育成就労から特定技能への移行|要件・試験・流れをわかりやすく解説
目次
「育成就労で採用すれば、そのまま特定技能で長く働いてもらえるのか」「移行までに自社は何を準備すればいいのか」——育成就労での受け入れを検討する企業が、最初に突き当たる2つの疑問です。結論を先に言うと、移行は自動ではなく、本人が技能と日本語の試験に合格することが要件です。要件を満たせば育成就労(原則3年)+特定技能1号(通算最長5年)が1本の道筋になり、適正に育成したうえで不合格だった場合には、最長1年の育成就労の継続という受け皿も用意されています。このページでは、出入国在留管理庁の基本方針・分野別運用方針・育成就労制度運用要領をもとに、移行の要件・採用時期と移行時期の関係・不合格時の実務・企業の準備を整理します。
この記事の要点
- 要件は「技能の試験」と「日本語の試験」の合格 — 出入国在留管理庁の基本方針(令和7年3月11日閣議決定)は、育成就労を終了するまでに技能検定3級等または特定技能評価試験に合格し、日本語は「日本語教育の参照枠」のA2相当以上を基本としつつ分野ごとの水準(2026年8月時点の別紙では原則A2.2相当以上)を満たすことを求めています。育成就労を修了しただけでは移行できません。
- 不合格=即打ち切り、ではない — 適正な育成就労を行っていたにもかかわらず目標の試験に不合格だった場合などは、育成就労計画の変更認定を受けて最長1年まで育成就労を続け、再受験できます。延ばせるのは育成就労の側で、特定技能の在留期間ではありません。
- 企業の準備は「受験させる義務」から逆算する — 育成就労制度運用要領(令和8年8月版)は、育成就労実施者に対し、開始から1年目までの試験と、終了までの目標試験を受験させる義務を課しています。3年の育成計画は、この受験時期から逆算して組みます。なお在留資格の申請の取次や書類の作成は行政書士などの専門家の領域です。
育成就労制度は2027年4月1日の施行に向けた準備段階です。基本方針・分野別運用方針・運用要領は公表済みですが、一部の細目は今後の公表・改正で変わり得ます。本記事は2026年8月8日時点の公表内容に基づく一般的な情報提供です。最新の要件は出入国在留管理庁の公表で必ず確認してください。
育成就労と特定技能はセットの制度
育成就労は単独で完結する制度ではなく、特定技能1号への接続を前提に設計された制度です。出入国在留管理庁の基本方針(令和7年3月11日閣議決定)第三は、育成就労の期間を3年とし、育成就労を終了するまでに「育成就労産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能」を修得していることを求めています。これは同じ基本方針が1号特定技能外国人に求める技能水準と同じ表現で、育成就労のゴールが特定技能1号の入口に重なるように置かれているということです。[1]
分野の対応関係も同じ考え方で組まれています。令和8年1月23日閣議決定の分野別運用方針は、特定技能の対象分野のうち航空・自動車運送業を除く分野に育成就労を設定し、そのいずれの分野でも「業務区分及び従事する業務は特定技能制度と同一とする」と定めています。[2]つまり、育成就労で育てた分野・業務区分から、そのまま特定技能1号へ横滑りする形です。自社の業種が対象かどうかは育成就労の対象分野で確認できます。
特定技能制度そのものの全体像は特定技能採用の完全ガイド、育成就労制度の概要は育成就労とはで解説しています。
特定技能1号へ移行する要件——技能と日本語
育成就労から特定技能1号へ移行するには、本人が技能の試験と日本語能力の試験の両方に合格していることが要件です。要件は「移行の直前」だけにあるのではなく、就労開始前・1年経過時・終了までの3つの時点に置かれています。
| 育成就労の時点 | 技能について求められること | 日本語について求められること |
|---|---|---|
| 就労を開始するまで | 技能の試験は課されない | 「日本語教育の参照枠」のA1相当以上が基本=試験合格、または認定日本語教育機関等での相当する日本語講習の受講(介護分野は試験合格のみ=講習による代替なし)。分野による上乗せあり(介護分野は開始時からA2.2相当以上・鉄道分野の運輸係員もA2.2相当以上) |
| 就労開始後1年経過時まで | 技能検定基礎級、または相当する育成就労評価試験(初級) | 開始前と同じ水準(A1相当以上が基本・介護分野と鉄道分野の運輸係員はA2.2相当以上)の日本語試験=開始前に合格していない場合は、1年経過時までの合格が求められる。介護分野は日本語学習プランの作成も(B1相当以上の試験に合格済みなら作成不要) |
