外国人雇用の助成金・補助金|特定技能で使える制度と受給要件
目次
外国人の採用には、就労環境の整備や研修など一定のコストがかかります。そこで気になるのが「使える助成金・補助金はないか」です。結論から言うと、外国人特有の就労環境整備に使える「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」は上限80万円で、このほかにも正社員化・訓練・試行雇用などに使える制度があります。ただし制度ごとに対象要件・金額・申請時期が異なり、自社がどれに当てはまるかは分かりにくいのが実情です。このページで、企業が押さえるべき主要な制度と金額の目安、申請の注意点を整理します。
この記事の要点
- 「外国人を雇うだけ」ではもらえない — 多くは就労環境の整備・正社員化・訓練など、認定を受けた計画に基づく取り組みを行い、要件を満たすことが条件。
- 外国人特有の制度の中心は「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」 — 1制度導入につき20万円・上限80万円(厚生労働省)。
- 金額・要件は年度で変わる — 本記事の数値は確認時点の目安。正確な受給可否・金額は厚生労働省の各制度ページや社会保険労務士などの専門家で確認を。
本記事は助成金・補助金制度の概要をまとめた情報提供です。助成金・補助金は要件・金額・募集期間の改定が頻繁で、受給には要件審査があります。特定の金額や受給を保証するものではありません。助成金の申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士の業務であり、実際の申請可否・金額は厚生労働省の各制度ページや社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
助成金と補助金は何が違う?
まず混同しやすい2つの言葉を整理します。
- 助成金 — 主に厚生労働省が所管し、財源は雇用保険料が中心。雇用の維持・改善や人材育成などが目的で、要件を満たせば原則として受給できるものが多い(予算の上限で先着・抽選になるものもある)。外国人雇用で使える制度の多くはこちら。
- 補助金 — 主に経済産業省や自治体が所管。設備投資・IT導入・事業拡大などが目的で、公募・審査があり採択されないと受給できないものが多い。
外国人雇用で企業がまず検討するのは、厚生労働省の雇用関係助成金です。以下では、外国人採用の場面で使われることが多い制度を整理します。
外国人雇用で使える主な助成金
外国人雇用で活用されることが多い助成金を整理します。**「外国人向け」に特化しているのは人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)**で、それ以外は外国人・日本人を問わず要件を満たせば使える一般の雇用関係助成金です。
| 制度 | 主な目的 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) | 外国人労働者の就労環境整備・職場定着 | 1制度導入につき20万円・上限80万円 |
| キャリアアップ助成金(正社員化コース 等) | 有期→正社員化・処遇改善 | 制度・年度・企業規模で変動 |
| 人材開発支援助成金 | 従業員の訓練・研修 | 訓練内容・コースで変動 |
| トライアル雇用助成金(一般トライアルコース) | 試行雇用を通じた常用雇用 | 対象者1人あたり月額の上限あり(原則3か月) |
| 業務改善助成金 | 賃金引上げ+設備投資 | 引上げ額・人数で変動(上限あり) |
| 雇用調整助成金 | 休業などによる雇用維持 | 休業手当等の一部を助成 |
金額は年度・要件・企業規模によって変わります。以下、外国人採用で中心となる制度を中心に補足します。
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行の知識不足・言語の違いなどからトラブルが生じやすい傾向があります。この助成金は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行い、外国人労働者の職場定着に取り組む事業主に対して助成するものです。外国人雇用の場面で最初に検討したい制度です。
主な受給要件(厚生労働省)
- 外国人労働者を雇用している事業主であること
- 認定を受けた就労環境整備計画に基づき、次の措置を新たに導入・実施すること
- ①雇用労務責任者の選任【必須】、②就業規則等の多言語化【必須】に加え、③苦情・相談体制の整備/④一時帰国のための休暇制度の整備/⑤社内マニュアル・標識類等の多言語化 のいずれかを選択
- 計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が15%以下であること
受給額 — 要件をすべて満たした場合、**1制度導入につき20万円(上限80万円)**が支給されます。通訳費・翻訳料・翻訳機器導入費、社会保険労務士などへの委託料、多言語の社内標識類の設置・改修費などが支給対象経費として想定されています。
受給要件・金額・様式は年度で改定されます(上記は令和8年4月1日版・確認日2026年7月9日)。就労環境整備計画は取り組みを始める前に提出・認定を受ける必要があります。申請前に必ず厚生労働省の最新のパンフレット・支給要領をご確認ください。
そのほかの雇用関係助成金(外国人・日本人を問わず使える)
外国人に特化していなくても、要件を満たせば外国人労働者の雇用でも使える制度があります。
- キャリアアップ助成金 — 有期雇用の外国人を正社員化する、処遇を改善するといった取り組みに使えます。
- 人材開発支援助成金 — 外国人従業員の訓練・研修(技能や日本語など職務に必要な訓練)にかかる費用の一部を助成します。
- トライアル雇用助成金 — 一定の求職者を試行雇用し、常用雇用への移行を図る取り組みが対象です。
