介護の特定技能試験|介護技能評価試験・介護日本語評価試験の内容と免除ルート
目次
介護で特定技能外国人を採用するとき、企業側が受け入れの可否を左右されるのが「採用したい人材が、介護の試験要件を満たしているか」です。介護は他分野と違い、一般的な日本語力に加えて介護現場の日本語を確認する試験が独自に課されるのが特徴です。結論を先に言うと、必要なのは①介護技能評価試験 ②介護日本語評価試験 ③日本語試験(JLPT N4以上またはJFT-Basic)の3本。そして介護職種の技能実習2号を良好に修了した人などは試験が免除されるため、どの採用ルートを選ぶかで試験の壁が大きく変わります。このページでは、採用する企業の視点で、試験の中身(科目・問題数・合格基準)と免除ルートを一次情報で整理します。
この記事の要点
- 必要な試験は3本 — 介護技能評価試験(45問・60分)・介護日本語評価試験(15問・30分)・日本語試験(JLPT N4以上またはJFT-Basic)。介護では介護現場の日本語試験が独自に加わります。
- 合格基準は令和8年4月1日から明確 — 厚生労働省によれば介護技能評価試験=総得点の60%以上、介護日本語評価試験=73%以上。受験料も同日から各2,000円程度に改定されています。
- 免除は「経歴」で範囲が変わる — 介護職種の技能実習2号の良好修了は3試験すべて免除。一方、介護以外の技能実習2号は基礎日本語試験だけ免除で、介護の2試験は受験が必要です。
- 難所は技能より日本語 — 令和7年度の合格率は技能81.2%に対し日本語61.3%(厚生労働省の月次公表データを年度集計)。両方の合格が要件のため、日本語が実質のボトルネックです。
- 企業視点ではルート選びが効く — 技能実習からの移行なら試験免除で採用しやすく、海外新規採用は試験合格者から。試験の壁は採用ルートで変わります。
本記事は採用する企業向けの一般的な情報提供です。試験の科目・実施・合格基準・受験料・免除の範囲は変動・更新されるため、最新の内容は出入国在留管理庁および厚生労働省の案内で必ず確認してください。
介護の特定技能に必要な試験(3つ)
介護で特定技能外国人(1号)を受け入れるには、本人が次の試験等の要件を満たしている必要があります。
| 試験 | 何を確認するか |
|---|---|
| 介護技能評価試験 | 介護の技能(第2号技能実習修了相当の水準) |
| 介護日本語評価試験 | 介護の現場で使う日本語 |
| 日本語試験(日本語能力試験〔JLPT〕N4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト〔JFT-Basic〕) | 介護の前提となる基礎的な日本語力 |
ポイントは、基礎的な日本語力(JLPT N4以上またはJFT-Basic)に加えて、介護現場の日本語を確認する「介護日本語評価試験」が独自に課されることです。他分野より日本語のハードルが一段高い、と捉えておくと採用計画を立てやすくなります。全分野に共通する試験の仕組み(分野別の技能試験・分野別の合格率)は特定技能の試験、基礎日本語試験の詳細(JFT-BasicとJLPT N4の違い・受験料・実施回数と、入社日から逆算したときにどちらが早いか)は特定技能の日本語試験で解説しています。
介護の2つの評価試験の中身(科目・問題数・合格基準)
介護の2試験(介護技能評価試験・介護日本語評価試験)は、いずれもコンピューターで受験するCBT方式で、原則毎月実施されます。企業が試験対策を担うわけではありませんが、「どんな試験に合格した人材か」を把握しておくと、候補者の水準や採用計画の見当がつきます。
介護技能評価試験(技能) は、45問・60分。学科40問と実技5問で構成されます。実技といっても現場での実演ではなく、写真等を提示して正しい介護の手順を判断させる形式です。[1]
| 出題区分 | 問題数 |
|---|---|
| 学科:介護の基本 | 10問 |
| 学科:こころとからだのしくみ | 6問 |
| 学科:コミュニケーション技術 | 4問 |