| 育成就労を終了するまで(=特定技能1号への移行時) | 技能検定3級等、または特定技能1号評価試験(どちらを選べるか・分野固有の試験の有無は分野で異なる) | 「日本語教育の参照枠」のA2相当以上(日本語能力試験N4等)が基本。2026年8月時点の各分野の別紙ではいずれもA2.2相当以上(鉄道分野の運輸係員はB1相当以上・介護分野は介護特定技能評価試験〈日本語〉の合格も) |
表の内容は、基本方針 第三の3と分野別運用方針の各別紙に基づく2026年8月8日時点の整理です。[1][2]
日本語の水準は二層で決まります。分野横断の原則を基本方針が「A2相当以上を基本としつつ、育成就労産業分野ごとに業務上必要な水準」と定め(Q&Aの例示では日本語能力試験N4等)、具体的な水準と試験名は分野別運用方針の別紙が分野ごとに定めます。令和8年1月23日閣議決定の別紙では、2026年8月8日時点、育成就労が設定された分野の「育成就労を終了するまでに求められる日本語能力水準」は原則A2.2相当以上(鉄道分野の運輸係員はB1相当以上・介護分野はA2.2相当以上に加えて介護特定技能評価試験〈日本語〉の合格)とされています。[2]自社の分野の水準と試験名は、必ず該当分野の別紙で確認してください。特定技能1号評価試験など特定技能側の試験の中身は特定技能の試験で解説しています。
技能の側も、どの分野でも同じ二択ではありません。育成就労が設定された分野ごとに、別紙が終了時の技能試験をどう定めているかを一覧にすると次のとおりです(2026年8月8日時点の分野別運用方針・各別紙に基づく整理)。[2]
| 分野 | 育成就労の終了時の技能試験 | 終了時の日本語水準(「日本語教育の参照枠」) |
|---|---|---|
| 介護 | 介護育成就労評価試験(専門級)のみ | A2.2相当以上+介護特定技能評価試験(日本語) |
| ビルクリーニング | ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験のみ | A2.2相当以上 |
| リネンサプライ | リネンサプライ分野特定技能1号評価試験のみ | A2.2相当以上 |
| 工業製品製造業 | 別表で業務区分ごとに指定 | A2.2相当以上 |
| 建設 | 別表で業務区分ごとに指定 | A2.2相当以上 |
| 造船・舶用工業 | 別表で業務区分ごとに指定 | A2.2相当以上 |
| 自動車整備 | 別表で業務区分ごとに指定 | A2.2相当以上 |
| 宿泊 | 宿泊分野特定技能1号評価試験のみ | A2.2相当以上 |
| 鉄道 | 別表で業務区分ごとに指定 | A2.2相当以上(運輸係員の業務区分はB1相当以上) |
| 物流倉庫 | 物流倉庫分野特定技能1号評価試験のみ | A2.2相当以上 |
| 農業 | 別表で業務区分ごとに指定(育成就労評価試験〈専門級〉の業務区分別) | A2.2相当以上 |
| 漁業 | 別表で業務区分ごとに指定 | A2.2相当以上 |
| 飲食料品製造業 | 別表で業務区分ごとに指定 | A2.2相当以上 |
| 外食業 | 別表で業務区分ごとに指定 | A2.2相当以上 |
| 林業 | 技能検定(林業職種)3級のみ | A2.2相当以上 |
| 木材産業 | 木材産業特定技能1号評価試験のみ | A2.2相当以上 |
| 資源循環 | 資源循環分野特定技能1号評価試験のみ | A2.2相当以上 |
「のみ」の分野は技能検定3級との二択が無く、「別表」の分野は業務区分ごとに技能検定3級や分野の育成就労評価試験(専門級)などが指定されています。後述する「育成就労の目標」に置く試験も、この別紙・別表の選択肢の中から選ぶことになります。
「育成就労の目標」と、移行に必要な要件は別のもの
育成就労計画に定めた目標の試験に落ちても、特定技能1号への在留資格変更に必要な他の技能試験に合格すれば、移行に必要な技能を証明することはできます。育成就労制度運用要領(令和8年8月版・出入国在留管理庁および厚生労働省が編集)は、「育成就労の目標」として技能検定等を設定して不合格になった場合でも、同一の業務区分に対応する特定技能1号評価試験に合格したときは、その業務区分の特定技能1号への在留資格変更に必要な技能を証明したことになるとしています。ただし、その場合も「育成就労の目標」を達成したことにはなりません。[3]
