行います。
- タクシー・バスは新任運転者研修の修了が在留申請の前提 — 研修の修了を証する書類は在留諸申請時の提出書類です。就業してから研修を行う順序ではない点に注意してください。
- 準備在留の上限は更新できない — トラック6か月・タクシー・バス1年が、免許取得に充てられる最大の期間です。
- タクシー・バスは新任運転者研修が追加で必要 — この研修は受け入れ企業が実施します(後述)。
就業までの実際の所要期間は、候補者の国籍・免許の有無・教習所の予約状況・試験の実施時期によって大きく変わります。上の表は制度上の順序と上限を示したもので、特定の月数を保証するものではありません。自社のケースでの見通しは、採用を計画する段階で個別に確認してください。
対象となる業務
自動車運送業で従事できるのは、事業用自動車の運転と、これに付随する業務全般です。トラックでの貨物輸送、タクシーでの旅客輸送、バスでの旅客輸送が、それぞれの区分に対応します。
なお、運転ではなく倉庫内での入出庫・保管などの倉庫内作業を任せたい場合は対象分野が異なります。受け入れ開始前ですが整備が進んでいる特定技能「物流倉庫」の解説をご覧ください。
自動車運送業分野特定技能1号評価試験と、トラック区分の免除ルート
自動車運送業分野特定技能1号評価試験は、一般財団法人日本海事協会(ClassNK)が実施します。区分(トラック・タクシー・バス)ごとに試験が分かれます。
| 自動車運送業分野特定技能1号評価試験の項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施団体 | 一般財団法人日本海事協会(ClassNK) |
| 試験方式 | CBT方式またはペーパーテスト方式 |
| 出題構成 | 学科試験(真偽法○×式・30問)+実技試験(三肢択一・20問) |
| 試験時間 | 学科・実技あわせて80分 |
| 合格基準 | 学科試験・実技試験それぞれ正答率60%以上(両方を満たす必要がある) |
| 受験資格 | 試験実施日に満17歳以上で、日本または外国で取得した有効な自動車運転免許を保有していること |
| 合格証明書の有効期限 | 受験日から10年 |
トラック区分には日本語試験の免除ルートがあります。 運用要領では、トラック運送業について、修了した技能実習2号の職種・作業の種類にかかわらず、技能実習2号を良好に修了した者は日本語試験(JFT-Basic・日本語能力試験のいずれも)が免除されるとされています。技能実習からの移行を検討している企業にとっては、候補者の幅が広がるポイントです。[8]
この免除は日本語試験についてのもので、自動車運送業分野特定技能1号評価試験(技能試験)は免除されません。またこの免除規定はトラック運送業について定められており、タクシー・バスには同様の規定は置かれていません。
日本語試験そのものの種類・水準・分野をまたぐ免除ルールの全体像は特定技能の日本語試験で解説しています。
受け入れ企業に求められる要件
自動車運送業で受け入れるには、企業側に次のような条件が求められます。この分野は事業者側の要件が他分野より細かく定められているため、採用を計画する段階で自社が満たせるかを確認しておきます。
- 自動車運送事業を営む者であること — 貨物利用運送事業法上の第二種貨物利用運送事業を含め、道路運送法上の自動車運送事業を営んでいる(日本標準産業分類の中分類43「道路旅客運送業」または中分類44「道路貨物運送業」に該当する事業を行っている)ことが前提です。
- 職場環境に関する認証の保有 — 一般財団法人日本海事協会の「運転者職場環境良好度認証制度」の認証を受けていることが基本です。加えて、最新の分野別運用方針(別紙10)では、トラック運送業の特定技能所属機関については、全国貨物自動車運送適正化事業実施機関が認定する「安全性優良事業所(Gマーク)」を有する場合も要件を満たすとされています。なおGマークは貨物自動車運送事業を対象とする評価制度であるため、タクシー・バスの事業者は実際には運転者職場環境良好度認証によることになります。自社が未取得の場合は要注意です。 運転者職場環境良好度認証(働きやすい職場認証制度)の申請には、運送事業の許可取得後3年以上を経過していることが基本要件とされています(企業グループの再編等で他社の就業規則等を承継している場合などの例外あり。一般財団法人日本海事協会の申請案内書〔2026年度版〕でも維持されています)。したがって設立まもない事業者は、認証の取得という経路では要件を満たせない期間が生じます。 ただしこれは受け入れの可否を一律に決めるものではありません。トラック運送業であればGマークという別経路があり、Gマークを保有していれば認証がなくても要件を満たせます。 一方でタクシー・バスはGマークによる代替が規定されていないため、認証の3年要件がそのまま受け入れ可否に効きます。 認証・Gマークのいずれの経路でも要件を満たせない場合は、その時点では受け入れ計画自体の見直しが必要です。採用計画の最初に確認すべき条件です。[2][4][9][10]