| 学科:生活支援技術 | 20問 |
| 実技:生活支援技術(写真等による判断) | 5問 |
| 合計 | 45問(試験時間60分) |
介護日本語評価試験(日本語) は、15問・30分。介護現場で支障なく働けるかを、次の3区分で確認します。[2]
| 出題区分 | 問題数 |
|---|---|
| 介護のことば | 5問 |
| 介護の会話・声かけ | 5問 |
| 介護の文書 | 5問 |
| 合計 | 15問(試験時間30分) |
合格基準・受験料は、令和8年4月1日から次のとおりです(それ以前より受験料が改定されています)。[3][4]介護の実績(国籍別の受験者数・合格率)は国籍別の受験者数と合格率、全分野の合格率は特定技能の試験、費用全体の見積もりは介護の特定技能 採用費用・相場で扱っています。
| 項目 | 介護技能評価試験 | 介護日本語評価試験 |
|---|---|---|
| 合格基準(合格ライン) | 総得点の60%以上 | 総得点の73%以上 |
| 受験料(日本国内) | 各2,000円程度(改定前は1,000円程度・国により異なる) | 同左 |
| 試験方式 | CBT方式 | CBT方式 |
| 実施頻度 | 原則毎月 | 原則毎月 |
| 受験資格 | 17歳以上(インドネシア国籍は18歳以上/国内実施は在留資格を有する者) | 同左 |
実施場所は、日本国内(47都道府県)および海外の複数国です。令和7年度(2025年4月〜2026年3月)に実際に実施実績があるのは、日本国内と、インドネシア・ミャンマー・ネパール・フィリピン・スリランカ・バングラデシュ・ベトナム・インド・タイ・カンボジア・モンゴル・ウズベキスタン・パキスタンの13か国です(後述の国籍別データの集計対象と同じ)。海外採用でも国内採用でも、同じ試験の合格が要件になります。
受験言語の違い(技能は母語で受けられる)
企業側が見落としやすいのが、2つの試験で受験言語が違うことです。
- 介護技能評価試験 — 日本語・英語・中国語・クメール語・ネパール語・ミャンマー語・モンゴル語・インドネシア語・ベトナム語・ベンガル語・ウズベク語・タイ語の12言語で実施されます(現地語での受験が可能)。
- 介護日本語評価試験 — 介護現場に特有の日本語能力を測る試験のため、日本語のみでの受験です(問題開始前の案内文などは現地語)。
つまり、介護技能評価試験の合格は「日本語ができること」の証明にはなりません。介護の日本語力を見るのは介護日本語評価試験と基礎的な日本語試験のほうだ、と切り分けて候補者を見てください。
予約・再受験・受験資格の実務ルール
採用スケジュールに直接効くルールが3つあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 予約できる期間 | 2か月後(60日後)までの試験予約が可能 |
| 再受験の制限 | 試験受験後、45日間は次の受験ができない |
| 受験資格 | 17歳以上(インドネシア国籍を有する者は18歳以上)。日本国内実施の試験は在留資格を有する者に限られ、日本国籍の者は受験できない |
実務上いちばん効くのは45日の再受験制限です。候補者が不合格になると、次の受験まで最低45日空き、そこから合否・在留資格の手続きと続くため、入職予定は1〜2か月単位でずれます。とくに合格率の低い介護日本語評価試験でこれが起きやすいため、内定を出す前に「両方の試験に合格済みか」を確認しておくと、計画が崩れにくくなります。
なお、試験を実施しているのはプロメトリック株式会社(厚生労働省からの委託先)です。同じ日に5名以上が受験する場合に限り団体予約が可能とされています(令和6年度時点でバングラデシュ・カンボジア・インド・モンゴル・フィリピン・タイ・ウズベキスタンのみ)。複数名をまとめて受験させたい場合は、対象国かどうかを送出機関・登録支援機関と確認してください。
海外新規採用・国内在住の未合格者を採る場合は、その人が3つの試験要件を満たしているかを次のように確認できます(いずれかを満たさない候補者は、その試験に合格しないと受け入れられません)。