この2つは判断される場面が違います。「目標の達成」は育成就労計画をきちんと履行したかどうかの話で、「移行の要件」は在留資格変更が認められるかどうかの話です。目標未達成のまま特定技能1号へ移行することはあり得ますし、逆に目標未達成であることは、後述する育成就労の期間延長が使えるかどうかにも関わります。
目標に設定できる試験にも枠があります。目標とする試験は分野別運用方針の別紙に掲げられた試験から選ぶ設計で、別紙に技能検定等のみが定められている分野では、特定技能1号評価試験を目標にすることはできません。1年目試験も目標に対応したものである必要があり(例=目標が技能検定3級なら、1年目は同じ技能検定の基礎級)、目標を特定技能1号評価試験に設定した分野・業務区分では、その受験資格として1年目試験のうち実技試験の合格が求められます=1年目の結果が終了時試験を受験できるかどうかに直結します。[3]移行先の分野・業務区分と目標試験の対応は、育成就労計画を立てる時点で確認しておく論点です。
同じ運用要領は、育成就労実施者に対し、3年の育成就労が終了するまでに目標として定めた技能試験・日本語能力の試験のいずれも受験させる義務を課しています(本人がすでに合格している場合を除く)。特定技能への移行を希望しない場合でも、計画に定めた目標である以上、受験させる必要があります。開始から1年以内の中間評価としての受験義務も同様です。なお運用要領は、本人意向の転籍の要件を満たすための対応としては、1年目の技能試験に一度不合格となった場合に2回目を受験させる義務はないとしています。[3]
受験の実費と時間の扱いも運用要領が定めています。受験手数料・交通費・材料費などの受験に要する費用は本人に負担させることができず、育成就労実施者または監理支援機関が負担します。受験に要する時間は労働時間に該当するため、受験日を欠勤扱いにすることや、有給休暇を取得させたうえで受験させることは認められません。[3]
いつ採用すれば、いつ特定技能になるか
育成就労制度を創設する改正法(令和6年法律第60号)は2024年6月21日に公布され、育成就労制度は2027年4月1日に施行されます。[4]育成就労の期間は原則3年なので、施行と同時に受け入れた人が特定技能1号へ移行するのは、2030年春以降が基本線になります。育成就労の開始日を起点に、ひとりの人材の時間軸で並べると次のとおりです。
育成就労の開始日まで
日本語の要件を満たす(A1相当以上が基本=試験合格または相当する講習の受講・分野により上乗せ。試験未合格の場合は入国後講習でA1相当100時間以上の受講)
開始から1年経過時まで
技能検定基礎級等と、分野が定める日本語の試験を受験(実施者に受験させる義務)
開始から3年(育成就労の終了)まで
技能検定3級等または特定技能1号評価試験と、分野が定める日本語能力の試験に合格
育成就労の終了後
特定技能1号へ在留資格を変更し、通算最長5年の就労へ
採用の準備は、育成就労の開始日よりさらに前から始まります。育成就労計画の認定申請は、施行後の通常の運用では開始予定日の6か月前から可能で、原則として4か月前までに申請します(受付は外国人技能実習機構〔2027年4月1日から「外国人育成就労機構」に名称変更〕・手数料は育成就労計画1件につき6,100円)。[3]施行直後の受け入れを目指す場合の施行日前申請は別枠で、出入国在留管理庁は2026年9月1日から育成就労計画の認定に係る施行日前申請を受け付けるとし(監理支援機関の許可の施行日前申請は2026年4月15日から受付済み)、[5]こちらは審査に要する時間を考慮して原則として開始予定日の7か月前から5か月前までに申請するよう求めています。[3]
つまり「いつ特定技能になるか」を決めるのは入国日ではなく、育成就労の開始日から3年というものさしです。必要な戦力化の時期が先にあるなら、そこから3年と、計画申請のリードタイム(通常は4〜6か月・施行日前申請は5〜7か月)を逆算して採用計画を置くのが現実的です。なお、育成就労法上の「育成就労の期間」と在留資格上の在留期間は必ずしも一致しません(在留期間は個別に決定され、認定通知書どおりの期間が付与されるとは限りません)。認定を受けた期間内でも、在留期間が先に満了する場合は、在留期間更新の申請が別途必要です。[3]
試験に不合格だったら——最長1年の育成就労の継続