- 業務改善助成金 — 事業場内の最低賃金を引き上げ、あわせて設備投資などを行う場合に使えます。
- 雇用調整助成金 — 景気変動などで休業を行い、雇用を維持する場合の休業手当の一部を助成します。
これらは目的も金額も制度ごとに大きく異なり、年度や企業規模で変動します。具体的な金額・要件は厚生労働省の各制度ページや社会保険労務士などの専門家で確認してください。
特定技能で外国人を採用するときの注意点
特定技能で外国人を採用する企業が、助成金を検討するうえで押さえておきたい点です。
- 就労環境整備助成コースは「自社支援か委託か」で扱いが変わる場合がある — 支援を登録支援機関に委託しているか、自社で支援しているかによって、選べる措置や経費の考え方が変わることがあります。自社支援と委託の違いは特定技能は自社支援?委託?で整理しています。
- 在留資格によっては対象外のことがある — 助成金は在留資格や雇用形態に条件があるものがあり、すべての外国人材が一律に対象になるわけではありません。
- 助成金は「採用コストの相殺」ではなく「取り組みへの助成」 — 採用そのものの費用を直接補填する制度ではなく、就労環境整備・訓練・正社員化など具体的な取り組みに対して支給されます。採用にかかる費用の全体像は特定技能の採用費用・相場で、採用後に毎年かかる費用は特定技能の維持費・ランニングコストで整理しています。
なお、特定技能制度そのものの全体像や採用の進め方は特定技能で外国人を採用する完全ガイドにまとめています。
申請の流れと注意点
助成金は「申請すればもらえる」ものではありません。共通して注意したい点を整理します。
取り組みの前に計画を認定してもらう
多くの助成金は、取り組みを始める前に計画(就労環境整備計画・訓練計画など)を提出し、認定を受ける必要があります。取り組みを始めた後や、実施済みの内容では対象にならないことがあります。
計画に沿って取り組みを実施する
認定された計画のとおりに、就労環境の整備や訓練などを実施し、記録・書類を整えます。
一定期間の経過後に支給申請する
制度によっては、実施後に一定期間(離職率の算定期間など)を経てから支給申請します。助成金は原則として後払いです。
審査を経て支給される
提出書類の審査を経て支給が決定します。審査には時間がかかり、要件を満たさなければ支給されません。
- 「外国人を雇うだけ」ではもらえない — 就労環境整備・正社員化・訓練など、具体的な取り組みと要件の充足が前提です。
- 労働法令の遵守が大前提 — 労働保険・雇用保険への適正な加入、賃金台帳・出勤簿の整備などが求められます。法令違反があると支給されません。
- 不正受給には厳しい措置 — 実態と異なる書類による受給は不正受給となり、返還や事業主名の公表などの対象になります。
- 助成金は原則として課税対象 — 受け取った助成金は原則として益金(収入)に算入されます。
- 申請書類の作成・提出代行は社会保険労務士の業務 — 助成金の申請代行は登録支援機関の業務ではありません。申請は社会保険労務士などの専門家と連携して進めます。
どの助成金が自社の取り組みに使えるか、要件を満たすかの判断は専門的です。受給可否・金額・申請手続きの詳細は、厚生労働省の各制度ページや、社会保険労務士などの専門家にご確認ください。本記事は制度の概要を整理した情報提供であり、受給を保証するものではありません。
まとめ
外国人雇用で使える助成金の中心は、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース・上限80万円)です。加えて、正社員化(キャリアアップ助成金)・訓練(人材開発支援助成金)・試行雇用(トライアル雇用助成金)など、外国人・日本人を問わず要件を満たせば使える制度があります。いずれも「外国人を雇うだけ」ではもらえず、認定を受けた計画に基づく取り組みと要件の充足が前提で、金額・要件は年度で変わります。最新の要件・金額は厚生労働省の各制度ページや社会保険労務士などの専門家で確認しましょう。
採用にかかる費用の全体像は特定技能の採用費用・相場で、登録支援機関への委託費の相場は登録支援機関の費用相場で整理しています。
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よくあるご質問
- 外国人を雇用するだけで助成金はもらえますか?
- いいえ。「外国人を雇うだけ」でもらえる助成金はありません。多くは、就労環境の整備・正社員化・訓練の実施など、認定を受けた計画に基づく取り組みを行い、要件を満たした場合に支給されます。また助成金は原則として取り組みの後に支払われる後払いで、労働法令を守っていることが前提です。
- 外国人雇用の助成金はいくらもらえますか?
- 制度と取り組み内容によります。外国人特有の就労環境整備に使える「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」は、1制度導入につき20万円・上限80万円です(令和8年4月1日版・厚生労働省)。ほかの助成金は目的も金額も異なり、年度や企業規模で変わるため、正確な額は厚生労働省の各制度ページや社会保険労務士などの専門家にご確認ください。
- 個人事業主でも外国人雇用の助成金を受け取れますか?
- 多くの雇用関係助成金は、雇用保険の適用事業所であることなどの共通要件を満たせば、法人・個人事業主を問わず対象になり得ます。ただし制度ごとに要件が異なるため、対象になるかは各制度の要件と厚生労働省・労働局の案内でご確認ください。
- 助成金の申請は登録支援機関に任せられますか?
- 助成金の申請書類の作成・提出の代行は社会保険労務士の業務です。登録支援機関の業務は支援計画の策定・生活支援などで、助成金の申請代行は含まれません。助成金の申請は社会保険労務士などの専門家と連携して進めるのが基本です。