国籍別の受験者数と合格率(令和7年度)
「介護の試験は難しいのか」「どこの国に合格者がいるのか」は、海外新規採用を検討するときに必ず出る論点です。厚生労働省は試験結果を実施国ごとに毎月公表しており、これを年度で合算すると、同じ介護の試験でも、技能と日本語で合格率がまったく違うことが見えてきます。[5]
国籍別の受験者数・合格者数・合格率(介護技能評価試験)
令和7年度(2025年4月〜2026年3月)実施分
| 受験した国・地域 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 参考:令和6年度の合格率 |
|---|---|---|---|---|
| インドネシア | 23,215人 | 20,152人 | 86.8% | 85.1% |
| ミャンマー | 15,927人 | 14,899人 | 93.5% | 95.7% |
| 日本国内 | 13,076人 | 8,994人 | 68.8% | 73.7% |
| ネパール | 8,690人 | 6,352人 | 73.1% | 72.6% |
| フィリピン | 2,167人 | 1,707人 | 78.8% | 79.6% |
| スリランカ | 2,099人 | 1,028人 | 49.0% | 54.9% |
| バングラデシュ | 1,143人 | 753人 | 65.9% | 64.1% |
| ベトナム | 950人 | 859人 | 90.4% | 92.6% |
| インド | 775人 | 452人 | 58.3% | 59.8% |
| タイ | 402人 | 374人 | 93.0% | 89.8% |
| カンボジア | 185人 | 159人 | 85.9% | 82.4% |
| モンゴル | 69人 | 52人 | 75.4% | 83.6% |
| ウズベキスタン | 24人 | 16人 | 66.7% | 45.2% |
| パキスタン | 7人 | 4人 | 57.1% | (令和7年8月から実施) |
| 合計 | 68,729人 | 55,801人 | 81.2% | 84.9% |
出典:厚生労働省が毎月公表する介護技能評価試験の国別試験結果(トモハタが年度で合算)
国籍別の受験者数・合格者数・合格率(介護日本語評価試験)
令和7年度(2025年4月〜2026年3月)実施分
| 受験した国・地域 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 参考:令和6年度の合格率 |
|---|---|---|---|---|
| インドネシア | 26,969人 | 17,852人 | 66.2% | 64.1% |
| ミャンマー | 20,116人 | 13,802人 | 68.6% | 64.0% |
| 日本国内 | 13,278人 | 7,606人 | 57.3% | 50.3% |
| ネパール | 11,028人 | 5,144人 | 46.6% | 31.2% |
| フィリピン | 2,499人 | 1,298人 | 51.9% | 44.2% |
| スリランカ | 2,125人 | 1,320人 | 62.1% | 57.5% |
| バングラデシュ | 1,281人 | 577人 | 45.0% | 34.1% |
| ベトナム | 1,268人 | 721人 | 56.9% | 58.5% |
| インド | 888人 | 394人 | 44.4% | 30.9% |
| タイ | 490人 | 326人 | 66.5% | 52.4% |
| カンボジア | 196人 | 128人 | 65.3% | 47.7% |
| モンゴル | 107人 | 43人 | 40.2% | 31.2% |
| ウズベキスタン | 34人 | 17人 | 50.0% | 20.0% |
| パキスタン | 3人 | 2人 | 66.7% | (令和7年8月から実施) |