目標として定めた試験に合格できなかった場合、一定の要件のもとで育成就労の期間を最長1年まで延長し、再受験することが認められます。ここで延びるのは育成就労の側であって、特定技能の在留期間ではありません。基本方針は、育成就労に適正に従事したものの特定技能1号への変更に必要な試験等に不合格になった場合等について、従前と同一の育成就労実施者が継続して育成就労を行わせることなど一定の要件の下で、再受験に必要な範囲で最長1年の育成就労の継続を認めるとしています。[1]
育成就労制度運用要領(令和8年8月版)は、3年を超えて延長できる場面を次の2つに限定しています。[3]
- ① 適正な育成就労を行っていたのに、目標の試験に合格できなかった場合 — ただし、特定技能1号への在留資格変更に必要な試験等に合格していて特定技能1号へ変更できる場合は除かれます。
- ② 傷病や天災などのやむを得ない事情により、期間内に目標の試験を受験できなかった場合
延長できる長さにも二重の制限があります。3年を超える延長は最大1年までで、さらに再受験と合否の確認に必要な期間を1か月以上超える延長は認められません。「不合格ならとりあえず1年もらえる」制度ではなく、次の試験日と結果確認の日程から逆算した分だけが認められる、という設計です。手続きとしても、3年を超える延長は軽微な変更の届出では足りず、育成就労計画の変更認定を受ける必要があります(延長の理由を証する書類の提出を伴います)。
この受け皿が使える前提は、適正な育成就労を行っていたことです。同じ運用要領は、必要な措置を講じることなく単に業務に従事させ、日本語能力試験の受験機会を与えるのみである場合等については育成就労計画の認定の取消しの対象となるおそれがあるとし、必要なA2目標講習の受講機会を与えなかった場合は認定の取消し等の対象となるとしています。[3]育成の実質を欠いたまま3年を迎えると、延長という最後の受け皿まで届かない可能性があるということです。
育成就労の途中で特定技能1号に移れるか
3年の途中での移行について、出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aは、試験の合格という移行要件を満たすことに加え、現に在籍している育成就労の受入れ機関における就労期間が一定の期間を超えている場合に限り、特定技能1号への移行を認める方針としています。[5]
ここでいう「一定の期間」が具体的に何か月・何年なのかは、2026年8月8日時点では公表されていません(基本方針・分野別運用方針・育成就労制度運用要領・育成就労制度Q&Aのいずれにも具体の期間の記載はありません)。本人の意向による転籍の要件として分野別運用方針が分野ごとに定める期間と同じ考え方になるのかどうかも、公表されている資料からは確定できません。今後の公表で確認が必要な点です。
したがって、「早く戦力化したいので途中で移行させる」という前提で採用計画を組むことは、現時点ではできません。そもそも運用要領は、3年を下回る育成就労計画は適正な育成を行えるものと認められず、認定を受けられない可能性があるとしています。[3]まずは3年を前提に計画を置き、途中移行は要件が公表されてから検討する、という順序が安全です。
いま技能実習で受け入れている場合
技能実習2号を良好に修了した人については、育成就労制度の運用開始後も当分の間、試験等が免除されて特定技能1号へ移行できます。基本方針は、第2号技能実習を良好に修了した者について、当分の間、試験等を免除し、必要な技能水準およびA2相当の日本語能力水準を満たしているものとして取り扱うと定めています。[1]出入国在留管理庁の育成就労制度Q&Aも、技能実習2号を良好に修了しており、従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性が認められる場合には移行できるとしています。[5]
条件は2つです。良好に修了していることと、従事しようとする業務との関連性が認められること。関連性の判断は職種・作業の単位で行われるため、いま受け入れている技能実習生が自社のどの業務へ移るのかによって結論が変わります。なお、2027年4月1日時点で在留中の技能実習生は、引き続き認定計画に基づいて技能実習を続けることができます。[5]
この免除ルートは、いまも移行の主要経路です。出入国在留管理庁の公表(2025年12月末現在)では、特定技能1号在留者382,341人のうち技能実習ルートが207,399人=約54%(編集部算出。試験ルートは約46%・ほかに検定等の少数区分)を占めています。[6]