- 雇用形態は直接雇用に限られる — 労働者派遣の対象となることを内容とする特定技能雇用契約を締結していないことが上陸許可基準で求められています。1号特定技能外国人を派遣することも、派遣された者を受け入れることもできません。
- 旅客区分は新任運転者研修の実施体制 — タクシー・バスで受け入れる場合、受け入れ企業側が新任運転者研修を実施する必要があります。この研修は旅客自動車運送事業運輸規則第38条第1項・第2項・第5項および第39条に規定する指導・監督・特別な指導と、適性診断の受診を指します。
- タクシー・バスはB1相当が原則、企業の措置でA2.2相当への引き下げも可能(一般貸切を除く) — タクシー・バス(旅客)の日本語要件は「日本語教育の参照枠」のB1相当以上が原則ですが、受け入れ企業がB1相当以上の日本語能力修得に向けた日本語学習プランを作成し、乗客対応の指導を受けた自社の従業員を意思疎通の補助要員として同乗させる(バスの離島路線等には代替措置あり)場合に限り、A2.2相当の人材にも従事させられます(2026年4月10日施行の基準改正で新設。一般貸切旅客自動車運送事業を除く)。[11]
- 自動車運送業分野特定技能協議会への加入(在留諸申請の前) — 受け入れ企業は、在留諸申請の前に協議会の構成員にならなければなりません。支援計画の全部を登録支援機関に委託する場合、その登録支援機関も協議会に加入する必要があります。[12]
- 所管省庁の調査等への協力 — 国土交通省が行う調査や指導に協力すること。
自動車運送業分野の受入れ見込数(トラック・タクシー・バスの合計)は、令和6年度からの5年間で2万2,100人とされています(2026年1月23日の閣議決定で改定)。分野別運用方針は改定されることがあり、上限に達すると新規受け入れが一時停止される可能性もあるため、採用時期が近づいたら最新の運用状況を国土交通省・出入国在留管理庁の公表情報で確認してください。
企業側に共通して求められる受け入れ要件は特定技能で企業に求められる受け入れ要件、採用全体の流れは特定技能の採用の流れで解説しています。
費用の目安
自動車運送業でも、費用の考え方は「初期費用+月額の支援委託費」が基本ですが、ドライバー採用ではこれに固有の費用が加わります。
- 初期費用 — 人材紹介手数料(人材紹介手数料の相場)、在留資格の申請費用、渡航費など、他分野と共通の項目です。
- ドライバー固有の費用 — 運転免許の取得・切替の費用、準備期間(特定活動)の人件費、初任診断(3区分共通)と新任運転者研修(タクシー・バス)・初任運転者への特別な指導(トラック)の実施費用、職場環境に関する認証の取得費用。認証の費用は全区分一律ではありません=トラック運送業は安全性優良事業所(Gマーク)でも要件を満たせるため、Gマークを取得済みなら働きやすい職場認証の取得費用はかかりません。タクシー・バスはGマークによる代替が規定されていないため、未取得なら認証の取得費用が生じます。なお免許取得費用の回収を条件づける契約には、受け入れができなくなるおそれのある類型が運用要領に明記されているため、負担の設計には注意が必要です。
- 月額 — 登録支援機関への支援委託費(1人あたり月15,000〜30,000円程度が目安)。
免許費用・準備期間の人件費の見込み方・認証の料金・協議会の会費(無料)まで、ドライバー採用の費用の内訳と金額は自動車運送業(ドライバー)の特定技能 採用費用・相場で詳しく解説しています。
なお、在留資格の申請書類の作成や申請取次は行政書士などの専門家の領域です。必要に応じて行政書士などの専門家と連携して進めます。総額の内訳と採用ルート別のモデル(全分野共通)は特定技能の採用費用・相場で整理しています。
登録支援機関の活用
自社で生活支援の体制を整えるのが難しい場合は、登録支援機関へ委託できます(自社支援と委託の比較は自社支援か登録支援機関への委託か)。選び方は登録支援機関の選び方、契約前の確認は契約前チェックリストを参考にしてください。採用後の定着の工夫は特定技能外国人の定着支援で解説しています。
まとめ
自動車運送業で特定技能の外国人を採用するには、①区分(トラック・タクシー・バス)ごとの試験と日本語要件(タクシー・バスは参照枠のB1相当以上が基本)②日本の運転免許(トラック=第一種、タクシー・バス=第二種+新任運転者研修)③自動車運送業分野特定技能協議会への加入(在留諸申請の前)と企業側の許可要件(職場環境に関する認証・直接雇用)④受入れ見込数(5年間で2万2,100人)を押さえることが第一歩です。