| 合計 | 80,282人 | 49,230人 | 61.3% | 56.6% |
出典:厚生労働省が毎月公表する介護日本語評価試験の国別試験結果(トモハタが年度で合算)
この2つの表から、企業の採用計画に効くポイントは3つです。
- 難所は技能ではなく日本語 — 令和7年度は技能81.2%に対し、日本語は61.3%。介護は両方に合格して初めて要件を満たすため、実質のボトルネックは介護日本語評価試験です。「技能は合格済みだが日本語はこれから」という候補者は珍しくないため、どちらに合格しているかを個別に確認してください。
- 合格者の母集団はインドネシア・ミャンマーに大きく偏っている — 令和7年度は技能試験の受験者の約57%がインドネシア(33.8%)とミャンマー(23.2%)の2か国で、日本国内での受験は19.0%です。海外新規採用でどの国の送出機関と組むかは、この母集団の厚みと直結します。
- 国内受験の合格率は主要な海外実施国より低い — 技能68.8%・日本語57.3%と、インドネシア・ミャンマーを下回ります。国内で受験する人(すでに何らかの在留資格で日本にいる人)を採る想定なら、「国内なら受かりやすい」という前提は置かないほうが安全です。
厚生労働省自身も、令和6年度の実施状況報告書で両試験の合格率の開き(技能85%程度・日本語55%程度)に触れ、その理由を介護技能評価試験は現地語での受験を可能としている一方、介護日本語評価試験は介護現場に特有の日本語能力を測る観点から日本語のみでの受験としていることに起因すると説明したうえで、いずれも試験実施要領に定めるとおりの技能水準を適切に測定できているとしています。[6]前述の受験言語の違いが、そのまま合格率の差になっている、と読むのが正確です。
「日本語のほうが合格率が高い」と書かれた解説を見かけたら:制度開始初期(令和2年前後)は介護日本語評価試験の合格率が8割を超えていた時期があり、その頃の数値を引用している解説が残っています。上の表は令和6年度・令和7年度の実績で、当時とは合格基準(日本語は令和6年度時点で総得点の80%以上)も受験者の構成も違います。数値を比べるときは、必ずどの年度の実績かを確認してください。
表の読み方の注意:①受験者数が数十人規模の国(モンゴル・ウズベキスタン・パキスタンなど)の合格率は、少人数のため大きく振れます。合格率は必ず受験者数の列と併せて読んでください。②これは「国籍で候補者を選別するための指標」ではなく、合格者の母集団がどこにどれだけあるか・どちらの試験が壁になるかを把握するためのデータです。③受験者数は延べ人数(同一人物の再受験を含みます)です。
なお、上の合格率は当時の合格基準のもとでの数字です。介護日本語評価試験の合格基準は、令和6年度時点では総得点の80%以上でしたが、令和8年4月1日からは73%以上に変更されています(介護技能評価試験は60%以上で変わりません)。[3]基準が下がった分、今後の合格率は同じ実力層でも上がる可能性があります。
このデータの作り方:厚生労働省は国別・月別の試験結果のみを公表しており、年度単位の国別集計は公表されていません(年度の実施状況報告書は、2026年7月時点で令和6年度分までの公表)。上の表は、同省が公表する月次の国別試験結果をトモハタが年度(4月〜翌年3月)で合算したものです。同じ手順で令和6年度を合算した値が、厚生労働省が公表した令和6年度実施状況報告書の国別数値(13か国×2試験の受験者数・合格者数)とすべて一致することを確認したうえで、令和7年度を集計しています。
試験が免除されるルート(経歴で範囲が変わる)
一定の経歴がある人は試験が免除されます。注意したいのは、「介護職種の技能実習を修了したか」で免除される範囲が変わることです。海外新規採用だけでなく、技能実習からの移行を検討するときの見極めに直結します。[3]
| 採用したい人の経歴 | 介護技能評価試験 | 介護日本語評価試験 | 基礎日本語試験(JLPT N4/JFT-Basic) |