一方で、この経過措置の「当分の間」がいつまでを指すのかは、2026年8月8日時点で公表されていません(基本方針・Q&Aとも「当分の間」とするのみです)。期限が示されていない措置を前提に中期の採用計画を固定しない——これが現時点での実務的な読み方です。もうひとつ、逆方向の制約もあります。過去に技能実習を行った期間は育成就労を行った期間とみなされるため、2年以上の技能実習を行った人が、再来日して技能実習と異なる分野の育成就労で働くことは基本的にできません。[5]いま在籍している技能実習生の職種・作業がどの分野へ移行できるかの対応表は特定技能と技能実習の違いで整理しています。
移行後に変わること・変わらないこと
移行で変わるのは、在留期間の考え方・支援の担い手・必要な手続きの3点です。家族の帯同と、働ける業務の範囲は変わりません。
変わること
- 在留期間の考え方 — 基本方針は、特定技能1号として在留できる期間を、妊娠・出産に係る期間等を除き通算して5年を超えることができないとしています。[1]育成就労の原則3年と単純に足すと8年という計算になりますが、政府がこの合算した年数を明示しているわけではなく、実際の在留は個別の許可によります。
- 支援の担い手 — 育成就労では監理支援機関が関わりますが、特定技能1号では、支援の実施主体は特定技能所属機関(受け入れ企業)または登録支援機関です。[1]役割と費用水準の違いは監理団体・監理支援機関・登録支援機関の違いで整理しています。
- 必要な手続き — 移行時には在留資格変更許可申請が必要です。特定技能1号の申請書類・提出先は現行の特定技能制度で公表されており、特定技能の申請に必要な書類で整理しています(育成就労からの移行に固有の様式が加わるかは今後の公表で確認)。なお申請の取次や書類の作成は行政書士などの専門家の領域で、必要に応じて専門家と連携して進めます。
変わらないこと
- 家族の帯同 — 基本方針は、育成就労外国人についても1号特定技能外国人についても、配偶者および子には在留資格を基本的に付与しないとしています。[1]移行によってここが変わるわけではありません。
- 分野・業務区分の枠 — 就労できるのは分野別運用方針が定める業務区分の範囲です。育成就労と特定技能で業務区分は同一とされているため、移行によって従事できる業務の範囲が広がるわけではありません。
その先については、分野によって特定技能2号への道があります。基本方針は、2号特定技能外国人について在留期間の更新回数に上限を設けず、要件が満たされれば配偶者と子にも在留資格を付与するとしています。[1]2号の有無は分野ごとに異なるため、1号との違いは特定技能1号・2号の違いで確認してください。
企業が準備しておくこと
移行の可否を左右するのは、結局のところ3年間の育成計画・受験機会の提供・受け入れ体制の3点です。
- 受験させる義務から逆算した育成計画を組む — 育成就労制度運用要領は、1年目までの試験と終了までの目標試験を受験させる義務を課しています。日本語の講習は2本立てです=開始前の要件を試験合格で満たしていない場合の入国後講習(認定日本語教育機関の「就労」課程のA1相当講習を100時間以上。講習の総時間はA1未合格なら320時間以上・A1合格済みなら220時間以上)と、3年間で100時間以上の受講機会の提供が求められるA2目標講習(A2相当の試験に合格済み、または入国前・入国後講習で所定の講習を終えている場合は不要)。日本語講習の費用も本人任せにはできません=育成就労実施者または監理支援機関が、費用の負担を含めて必要な措置を取るものとされています。A2目標講習の受講時間は労働時間として扱う義務まではありません(受験に要する時間が労働時間に当たるのとは扱いが異なります)。[5][3]試験日程は分野ごとに決まるため、計画は「いつ受験させるか」から先に置くほうが崩れにくくなります。
- 特定技能側の受け入れ要件を先に確認する — 移行後は自社が特定技能所属機関になります。企業側に求められる要件(協議会への加入など分野ごとの要件を含む)は特定技能で企業に求められる受け入れ要件で整理しています。移行の直前に不備が見つかると、本人が要件を満たしていても手続きが進みません。
- 分野・業務区分は後から変えられない前提で選ぶ — 育成就労計画の変更認定でも、育成就労産業分野や業務区分の変更は認められません。[3]どの分野・業務区分で受け入れるかの採用時の選択が、そのまま3年後の移行先を決めます。
- 支援体制の切り替えを段取りしておく — 監理支援機関から、自社支援または登録支援機関への切り替えが移行のタイミングで発生します。誰が支援計画を実施するのかを、3年目に入る前に決めておく論点です。