日本の免許がない人材については、在留資格「特定活動(特定自動車運送業準備)」で先に受け入れることができ、雇用契約の下で免許取得を進められます。とくにタクシー・バスは、第二種免許が外免切替の対象外で日本国内での取得が必要なうえ受験資格(原則21歳以上・免許保有通算3年以上)もあるため、準備在留1年の中で取得を完了できるかが実務上の関門になります。この期間は特定技能1号の5年を消費しない一方、更新ができず、営業運転もできない(=準備期間中も人件費だけは発生し続ける)という二面性があるため、期間内に免許取得が完了する計画を立てられるかが実務上の分かれ目になります。2024年に追加された新しい分野で運用が整備途上のため、最新の運用方針を必ず確認しましょう。
制度の全体像は特定技能採用の完全ガイド、対象分野の一覧は特定技能の対象分野一覧、よくある失敗は特定技能採用でよくある失敗と注意点をご覧ください。
「自社で自動車運送業の特定技能外国人を受け入れられるか」「運転免許や日本語要件、ドライバー採用の費用の段取り」を相談したい場合は、条件に合う登録支援機関・人材紹介会社を無料でご紹介します(提携先のサービスをご紹介しています)。
よくあるご質問
- 外国人をトラックドライバーやバス運転手として採用できますか?
- はい、可能です。特定技能『自動車運送業』分野には、トラック(貨物)・タクシー・バス(旅客)の3区分があり、それぞれの区分に対応する自動車運送業分野特定技能1号評価試験に合格し、日本語要件(トラックは「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上、タクシー・バスは同参照枠のB1相当以上。企業が一定の措置を講じる場合はA2.2相当でも可)と日本の運転免許(トラックは第一種、タクシー・バスは第二種運転免許+新任運転者研修の修了)を満たす人材であれば採用できます。区分ごとの要件の違いは本文の比較表で確認してください。
- 日本の運転免許を持っていない外国人を採用することはできますか?
- できます。技能試験・日本語試験に合格しているものの日本の運転免許や新任運転者研修がまだの人材については、受入れ機関との雇用契約の下で、在留資格「特定活動(特定自動車運送業準備)」による入国・在留が認められています。なお技能試験の受験には日本または外国で取得した有効な運転免許の保有が必要なため、対象になるのは「運転免許を一切持たない人材」ではなく「母国などの免許はあるが日本の免許がまだない人材」です。在留期間の上限はトラック運送業が6か月、タクシー運送業・バス運送業が1年で、この期間中に免許取得や新任運転者研修を進めます。ただしこの在留期間は更新できないため、期間内に免許取得が完了する計画を立てる必要があります。詳しくは本文の解説をご覧ください。
- 特定活動(特定自動車運送業準備)の期間は特定技能1号の5年に含まれますか?
- 含まれません。特定活動(特定自動車運送業準備)による在留期間は、特定技能1号の通算在留期間には算入されないことが分野別運用方針で定められています。つまり免許取得のための準備期間を使っても、その後の特定技能1号としての在留可能期間が短くなることはありません。ただし特定活動の在留期間そのもの(トラック6か月・タクシー・バス1年)は更新できない点に注意してください。
- 自動車運送業で特定技能の外国人を採用するには何が必要ですか?
- 採用する外国人が、自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック・タクシー・バスの区分ごと)に合格し、日本語要件を満たすことが基本です。日本語はトラックが「日本語教育の参照枠」のA2.2相当以上(証明は国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上)、タクシー・バスは同参照枠のB1相当以上(証明は日本語能力試験N3以上。企業が一定の措置を講じる場合はA2.2相当)が求められます。加えて、日本の運転免許(トラックは第一種、タクシー・バスは第二種運転免許+新任運転者研修の修了)が必要です。企業側は受け入れ要件を満たし、在留諸申請の前に自動車運送業分野特定技能協議会の構成員になる必要があります。
- 外国の運転免許を日本の免許に切り替えれば、タクシーやバスの運転手として採用できますか?
- できません。外国免許からの切替(外免切替)の対象は第一種免許であり、タクシー・バスに必要な第二種運転免許は切替の対象外です。そのため第二種免許は日本国内で取得する必要があります。第二種免許には受験資格があり、原則として21歳以上かつ普通免許等の保有期間が通算3年以上あること(受験資格特例教習を修了した場合は19歳以上・通算1年以上)が求められます。外国で取得した免許の保有期間がこの通算期間に算入されるかは公的な一次情報で確認できないため、候補者ごとに管轄の運転免許試験場・公安委員会へ個別に確認することをおすすめします。トラック(第一種免許)は外免切替の対象になり得ますが、受験資格は大型免許(21歳以上・通算3年以上)・中型免許(20歳以上・通算2年以上)にも定められているため、大型車・中型車を運転させる場合は同じ確認が必要です。
- 自動車運送業の特定技能で外国人がすぐ運転できますか?