|---|---|---|---|
| 海外・国内の新規採用(下記の経歴なし) | 必要 | 必要 | 必要 |
| 介護職種の技能実習2号を良好に修了 | 免除 | 免除 | 免除 |
| 介護以外の職種の技能実習2号を良好に修了 | 必要 | 必要 | 免除 |
| 介護福祉士養成施設を修了 | 免除 | 免除 | 免除 |
| EPA介護福祉士候補者として在留期間(原則4年)を満了 | 免除 | 免除 | 免除 |
- 介護職種の技能実習2号を良好に修了した人 — 介護の技能実習で一定の経験を積んでいるため、3つの試験がすべて免除され、そのまま受け入れを検討できます。試験の壁がなく採用がスムーズな最短ルートになりやすいです。
- 介護以外の職種の技能実習2号を良好に修了した人 — 基礎的な日本語試験(JLPT N4/JFT-Basic)は免除されますが、介護技能評価試験と介護日本語評価試験は受験が必要です。「技能実習からの移行だから試験不要」と早合点しやすいところなので、元の職種が介護かどうかを必ず確認してください。
- 介護福祉士養成施設を修了した人 — 養成課程の修了が要件を満たすため免除されます。
- EPA介護福祉士候補者として在留期間(原則4年)を満了した人 — 経済連携協定(EPA)に基づく候補者として一定期間を満たした人は免除されます。
「良好に修了」とは何を指すか(企業がつまずきやすい定義)
免除の条件によく出てくる「技能実習2号を良好に修了」は、感覚的な評価ではなく、出入国在留管理庁の運用要領で定義されています。技能実習を2年10か月以上修了したうえで、次の①②のいずれかを満たすことです。
| ルート | 条件 | 証明する書類 |
|---|---|---|
| ① 試験に合格している | 技能検定3級、またはこれに相当する技能実習評価試験(専門級)の実技試験に合格していること | 合格証明書の写し |
| ② 試験には合格していない | 技能実習を行っていた実習実施者が、実習中の出勤状況・技能等の修得状況・生活態度等を記載した評価に関する書面により、良好に修了したと認められること | 技能実習生に関する評価調書(参考様式第1-2号) |
実務で押さえておきたい例外・救済が3つあります。
- 同じ会社が受け入れる場合は書類を省略できる — 受け入れようとする企業が、その人を技能実習生として受け入れていた実習実施者そのものである場合(技能実習2号を修了して帰国した後に同じ会社と契約する場合を含む)、過去1年以内に技能実習法の「改善命令」を受けていなければ、合格証明書の写しと評価調書の提出を省略できます。
- 病気等で受検できなかった場合 — 申込みはしたが、やむを得ない事情で受検できず合格していない場合は、評価調書(参考様式第1-2号)等でその理由を説明することになります。
- 評価調書がもらえない場合 — 過去の実習実施者から評価調書の提出を受けられないなど、良好な修了を証明できない場合は、その経緯を説明する理由書(任意様式)と、当時の技能実習指導員など実習状況を知り得る立場の人が作成した文書(任意様式)を提出したうえで、総合的に評価してもらう道があります。この場合はまず地方出入国在留管理局に相談します。
つまり、「試験に受かっていない=免除が使えない」ではありません。転職者を採るときに前の受け入れ先から書類が取りにくいケースはありますが、そこで諦める前に上の②や救済ルートを確認する価値があります(申請取次・書類作成は行政書士などの専門家の領域です)。[7]
免除に当てはまるかは、技能実習の職種・修了状況(技能実習2号を良好に修了したか)や、養成施設の修了・EPAの在留期間などで確認します。免除される科目の範囲は更新されることがあるため、実際の免除可否は厚生労働省・出入国在留管理庁の最新の案内で確認してください。[8][3]
企業視点:採用ルートで「試験の壁」が変わる
試験要件は、どの採用ルートを選ぶかで実務上の負担が大きく変わります。採用する企業の視点では、ここが一番のポイントです。