- 移行しない場合のコストも見ておく — 育成就労の終了後に本人が帰国する場合、帰国旅費は単独型では育成就労実施者、監理型では監理支援機関の負担です(監理型では、監理支援機関がこの旅費を「その他諸経費」の監理支援費として実費の範囲で育成就労実施者から徴収できる=実質の負担が企業側に来る場合があります)。特定技能1号や、特定技能への移行準備を目的とする「特定活動」への在留資格変更を受けて在留を続ける場合は、この負担義務はありません。[3]
- 転籍が起こり得る前提で定着を設計する — 育成就労では、本人の意向による転籍が、分野ごとに定める転籍制限期間の経過などの要件を満たす場合に認められます。転籍の際は、既に行った育成就労の期間と通算して残りの育成就労の期間が判断されます(=転籍で3年がリセットされるわけではありません)。[3]3年育てた人材が移行前に離れる可能性を織り込んだ処遇・キャリアの設計が要ります。要件と企業の備えは育成就労の転籍制度で解説しています。
まとめ
育成就労から特定技能1号への移行は自動ではなく、技能(技能検定3級等または特定技能1号評価試験)と日本語(A2相当以上を基本としつつ分野ごとの水準)の試験に合格することが要件です。要件は移行の直前ではなく、就労開始前・1年経過時・終了までの3つの時点に置かれていて、育成就労実施者には受験させる義務があります。
不合格の場合も直ちに終わりではなく、適正な育成就労を行っていたことなどを前提に、育成就労計画の変更認定を受けて最長1年まで継続し再受験できます。逆に言えば、育成の実質が伴わなければ、この最後の受け皿にも届きません。育成就労の開始日から3年というものさしを起点に、受験時期から逆算した育成計画を先に置くことが、移行の確度をいちばん動かします。
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よくあるご質問
- 育成就労から特定技能には必ず移行できますか?
- 自動的に移行できるわけではありません。出入国在留管理庁の基本方針(令和7年3月11日閣議決定)は、育成就労を終了するまでに技能検定3級等または特定技能評価試験に合格し、日本語は「日本語教育の参照枠」のA2相当以上を基本としつつ分野ごとに定める水準を満たすことを求めています。2026年8月時点の分野別運用方針の別紙では、育成就労のある分野の終了時の日本語水準は原則A2.2相当以上です。具体的な試験名と水準は該当分野の別紙で確認してください。
- 移行に必要な試験に不合格だったら、すぐ帰国になりますか?
- 必ずしもそうではありません。育成就労計画に基づく適正な育成就労を行っていたにもかかわらず目標の試験に不合格だった場合や、傷病・天災などで受験できなかった場合は、育成就労計画の変更認定を受けて最長1年まで育成就労を継続し、再受験することが認められます。ただし、再受験と合否確認に必要な期間を1か月以上超える延長は認められません(育成就労制度運用要領 令和8年8月版)。
- 育成就労から特定技能に移行すると何が変わりますか?
- 在留の位置づけが「育成」から即戦力としての就労に変わり、在留期間は特定技能1号として通算最長5年になります。支援の担い手も、監理支援機関から、受け入れ企業自身または登録支援機関へ切り替わります。一方で、配偶者や子に在留資格が基本的に付与されない点は育成就労と特定技能1号で共通です。分野によっては、その先に特定技能2号への道もあります。
出典・参考(一次情報)
- 特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針及び育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する基本方針(令和7年3月11日閣議決定)「第三」(出入国在留管理庁)
- 特定技能・育成就労の分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定・別紙1〜別紙19)(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度運用要領(令和8年8月版)第4章(出入国在留管理庁・厚生労働省)
- 育成就労制度の制度概要・関係法令(令和6年法律第60号・公布日・施行日)(出入国在留管理庁)
- 育成就労制度Q&A(Q3・Q63・Q75・Q76・Q77・Q78・Q80)(出入国在留管理庁)
- 国籍・地域別 試験ルート・技能実習ルート別 特定技能1号在留外国人数(令和7年12月末現在・第7表)(出入国在留管理庁)