- 業務に従事するには日本の運転免許が必要です。トラックは第一種運転免許、タクシー・バスは第二種運転免許に加えて新任運転者研修の修了が求められます。試験合格や在留資格の取得とは別に、日本での免許取得・切替の段取りが必要になる点に注意してください。日本の免許をまだ持たない人材については在留資格「特定活動(特定自動車運送業準備)」で入国させ、雇用契約の下で免許取得を進める道筋が用意されていますが、この期間は営業運転に従事させられません。
- 自動車運送業の特定技能でタクシー・バスの日本語要件が高いのはなぜですか?
- タクシー・バスは旅客を直接乗せ、案内や安全確保で乗客とのやり取りが多いため、「日本語教育の参照枠」のB1相当以上が基本です(受け入れ企業が日本語学習プランの作成や意思疎通を補助する要員の同乗などの措置を講じる場合は、A2.2相当でも従事できます。一般貸切旅客自動車運送事業を除く)。貨物が中心のトラックは同参照枠のA2.2相当以上(または国際交流基金日本語基礎テスト)が基準で、区分によって日本語要件が異なります。自社が採用したい区分の要件を最初に確認しておくと、人材の見極めがしやすくなります。
- 自動車運送業の特定技能で受け入れられる人数に上限はありますか?
- あります。自動車運送業分野の受入れ見込数は、トラック・タクシー・バスの合計で令和6年度からの5年間に2万2,100人とされています(2026年1月23日の閣議決定で改定)。分野別運用方針は改定されることがあり、上限に達すると新規受け入れが一時停止される可能性もあるため、採用を計画する段階で最新の運用状況を確認しておきましょう。
- 自動車運送業でドライバーを採用する費用には何が含まれますか?
- 初期費用(人材紹介手数料・在留資格の申請費用・渡航費)と月額の支援委託費という基本構成に加えて、この分野特有の費用として、運転免許の取得・切替の費用、在留資格「特定活動(特定自動車運送業準備)」の準備期間中の人件費、初任診断(トラック・タクシー・バスの3区分に共通)とタクシー・バス区分の新任運転者研修・トラック区分の初任運転者への特別な指導の実施費用、職場環境に関する認証の取得費用(要件を未充足の企業のみ)があります。認証の費用は全区分一律ではなく、トラック運送業は安全性優良事業所(Gマーク)でも要件を満たせるため、Gマークを取得済みなら働きやすい職場認証の取得費用はかかりません。タクシー・バスはGマークによる代替が規定されていないため、実際には認証によることになります。なお自動車運送業分野特定技能協議会の入会金・年会費は発生しません。具体的な金額の目安は自動車運送業(ドライバー)の特定技能 採用費用・相場のページで解説しています。
出典・参考(一次情報)
- 自動車運送業分野(出入国在留管理庁)
- 自動車運送業分野における特定技能の運用(日本語能力を証する書類・別表/在留期間の更新の可否・特定技能1号への変更手続/事業者要件・協議会加入時期・試験免除)(出入国在留管理庁)
- 特定活動(特定自動車運送業準備)(出入国在留管理庁)
- 自動車運送業分野の分野別運用方針(別紙10・特定活動による受入れ・在留期間の上限/受入れ見込数・職場環境に関する認証・令和8年1月23日閣議決定)(出入国在留管理庁)
- 外国免許等関係事務取扱い要領(第一種免許の運転免許試験の一部免除)(警察庁)
- 国家公安委員会委員長記者会見(外免切替の見直し・2025年10月1日開始)(国家公安委員会)
- 受験資格特例教習(第二種免許等の受験資格の特例)(警察庁)
- 自動車運送業分野特定技能1号評価試験実施要領(出入国在留管理庁)
- 働きやすい職場認証制度(運転者職場環境良好度認証制度)2026年度版 申請案内書(事業許可取得後3年以上の基本要件)(日本海事協会(国土交通省指定認証実施団体))
- 貨物自動車運送事業安全性評価事業(Gマーク制度)(全日本トラック協会(全国貨物自動車運送適正化事業実施機関))
- 自動車運送業分野の基準改正(日本語能力に応じた追加措置の新設・2026年4月10日施行)(出入国在留管理庁)
- 特定技能(自動車運送業分野)Q&A(協議会の加入手続・入会金/年会費・新任運転者研修と在留申請の順序)(国土交通省)