- 介護職種の技能実習からの移行 — 良好に修了した人は3試験すべてが免除されるため、試験の壁がなく採用がスムーズ。すでに国内にいることも多く、最短ルートになりやすいです。
- 海外からの新規採用 — 基本は、現地や国内で試験に合格した人材を採用します。試験合格者の母集団から選ぶことになります。
- 国内在住の試験合格者の採用 — すでに日本にいる合格者を採用すると、渡航などの手間を抑えられます。
日本語の要件がさらに一段上がる例外もあります。訪問介護などの訪問系サービスに従事させる場合、実務経験1年未満の人を従事させる例外ルートでは日本語能力試験N2相当以上が条件になります(2025年4月21日解禁・訪問介護の特定技能解禁)。訪問まで見据えるなら、採用時点の日本語力の見方が変わります。
つまり、「試験に受かる人を一から育てる」のではなく、要件を満たした人材をどのルートで採るかを考えるのが企業側の実務です。自社に合うルートの当たりは特定技能 介護の受け入れ、受け入れの人数枠・配置基準は介護の特定技能 人数枠と受け入れ条件で整理しています。
企業が候補者の「試験合格」をどう確認するか
採用の実務でつまずきやすいのが、「合格をどの書類で確認するか」です。介護技能評価試験・介護日本語評価試験は、試験終了後おおむね5営業日以内に、専用ウェブサイトで「結果通知書」を取得できます。結果通知書には、受験者名・試験名・試験日・顔写真・総合スコア・合否が記載されます。企業側は、いわゆる「合格証」ではなく、この結果通知書で合格を確認します(免除ルートに該当する場合は、技能実習の職種・修了状況などで確認します)。[1]
この結果通知書については、偽造事案が実際に報告されている点も知っておく価値があります。厚生労働省の令和6年度の実施状況報告書によれば、同年度に出入国在留管理庁から結果通知書の真偽照会があり、確認の結果偽造と判明したものが国外で11件ありました(ほかに、他人の在留カードを使ったなりすまし受験の事案も報告されています)。[6]結果通知書に疑義がある場合は、試験の委託先が提供するオンラインデータベースで真正性の確認が行われる運用になっています。企業側としては、書類の見た目だけで判断せず、登録支援機関・人材紹介会社を通じて確認の経路がある候補者かどうかを含めて見ておくと安全です。
合格から入職まで、どのくらいかかるか
「試験に合格した人が見つかった」から実際に働き始めるまでには、在留資格の審査期間が挟まります。出入国在留管理庁が公表している在留審査処理期間(令和8年5月許可分)では、特定技能1号は次のとおりです。[9]
特定技能1号の在留審査処理期間(申請から処分までの日数)
令和8年5月許可分
| 申請の種類 | どんなときに使うか | 処分までの日数 |
|---|---|---|
| 在留資格認定証明書の交付 | 海外にいる人を新たに呼び寄せる | 68.6日 |
| 在留資格変更(処分の告知まで) | 国内にいる人が特定技能へ切り替える | 64.7日 |
| 在留期間更新(処分の告知まで) | すでに就労中の人の期間を更新する | 45.8日 |
出典:出入国在留管理庁「在留審査処理期間」(特定技能1号は外食業分野に係る申請を除外して算出)
いずれも2か月前後で、海外から呼び寄せる場合はこの後に査証(ビザ)の申請と入国・住居の準備が続きます。「合格者が見つかったから来月から来てもらう」は成立しない、と見ておくのが安全です。
これに前述の45日の再受験制限が重なると、不合格が1回出ただけで着任は数か月ずれます。採用計画は、試験の合否が確定している人を前提に逆算するのが現実的です。
なお、この日数は公表された平均で、時期によって変動します(例年4月の就職時期に向けて就労資格の審査は長期化する傾向があると注記されています)。
もう一つ企業が押さえておきたいのは、試験に合格しても、それだけで在留資格「特定技能」が付与されるわけではないことです。試験合格はあくまで人材の基準(技能・日本語)を満たしたことを示すもので、在留資格認定証明書の交付や在留資格変更、査証の発給は別途審査されます。試験合格=採用完了ではなく、その後に在留資格の手続き(申請取次・書類作成は行政書士などの専門家の領域です)が必要になる、と理解しておくと計画が立てやすくなります。
試験対策そのものは本人・送出機関・登録支援機関などが担う領域です。企業側は「要件を満たした人材か」を結果通知書などで確認できれば、採用の判断に進めます。
内定者がまだ合格していないとき、企業に何ができるか
「採用したい人はいるが、まだ試験に受かっていない」という状況は珍しくありません。企業が試験対策そのものを担う必要はありませんが、義務的支援の「日本語学習の機会の提供」の一環として渡せる公的な材料はあります。
- サンプル問題(公式) — 厚生労働省が介護技能評価試験・介護日本語評価試験それぞれのサンプル問題を公開しています。候補者に渡せるだけでなく、企業側が「どんな水準の試験か」を実物で把握するのにも使えます。[3]
- 説明動画 — 国際厚生事業団(JICWELS)が介護分野の特定技能制度についての説明動画を公開しています。
自社で学習支援まで手が回らない場合、日本語学習の機会提供は登録支援機関に委託できる義務的支援の一つです(義務的支援10項目)。誰がどこまで担うかは、支援委託の契約内容で変わります。
申込みは誰がするのか(企業がまとめて手配する場合)
受験の申込みは、原則として本人がプロメトリックIDを取得して予約サイトから予約します(顔写真と受験者情報を登録し、試験・日時・会場を選択)。支払いは個人ならクレジットカードですが、企業(団体)としてまとめて手配する場合は「バウチャー」方式があります。企業がバウチャー購入サイトでアカウントを作り、まとめて購入して各受験者へ配布し、受験者は予約時に支払い方法として「Voucher」を選ぶ、という流れです。[10]
複数名の受験を会社側で手配・負担したい場合は、この方式と、前述の5名以上の団体予約(対象国限定)を、送出機関・登録支援機関と確認しておくと段取りが早くなります。
まとめ
介護の特定技能で必要な試験は、①介護技能評価試験(45問・60分)②介護日本語評価試験(15問・30分)③日本語試験(JLPT N4以上またはJFT-Basic)の3本で、介護現場の日本語試験が独自に加わるのが特徴です。合格基準は令和8年4月1日から技能60%以上・日本語73%以上、受験料は各2,000円程度に改定されています。一方で、介護職種の技能実習2号の良好修了・介護福祉士養成施設の修了・EPA候補者の在留期間満了は試験が免除されます(ただし介護以外の技能実習2号は基礎日本語試験のみ免除で、介護の2試験は受験が必要)。実績で見ると、令和7年度の合格率は技能81.2%に対し日本語61.3%(厚生労働省の月次公表データを年度集計)で、壁になりやすいのは技能より日本語です。採用する企業にとっては、試験そのものより「どの採用ルートなら試験の壁を抑えて要件を満たした人材を採れるか」が実務上の要点です。
事業所ごとに何人まで受け入れられるか・分野の枠がどこまで埋まっているかは介護の特定技能 人数枠と受け入れ上限、要件を満たした人材を採るときの費用の目安は介護の特定技能 採用費用・相場、介護の採用全体は特定技能 介護の受け入れ、制度の全体像は特定技能採用の完全ガイドをご覧ください。
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よくあるご質問
- 介護の特定技能でどんな試験が必要ですか?
- 介護技能評価試験と介護日本語評価試験に合格し、加えて基礎的な日本語力を日本語能力試験(JLPT)N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)で満たす必要があります。介護技能評価試験は45問・60分(学科40問+実技5問)、介護日本語評価試験は15問・30分で、いずれもCBT方式です。介護では一般的な日本語力に加えて、介護現場の日本語を確認する試験が独自に課されます。
- 介護の試験の合格基準(合格ライン)は何割ですか?
- 厚生労働省によれば、令和8年4月1日から、介護技能評価試験は総得点の60%以上、介護日本語評価試験は総得点の73%以上が合格基準です。企業側が受験する試験ではありませんが、候補者がどの水準で合格しているかの目安になります。基準は変わることがあるため最新の案内で確認してください。
- 介護技能評価試験の合格率はどのくらいですか?国によって違いますか?
- 厚生労働省が公表する国別の月次試験結果を年度で合算すると、令和7年度(2025年4月〜2026年3月)の介護技能評価試験は受験者68,729人・合格率81.2%、介護日本語評価試験は受験者80,282人・合格率61.3%です。国別では技能がミャンマー93.5%・インドネシア86.8%・日本国内68.8%、日本語がミャンマー68.6%・インドネシア66.2%・日本国内57.3%と差があります。ただし受験者が数十人規模の国は合格率が大きく振れるため、受験者数と併せて読む必要があります。
- 試験が免除されるのはどんな人ですか?
- 介護職種の技能実習2号を良好に修了した人は、介護技能評価試験・介護日本語評価試験・基礎的な日本語試験のすべてが免除されます。介護福祉士養成施設を修了した人、EPA介護福祉士候補者として在留期間(原則4年)を満了した人も免除の対象です。なお、介護職種以外の技能実習2号を修了した人は、基礎的な日本語試験は免除されますが、介護技能評価試験と介護日本語評価試験は受験が必要です。
- 企業は候補者が試験に合格したことをどう確認しますか?
- 介護技能評価試験・介護日本語評価試験は、試験後おおむね5営業日以内に専用ウェブサイトで「結果通知書」(受験者名・試験名・試験日・顔写真・総合スコア・合否を含む)が取得できます。企業はこの結果通知書で合格を確認します。ただし試験合格は在留資格の付与を保証するものではなく、在留資格の審査は別途行われます。
- 不合格だった場合、すぐに再受験できますか?
- できません。介護技能評価試験・介護日本語評価試験は、試験を受験した後45日間は次の受験ができない扱いです。予約は2か月後(60日後)までの分が可能です。採用側から見ると、候補者が不合格になった時点で入職予定が1〜2か月単位でずれるため、内定を出す前に技能・日本語の両方に合格済みかを確認しておくと計画が崩れにくくなります。
- 試験は日本国内でも受けられますか?
- 介護技能評価試験・介護日本語評価試験は、日本国内(47都道府県)および海外の複数国(ベトナム・フィリピン・インドネシア・ミャンマーなど)で、原則毎月CBT方式で実施されています。企業側は、候補者が合格しているか(結果通知書など)で要件を満たしているかを確認します。
出典・参考(一次情報)
- 介護特定技能評価試験(技能)試験実施要領(合否通知の方法)(厚生労働省)
- 介護特定技能評価試験(日本語)試験実施要領(厚生労働省)
- 介護分野における特定技能外国人の受入れ(試験・合格基準/令和8年4月1日からの合格基準/免除の対象者/サンプル問題・説明動画)(厚生労働省)
- 介護技能評価試験・介護日本語評価試験の受験料改定のお知らせ(厚生労働省)
- 介護分野における特定技能試験結果について(国別・月次の試験結果)(厚生労働省)
- 令和6年度介護技能評価試験・介護日本語試験実施状況報告書(国別の受験者数・合格率/令和6年度の合格基準/結果通知書の偽造事案・真偽確認の運用)(厚生労働省)
- 特定技能外国人受入れに関する運用要領(令和8年4月1日一部改正版・第4章第1節「技能水準に関するもの」=技能実習2号の良好な修了/確認日2026年8月1日)(出入国在留管理庁)
- 特定技能(介護分野)の試験・免除(出入国在留管理庁)
- 在留審査処理期間(出入国在留管理庁)
- 介護技能評価試験・介護日本語評価試験 国内試験 申込手順(個人/企業〔団体〕)(厚生労働省)